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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter15 焔魂の料理人

9話:操るもの、操られるもの

 ←8話:最高料理人イーグラー →10話:フレイム・マインド
 同時刻、今日も薄暗い部屋の中で多くの者達が静かに、だが確実に解析を進めて行く。
錬金術研究所の中では、創造の錬金術研究が着々と進められている。
その暗い部屋の中を、まるで何かの影のように進んでくる男。

「おやおや、いくら暗黒神を崇拝する宗教とはいえ、暗すぎるというのも考え物ですね。目が悪くなりますよ。」

光を嫌うかのように手元だけの明かりで研究に励む研究者は
ふいにかけられた声にびっくりして顔を上げ、そして向けられた微笑に思わず頭を下げた。
そこにいたのは、彼らが崇める神に最も近い男だったのだ。

「これはこれはマヴガフ大司教様、ようこそお越しくださいました。お申し付けいただければお迎えに上がりましたのに。」

めったに姿を現さない大司教を前に、研究資料を目の前から退かすとすぐに頭下げる。
それだけでは足らず研究を中断して席を立とうとする彼に、いつも通りの柔和な笑みを浮かべ
両手で座るように促すマヴガフ。彼は辺りを見渡しながら研究者達の様子をながめる。

「いえいえ、私のようにあちこちふらふらしているものを待っているなんて時間の無駄ですよ。
 アナタ達には一刻も早く錬金術の理論を確立していただきたいですからねぇ。」

大分長い時間をかけて進めてきた研究も、ようやくいろいろとその真理が分かってきた。
だが、もう少しで最後の扉が開かれるかというところで急に鈍化した進捗を見かねたらしい。
彼が言いたいことを察した研究者は、申し訳なさそうに眉をひそめた。

「は、我らが二十四時間体制で研究を進めておりますが・・・。」

神が復活するその日を夢見て、寝る間も惜しんで使命を果たしてきた。
それでも彼の顔は浮かない。努力に対する成果が現れてこないからだ。
自分達の努力不足なら罪を悔い、更に励むだけだが事情は違った。

「おりますが?何か問題でもあるのですか?隠す必要はありません、言ってみてください。」

歯切れの悪い言葉で終わる研究者の顔を覗きこむようにして見つめて事情を聞きだす。
あまりモタモタしている時間もないというのに、こんなペースでは間に合わない。
未来は決まっている、その日までに完成させなければ意味がないのだ。

「何とも帝国の研究員たちが非協力的でして、進捗は芳しくありません。」

ネクロ教配下の者達の努力は凄まじく、研究所内でも噂されるほどであった。
それでも進捗が芳しくないのは、帝国配下の研究員達が管轄している分野が遅れているからだった。
やきもきして進捗を見つめる者達をよそに、彼らは何とも涼しげに見えた。

「ハデス神に仕えるネクロ教徒が人間共に振り回されるとは情けない限りですが・・・相手がアルトシャンですからねェ。」

人間なんて言う神の操り人形たちに主導権を握られていると分かると、
渋い顔をしながら頭の後ろを掻いて面倒くさそうにしてみせた。
だが、まだまだ役に立ってもらわねばならない働き蜂達へ下手に手を出すことも出来ず、ふうっと鼻から憤りを抜く。

「アルトシャンがと言うよりもどうやらアンドラスが研究員たちに指示をしているようでして。」
「何?あの姫騎士が自分から指示をしているですって?!ははっ、人形に指図されるとは帝国も落ちたもんですネェ。」

マヴガフの質問に答えづらそうにしていた研究者だが、ついに俯きながら重いため息を吐く。
それを聞いた彼は目をまん丸にすると、これ滑稽と帽子に手をやりながら笑い出した。
作り物の体。空っぽな器に魂だけ押し込んだような言わば人形。
自分達が創り、操っているはずの人形に逆に操られる人間達はなかなかの喜劇を見せてくれる。
腹を抑えて俯き、帽子のつばで目元は隠してもその口角は三日月にように上を向いていた。

「んーで?どんな指示が出されているというのですか?まーさか研究なんかするな~とかですか?」

あんなまるで砂糖を舐めたように甘い人形が出す指示である。
ろくでもないことは分かっており人間達が振り回されるのは見ていて面白い。
だが、同時に腹立たしい。自分の計画をあんな出来損ないの人形に邪魔されていると思うと、殺してやりたくなるくらいに。

「そのまさかなのです。彼女は定時外の研究を禁じていたり、予算を絞ったりとやりたい放題なのです。」
「ふーむ・・・なかなか面倒なやり方をしますねェ。」

人形とはいえ、しっかり教育を受ければそれなりに頭が回るということか。
真っ向から研究を否定するのではなく、監督者としての立場を使ってうまく立ち回っているようだ。
細い顎に手を置きながら蛇のように細い目を一層細くして思案しはじめたマヴガフはぽつりと漏らす。

「やはり、行動を起こすべきでしょうかね。」

何れこの時期が訪れる事は分かっていた。それが少々早まっただけ。
思った以上にあちこちから邪魔しようとする意思が鬱陶しく様子を伺っており
このまま作戦を進めるには少々目障りになりすぎていた。

「大司教には何かお考えがおありなのですか?我らはいつでも大司教のご指示のままに。」

まるで彼の言葉を待っていたかのように跪く研究者。
彼らにとっても、人形からのこれ以上の妨害は辛抱ならないところまで来ていたらしい。
その反応ににんまりとして目元細く笑ったマヴガフは帽子のつばに手をやり、散乱する情報たちを見渡す。

「実はですね、我らが研究してきた事象全てをこの研究所から持ち出そうと思っているのです。」
「ついにここの利用価値もなくなってきたと、そういうことでしょうか?」

研究は最終段階まで進んでいる。後1個、1個だけ・・・。
その最後の封印さえ解いてしまえば、創造の錬金術は理論を確立する。
後はもうネクロ教だけで研究を進めたほうが早いと、そう判断したのだろうか。
だが静かに首を振るマヴガフ。問題は生み出した後の管理だ。人間はどうしてこう、日常にかまけて警戒を忘れるのだろうか。
そのおかげで、まったく躾されない人形からさえ指図される羽目になっているというのに。

「研究自体はここで進めますよ。ですが、その結果を逐一我らの別環境に保存するという話です。」

この研究を狙っているものは多い。それなのに、この管理体制ではいつ奪われてもおかしくない。
湧き上がり煮えたぎる感情を必死に押さえ込んでここまでやっとたどり着いたのだ。
こんなところで邪魔されては敵わない。マヴガフの細い目がぎらりと開く。

「いやね、これ以上邪魔されては困るんですよ。何れゴミ箱行きの・・・人形たちにね。」

黄金の蛇眼が暗い部屋の中でぎらつき、まるでそれ自体光を放っているかのようだ。
彼は今も蠢く邪魔な虫ケラどもを睨み、その口元は殺意に満ちて蛇のように大きな口が釣り上がる。
行動を起こす気であるならば、こちらが先手を取って動くのみ。

「それに、どうにもこのルアスに熾天使のマナが近づいています。彼らの狙いなど決まっていますからねえ。」

彼女達がこのルアスを狙っているのなんてお見通しだ。
本人達はばれないようにコソコソやっているつもりのようだが、バカが欺けるのは嘘の平和しか見えていないバカな連中だけ。

「もしかしてこの錬金術研究所を?!そうだとすれば、確かに技術の保存が必要ですね。」

何をしようと所詮出来損ないのすることはあまりに幼稚だ。だが、ここにも一人バカがいたということか。
本来なら自分に仕えるこの連中にもそのくらい見抜いて欲しいのだが
ようやくに彼らも危険を察したようで突然に狼狽し始める。

「あの少人数でいきなりアルトシャンにケンカを売るほどメルトはバカじゃありませんからネェ。だとすれば、ここしかありませんヨ。」

何れ彼らがこのルアスに来る事は分かっていたが、その時期ではないはずだった。
にもかかわらず突っ込んでくるとなれば、もう消去法的に狙う場所はひとつしか残らない。
それでも、随分と過激な博打に出たものだと、スリラーな熾天使たちの焦りを舐めてほくそ笑む。

「これは大変ですね。すぐにアルトシャンに報告して・・・。」
「あータイム、タイム。慌てるとろくなことになりませんよ。」

これだから人間はダメだというのだ。数さえいれば何とかなると思っている。
そんなに自分に自信がないのだろうか。一人では何もできない弱い連中・・・だが、だからこそ利用価値がある。
帽子のつばに手をやって深く被りなおしたマヴガフは、慌てる配下を静かな口調で宥める。

「この技術は我々にとって大変重要ですが・・・人間共には過ぎたオモチャです。そろそろ彼らから取り上げねばなりません。」

これも、いずれその時期がやってくることは分かっていた話だ。
人間なんて言う、自身に歯止めが出来ない愚かな生き物に力を与えれば、その力を振り回しだすに決まっている。
それは、子供が大剣を振るも同じ。自制できない者達は勝手に転ぶだろう。
滅んでくれるのは手間が省けていい。だが・・・だだをこねる子供ほどたちが悪いものもない。
その前に始末する必要があった。

「私らが直接手を下さずとも、熾天使がやってくれるなら放っておきましょう?」

創造と進化を司る希望の熾天使とはよく言ったものだ。
自分で進化させておいて、ここに来て人間達から奪うなんて。
確かに希望を与えた、だがそれ以上の絶望を与えようとする彼女が批判など片腹痛い。

「だからこそ事前に研究データを・・・。なるほど、さすが大司教様、御見それいたしました。」

今はまだあまりアルトシャンを刺激しないほうがいろいろやりやすい。
それどころか、あの女へ国の関心が行ってくれるのならますます歓迎だ。
どう思うことだろうか、セイギの為と起こした行動がまさか憎き相手を助けることになると知ったら。
これだからセイギと言う言葉は大好きなのだ。

「暗黒神復活の為に、この研究データは不可欠。
 いいですか、必ず持ち帰るのです。他の教徒にも伝えなさい、今日中に済ませるのです。」
「はっ、血塗られし闇の微笑に栄光あれ!」

偉大な指導者の言葉に、研究者は深々と頭を下げて暗黒神を崇める言葉を口にすると
一目散にその場を後にしてドアの向こうへと消えて行く。
よくもまぁこんな薄暗く資料が乱雑に置かれた部屋の中をあんな風に駆けられるものと感心するほど。

「さて・・・と、私は一旦ルアスから退く事にしますかネェ。あなたの顔を見るとぐちゃぐちゃにしたくなりますからねえ。」

自分が自分を一番に知っている。今あの憎い羽女と出くわしたら
もしかしたらガマンできずに切り刻んでしまうかもしれない。悲鳴を想像するとそれだけで口元が狂喜に釣り上がる。
だが、そうなってしまっては自分が困る。今はあのセイギも大事な大事なミカタなのだから。

「まだ生かしておいてあげますよ、まだ、ね。・・・しっかりやってくださいよ、エルピス様、ヒヒヒッ。」

帽子を深く被りなおし、彼はまるで溶け込むかのように闇へと消えた。
すべての糸は自分が握っている。操り人形共の哀れな喜劇を見下ろすのは何とも楽しい。
彼は必死にもがく宿敵を嘲り、黄金の邪眼を細くして世界を見下ろすのであった。
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