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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter16 SoulFull Bridge

11話:お年玉くれ!

 ←10話:1年の終わりに →12話:カス賊
 結局シャニーも甘いもので、ゲイルに飛び切りのごちそうを作ってやった。
うまい飯もあって夜は盛り上がり、そしてついにその時が訪れる。

「3・・・2・・・1・・・。」
「うりゃ!!」

カウントダウンが終わるとともに弾けるクラッカー。
そう、ついに年越しを迎えたのである。その瞬間にシャニーは飛び跳ねて喜び、
メルトも何か感慨深そうに神秘的な夜を照らす蝋燭を見つめている。

「あけおめ!」
「ことよろ!」

今年も何一つ変わることなく、ゲイルとシャニーは元気なあいさつから新年をスタートさせた。
新たな年の初めという厳かなはずの一場面だが、満面の笑みを浮かべる二人は妙にハイテンションで、
何度も何度もハイタッチしあったり踊ったりと興奮を隠しきれず何とも騒がしい。

「特別何か変わるわけでもないのに・・・年越しは何か神秘的よね。」

人間の文化というのはやはり面白いものが多い。
昨日からつながっているはずの今日が、何だかとても新鮮で神聖に思える日。
静かな夜空を見上げながらエルピスは騒がしい連中をよそに厳かな雰囲気を楽しむ。

「そうだな、気が引き締まる思いだ。まぁ・・・連中にはイベントでしかないようだが。」

新しい年を迎えて、更なる飛躍のために決起するメルトだが
どうにも向こうで騒がしい二人のせいで緊張感が保てない。
これがルケシオンで迎える年越しなら良かったのだが、彼らの能天気ぶりにもほとほと参る。

「ねえ、ゲイル!見てた?見てた?」

年越しの挨拶を終えて、新年を迎えた興奮に包まれる二人。
ようやく少しだけ落ち着いてきたかと思うと、シャニーがゲイルの服を引っ張り出して何が嬉しいのか目を爛々とさせ始めている。

「あ?何がだよ、何かあったのか?」

あまりに彼女がニヤニヤしながら聞いてくるものだからゲイルも期待してしまう。
興味津々に彼女の顔を見下ろすと、もったいぶるなと急かす。
すると彼女は得意げな笑みを浮かべながら腰に手を当てだした。

「フフフ・・・私は年を越す瞬間、マイソシアにいなかったんだよ!」

どうだと言わんばかりに胸を張って言い放った言葉にゲイルだけでなくエルピスも驚く。
二人は顔を見合わせるともう一度シャニーの顔を見下ろすが、彼女のしたり顔といったらなく、聞かずにはおれなかった。

「何だよそれ!何か熾天使の権能でも使ったのか?」
「そんな力知らないわ。シャニー、私が知らない間に何か編み出したのね!」

一体何を使ったというのだろうか。転移術だろか、一瞬だけ時を縮める魔法だろうか。
何にしても今まで見たこともない力を使って見せた彼女に二人とも興味津々。
特にエルピスは今まで叱ってばかりの妹分の成長に手を結んで喜んでいる。

「ゲイル、エルピス、鵜呑みにするな、下らん。」
「そんな言い方しなくたっていいじゃない!」

ところが大興奮の三人をよそに、メルトだけは冷ややかだった。
渋い顔をしながら嘲るメルトはひとつため息を吐いて、不機嫌そうに目を閉じてしまった。
相変わらずノリの悪い彼に頬を膨らすシャニーだが、残りの連中は気になって仕方がない様子。

「何だよ、何したんだよシャニー。教えてくれよ!」

何とかメルトにもすごいといわせようとするのだが、事の真相を知るメルトはまるで相手にしてくれない。
むうっと口を尖らせていると、後ろから腕を引っ張られた。
振り向けばゲイルとエルピスが探求の眼差しを向けている。ここまで期待されたらされたで言い出しづらいのだが。

「そいつは年越しの瞬間ジャンプしていただろ、それで大陸に足を付けていなかったといいたいだけだ。」
「・・・。」

どうやって話を膨らませて二人を驚かせてやろうかと思案していた時だ。
何と先にメルトがネタ晴らしをしてしまったではないか。おまけに何の肉付けもしない素っ気のない話し方で。
げっと口元を歪めたときには、既に二人から注がれる落胆の視線が突き刺さっていた。

「な、何よ。何でそんな目で見るのよ!」

内心でメルトにありったけの暴言を吐きながら睨むが、彼は白々しく視線を逸らしてしまった。
いよいよ落胆と侮蔑の眼差しが痛すぎて無視できなくなってきた彼女は振り向いてみて改めてウッとする。
先ほどの興奮が消えて、無表情な軽蔑の眼差しが降り注いだからだ。

「お前・・・ホント子供っぽさが抜けないよなぁ。」
「期待して損したわ。」

ゲイルにとっては、“また”といった感じだが、エルピスの落胆の仕方は酷かった。
少しは熾天使としての自覚を持って何か特訓に励んでいたかと期待したのが馬鹿だったと、
一つ大きくため息をつくと額に手をやってふらふらとよろけだす始末。

「子供っぽいって言うな!夢があるって言いなさいって何度言ったら!」
「あーそうだな。俺が悪かったよ。」

新年早々、彼女の大げさないたずらにしてやられるとは先が思いやられる。
さっきまでの興奮が嘘かのようで、シャニー以外は水を浴びせられたかのように静かになってしまった。
もうどれだけ仕掛けても、一度湿気ってしまうと反応は薄い。

「むぅ・・・これだから夢のないオトナっていうのはダメね!」
「へいへい・・・。」

せっかく皆を笑わせようとしたのに、どうして皆こうもそっけないのだろうか。
そもそもの諸悪の根源であるメルトのほうをまっすぐに見つめて両手を広げてやるのだが
彼は知らん振りだし、相棒からも適当な相槌が帰ってきてもうお開きの雰囲気が包む。

「ちょーっと待った!何してるのさ!まさか寝る気?」

だが、ようやく取り戻された静かな夜をシャニーはまだ許すつもりはない。
のそのそと寝袋の中に潜り込もうとするゲイルの腕を引っ張ると無理やり起す。
また何か下らない事を思いついたらしい相棒に、ゲイルのほうは頭を掻きながら面倒臭そうだ。

「当たり前だろ、お祝いはもう終わりだ。」

この前クリスマスの時にパーティはやったし、新年のお祝いはまた明日の朝すればいい話。
とにかくこれ以上夜更かししていたら明日も響いてしまう。
彼女にもぽんと寝袋を放ると、寝袋の潜り込み始めるのだが、またしても相棒の手が引っ張ってきた。

「・・・なんだよ、その手は?」

面倒臭そうに見上げると、企んでいるのがまる分かりの笑顔がある。
何事かと身構えていたゲイルだが、彼女は何か繰り出すわけでもなくさっと手を差し出してきた。
意味深長に広げられた手のひらは、明らかに何かを要求している。

「決まってるでしょ!お年玉!」

一体何を言い出すかと思えば。彼女が何の恥ずかしげもなく口にした言葉に唖然とするゲイル。
思わず彼は救いを求めるようにメルトのほうを見上げてみるが、
彼はもう聞えない振りを決め込んでいるようで淡々と無表情に寝袋の用意を進めていた。

「ねえ、シャニー、お年玉って何?教えなさいよ。」

おまけに今度はさっきよりも不味い状況かもしれない。
またひとつ新たな人間の文化に触れたエルピスが再び目を爛々とさせはじめたのだ。
彼女にまで悪乗りされては堪らないが、シャニーがしめたと言わんばかりにニヤついたのが見えた。

「あのね、年越すとお年玉って言うお小遣いがもらえるの!エルピスも貰っちゃいなよ。」

またひとつ、彼女は精霊に近からず遠からずの知識を教えてしまう。
ははーんとひとつ手を打ったエルピスが、ニヤつく妹分に同じようないたずらな笑みを浮かべ始めるものだから
これ以上は不味いと悟ったゲイルは堪らずシャニーの頭を押し下げて怒鳴る。

「はぁ?!お前、寝言は寝てから言えっつーの!エルピスっ、てめえまで何で手を持ってくるんだ!」

やはり二人つるむとろくなことをしない。さっと手を差し出してきたシャニーを真似るように
エルピスも何の悪びれる様子もなく同じようにゲイルにお年玉を請求し始めたではないか。
シャニーはともかく、エルピスにお年玉はこういうものだと思われては堪らず軌道を修正しようと必死だ。

「えー!いいじゃん、いいじゃん!そんな固い事言わないでさー、ね?」

そんな彼の気持ちも知らないで、シャニーのほうは肘でゲイルを小突きながら
調子のいい笑顔で見上げてはせがんでくる。だが、今回ばかりは彼も相棒の甘えに付き合うつもりはなく
もう一度彼女の頭を押し下げると、いまだに差し出されたエルピスの手も下ろさせた。

「ね?じゃねーよ。お前、婚約者から金せびるつもりかよ!それじゃお前、お年玉じゃなくて脅し玉じゃねーか!」
「ははは、うまいことを言うな。新年早々めでたいやつらめ。」

恋人にお年玉を請求するなんて前代未聞である。こういうところはやっぱり盗賊らしいということなのか。
ただでさえ彼女に絞られて厳しい小遣い事情なのに、これ以上絞られたら窒息してしまう。
必死の彼の反論に、それまで無視を決め込んでいたメルトも思わず声を上げて笑い出した。

「え?やだなぁ、お金なんて要らないよ。どーせ財布同じなんだし、貰ったって仕方ないじゃん。」

ところが、がめつい女だと思われていることにようやく気付いたのか
シャニーは頭の後ろに手を組みながら苦笑いして見せて来た。
もちろん、ゲイルにとっては要求されるものが何であろうと新年早々の相棒のハイテンションには呆れるしかないのだが。

「付き合いきれん。ゲイル、俺は先に寝るぞ。」

巻き込まれないうちに、メルトはそそくさとその場を離れていった。
出来ることなら自分もそうしたいのだが、相手が相手だけにそうもいかない。
恨めしそうにメルトの背に手を伸ばすゲイルの横では、シャニーが元気良く手をあげてメルトを呼ぶ。

「メルトは肩もみでいいよ!」
「お断りだ!まったく、若いくせに何を言っている。俺がしてもらいたいぐらいだ。」

余りの調子の良さにメルトも無視しきれなくなって突っぱねた。
年齢的に親子ぐらい年が離れているのに、新年早々年寄りに肩を揉ませるとは太い奴である。
ぶうっと頬を膨らせるあたりどうやら本気だったようで、
相手のペースに巻き込まれないうちにメルトは寝袋の中に顔を引っ込めた。

「ははーん、お前が欲しいものが分かったぞ。単純にこうしてほしいだけだろ?」

やっぱり彼女の求めているものは実にささやかなものであるようだ。
メルトへの要求をヒントに頭をひねったゲイルはすぐにぴんと来て手を打つと、
そっと彼女の後ろに回って腕の中に抱きしめてやった。ずっと傍にいる、それが彼女との約束だ。

「うーん、惜しいかなぁ。それだけで満足するシャニー様ではないぞ!」

しばらくは胸の中で目を閉じてじっとしていたが、突然訪れた静寂にほっとできたのは束の間のことだった。
もう満足しただろうと、さぁ寝ようと歩き出すとすぐさま下から声が上がった。

「・・・じゃあもう寝るわ。お前の満足に付き合ってたら寝れなくなる。」

足元を踏ん張って寝させないように必死に抵抗するシャニーを軽々片腕で引きずりながら
寝袋の準備を始め、しまいには腕にしがみつく彼女を放り出すものだから
堪らず彼女はゲイルの腰に手を回すと体重をかけた。

「あー!ちょっと、ちょっと待って!待ってってば!」
「何だよ、もう何言ったって寝るんだからな!」

何とか彼女の妨害を退けて寝袋に足を突っ込んだのだが、
彼女はそれでも諦めてはくれず、しまいには地面から野菜を引っこ抜くかのように頭を引っ張るものだから
ゲイルは体をダンゴムシのように丸めて必死に抵抗を図る。

「待って!じゃあ今度一年の抱負を言って!」

あまりにもゲイルが抵抗するものだから、彼女は一度諦めたふりをして
彼が油断したところを一気について寝袋の中に滑り込んだ。
完全に逃げ場を奪うと、彼女は白い歯をにっとさせながらじっと相棒を見つめてやった。

「・・・あー・・・そういう事かよ。まったく、めんどくせー奴だなぁ。」

ようやくにシャニーが求めているお年玉が分かったゲイルは、
もうすでに寝ぼけ眼になりながら片目だけ開いてシャニーのほうに体を寝返った。
憎まれ口を叩いてやっても、彼女はにこにこしながら自分の反応を待っている。

「今年もずっとお前を守るからな、安心しろ。」

何度恥ずかしいセリフを口にさせたら彼女は気が済むのだろうか。
贅沢なルケシオンの姫様に再度誓いの言葉をかけてやる。
自分で言っておいてやっぱ恥ずかしく、もうこの先1年分の前払いにして欲しいものである。

「えへへ、さっすがゲイル、分かってるなぁ!」

どうやら正解だったようで、シャニーは何度も頷くと笑顔で身を寄せてきた。
腕の枕をして一緒に空を見上げる。今日もやっぱり空は澄んで顔を冷気が突き刺してくるが、
まるで磁石のようにくっついてくる彼女は温かくてまどろみはどんどん深くなっていく。

「じゃあ私もお年玉あげる。心して受け取るんだぞ。」

相棒がちゃんと自分の望むものを気づいて言ってくれたのだ。
こちらからもお返しと、シャニーはゲイルのほうを振り向くと、
その頬にそっと口付けしてやった。だが、せっかくの特別大サービスなのに彼の反応は薄い。

「ぐー・・・。」
「し、信じられない・・・私からのお年玉を・・・。」

薄いというか、全く反応しなくて怪訝そうにゲイルの顔を覗きこんだ途端だ。
彼は何といびきをかき始めているではないか。
まだあれから5分も経っていないはずなのに、まんまと逃げられてしまった。
何だかすごく悔しくて叩き起こしてやろうかとさえ思っていたときだった。
ふいに腕枕していた彼の腕が背後から彼女を抱きしめてきた。

「むにゃむにゃ・・・おーい、シャニ~、傍にいろって言ってんだろ・・・。」

寝言を漏らしながら、腕の中に包んだシャニーを更に胸に押し付けるゲイル。
夢の中でまでも自分の事を守ろうとしてくれている。
彼の誓いに嘘偽りがないことを改めて知ったシャニーは、大人しくゲイルの腕の中で目を閉じた。

「・・・ま、いっか。」

とりあえずこの場は彼の誠意に免じて許してやることにした。
きっと明日朝一番に、今度こそこちらからのお年玉をプレゼントしようと心に決めて。
眠りに落ちるまで、何度も今年一年の皆の健勝を祈りながら。
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