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 ←12話:カス賊 →14話:狭き依り代
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter16 SoulFull Bridge

13話:隠匿の賢者

 ←12話:カス賊 →14話:狭き依り代
 シャニー達への検問が張られていると聞いて焦る男がルアスにいた。
彼は病院の自室でうろうろしながら、どうするべきかを思案している様子だったが、
やはりできる限り騒ぎにならない方法をとろうと、友のマナを追い始める。

「ったく、あいつら今どこほっつき歩いてるんだか。」

錬金術研究所襲撃後、後を追おうと思ったが機を逸したレイは合流の機会をうかがい続けてきた。
だが今日も、手を結び精神を集中させてマナを追おうとするのだがまるで場所が分からない。
かすかに感じはするのだが、まるで消えそうなほどに弱く、位置の特定までは難しい。

「くっそ、マナ封じの指輪かよ。って、俺が渡したんだっけか。」

見えたかと思えばふっと消えてしまう輝き。シャニーのマナはレーダーですぐに感知されてしまうほど強力なもの。
それを防ぐために渡したマナ封じの指輪がまさかこんなところで邪魔になるとは。
これではマナの軌跡を追って彼らを探すことは諦めるしかない。

「しょーがねえな。あの手を使うか。」

本当はあまり騒ぎになる手段は使いたくないのだが、どれだけ頭をひねってもこれ以上策が浮かばない。
どの道ルアスから姿を消せばいずれ騒ぎになることに違いはない。
そう己を言いくるめて、彼は白衣を整えると部屋を出ていった。
これ以上の猶予はないところまで来ている。焦る心を抑えながら、彼はルアス城を目指す。
向かった先は騎士団が所有する錬金艇の格納庫だ。
中に入った途端、巨大な動力が唸りをあげおり、マナが生みだした熱風が吹き荒れる。

「なんとか連中が接触する前に捕まえねえとな・・・。」

彼らは定期的にルセンへ物資を送るためこの船を使っている。
すでにルセンでは多くの騎士たちが包囲網を形成しているらしく、作戦は着実と進んでいることがうかがえる。
ルセンは渓谷と橋の絶壁。包囲されたら一巻の終わりだ。

「待て、そこ、止まれ!」

軍用施設の中を歩き回る白衣は目立ち、すぐに騎士たちに取り囲まれてしまった。
無理もない、こんな機械と武器が支配する世界で、丸腰の人間がふらふらとしているのだ。
錬金銃の銃口をレイへ向けて威嚇する騎士たち。だが、レイはこの時を待っていた。

「私は創造の錬金術プロジェクトの主席研究員だ。シャニー捕獲作戦に同行させていただきたい。」

懐から身分証明書を取り出してかざして見せる。多くの者の命を救った彼は国王より位を賜る身。
それまで強面だった騎士たちも、相手が貴族と分かると武器を下した。

「これは確かに、失礼いたしました。して、同行の理由は?」
「熾天使のマナを採取するためだ。地下実験場での錬成トライに必要となる。」

極秘プロジェクトであるがゆえに、騎士たちは実験と言うだけですんなり錬金艇まで案内してくれた。
浮上する錬金艇、こんな機械の塊が空を浮くなんて、当事者のレイでさえ驚きを隠せない。
歩けば数十日はかかるルセンまでの道のりを、錬金艇はたった30分に縮めてしまうという。
この技術が、平和目的に使われればどれだけこの世界が発展していくことだろうか。

「ゲイル、シャニーちゃん、今行くからな。」

聞いていた噂は本当で、そのスピード感はまさに雲を飛び越えるよう。
投射機を回すかのように表れては消えていく景色を眺めながら、
レイは錬金術のあるべきを描き、そして友の無事を祈るのであった。


 旅路の中ではなかなか稽古の時間は取れないもの。今日も早朝稽古をした後は時間がなかった。
あたりの地形が弓の稽古には適さない、狭く傾斜のきつい山岳地帯に入ってきたからだ。
固く凸凹な足場を登っては下り、下ってはまた登り。ずんずん溜まる下半身への疲労。

「はあああ・・・もうダメ・・・。」

案の定、一番に情けない声で音を上げたのはシャニーだ。
スタミナのない彼女はいつでも最初の元気が別人のようにバテてしまう。
今回も岩壁に腰をぶつけるようにもたれかかると、高い太陽を見上げながら首が折れてぽかんと口が上を向く。

「お前の威勢が良いのはいつも最初だけだな。」

だが、周りはまるで心配なんてしてくれない。あまりに日常的過ぎるからだ。
メルトからはだいたいどのくらい出発から時間が経ったか図るいいバロメータとさえ思われており、
死にそうな態度をとっていても、心配の欠片も見せずに横を素通りしていった。

「だって、こうも足元が悪い山道ばかりだと疲れちゃうよ。」

置いていかれないようにすぐに歩き出したシャニーだが、ずんと錘でも引いているかのようだ。
重力がいつもより強く感じて、後ろに引かれる体を何とか回復させようと、
腰を叩いたりふくらはぎを揉んだりを繰り返すが、まるで砂漠に水をまくかのようにすぐに効果がなくなってしまう。

「私もヘトヘトよ。あーあ、翼があればこんなとこひとッ飛びなのに。」

疲れているのはシャニーだけではなく、彼女の弱音が周りのガマンの糸を切ってしまう。
一度立ち止まって腰を回しながらまだはるか先の峠を見上げてため息をつくエルピス。
人間として生まれ変わって楽しい毎日だったが、今だけは翼が欲しくなった。

「全くだぜ。サラセンにもルケシオンにもこんな環境なかったからなぁ。」
「シャニーはともかくとしてお前達がこの程度で音を上げてどうする。」

彼女の愚痴にゲイルまで乗ってくるものだから、一行の歩みが止まってしまった。
距離感を察して見下ろしたメルトは、弱音を吐いて休憩をとろうとし始める若者達を許すことはなかった。
一番に彼らが動き出しそうな言葉をかけてハッパをかける。

「む・・・私、ぜーんぜん平気だもんね!」

案の定、単純な奴が一番に腰を上げるとのしのしと歩き出した。
さっきまで死にそうな顔をしていたくせに、負けん気だけは強いものだから扱いやすい。
彼女に触発されたのか、ゲイルもすぐに立ち上がって彼女の背中を追う。

「俺だってまだまだ全然いけるぜ!」

恋仲になる前はライバル同士だった二人。今でも些細な事、他人から見ればどうでもいいことでいちいち競う。
今回もさっきまでぐだぐだだった歩調は、何とか相手よりも速く歩こうとどんどんテンポを上げていく。
だが狭い山路である。横一線に並んだ二人は肩をぶつけ合いだした。

「ちょっと!人の前を塞がないでよ!」
「お前こそ俺の進路の前でトロトロ歩くなよな。」

予想通り、二人は目線が合うとまたまたどうでもいいことで競いを始めだす。
何とか先を行こうと相手の体の前に肩を入れては押し返されを繰り返し、
そのうち二人は立ち止まると正面を向いて火花を散らし始めた。

「何よ!やる気!」
「やってやろうじゃねーか!頂上まで競争だぞ!」

鼻を押し付けあうぐらいに顔を突き合わせて睨みを利かせる二人。
これが彼らにとってはケンカではなく、ただのじゃれあいと言うからまた変わったものである。

「おーし、言ったわね。足で私に勝てるとでも!?」

元々足の速さや機敏さは自信があったが、神界一の韋駄天であるエルピスの権能を受け継いだ身だ。
こんな鈍重な脳筋が勝負を挑むなんて片腹痛く、彼女は勝ち誇った笑みを浮かべた。

「へん、どうせお前は途中でバテてひいこら言うに決まってる。」
「じゃあやってやろうじゃない!私が勝ったら3回言う事聞いてよね!」

周りが呆れているのも気付かずに、どんどんヒートアップしていく二人。
互いの弱点を知っているから、あれこれ策をめぐらせてもう勝ったつもりでいる。

「じゃあ俺が勝ったら5回な。んじゃ、よーい。」
「待て、お前ら!無駄な体力を使うんじゃない!」

ゲイルが願い事をかさ増ししてくるものだから、頬を膨らせて反論しようとしたが
シャニーが声を上げるより先にゲイルが構えを取ってしまい、慌ててスタートダッシュを狙う。
だが、彼の掛け声ではない声が響いて、二人とも飛び出しかけて派手に転んでしまった。

「若いわね・・・彼らは。何!私だってまだ21よ!」

こんな腰に来る足場であれだけ元気にじゃれあえる二人が羨ましい。
腰をさすりながら見ているだけで疲れる連中にため息をついたエルピスだったが、
横からせせら笑う眼差しが飛んできて、すぐさま柳眉を釣り上げた。

「3,021歳ぐらいか?」
「・・・そこは突っ込まないの・・・。」

いつもは勝つ側のエルピスだが、ふっといつも通りの不敵な笑いを浴びせられてしまい、
珍しく反論に窮して目線を逸らす。やっぱりメルトには口では敵わない。
黙ってしまった彼女とは対照的に、黙らせなければならない連中は仕切り直しを図っている。

「・・・まったく、お前たちはいつでもお遊び気分だな。一体いくつだ。」

宿の中ならまだ大目に見るが、今は道中であり険しい山岳地帯だ。
体力を温存しておかなければいつ何があるか分からないというのに、相変わらず緊張感に欠けた幼稚な言動は見ていて呆れを超えて泣けてくる。
まだ彼らが14,5の子供ならわかるが、彼らはもういっぱしの成人なのに。

「え?俺二十歳。」
「私十八だよ!」

それが分かっていないらしく、聞かれた質問に素直に返す二人。
シャニーなんかは自身が十八であることを誇るかのように手をあげて満面の笑み。

「・・・どこまでも幸せな連中だ・・・。」

ここまで来ると、もう叱る気力さえ温存したくなるほど。だが、身動きが取れなくなってからでは遅い。
調子の狂う二人のテンポをため息で一掃すると先頭を歩いてペースを作る。

「ここら辺は夜になると冷える。今日中に麓まで降りねばならん、体力は下りの為に温存しておけ。」

山道で本当に大変なことは登る事よりも下る事だ。
今は陽が照って暑いが、夕方になればかなり冷え込むルセンの気候を知っているメルトは
若者達の先を考えない言動を後ろ目で戒めた。

「温存も何も、今でも結構腰に来てるんだがなぁ・・・。」

少しは反論でもしてくるかと思ったが、ゲイルが苦笑いし始めた。
どうにもシャニー相手となるとムキになってしまうが、すでに慣れない山道でヘトヘトだ。
顔を見合わせたシャニーも、さっきまでの火花が嘘かのように大人しい。

「・・・かけっこしなくてよかったよね、ホント。」

あのまま頂上までダッシュなんてしていたら、きっと1時間ぐらい充電しないと動けなかった。
時間的に日の入りまでそんな余裕はなく、寒さが苦手な彼女はまたしても表に出かけた自身の悪いくせを自身で叱る。

「あのままやってたらきっとぶっ倒れてるぜ・・・ん?」

反省しながら二人で大人しくペースを守って歩いていたときだった。
ふいにゲイルの歩調が鈍ったかと思うと、彼は進路から外れていくではないか。
茂みに下りていって改めて覗き込んだ彼は指を差しだした。

「なんか一杯物が落ちてるぜ、あっこらへん。」

小走りしてゲイルのいる場所まで滑り降りたシャニー。
相棒が指差す先を見てみれば、雑貨や薬品類が一杯転がっているではないか。
その量は中々で、露店でも開いているのかとさえ思うほど。

「ホントだ。追いはぎされたのかなぁ。」
「んー、というよりは何か荷物整理してそのまま棄ててったって感じに見えるな。」

追いはぎされた割には、あたりには雑貨以外何も転がっていないし
妙にきちんと並んでおかれているあたり、選んで棄てていったように見える。
近づいて屈みこむと、ヘルリクシャの瓶を拾い上げてみる。何とまだ未開封である。

「もったいないよね!こんないろいろ棄てるなんて、どこのブルジョアよ!
 こっちなんて明日の食費にだって苦戦してるって言うのに。」

買えばそれなりの額になるというのに、どれだけ捨ててあるのだろうか。
薬たちの前でしゃがんで見渡したシャニーが急に怒る出す。毎日1グロッドと戦っている彼女にとって
この光景はあてつけとも取れた。もちろん棄てた本人にとっては知ったことではないだろうが。

「俺達、何だか戦わなくてもいいものとまで必死に戦ってるよな・・・。」

本来自分達が戦わなくてはいけないのはアルトシャンのはずだが、
それよりも毎日の金策と少量の調達で必死にならなければならない今の生活は何だか悲しい。
無様な事に、シャニーは躊躇いもなしに棄てられた者達に手を伸ばして物色し始めている。

「これとか売れば結構な値打ちになりそうじゃん!棄ててあるならいただきっと!」

薬はいくらあっても足りることはない。消費期限を見てみればどれも近いものばかりで、
おそらくはこれが原因で棄てていったのだろうが、シャニーはお構いなし。
どんどんリュックサックに放り込んでいく。その手つきに躊躇いなど欠片もない。

「ふっ、さすが盗賊。手は早いな。」

メルトは軽く笑っているが、ゲイルもエルピスも渋い顔だ。
盗賊からは足を洗わせたかったゲイルにとっては、こんなところで盗賊魂を疼かせてほしくなかったし
やっていることがルケシオン一の盗賊と言うよりただのこそ泥で、盗賊の神の娘の行動してはあまりにしょぼい。

「棄てる神あれば拾う神ありって奴よ!」

そんな二人の気持ちなどまるで構うこともなく、シャニーは物色に目を輝かせる。
目の前にたくさんのグロッドが落ちているように見えて、稼ぎの乏しい今では宝の山だ。
台所事情が分かっているから、仕方なくゲイルも物色を手伝う。

「お!ステリクシャみっけ!」
「あー!ずるい!」

狙い目はヘルリクシャやマナリクシャだ。どちらも数を買うと結構値が張る一品。
二人で選別していた時だ。急にゲイルがつまみあげた瓶には入っていた黄色の液体にシャニーが思わず声を上げた。
疲れを一気に取ってくれるステリクシャはこの山道では救世主だ。

「見つけたモン勝ちってな!あー少しはスタミナを回復できそうだぜ。」

早速蓋をあけて口に運ぼうとするゲイル。
そんな彼を恨めしそうに見つめるシャニーだが、欲しい欲しい光線を浴びてもゲイルはお構いなし。
こんな疲れた時にあのすうっとした爽快感をを想像するだけで喉がうずうずする。

「待った!ゲイル!毒が入ってるかもしれない。私が鑑定するよ。」

いよいよゲイルが瓶の淵に口をつけて一気に流し込もうとした時だ。
突然閃いたシャニーは大きな声でゲイルを引き止めると、彼に手を差し出した。
もっともらしい事を口にしてゲイルから瓶を奪い取る。

「お、任せたぜ。って・・・おい!おいこら!」
「ぷはー!あー、生き返るうううう!」

素直に渡したゲイルだが、直後目の色を変えて追いかける。
だがすばしっこいシャニーは逃げながら一気飲みしてしまったではないか。
果実の酸味が利いた清々しい爽快感に喉が踊り、体中に括りつけられた錘が解けていくようで
気持ちよさそうに白い歯を見せながら快感を叫ぶ相棒に顔を真っ赤にするゲイル。

「このヤロ!全部呑んじまいやがって!頭出せ!」

まさかの裏切りにあったゲイルは我慢することなく飛び出してシャニーのポニーテイルを掴みにかかるが
スタミナを回復した彼女はまるで跳ねのようにかけだしてまるで追いつけない。
反省の欠片もない彼女はアカンベエをしながら走り回り、ゲイルは地団駄を踏むばかり。

「醜い争いだわ・・・。ああ、こんな子が私の後継者だなんて・・・。」

やっぱりやっていることが神の娘と言うにはあまりにもレベルが低すぎる。
そして後継者が後継者なら、その守護者も守護者で、エルピスは目の前の光景を信じたくなくて
思わず額に手を当てると目をつぶってそのまま倒れそうになった。

「わぁ!・・・て、何だか体が痺れてきた・・・。」

追いかけっこを始めた二人だが、やはり狭い道では逃げる方が分は悪い。
すぐに捕まって頭に拳骨を押し付けられて足元ばたつかせていたシャニーだが、
急に言葉のろれつが回らなくなってくると、ゲイルの腕の中で糸が切れたように座り込んでしまう。

「お、おい!マジかよ!大丈夫か!」
「うん・・・多分・・・。」

突然身を任せて虚ろな眼差しで遠くを見る相棒をがっしり抱き上げるゲイル。
先ほどまでの壊れたラジオの様に騒がしかった笑顔がまるで嘘のようにぐったりとする彼女は
ゲイルにもたれかかってようやくに立っていられるような状況。
何度も彼女の頬を叩いてやってようやくに目線が彼を向くが、全然大丈夫なはずがない。
もちろん一行が仰天したのは言うまでもなく、心配そうにゲイルの周りに集まってくる。

「ほら、背負ってやるから体貸せ。全くバカな奴だ!」

ぺたんと座り込んでしまいまるで動けなくなってしまった彼女にすぐに背を向けた。
こんな状態で夜冷える峠に野宿するわけにはいかず、背負って歩き出す。
いくら筋骨隆々のゲイルでもこの状態では相当堪えるらしく息が荒い。

「落ちているものを飲食するなど野蛮人にもほどがある。全く、度し難い。
 ゲイル、シャニーを背負っての下りは負担が大きいだろう。少し甘いものをとれ。」

早速メルトから説教が飛んでくるが、それに頬を膨らせる余裕さえない様子だ。
ゲイルとメルトで交代で彼女を背負っていくことにするが、まだまだ先は長く
やむを得ずメルトはゲイルに小休憩を提案したが、その途端あがる手。

「あー、私も食べたい。」

さっきまで死にそうに蒼い顔をしていたはずが、甘いものと聞いた途端これだ。
ピンときたメルトはすぐに彼女の手を下させて背を向けてしまった。

「お前は体調を崩しているのだから何も食べない方が良いだろう。」

恨めしそうに指をくわえる彼女の目の前で、メルトはカバンから甘菓子を取り出した。
ますます目線が釘付けになり、その視線をメルトも感じるが無視してゲイルに手渡す。
その時だ。辛抱できなくなったのかシャニーが手を伸ばしてきた。

「あ、もう治ってきたみたいだからさ。ほら、もうこんな感じに。」

微妙に届かない距離に、シャニーはついにゲイルの背から飛び降りて見せると
そのステップのままメルトの手から甘菓子を取り上げてそのまま口へと運ぶ。
実においしそうに菓子をほおばる顔をメルトはため息をついて呆れるばかり。

「シャニー!こいつ!ズルしようとしたな!」

ところが呆れるでは済まない人物がいた。そう、ずっと背負っていたゲイルである。
彼はようやくに彼女が仮病を使ったことを察すると顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。
おいしく菓子を食べていたシャニーは喉に詰まりそうになって目を白黒。

「げっ、い、いやそんなことないよ!あ、腰の頭痛が激しくなってきた・・・。」
「うるせえ!頭出せこのヤロウ!」

あっさりばれてしまい何とか取り繕うとするが、すればするほどゲイルの怒りを煽るだけ。
噴火したゲイルはすぐさまシャニーに手を伸ばし、彼女も捕まったら命がないと逃げ出していく。
あっという間に二人の姿は小さくなっていき、メルトは現実を拒否するかのように額に手をやった。

「・・・結局走って行きおって。バテなければいいのだがな。」

メルトの不安は今回も残念ながら的中してしまうことになる。
その夜、何とか麓の村までたどり着いた一行だったが、最後はシャニーもゲイルもゾンビが歩くかのように全くの無言だった。
宿に着いた途端、二人は風呂を浴びるとそのままベッドに倒れこみ、朝までぴくりともしなかった。
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