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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter16 SoulFull Bridge

14話:狭き依り代

 ←13話:隠匿の賢者 →15話:SoulFull Bridge
 世間の寒風など、毎日灼熱の太陽が叫び熱砂が吹き荒れるこの黄金の町サラセンには無縁である。
全てを干上がらせる眩しすぎる光から逃れるように町外れに造られた小さな庵では、今日もマヴガフがくつろいでいた。
上着を脱ぎ、カマーベストを緩めた彼は椅子にもたれかかってサラセン特産の香り高い茶に鼻を躍らせる。

「マヴガフー、もうちょっと力を戻してくれよー。これじゃさすがにやり辛いぜ。」

その時だ、ふらふらとした足取りで庵の入り口に手をかけてぐったりと泣き言を口にしながら入ってくる少女の姿。
何とそれはフェアリーゼ。彼女は先のスオミでの一戦でマヴガフに殺されたのではなかったのか。
あの一戦の影響か、以前とは別人のようにまとうマナは弱々しく、逆上せた頭に氷を載せてその場でへばる。

「ダメですよ、あなたが集めた力は全てダイモニオン・エムブレムの中です。ハデス神への捧げものですからね。」

腰にしっかりと固定してある漆黒の魔道書を指差しながら
いつも通りの柔和な笑みを浮かべて彼女の要求はサッパリと却下しながらも、
右腕の帰還を歓迎して冷たいお茶を入れてやる。

「だけどよう!こんな状態じゃ敵に襲われたって護身で精一杯なんだぜ?」

いい音を立てて注がれるお茶。だがフェアリーゼはのん気にお茶を楽しむ余裕などなかった。
そんな彼女を黙らすように差し出された茶を一気に飲み干すと、
彼女は座り込んだまま懇願するようにマヴガフを見上げて眉をひそめる。

「それでいいじゃないですか。あなたの輪廻転生は力の全てとの引き換えが契約だったはず。
 まだ魔術師としての最低限の力を残してあげただけでも感謝して欲しいんですけどネェ。」

せっかくの香り高いお茶を楽しむこともなく腑に落としてしまった彼女に、
目を狐のように細くしながら口元をへの字に曲げる。全く人間というものは欲しがりである。
命だけはと叫ぶから、冥界から復活させてやったというのに。

「くそっ、そこらのカスに手こずるなんてムカつくぜ。」

手先にマナを集めてみる。前のような鋭く巨大な氷結の槍をこしらえることは出来ず、
生まれたのはサラセンの熱波で今にもでろでろと解けてしまいそうな貧弱な氷の針。
今まで邪険出来た連中をまくことで精一杯の今の力に苛立ち、自らで氷を握り砕く。

「神の慈悲に感謝する事ですネ。ヴェルフェゴルまで上り詰めたあなただからこそ、
 あんな失態をさらしても神はお許しになったのですから。普通なら・・・ケルベロスのエサですよ?ヒヒヒッ。」

善神共の手下に敗北を喫するなど、それは悪神に仕える者にとっては背信そのもの。
両手を広げながら彼女がさらした失態を改めて突きつけてやりながら、
ふい柔和な笑みがギロリと黄金に光り、背筋が凍りついた彼女は鋭い眼光に切り刻まれるかのような錯覚に陥る。

「ぐ・・・あんな腐れ犬のエサなんてごめんだぜ。ちくしょう、絶対に取り戻してやる!」

ケルベロスとは、ゲヘナ監獄で投獄されている善の連中を監視する双頭の犬神である。
獰猛で主の命があれば相手の形がなくなるまで噛み砕き続けるという。
仮にも神界第三位まで上り詰めた身。そんな惨めな最期など絶対に認められずに拳を地面に叩き着けた。

「おほっ、いい心構えです事。ま、あなたの仕事は諜報ですし、そんなに戦闘力は必要ないでしょ?」

興奮する彼女に大事なカップを壊される前にさっと取り上げて、
もう一杯冷たいお茶を注ぐと頭を冷やさせる。彼女から力を奪った理由は、彼女の仕事柄もある。
任務は諜報であり戦闘ではない。それが分からず濁った水を掻き回せば、面倒な連中が騒ぎだしてしまう。

「それより、その本業のほうはどうなっているのですか?
 力が失われて上手く進んでいないとか、そんなことはないですよね?」

釘を刺すようにして、諜報活動の成果を聞き出し始める。こんな狭く暑い場所もそろそろお暇したいもの。
だが、次の行動が決まらないうちは下手な行動は取れない。
大事な3つの鍵が全て揃わなければ、最高のショーを催すことは出来ないのだ。

「そりゃもちろんだぜ、この氷結のサキュバスを舐めてもらっちゃ困るぜ。」

喧嘩っ早いのが玉に瑕だが、仕事は出来るフェアリーゼ。
今回も得意げに二つ名をかざしながら一つ胸を拳で打つと白い歯をみせて笑って見せた。
だが、力を失った表れか以前の派手な衣装はなく、ローブに身を包む彼女は明らかに二つ名に負けている。

「あ~、そうでしたネェ、そんな別名もありましたっけ。あれ~、魔力がなくなったら妖艶さも失われたような?」

人のいい笑顔のままで饒舌に載せてぐさりと彼女の心へ一撃を見舞ってやれば、
一気に笑顔が引きつって自身を見下ろすフェアリーゼ。みすぼらしい今の自分に悔しさを顕にして
ローブをあとがつくほど強く握り締めている。この様子なら、下手な行動はもうとらないだろう。

「ま、そんなことはどうでもいいことでしたね~。んーで?残りの封印石の調査はどーなったんですか?」

不安がる彼女から突き刺したナイフを引き抜くかのように一方的に話を引き戻すと、
マヴガフはその黄金の蛇眼で彼女を見下ろしながら本題へと入った。
一刻も早く世界中に散らばる封印を解き、ダイモニン・エムブレムの真の力を復活させねばならない。

「とりあえず、サラセンの封印石の場所は正確な位置が分かったぜ。町の北東だ。」

封印を解いて悪神界とこの世界を繋ぎ、憎悪や憤怒をいくらも供給できる体勢を整えれば、
ダイモニン・エムブレムは無限の力を引き出す最強の魔道書としての力を取り戻す。その鍵のひとつがサラセンにある。
フェアリーゼはその在り処を探るべく地道な諜報活動を続けてきたのだった。

「ん~、ここは神殿じゃないですか。なーるほど、あんなたいそうなつくりの神殿を作って・・・。
 ただの汗臭い修行場かと思いましたが、やはり意味があったわけですねぇ・・・。」

いくら武の総本山とは言っても、貧しい町のつくりからは明らかに不釣合いな立派な神殿。
普段は修行僧達が稽古の場として用いている場所ではあるが、
彼らでさえも知らない神殿奥には、その存在の本当の意味が隠されていた。

「だけど、ここの神殿はヤアンの部下の連中の警備はすげーんだ。まるで入れそうにねえよ。」

蛇のように舌なめずりしながらまた一歩近づいた至高の憧憬を描き、野心に口元をニヤつかせる。
だが、そんな主に言い出しづらそうにフェアリーゼは侵入の難しさを口にし、マヴガフの笑みが止まる。
想定済みのこととは言え、どこまでも面倒な相手に手を頭の後ろへやりながら、また目を細くしながら眉をひそめる。

「おやおや、諜報員なら侵入路くらい探ってきて欲しいモンなんですが・・・
 まぁヤアンじゃなかなかアナタではキビシイでしょうかネェ。」

以前人の命を貪って存えていた連中だ。命を奪われ、悪神界で怒り叫ぶ連中の声が聞こえないはずがない。
ヤアンたちが封印の存在に気づいていることは大方予想通りだが、これはひとつ思案せねばなるまい。
邪魔者がいるのといないのとでは大きな違いだ。
例えそれが、殺すだけなら赤子の手をひねるほど容易い相手だとしても。

「心配する必要はありませんよ。守りが堅いなら、それを崩す方法を考えればいいのです。」

あまりにも気楽に構えて笑いかけてくるのだが、フェアリーゼも一緒にというわけにはいかない。
案を考えろと暗に言われているようなもので、口では言うのも簡単だが現場を見てきた彼女にとっては
一体どうすれば良いのかまるで分からない。他の町と違い、崩しやすい場所がないのだ。

「あたしもそれを考えたよ!町の連中から情報を聞き出そうとしたんだけどよ、
 あいつらヤアンの味方らしくてどうにもやりづれえ。」

普通なら、今の体制に不満を持つ連中が少なからずどの町にもいたもの。
そこからじわりじわりと攻めて崩していくというのが常套手段だが、サラセンはそれがないのだ。
突然異界より現れた新参者、おまけに町のトップを奪い取ったヤアンだ。他の町より攻めやすいはずなのに。

「住民を盾にするなんて、イヤァなんとおっかないマフィアなんでしょうかねえ。
 ・・・修羅の分際でセイギノミカタごっこなんてして、マァキタナイキタナイ!ヒャハハッ。」

頭を手で抑えながら、それでも止まらない侮蔑を堪えきれず叫ぶマヴガウ。
これだから偽善者というものは嫌いだ。己に仮面を被り、偽りの光をかざし人間を操る。
やっていることは悪そのもののクセに、セイギと言う言葉は実に便利なものである。

「ま・・・大丈夫ですよ。彼らの警戒は私らが崩さずとも・・・他のおバカさん達が崩してくれますよ。」

全く偽善者どもは滑稽で、芝居でも打っているかのようである。
自身のセイギを主張するあまりに、他のセイギを侵して均衡を崩しているとも知らず。
自分しか見えていない小さな人間如きが世界を見つめるなど、端から無理だというのに。

「他のばか??シャニーたちのことか?」
「もしかしたらヤアン自身かもしれませんネェ!ウッハッハー、しがらみに囚われてもがく様、堪りませんネェ!ヒヒヒッ。」

素直になればいいものを、自身を偽って見せかけの善を歩み続ける愚かな男。
どれだけ自身を戒めようと、それは縛っているだけで魂が変わったわけではない。
湧き上がる衝動を自ら締め上げて葛藤するなど、これも修行とでもあの体躯が資本の連中なら平気で口にしそうだ。
・・・クサイクサイ。これだからこの世界は全てが嘘だと言うのである。

「と、まあそんな感じです。焦らずに攻めていきましょうってことで。ルケシオンの方はどうですか?」

今は場所さえ分かればそれでいい。機会はこちらから攻めずとも勝手にやってくる。
何と滑稽か。均衡を守ろうと戦う者たちが、自ら均衡を崩しに来てくれるのだ。
それより問題な拠点が他にもいくつかある。そちらの方がむしろ今は気がかりだった。

「ルケシオンはもうちょっと待ってくれ。この魔力じゃ移動もままならねえ。」

へとへとになって帰ってきたが、今の魔力ではサラセン内を移動するだけでも精一杯。
街の間を何度も移動するなんてとても無理だった。もはや魔術師と名乗れるレベルではなく
彼女は悔しそうに唇を噛むが、マヴガフは口をへの字に曲げた。

「ふ~む、次はいい情報を期待していますよ。焦ってはいけませんが・・・急がなくてはいけませんからね。」

ルケシオンはシャニーが居なくなった今でも忌々しい希望のマナが包み、下手に手出しができなかった。
と言うのも、地元の人間たちが彼女と培った希望のマナを今も絶やさず抱いているからだ。
何とか連中を町の外に引きずり出す機会を作らねばならず、彼は情報に飢えていた。

「そうなのか?暗黒神の復活が近づいているのか?」

声質は軽いはずのマヴガフが放つ重みのある言葉にフェアリーゼの表情が変わる。
今迄ハデスによる救世だけを望み、全てを捧げて来た。
その瞬間が近づいていると思うと、疲れた体にも気力がみなぎってくる。

「そういうことです。もう少しで錬金術の方はカタが突きそうですのでね~。」

ハデス復活の一つの鍵である創造の錬金術。シャニー達の襲撃から守った情報を集結させ
彼らはいよいよ最終段階へと差し掛かっていた。想像するだけでも口元が吊り上る。
神の憑代、全てを凌駕し、あらゆるものを破壊し尽くすことが出来る圧倒的な力がもうすぐ手に入る。

「イヤァ、帝国の科学力っていうのもホントすごいですよ。ヒヒヒッ、さすがサイセンタンってヤツですネェ、クククッ」

欲望にまみれた人間どもは大好きだった。分かりやすくていいし、何より一番操りやすい。
バカな連中は諦めることもなく、今もせっせとシャニーたちに破壊された技術を復元しようとしている。
マヴガフの仕掛けた神界のマナがなければ、何度実験しようが結果は同じとも知らずに、
今も時代の先駆けを担っていると勘違いした連中のやることなすこと全てが滑稽で仕方ない。
既に時代の最先端は、終焉と言うフィナーレに向けて動き出しているというのに。

「カタがつくって、また誰か人間を作るのか?」
「ノンノン。神の憑代ですよ。それで済むんならあのアンドラスって人形をとっくに使ってますって。」

フェアリーゼでさえも、マヴガフが何をしようとしているのかは知らなかった。
知ろうと思っても、これだけは頑なに彼は教えようとはせずにいつもはぐらかすだけ。
今回も話の外枠は見せてくれても、核心はしっかりと囲い込んで見せてくれない。
それはまさに、いつも彼が帽子の下で殺気に満ちた黄金を隠すかのように。

「あれ、でもあいつに暗黒神を降臨させたんじゃなかったのか?」

アンドラスにハデスのマナが半身宿っていることは知っている。
これも彼女をハデスの憑代にするための一環だと思っていたフェアリーゼだが、
マヴガフは両手を広げながら苦笑いして見せた。誰が欠陥品などを好んで憑代にするものか。

「あんなの仮置き用の入れ物ですよ。
 ま、ハデス神が復活した時ゴミ箱行か道具になるかは本人次第ですがね~。」

空っぽな人形で使いやすかったのだが最近では妙に入れ知恵されて煩くなりつつある。
だが、それでもまだまだ彼女には他の誰よりも利用価値があるというもの。
事が済むまでは骨の髄まで役に立ってもらうつもりで、彼は便利な道具の健闘を祈ってやる。

「人間のような小さな器に押し込んじゃあ窮屈で堪りませんよ。
 丁寧に扱わないと体が壊れちゃわないか心配になりますし、そうなるともう狭くて窮屈でまるで檻も同然ですからネェ・・・。」

依り代というからには自由に動かせなくては困る。
体のことを心配してやりたいことが出来ないのでは封印されているも同じなのだ。
だからこそ、彼は創造の錬金術に頼ることにした。
マナへの強度、そして肉体的な強度、その二つを同時に可能とするために。

「へえ、何かよくわからねえけど、すげえのができそうなのか?」

まるで創造の錬金術とは絡んでいないフェアリーゼにとっては、
マヴガフのこの今にも叫びだしそうな笑顔の理由がイマイチ分からずに首を傾げている。
ただ分かるのは、主のご機嫌からそれなり作戦が上手く行っている事だけ。

「・・・ま、そう考えて置いてくださいよ。ハデス神が自由に動くことが出来る体・・・それがもうすぐで完成します。」

これ以上話す必要はない。ハデス復活の儀式は自分ひとりで行うつもりだからだ。
圧倒的な力が手に入るその瞬間を思い描けば描くほど、黄金の蛇眼が切れ上がりぎらついていく。
その瞬間、この嘘だらけの偽りの楽園は終わりを迎えるのだ。敗北、この世界にはそれしか許されない。

「その為にも!ハデス神の封印を解く必要があるのですよ。アナタの仕事は責任重大です、分かりましたかねえ?」

要らぬ詮索をする暇があれば諜報を進めて欲しいもの。
いつまでも地面にぺたんと座り込んだままのフェアリーゼを睨むように見下ろしてやると、
ようやくに立ち上がった彼女は拳をぐっと握り締めた。

「もちろんだ、早くハデス神に復活してもらって、この腐った世界をぶっ壊してもらおうぜ。」

大分長く休憩できたおかげでマナも戻ってきた。これならまた働ける。
崇める神のために仕事が出来る喜びを見せ付けるかのように、彼女は身の周りにマナを張り巡らせて
庵の外から見える外の世界を憎悪で睨みつけた。

「ええ・・・。じゃ、早速ルケシオンへ調査に行ってくださいよ。私も錬金術のほうを確認しますので。」

殺気をふっと消していつも通りの柔和な笑みを見せてやると、
ひとつ頷いてウィザードゲートを唱えたフェアリーゼは彼の前から姿を消した。
後を追うように歩き出して庵の外を額に庇を作りながら見上げてみる。
今日も偽りの光が我が物顔にギンギン輝いている。

「・・・にしても、ホント狭いですねえ。窮屈でイライラしちゃいますよ。もうちょっと広く作れなかったんですかねえ。」

この忌々しい光ももうすぐ死を迎える。殺意に満ちた目でひとつ睨んだ彼は庵に戻り
フェアリーゼが飲みっぱなしにしたティーカップを片付けながらぼやきだした。
こんな狭い中で機会をうかがわなければならないとは、どうにもいらだたしい。

「さっさとしてくれよ、こんな狭いトコでえっちらおっちら・・・やってられネェからヨォ。」

まどろっこしい、実にまどろっこしい。最初にちゃんと作っておけば今頃全て終わっているものを。
ひとつ舌打をしたマヴガフはルアスの方角を睨むように見つめてひとつ文句を口にした。
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