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 ←9話:ダイモニオン・エムブレム →11話:カミユの逆襲
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter17 悲壮なる叫び

10話:制圧の善

 ←9話:ダイモニオン・エムブレム →11話:カミユの逆襲
 エルピスがマヴガフからおぞましいほどの攻撃を受けていた時、
アンドラスの振り下ろした剣がシャニーの髪を宙に散らせていた。執拗な攻撃を前に、ただ逃げるだけ。

「くそっ、どうしても戦うというのか!人々のことを考えているなら、こんなことしていられないはずなのに!」
「何度も言わせるな。お前を消す事こそが民を守ることになる!」

同じ民を守りたいという想いを抱きながらどうして戦わなければならないのか。
必死に停戦を訴えるシャニーの声を、また剣が切り裂いてくる。
それでも彼女は諦めることなくアンドラスに訴え続けた。

「アルトシャンは地方を制圧してる!なぜなんだ!民は悲しんでいることが何故分からない!」

今までスオミも、ミルレスも、帝国の制圧に深く悲しみ傷ついていた。
創り上げてきた大事なものを破壊し、愛する者を傷つけて。
それが世界のためになるだなんて、一体何を見ているのか信じられず口調は厳しくなるばかり。

「父上はその先を見据えられておられるのだ。目の前の見せ掛けの光に惑わされずにな。」

民の悲しみを聞かされると、アンドラスの剣もその勢いを失いかけた。
だが、再び取り戻された眼力がまっすぐにシャニーの瞳を睨み付ける。
諸悪の根源、これを倒すことさえできれば、もうこれ以上民が悲しまなくて済むのだ。

「ならもう一つ聞く!どうしてアスクはネクロ教なんかと手を結んでいる!」

民の為、その大義名分があるならば短剣を置く準備があった。
だがどうしても解せない事、それをアンドラスにぶつけにかかるシャニーの眼差しは鋭い。
民に絶望と苦しみを与えるネクロ教、いやマヴガフを帝国自らがなぜ取り込んでいるのか。
言っている事とやっていることが真逆ではないか。

「それは・・・。それは私にも分からない。だが父上には何かお考えをお持ちに違いない。」

― 答えろ。
剣から逃げながらも、瞳だけは決して逃げることなく叫んでくるシャニー。
彼女の眼光鋭さは、まるでダガーで斬りつけられたかのようでアンドラスの動きが止まる。
俯いた彼女の様子にシャニーは確信した。やはり彼女は、帝国でありながら、帝国に染まりきってはいないと。

「ネクロ教はハデスを復活させようとしている!アルトシャンの見据える未来はハデスが支配するのか!」

彼女は戦うべきではなく、むしろ民のために手を取り合えるはず。
そう信じて、彼女はアルトシャンの施政が向かう先がいかに恐ろしいかを訴えかけた。
このままアルトシャンを、マヴガフを放っておけば世界がハデスに破壊されてしまうのだ。

「そんなことはありえない!父上はいつでも民のことを思っておられる。愚弄は許さん!」

一度、悪神の姿を、その力を見た彼女の口調は鬼気迫るものだった。
ところが、父の名前が出た途端、アンドラスの柳眉が切れ上がり、刀身に宿したマナを浴びせて黙らせる。
それでもシャニーは引き下がることはなく、逆にアンドラスの剣を指差して怒りを顕にした。

「じゃあそのお前の右腕に燃え上がる紫紺のマナは何だ!帝国がハデスと手を組んでいる証拠じゃないか!」

光を振りまくなら何も言わない。だが、ハデスのマナを振るい、破壊と混沌で世界を支配など
同じ光のマナを操るものとして許しては置けなかった。
だが、アンドラスは自身の腕に燃え上がる紫紺を見下ろすと、怒りを前にふっと笑って見せたではないか。

「違うな。これは私が手に入れた力。お前を倒し、民を守る為にな!」

目を見開くシャニー。アンドラスの顔は、とても冗談を言っているようには思えない。
おまけに自ら望んで手に入れたというのである。危機感に胸が締め付けられる。これ以上、ネクロ教の好き放題を許せば、
ハデスのマナはアンドラスの腕だけに留まらず帝国中に、そして世界中を侵食することになる。

「それは本当なのか?本当に民を守る為にお前はその力を使っているというのか?」

ハデスのマナがこの世界に存在していること自体が恐ろしい事実だと思ってきた。
だが、アンドラスは民を守ると言っているのだ。にわかには信じられないが嘘だとも言い切れない。
ますます短剣を抜けなくなって、彼女はにじり寄るアンドラスに問いかけ続けた。

「そうだ。私の存在価値は民を守る剣となること。たとえ相手が神や熾天使であろうと、私は退かない!」

彼女が嘘を言っているとはシャニーには思えなかった。
目をみればその人が言っていることが真か出任せか、すぐに分かる。
今のアンドラスの瞳からは怒りが溢れ出しているが、野心はまるで感じられない。
だが分からなかった。ここまで純に民を思いながらも彼女の瞳に湧きあがり濁らせる怒りの正体が。

「なら、やはりあなたと戦うわけには行かない。くっ!」

理由は分からない。だが、剣を向けるわけには行かなかった。
分かるまで話し合いたい、話し合って手を取り合わなければならない。
全てはハデスから民を守る為。その思いが迫り来る剣を前にして本能的に自衛に伸びる手を短剣から遠ざけた。

「どうした、避けてばかりでは勝てないぞ!お前の覚悟というのはその程度なのか!」

アンドラスとて、今回はシャニーを殺そうと思って剣を振るっているわけではなかった。
父やマヴガフが言うような世界を破滅に導く力なのか、それともイスピザードやセイン、そしてレイが言うように
民を守る力なのか、その力の向かう先を見たくて決闘を挑んだのだが、
逃げ回るだけでまるで力を見せてこないシャニーに苛立ちを隠せずにいた。

「覚悟を決めているからっ、あなたとは戦えないんだ!
 ハデスを、マヴガフを止める為に手を取り合わなければならないはず!」

振りぬかれた剣の鋒がまた頬を掠める。
右にも、左にも赤い筋を作りながらもそれでも彼女は後方に飛び跳ねて距離を開けると
再びアンドラスの瞳をじっと見つめながら、力強く想いを叫んでアンドラスの剣が下を向くことだけを願った。

「幻滅した・・・。こんな奴が私を影に沈めているなど・・・認めない!認めないぞ!」

確かに一度は彼女の剣も下を向いた。
しかし、その鋒は間を置くことなく震えだして、きっと切れ上がった眼光が突き刺したかと思うと
まっすぐに剣もまたシャニーの眉間に向けて衝き向けられていた。

「死にたくなければ全力で来い!選択肢は二つだけだ!斬るか、斬られるか!逃げ場はない!」

心を引き裂かれるような高い声が辺りに響き渡り、シャニーの祈りを木っ端微塵に打ち砕いた。
どうあっても、アンドラスは戦うことを望み、まるで声は届かない。
迫り来る瞳、握り締められる剣。殺意が見る見る距離を縮めてきても、シャニーは微動だにしなかった。

「くっ?!」
「ふっ、我が剣から逃げられると思うな。次はかすり傷では済まさん。その首、引き裂いてくれる!」

振り下ろされた剣を避けた次の瞬間、下から振り上げられたもう一本の剣が鋭く迫る。
あまりに素早い連続攻撃、距離が近すぎる。とっさに機敏さを活かして避けにかかるが
鋭い痛みが首筋を襲った。手で触れてみれば、べっとり湿った感覚。

「こんなところで倒れるわけには行かないんだ、止めて!」

見下ろした手のひらを染める鮮血が、アンドラスの本気を物語っている。
だが、彼女は言葉通り休む間もなく武器を抜かないシャニーを斬りつけ続け、
ついに辛抱しかねたシャニーはマナを手先に集めると手刀で相手の柄を打って退けた。

「私のマナを受け止めるとは・・・。さすがだな、言う事はない。だがこれからだ!」

思わぬ反撃を受けて一度は猛進を止めるアンドラス。
だが、その口元がふっと嬉しそうに上を向いた。やはり、力は持っている。
力がないゆえに逃げているわけではない事を悟った彼女は、再び襲い掛かる。力の全てをみせてみよ、と。

「どうして!どうしてっ、戦う必要があるの!止めるべき相手は同じはずなのに!」

それでもシャニーのとる行動は何も変わらなかった。
ただ避け、逃げるだけ。避けきれないと察すればやむを得ず手刀で弾く。
光と闇のマナがぶつかりあい、ただの打ち合いだけであたりの古木が耐え切れず倒れていく。

(なんなんだ・・・このマナは。私と同じ・・・だけどこのマナは・・・。)

打ち合いが続く中、一方的に攻めているはずのアンドラスのほうが焦っていた。
自分はシャニーのホムンクルス。扱うマナは同じはずだ。
なのに、何かが違うのである。自分のマナと、相手のマナ、似ていながらまるで真逆とさえ思える流れ。

「やめて、アンドラス!お願いだからネクロ教を止めて!あなたの言葉ならアルトシャンだって無視できないはず!」

一方のシャニーは、剣をどれだけ浴びせられてもまるで姿勢を変える事はなかった。
迫り来る剣に髪が舞う。もう切り傷もいくらできたことだろうか。
それでも彼女は叫び続けた。傷つけてはいけない、手を取り合うべき相手と信じて。

「黙れ!国賊の言葉など誰が信用するものか!」

だが、アンドラスとてシャニーの言葉にまだ耳を貸す訳にはいかなかった。
彼女は見せてくれいないからだ。彼女が熾天使で、自分が影。その優劣を決定付ける圧倒的な力を。
言葉だけなら達者な者は帝国内でもいくらもいる。未来を切り開く神界の力を見たかったのだ。

「あなたの言葉が本当なら、きっとアルトシャンはネクロ教に騙されているんだ!」

アルトシャンは世界のあるべきを求める為、命を狙っているそう面と向かって言ってきた。
あの時は何を言われているのかよく分からなかったが、ネクロ教の存在が全てを線で繋げてくれた。
マヴガフは、ハデス復活のために全てを利用しようとしているに違いなかった。
だが、口にしてから彼女は後悔した。そしてその後悔は現実のものとなる。

「黙れ黙れ!父上の侮辱は許さん!死ね!」
「きゃあ?!ぐあっ?!」

父が神であるアンドラスの前でアルトシャンのことを口にしてはいけなかった。
それまでの戦乙女としての顔は、見る見るうちに眉間にしわが寄ってまるで鬼のように眼光が切れ上がる。
怒りを貪るハデスのマナが刀身に爆ぜ、振り下ろされた渾身にシャニーの手刀は弾き飛ばされ
まるで木の葉のように宙を飛んだシャニーの体は、古木に叩きつけられてボールのように跳ね飛んだ。
何とか顔を起すが、目の前に鋭い鋒が突き刺さる。

「ふふ、ここでお前は我が剣の前に沈み、私が私としてようやく生きていける。悪く思うな。」

逃がしはしないと、既にアンドラスが目の前に立っていた。
だが、剣は彼女を貫くことなく地面に刺さったまま相手を待ち、その目は無言ながらに力強くシャニーへ命じている。
― 立て。立って力を見せろ。

「お前はいいな、記憶が消えて。私はお前の記憶まで刻み込まれ、見なくてもいい悪夢を見てきた!」

彼女の眼光が示す言葉を察してよろけながらも立ち上がったシャニーだが、
古木にたたきつけられたときにどうやら腕を痛めたらしい。
ずきずきと骨を押し分けて吹き出る痛みに顔しかめていると、アンドラスはその悲痛を笑い飛ばした。
そんなにわかの痛みなど、自身の味わってきた苦痛に比べれば傷と呼ぶことすらおこがましいと。

「?!そ、そんなことが・・・。それは・・・ごめん。」

言われた側にとっては信じられないものだった。
失ってしまい、ずっと追いかけ続けてきた記憶を、アンドラスは持っているというのだ。
確かに自分の記憶はアンドラスには不要で、むしろ恐ろしいものに違いない。
自分自身というアイデンティティを否定するのだから。

「謝って済む事か!お前の過去までどうして私が背負わなくてはならない!」

謝られるとますますに感情が波立って憎悪が煮え立ってくる。
一体彼女は何を謝ろうとしているのか、まるで分からないのだ。
何でも謝れば済むと思っているのか。・・・今更になって、同じことをしてきた自分を思い出して
そんな事を善だと思っていたことさえも彼女のせいに思えてきて怒声は唾が飛ぶほどにエスカレートしていった。

「だが・・・これからはしっかりと背負っていくつもりだ。私が熾天使として歩んでいくのだからな。」

静かに地面より引き抜かれる騎士剣。散々猶予はくれてやった。
刀身に再びハデスのマナを燃え上がらせると、鋒をシャニーへ向ける。
その眼差しは無言に告げる。もう、次はないと。

一方、セインを追い払ったゲイル達はシャニーを捜しに森の中を駈けていた。
いけども行けども闇、闇。だが、少しずつマナを遮る闇が薄らいでいることを誰もが感じていた。

「おいゲイル、今シャニーちゃん声がしなかったか?」

ふいに立ち止まったレイがゲイルを呼び、皆が立ち止まって足音を消すと耳を立てる。
間違いなく、今シャニーの悲鳴が聞えたのだがまた静寂が彼らを包んでしまった。
ゲイルも目線で周りを睨みながら、向かう先を慎重に確かめている。

「さっきから聞えてる。だけどどうも霞んでぼやけてるんだ。くそっ、妙なマナが遮りやがる。」

シャニーの悲鳴、そして自分の名を呼び、助けを求める声。
彼女とはぐれてしまった時からずっと、ずっと聞こえている。震えた声で自分の名を呼んでいる。
すぐにでも傍に言って抱きしめてやりたいのに、彼女の姿はぼやけ、振り向けば消え、
まるで鏡の部屋の中にでもいるかのようだった。

「アンドラスの声もする!いけない、二人は戦っているんだ!マヴガフめ!」

ついにレイにも愛する人の声が聞こえてしまった。
シャニーとアンドラスが一緒にいる・・・。今のアンドラスの状態で二人が接触しているとなれば
もう何が起こっているかは想像するまでもない。忌々しい顔が浮かぶ。
この時の為に暗躍し続けたあの悪魔の顔が。

「イア様・・・どうかこの汚れしマナを払い、真実を見定める目を与えたまえ・・・。」

とっさに杖を掲げたレイは神に祈りを捧げ、魔法陣に包まれる。
膨大なマナを魔法陣から白き聖光となって溢れ出すと、見る見る景色をゆがめていたマナを溶かしていくではないか。
魔法陣からのマナの開放が終わると、レイは糸が切れたかのようにその場に膝を突く。

「すごいわ・・・ハデスのマナが消えていく・・・。さすがイア様。よくやったわ、レイ。」

ゲイルに肩を借りてようやく立ち上がるレイにかけられた賞賛。
その声は男どもの声ではなく、誰もが辺りを見渡して仰天した。
はぐれたはずのエルピスがゆっくりこちらに向かってきていたのである。

「エルピス!無事だった・・・?!」

ほっと安堵して迎えてやろうとしたが、暗闇から現れたむごい有様に誰もがその目を疑った。
真っ赤に染まった金髪が痛々しい。彼女は傷だらけで流血が酷く、足元もふらついて木に身を預けていた。
レイをメルトに任せ、介抱しようと駆け寄るゲイル。

「お、おい!どうしたんだよ、大丈夫か!おい!」
「私のことはいい!その話は後でゆっくりするわ。今は彼女よ!」

伸びてきた優しい手を跳ね飛ばすと、エルピスはまっすぐに向こうを指差した。
何と言う事だろう、あれだけ探して見つからなかったシャニーの姿があんな近くに見えるではないか。
そして、彼女が向いている先を見れば、そこには剣を構える姫騎士の姿。最悪の想定が現実となっていた。

「!ゲイルッ、あそこだ!やはり二人は戦ってる!止めないと大変なことになるぞ!」
「言われなくたって分かってる!あのバカッ、あの様子だとまた甘い事やってやがる!」

指差した先に見えるシャニーの姿に叫ぶレイ。アンドラスは分かってくれなかったのだろうか。
ハデスのマナを宿した剣を振り下ろしている姿が見える。
駆け出して追いかけるゲイルも舌打して相棒の姿を睨んでいた。
ここからでも分かる。彼女が丸腰で、アンドラスからの攻撃を避けてばかりいる事を。
やろうとしていることは分かる。だが、あまりにも無茶な行動にゲイルは駈けながらただ祈るのみ。
自分立ちがたどり着くまで、頼むから持ちこたえてくれ、と。


「ぐはっ、くっ・・・。」

だが、シャニーの動きは明らかに最初に比べると鈍くなっていた。
痛めた腕を庇いながらの行動は自然と隙ができて被弾回数を増やしていた。
そしてまた直撃は免れたものの一撃を浴びて吹き飛ばされ、木に叩きつけられる。

「なぜだ、何故そこまでしてお前は私に鋒を向けてこない?お前のマナからはまるで戦意を感じないぞ?死にたいのか?」

口元から垂れてきた血を拭いながらにじり寄るアンドラスを見上げる。
その瞳には敵を前にした鋭い殺気はなくて、祈りを捧げてくるばかり。
もう何度も体を叩きつけられ相当ダメージを負っているはずで、アンドラスにはシャニーの行動が理解できなかった。

「あなたとは戦えない・・・。同じ・・・人々を愛し守ろうとしているのにどうして砕きあう必要がある?」

腹からせりあがってくる痛み。喉の奥からこみ上げてきてむせる。
もう口の周りは血まみれで、視界も霞んできている。これ以上攻撃を貰えば本気で危ない。
だが、戦ってはいけない相手。その答えに変わりはなく、訴え続ける声は弱々しい。

「お前に戦う意志がないのなら、私はこのままお前を屠るだけだ。お前は私にとって敵でしかないのだからな!」

そんなシャニーの一方的な祈りをアンドラスはばっさりと切り捨てた。
結局、彼女には民を守る力はないことが分かった。使えないのなら、持っていないのと同じだからだ。
ゆっくり鋒をシャニーの眉間に向けて突き出し、最終警告を叩き付ける。

「どうしても戦うというのか・・・。くっ・・・民のことを置き去りにしてまでも!自分の存在価値を守りたいか!」

たとえ体がぼろぼろで反撃する余力がなくても、その行動は恐怖とは映らなかった。
むしろ守りたい者達よりも己の存在価値を守りたいようにさえ見えて、
ついに彼女も抑えてきた怒りを堪えきれず真正面からぶつけてしまう。

「!黙れ!私の剣は民を守る剣!お前に愚弄される筋合はない!」

ビクッと体の芯から己が震え上がったのが分かって嫌気が差した。
だが、すぐに首を何度も横に振ると、目の前にまでたどり着いた闇の脱出口を見上げて啖呵を切る。
この女さえこの場で消せば、これまでの歪んだ世界は終わりを迎える。

「さぁその状態で我が最高奥義を受け止められるか!?死ね!!」

この一撃に全てをかけるつもりで、全身のマナを刀身へと集中させる。
霞む視界が燃え上がるハデスのマナ一色で染め上げられて、シャニーも回避行動をとろうと足に力を篭めるが
これまで散々ハデスのマナを浴び続けた影響か、痺れて上手く立ち上がれない。
この気を逃すかと言わんばかりに、駈けてきたアンドラスの渾身の一撃がシャニーを宙へと跳ね上げた。

「うああああっ?!うがあっ!」

とっさにマナで防護壁を体の周りに張り巡らせたが、直撃を許した騎士剣の重みが体にドシンと響く。
骨が砕かれたかと思うほどの激痛、身を焦がす悪神のマナに蝕まれ
なす術なく宙を錐揉みした彼女は打ち捨てられた人形のように木に叩きつけられてバウンドし、倒れこんだ。

「ああ・・・ゲイル・・・。」

手先を動かして立ち上がろうとするが、そこまでが限界だった。
顔をあげると、そこにはトドメを誘うとにじり寄ってくるアンドラスの姿。
もう体に感覚もなく、ついに目も開けていられなくなったシャニーはピクリとも動かなくなった。
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