FC2ブログ
現在の閲覧者数:

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←14話:打ち込まれた楔 →1話:白の仮面
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  • 【14話:打ち込まれた楔】へ
  • 【1話:白の仮面】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter17 悲壮なる叫び

15話:復讐の王

 ←14話:打ち込まれた楔 →1話:白の仮面
 その日の午後、城内は騒然としていた。珍客が城に現れたかと思うと、
彼は正門で制止を促した兵士を槍を振り回して威嚇し、荒々しい挨拶を済ませると
ずんずんとそのまま部下を引き連れて城のエントランスまで乗り込んできた。

「我は誇り高きインプの民ノカンが長、リステヒンなり!アスク帝国よ、我が要求を聞け!」

まるで礼儀など知ったことかと言わんばかりに、城の中で大声を張り上げる。
これには文官たちも恐々として部屋の中へと逃げ込んでしまい、
苛立ちを隠せないリステヒンはその場にいた新米兵士をとっ捕まえる。

「アルトシャン様!大変です!」
「やれやれ、セインの大変ですは聞き飽きたが・・・何事だ。」

いつも大げさに叫んで部屋に飛び込んでくるセイン。彼が帰ってきたのかと思わず兵士の顔を見て肩を落とす。
だがそこにいたのはセインの部隊に今年入ったばかりの新人だった。
上司の悪いところを早速真似てしまったらしい。帰ってきたら部下の指導を徹底するよう叱ってやらねば。
おどおどして初々しい騎士は、アルトシャンに厳しい眼差しを向けられて慌てて一礼しはじめている。

「ノカン王が総統にお会いしたいと・・・うわっ。」
「退け!」

頭を下げて緊張して声が震えながらも、新人はアルトシャンに事態を説明した。
だが、彼のしどろもどろな説明に苛立ったのか、横から彼は押し飛ばされて転んでしまう。
代わりに姿を現した野卑な眼光に、アルトシャンの眼差しが一気に鋭くなる。

「アルトシャン総統、シャニーを取り逃したらしいな。」

一礼する事もなくどかどかと団長室へと乗り込んできたリステヒンは、
アルトシャンの座る机の前まで来ると、机の上に手をついてアルトシャンを覗き込むように見つめる。
その顔は何が嬉しいのか、どこか口元が笑っておりどうにも神経を逆撫でる。

「リステヒン王、相変わらずだな。残念ながらその通りだ。」
「我らがあれほどに協力しながら仕留め漏らすとはな。」

今更隠す必要も無い事実であり、何より相手は一応盟を組んだ相手である。
代わりの策でも持ってきたかと思ったのだが、どうにもリステヒンの態度からするとそうでもないようだ。
彼はさも呆れたようにため息をつきながら、作戦の失敗を非難してくるばかりだ。
見る見るうちにアルトシャンの表情が険しくなり、顔も赤くなっていく。
まるでその反応を楽しんでいるのだろうか。リステヒンはますます顎を高く鼻で笑い始める。

「用件はそれだけか?アポも無く突然現れたかと思えば失礼な男だ。」

だが、彼からの挑発にそれ以上アルトシャンが乗ることは無かった。
この男がこうして敵地に得意顔で乗り込んでくるときの目的など一つしかない。
相手にしている暇などないといわんばかりに、彼は来客の前で書類処理を始めてしまう。

「失礼だと?ふふふ、それはお互い様だろう。お前達の為に我らも犠牲が出たと言うのに、手紙一つよこさないとはな。」

やはり、リステヒンがこの場に訪れた理由は今回も同じのようである。
自分達で生み出すことができない報いを他に転嫁して奪う事でその場を凌ぐやり方は相変わらずらしい。
早く仕事を終わらせて、娘の許へ行ってやりたい今、愚者の相手などしていられない。

「ああそれは申し訳なかったな。失策を穏便にしておいてやろうと思ったのだが。」

だがそれでも、この男ははっきり言わねば分からない男だ。
明言を避けたがる文官はそのせいでいつもリステヒンに都合よく解釈されて痛い目を見てきた。
何より、言われたままで済ますのも癪に障る。書類の処理を手際よく済ませながらチクリと言ってやった。

「失策だと?一体誰が失策をしたというのだ?」

思わぬ反撃が飛んできたことにリステヒンは機嫌を損ねたのか笑いが止まる。
怒りと疑念に見開かれ歪む目をアルトシャンへと向けて覗き込むように顔を近づけてきた。
どう転んでも邪魔にしかならない男に、今度はアルトシャンの口元に冷笑が浮かぶ。

「君たち以外に誰がいるというのだね?」

向けられた目線は蔑みと苛立ちをこれでもかと浴びせてくる。
一旦は想定外の反応にウッと身を退いたリステヒンだったが、その目はすぐに釣りあがり
爪鋭い指先をアルトシャンへ衝き向けて反論しにかかる。

「冗談も休み休み言え。我らは貴殿との盟約を果たした。
 マヴガフからも話が行っているはずだろう。忘れたとは言わせぬぞ。」

あの作戦ではマヴガフが帝国とノカンとの連絡役を取り持っていた。
彼からの連絡どおり、シャニーたちが領域内に侵入し、作戦を決行したのだ。
今更しらばくれても、あの時の通信の記録はしっかりととってある。こういう時のために。

「ああ、確かにマヴガフから貴殿らの作戦については聞いていた。だからこそ応援に向かったのだからな。」

アルトシャンもそのことについては否定もしなかった。
ならば何故、そう問いかけようとしたその時だった。ぎろりと睨みあげてくる眼差し。
言葉に詰まったリステヒンをそのまま押しやるように、アルトシャンは太く重い言葉で相手を威圧する。

「だからこそ分らぬのだよ。貴殿が一体何をしに来たのか。」

事実は認めながらも、作戦の成果については一切に認めようとしない。
分かっている。この場に来たということは、金を奪いに来たということぐらい彼も察しているのだろう。
だが、あまりの失礼な態度に、ついにリステヒンも辛抱しきれなくなった。

「ふざけるな!何事も対価というものが必要であることは分かっているはずだ。」
「対価・・・だと?」

机に拳を叩きつけてアルトシャンを恫喝しにかかるリステヒン。
帝国の作戦に協力する為に、どれだけ費やしたと思っているのだろうか。
ところが、アルトシャンのほうは倒れたペンを立て直しながら、怪訝そうな眼差しを相手に送るだけ。

「我らは貴様らが追うシャニーを捕える支援をしたのだぞ!」

自分達の成果をこれでもかと説明し始めるリステヒン。
だが、アルトシャンは先ほどよりますます聞いていないような態度で書類の処理をし始めた。
聞いているのかともう一度机を叩きつけると、ため息をつき出す始末だ。

「で、貴殿の言う対価とは具体的に何を指しているのだ?」
「貴殿ら帝国が奪い取った我らが土地を返していただこうか。」

ようやくに相手も折れたということだろうか。条件を探りに来た。
ここまで来ればしめたもの。この気を逃すかと言わんばかりの即答だった。
散々自分達から領地を奪い、急進してきた人間達の盛栄。
今回の奪還を皮切りに、少しずつでも彼らから取り返していくつもりだった。

「はっはっは!これはまた大きく出たものだな。」

アルトシャンが怒り出すことは必至で、交渉が難航することは想定内だった。
だが、予想に反して部屋に響き渡るアルトシャンの笑い声は明らかに蔑みに塗れている。
彼は書類にサインを終えると、どっかりと椅子に座りなおして机に両手を組み肘を突いた。

「貴殿は何か勘違いをしているようだな。むしろ私は情状を酌量し、罪状を問わぬつもりでいたものを。」
「罪状だと?!気が触れたか!」

全てが計画通りであった。いきなりノカン達を罰すれば、ノカン達と与していた事を民に知られることになる。
だが、ノカン達がまた強引な瀬戸際交渉を仕掛けてきた、というストーリーなら誰も疑いはしない。
元から、彼らなど使い棄てる予定だった。黙っていればまだしばらくは使ってやろうと思っていたが、
のこのこと、彼らは首を献上しに来てくれたわけだ。
そんな事などまるで知る由もないリステヒンは剣幕を鋭くするばかり。

「私がマヴガフから聞いていた貴殿らの作戦は、貴殿らでのシャニーの捕獲だった。
 我らは捕獲されたシャニーを引き取りに行くだけの予定だったのだ。それが着いてみたらどうだ。」

あの時も元々、ノカン達に抑えられる相手ではないと察し軍備を整えて出撃してはいた。
本体とぶつかる前に、シャニーがどの程度力を取り戻しているか測ろうとしたのだ。
いわば元から捨て駒の予定だったのだが、ものは言いようだ。

「貴殿らの作戦の失敗のおかげで、我らにも只ならぬ被害が出たのだぞ。むしろ賠償を要求しても良いくらいなのだがな。」

アルトシャンにとっても、ノカン達の被った被害というのはよい情報だった。
シャニーが力を取り戻しつつある・・・その情報を掴む事が出来たのだから。
尤も、アストレアを扱うまでに復活しつつあるとは想定外だったが。

「俺は捕えるとまでは言っていない!」

堪らず興奮に目を見開いて反論するリステヒンだが、アルトシャンは徐に机から何かを取り出した。
それは魔信器。錬金術の力を用いて遠隔に対話が出来るもので、あの時の作戦もこれを用いて行われた。
そのボタンを押すと、当時のマヴガフとの会話が再生されだし、蒼褪めるリステヒン。

「マヴガフは私の命として伝えたはずだ。捕えよと。その言葉は盟約の破棄と捉えていいのか?」

まさか切り札にしていた通信の記録が、自分の首を絞めることになるとは。
あの舐めるように絡みつく声は、しっかりと口にしていた。シャニーを捕えよと。
したり顔で笑うアルトシャンに、リステヒンは悔しさを吐き出した。

「それと語弊は正しておく。あの土地は元々誰のものでもなく、ゆえに奪い取ったものではない。我らが勝ち取ったのだ。」

リステヒンを黙らせると、アルトシャンはついに反撃に入る。
ノカン達が返せと叫んでいる土地は、特別実効支配を行っていたわけでもなくただ先住者がいなかっただけのこと。
そこに帝国が駐留軍を送り込んだだけに過ぎないのだ。

「だまし討ちにしたわけでも占領したわけでもなく、正式な国同士の力量差によって勝敗は決したのだ。
 弱者は淘汰される、それが世の常だ。逆恨みされては困るぞ、リステヒン王。」

非難を受ける筋はなく、これ以上話すことはないと視線を逸らすアルトシャン。
ギリっと歯を噛締めて反論しにかかろうとしたとき、若い騎士が部屋に入ってきて横からアルトシャンに話をはじめ、
彼は頷くとすっと席を立って剣を腰に差し出したではないか。

「対価と言うものは義務を果たして初めて要求できるものだ。次は良い知らせを手土産に顔を見せてくれる事を期待するぞ。」

どうやら何かの会議でもあるのだろうか。連絡に来た若い騎士に先導され部屋を出て行くアルトシャン。
彼は去り際にトドメを刺すとツカツカと廊下を歩いていき、あっという間にその音は曲がり角に消えた。
拳を握り締めていたリステヒンは部屋を飛び出し、憎き男が去った先を睨む。

「おのれ・・・おのれ!!」

怒りは頂点に達し、彼は拳で城の壁を渾身で何度も殴りつけた。
だが拳は硬き壁に負けて、白き壁には敗北の赤がべっとりとこびりつく。
それをじっと見つめていた彼はある覚悟を決め、口元がふいに崩れる。

「よかろう・・・我らノカン王国の威信にかけて勝ち取ってやろうではないか。はは、はははは・・・!」

もはや国同士の礼などと言う、下らない形式典範に囚われるなど馬鹿らしい。
帝国がその気であるならば、自分達もそれ相応の行動に出るまでである。不気味な高笑いを残し去る王。
一族の繁栄を願うその背中を、じっと見つめる男が物影から現れる。
蛇眼を帽子の下に隠し、口元に笑みを浮かべながら。
関連記事
スポンサーサイト



総もくじ 3kaku_s_L.png 当サイトの小説における登場人物たちのご紹介
総もくじ  3kaku_s_L.png 当サイトの小説における登場人物たちのご紹介
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【14話:打ち込まれた楔】へ
  • 【1話:白の仮面】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【14話:打ち込まれた楔】へ
  • 【1話:白の仮面】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。