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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter18 闇の騎士と光の天使

2話:ダークナイト

 ←1話:白の仮面 →3話:切り札
カミユたちがいなくなると、不気味なほどに静かになった。
スイートルームというのはどうやら本当のようで、見渡すとイカルスの碧空と大地を眺望できる最上階。
ここが軍事組織の基地などとはまるで想像できない。まさにどこかの城、王女の間。

「・・・。ゲイル・・・。」
「元気出しなさいよ、脱出のチャンスはきっと訪れるわ。」

だが、そんな広い部屋のベッドの上にうな垂れて腰掛けるシャニーには監獄も同然だった。
今も頭の中に浮かぶのは相棒のやさしい笑顔と、力強い腕が自分を包んでくれる感触。
思わず彼とおそろいのペンダントを握り締め、頬ずりしているとそこから姉貴分の声が聞こえてきた。

「シャニー、食事を持ってきた。ここに置いておくから好きに食うといい。」
「要らない。」

独りぼっちでいたならば、今頃寂しさと恐ろしさで泣いていたに違いない。
その震える心をエルピスが知ってなだめてくれる。友の存在に感謝しながら目じりを拭う彼女。
ふいに聞える扉を開ける音。ヴァンだ。数人の部下を連れてきたかつての友を睨むが、そんな事で動じる彼ではない。

「食べたくない気分だというのは分かるが、体に障る。もう何日お前は食事をとっていないと思っている。」
「うるさい!だったら私を解放しろ!トパーズを返せ!」

衛士たちが運んでくる料理は、捕虜に対するものとはとても思えない豪勢なもの。
やはりカミユの言っていたことは嘘ではないらしい。だが、だからこそ一層に腹が立つ。
再び彼女は龍の如き怒声でヴァンたちを威圧してベッドを拳で叩き着けた。

「それはカミユに言う事だな。オレがどうこうできる問題ではない事くらい分かるだろう。」

久しぶりに会ったが、ヴァンは相変わらずの性格である。
これだけの稲妻の如き怒りをぶつけられたというのに、何とあっさりしている事か。
彼は監視役として部屋に残り、壁にもたれながら腕を組んで目を瞑っている。

「ヴァン、何故あなたまで白の騎士団に所属しているの?
 あなたが所属しているってことは、根っからの悪党ではないかもしれない。けど、私たちの邪魔をどうしてするの?!」
「ふっ、キミはオレを買いかぶりすぎだな。」

2年前、共に戦いハデスから世界を守ったアビトレイト同士。
彼がいなかったら、今頃ハデスのマナに骨まで灰にされてこの世にいなかった。
そんな彼が今敵として立ちはだかっている。それでも何か意図があると信じるシャニーを、彼は鼻で笑った。

「敵にそんな風にすぐに心を許すからいつでも要らん危険を回避できないのさ。」

あのころから何も変わっていない彼女に敵の立場からさらっと警告を発した。
それでも彼女はそれで引き下がることはなく、ベッドから立ち上がるとヴァンの許へと駆け寄った。
アスクの騎士のことは好きにはなれないが、それでもヴァンだけは別。
彼は友であった。決して仲がいいわけではない。それでも、互いに認め合った間柄。

「いや!私はあなたのことを他の騎士より知ってる!あなたの行動はいつでもアスクが中心にある。アスクの・・・真の平和が。」

斜に構えた奴だ。話せば話すだけ苛立ちが募る相手ではあるが、それでもいざというときは必ず手を貸してくれる。
自分ではどうにもできないことを彼はあっさりやってのけてくれる。
知っていた、彼は正義が合致する者は身を挺して守ってくれることを。その正義とは、アスクの平和だ。

「ならばオレがどういう人間かは知っているはずだな。それ以上馴れ馴れしく話しかけてくるな。」
「ヴァン、お願い、私を解放して!こんなところで不要な時間を潰すわけにはいかないんだ!」

もちろん、ヴァンもシャニーのことは良く知っていた。
友ではない、だけども彼女のことは認め、好敵手としてずっとその活躍を見てきた。
彼女に負けるわけには行かぬと、彼も決意して白のマントを羽織ったのだから。
互いに、互いの性格はよく分かっている。だからこそのヴァンの言葉だが、シャニーも引かない。
部屋の外に出て行ってしまおうとするヴァンの後姿に駆け寄る。

「くどい、しばらく時に任せる事だな。カミユがトパーズを扱えない事に気づくまで。」
「そんな時間は・・・そんな時間はないって言ってるのに・・・。」

だが、それでもヴァンの態度が変わることはなかった。
まるで立ちはだかった壁の前で崩れ落ちるかのように、ヴァンの背にかけていたシャニーの手が滑り落ちていく。
涙に咽ぶ声が足元から溢れてヴァンの足元を塗らすが、彼はしがみつく手を振り払った。

「これ以上語ることはない。捕虜は大人しくしているんだね。ここは最上階だ、逃げ出そう何て考えない事だ。」

崩れ落ちた彼女に警告を一つ投げ落とすと、彼は部屋から出て行った。
しっかりと扉を閉め、窓からシャニーを見下ろせば、彼女は未だ崩れたまま泣いていた。
その姿を、ヴァンは細く鋭い眼差しでしばらく見つめていた。


「ゲイル・・・今あなたはどこで何をしているの・・・。」

陽が沈んでいく。窓から眺める大自然に陽が射すと寂寥感が胸に込みあがる。
いつもなら、この時間は夕飯を作り始めている頃だ。
腹が減ったと笑顔で駆け寄ってくる相棒が、今傍に居ない。

「アルトシャンに襲われたりしていないかしら。ああ・・・他の地方に侵略は進んでいないかしら・・・。」

まだ、目が覚めてから半日しか経っていないのに、もう何日も幽閉されているような気分に陥る。
こんなところでじっとしているだけで湧き上がる不安。
ルセンで見せ付けられた帝国の軍事力を思い出すと、いても立ってもいられないのである。

「うるさいぞ、静かにしていろ。」
「静かにしていられるわけ無いじゃないか!
 今この瞬間も、帝国は侵略を企ててるし、私を探し出す為に要らない犠牲を出しているのに!」

何か口にしていないと不安で押し潰されそうな彼女の独り言はどんどん増えていく。
部屋の隅でずっと腕を組んでそれを聞いていたヴァンが注意した途端だった。
彼女は涙を振り飛ばしながら、真っ赤な瞳で彼を睨み牙をむいた。

「君はそんなにも世界のことが大事か。相変わらず・・・いや以前にも増してと言うべきか?」

カミユの気持ちも知っているヴァンだが、彼女を説得できない事など最初から分かっていた。
久々に好敵手と再会して、ヴァンはシャニーから変わらぬ意志の強さを確かめていた。
だが、同時に違和感を覚えていた。まるで別人かと言うほどの感覚さえ湧いてくるのだ。

「私はゲイルと、いえみんなと約束したから。世界中に笑顔をって。その為に、私は神界の意志に逆らってこの世界に残ったんだもの。」

己の気持ちを口にして見て、改めてシャニーは察する。こんな場所でじっとしている時間は、一秒とてないことを。
目を閉じて思い出してみる。仲間達、そして歩んできた旅先で出会った多くの人の笑顔。
今彼らと最も遠いところにいる。帰りたい、その想いが彼女をついに立ち上がらせた。

「こんなところに幽閉して、私だけ身の安全を図れなんて、そんなの私にとっては生き地獄だ!退け、ヴァン!!」

ぎゅっと拳を握り締め、据わった眼差しでヴァンの許へとにじり寄るシャニー。
その眼差しをじっと対峙したヴァンはふっと笑ったではないか。
やはり何も変わっていない。いつ辛抱が切れるかと見ていたが、やっぱり1日持たなかった。

「退いたらどうするつもりなんだい?まさかそのままこの基地を脱出しようとでも?」
「決まってる!トパーズを奪い返してゲイルと合流するんだ!」

シャニーの考える事など、聞かずとも分かる。単純すぎるのだ、この人間は。
そのまっすぐさが人を動かし、彼女の後ろには多くの者がついてきた。
だがその反面、簡単にアンドラスの剣に沈み、今こうしてあっさりと捕獲されてしまっている。
それでも彼女の意志は変わらない。独りでは、何もできないことは自身が一番に知っているくせに。

「ふっ、少しは冷静になることだね。どうやって本土に戻るつもりだい?翼を失ったお前に海を越える手段はない。」

いつもこの人間はこうだ。思いでがむしゃらに、泥臭くどこまでもまっすぐ。
それが今まで通用してきたのは、彼女の周りに欠点を補ってくれる多くの仲間がいたからだ。
それが居ない今、同じ策に出れば結果は目に見えている。

「そんなことは脱出してから考えればいい事!ヴァン、悪い事は言わない、そこを退いて!さもなくば!」
「さもなくば・・・どうするっていうんだい?まさかその短剣で、オレとやりあおうとでも?」

にじり寄ってきたシャニーの左手には、マナで作り上げた短剣が握られていた。
ヴァンに挑発まがいの言葉を浴びせられて、それをぎゅっと握りなおして構えを取る。
短剣で襲い掛かるには絶好の間合い。だが、ヴァンは騎士剣に手をかけることもなく不敵に笑う。

「やめておけ、怪我をするだけだ。指輪を失ったお前など興味はない、止めろ。」

ヴァンがシャニーのことを好敵手だと認めたのは、彼女の強い意志だけではない。
熾天使として転生した彼女が宿す神界の力に対してという一面もある。
だが目の前にいるのは武器で威嚇しかできないただの乙女。剣を取るまでも無い。

「黙れ!どうしても退かないというなら、私から行くぞ!喰らえッ!」
「シャニー、相手が悪いわ!今のあなたじゃ荷が勝ちすぎてる!」

今まで必死に努力してきたのに、力の全ては熾天使の権能、そう言われた気がしてカチンと来た。
怒りに身を任せて飛び出したシャニーだが、悲鳴を上げたのはヴァンではない。
ペンダントを必死に揺らして、彼女の頭の中に直接叫ぶエルピス。
妹分だって分かっているはずだろうに。どう考えても勝ち目のある相手ではない。
2年前に比べて、ますます隙が無くなった井出立ち。鋭き眼差しはすでにシャニーの動きを見切っているように見据えている。

「技のキレ・・・鋭さ・・・どれをとっても以前とは比べ物にならないほど落ちているな。」

機敏さは一目おくところもあったが、前から短剣術に関しては大したことのない部類だった。
それが今、素人が単に短剣を振り回しているだけではないかと思うほどの腕前まで落ちてしまっている。
手刀で弾いてみるが、とても攻め込む牙とはいえないほど軽い。

「大方、短剣を握り始めてまだ数ヶ月といったところか。ルケシオン一のアサシンが聞いて呆れるな。」

元から攻めるより調和を尊ぶ彼女の性格からして仕方ないのだが、これでは自衛もままなるまい。
これで今まで各地で帝国軍やネクロ教と戦ってきたとは命知らずなものである。
だが、彼女の眼差しは短剣よりも鋭く、手刀で容易く弾かれても瞳から迸る覚悟がヴァンを睨み据えて勢いを失わない。

「短剣を握ってる暇なんか、この2年一時たりともなかったよ!
 私はルケシオンを太陽の町に育てようとがんばっていたんだ!それなのに・・・それなのに・・・!」

誰もが死にかけた町を蘇らせ、太陽燦々輝く希望の町へと変えるため歩き出した。
その先頭で必死に叫び、心を聞いて共に夢を育み、そして形に変えようと希望を皆へ振りまくべく必死に駈けて来た。
毎日が潮の満ち干の如くあっという間に過ぎていく中、それ以外に費やす時間など極々限られたもの。
その中で、他と分かり合おう、溶け合おうとする想いと逆行するような刃をどうして握られようか。

「2年前も私たち海賊を討伐しようとしていた。確かにあの時は、帝国も民の安心を守るという大義があったかもしれない。
 じゃあ今のアスクは、あんたたちは、何のために戦っている!」

鋭く睨みつける眼差しは決してヴァンを憎んでいるわけではない。
だが、彼らのやり方はとても受け入れられるものではなかった。カミユの言っていることは本当であると信じたい。
信じたいが、信じれば信じるほど彼らの戦う意味、そして自分を幽閉する意味が分からなくなっていく。

「地方への侵略から民を守り、世界中の平和をかけて私たちは戦っているというのに!
それなのに・・・あんたは・・・あんたたちは・・・!」

握り締めるダガーが震える。何故分かってくれない、この戦いがどれだけ無駄なことか。
一刻も早くアルトシャンの暴挙をとめなければならない時に、争わなくていい者と争う時間がいかに無駄か。
自ら道を切り開くため、シャニーはまたヴァンの許へと猛然と駆け寄っていく。

「弱い者の言い訳など聞きたくも無い。もう一度言う、今のキミにオレは興味はない!!」

手刀を鋭く構えると、切りかかってきたシャニーの手首を一閃。
短剣を失っても諦めようとしないシャニーは素早くまわし蹴りを浴びせにかかるが、相手はかつて死神とさえ呼ばれた男。
今度は喉元に手刀を喰らい、怯んだところに胸元へ強烈な一撃を貰って吹っ飛ばされた。

「がはっ?!くっ・・・。」
「止めろ、これで分かったはずだ。今のキミでは勝ち目はまるでないことを。」

部屋の柱に叩きつけられて、喉が潰れたかのように痛み呼吸もままならない。
それでも彼女は立ち上がって再び手先にマナを集めて短剣を創りだそうとするが、
ヴァンはそれに追撃する事も無く腕を組んで、彼女に制止を促す。

「よくそれで今までルケシオンを変えてこれたな。一筋縄ではいなかっただろう。」
「確かに・・・対立もあった。けど、分かり合えるまで話し合って解決してきた。」

圧倒的な力を前に、シャニーは咽びを堪えきれず膝をついた。
そんな彼女に、ヴァンは嘲り笑うことはせずに純粋に感心していた。
本当に力ではなく対話でルケシオンを変えてきた、それを垣間見た気がしたのだ。
ようやくに息を整えた彼女は、故郷の発展を思い出すかのように厳しかった復興の毎日を語りだす。

「辛い事もたくさんあった。だけどいつでも私を支えてくれる人が傍にはいっぱいいたから、戦ってこられたんだ。
 たくさんの仲間が支えてくれて・・・いつでも私の傍には愛する人がいて包んでくれて・・・辛くても幸せだった。」

厳しい毎日で、すぐに同意を取り付けられずに毎日、毎日諦めることなく各地へ説得へ駆け回った。
その姿を見た人々が後からついて助けてくれたこともあり、少しずつ、少しずつ町は変わっていった。
辛い毎日だったが、それを苦と思ったことは無かった。幸せ、その思いに包まれた2年間だった。

「ゲイル・・・ねえ、あなたは今どこで何をしているの・・・。ゲイル・・・帰りたい・・・帰りたいよ・・・。」

その中でも、一番に包んでくれたのはやはりフィアンセだった。
どれだけ遅くに帰っても、彼はいつも起きて待っていてくれた。彼だって開拓で疲れているはずなのに。
夜遅くの二人きりの会話の時間、それが疲れ果てた体も心も癒してくれた。
それは今回の旅でも同じ、だが、今傍に居ない。辛くて、寂しくて、思わず涙が溢れる。

「そんなにキミは愛しているのか、ゲイルを。」
「あの人は、いつでも私の料理を待ってくれているの。あの人に私の料理で喜んでもらいたい・・いつでも包んで支えてくれるから・・・。」

彼女の見せた態度に、ヴァンは言葉が詰まってしまう。
じっと、崩れ落ちる彼女の姿を見下ろしていたが、どうやって声をかけて良いか分からなかった。
彼女が泣く・・・それも敵の前で。信じられない光景だったからだ。
彼の知るシャニーは、敵の前では強い眼差しを決して崩さない女傑だったはずだ。それが今、泣いているのだ。
それは女傑ではない、どこにでもいる幸せを知った乙女。

「あの人となら・・・私はどんな辛い事も苦しい事も乗り越えていける、そんな勇気が湧くの。」
「・・・。キミはなぜそんな風に震えている。」

他の人間が何と言おうと、シャニーにとってゲイルは世界で一番頼りになる人だった。
猪みたいに突っ込むし、熊のように大喰らいだが、どんな悩みもどっかり受け止めてくれる広く大きな帰れる場所。
彼の話をすると嬉しそうにその口元が緩むシャニーだが、ヴァンは見逃していなかった。

「私は・・・私は怖いの。独りになることが。
 記憶を失ってからずっと怯えてた、私が覚えている僅かな幸せが傍からなくなってしまうことが。」

すすり泣く声に思わず耳を疑うヴァンの目が珍しく見開かれていた。
シャニーが、怖いなんて言葉を口にすることなど、彼女と知り合ってから初めてだ。
おまけに、今まで散々危険に単身で突っ込んでいた彼女が、独りを怖いといったのである。

「そんな私をいつでもゲイルが包んでくれて、メルトが本当のお父さんみたいに見守ってくれてきた。
 おかげで少しずつ、少しずつだけど私は記憶を取り戻してきた。だからこそ怖いの、彼らと離れ離れになってしまう事が。」

記憶を失い、故郷へ戻れない日々、さすがの彼女でも絶望してしばらく現実を受け入れられなかった。
それを支えたのが、共に旅をしてきた仲間達だった。不安をゲイルがしっかりと受け止めてくれ、
メルトが失ってしまった力を取り戻す手助けと、心構えを解いてくれたおかげで今がある。
独りであったならば、今頃絶望してアルトシャンの前に出て行ってしまっていたかもしれない。

「キミは・・・しばらく見ないうちに大分変わってしまったんだな。」

ここにつれてこられて、カミユと対峙しているときはまるで気付かなかった。
相変わらず勇気のある女だと思っていたが、その彼女が見せたまさかの一面にヴァンはかける言葉を失っていた。
熾天使・・・女傑・・・いや、違う。やはり今目の前にいるのは、ただの夢見る乙女。

「ねえ、ヴァン。お願い・・・お願いだから、私をゲイルのところに・・・返して・・・。
 私に残されたたった一つの幸せを・・・奪わないで・・・あああ・・・。」
「泣かないで、シャニー。まだ私がついてるじゃない。元気出しなさい?ね?」

敵を前に懇願して涙を流す姿は、ヴァンだけではなくエルピスにとっても驚きの光景だった。
膝から崩れ落ちて顔を埋めながら堪えきれなくなった涙を溢れさせ慟哭する様に居た堪れなくなった彼女は
ペンダントの中から落ち着かせようと何度も優しくシャニーへ声をかける。

「やはりキミは変わってしまった。昔は敵相手に涙を見せるような人間じゃなかった。」

落胆したかのように、ヴァンは一つ息を吐き出すと彼女から距離を置くように下がる。
自分の知らない間に、彼女は別の道へと行ってしまったようだ。
いや、この道こそが彼女が真に求めていた道なのかもしれない。
ふっと笑うヴァン。ようやく彼女は見つけたのかもしれない、彼女にとっての真の力を。

「以前のような強さはないな、だがその代わり・・・キミは幸せを知って強くなった。」

意外な言葉に、思わず涙でずぶ濡れになった真赤な顔をあげるシャニー。
すぐには言われている事を頭が理解できず、ただ見つめる。
ぽんとハンカチを投げつけると、ヴァンは背中を向けて扉の前に立ち、そして止まり振り向いた。

「さっきも言ったが、オレに勝とうなんて考えないことだ。
 どうしても逃げ出したければ・・・オレにもっと見せてみろ、新たに手に入れた強さを。」

抗うなといいながらも、彼は確かに言ったのだ。見事逃げ出して見せろと。
彼は何かを訴えようとしている。そうとっさに察したシャニーは立ち上がって駆け出すが
彼の背中に手をかけることを固く閉まる扉が阻む。扉の前で再び崩れた彼女は、
大粒の涙をぽろぽろと床に零しながら咽び泣くのであった。
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