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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter18 闇の騎士と光の天使

4話:抗いの父

 ←3話:切り札 →5話:覚悟の翼
 一方、ルセンでシャニー達を捕え損ねたアスクでは、彼女達の行方を追い続けていた。
草の目分けても探し出せという総統の命の下、今日も騎士達の多くは地方へ出動している。

「ハデスとの契約が彼女自身の意志によるものだと・・・?」

そんな中、アルトシャンは机の上で手を組んだ目を震わせていた。
シャニーに関する情報がまるで上がってこない事にやきもきしているわけではない。

「そんなはずはあるまい、彼女に限ってそんな。だが、この目で見て耳で確かめるしかなかろう。」

恐ろしくて震えていたのである。まさかアンドラスがハデスのマナを扱っているとは。
おまけにそれが彼女の意志によるものだなんて信じたくもなかった。
だが、彼の性格上、そのままにしておくことなどできず席を飛び出す。
そわそわとした歩調で城の中を歩き回る。図書館、厨房、あちこち落ち着かない目つきで歩くものだから
すれ違い、敬礼をする騎士達も彼が通り過ぎると顔を見合わせている。

「アンドラス、こんなところにいたのか、探したぞ。」
「あれ、お父様、どうしてこんなところに?騎士達が会議の時間なのにと探していましたよ。」

城のエントランスのところまで歩いてきて、ようやくにアンドラスの姿を見つける。
彼女は受付嬢と楽しそうに話をしているではないか。
その笑顔はいつも通りで、とてもハデスに魂を売ったようには見えない。
声をかけてみても、やっぱりいつも通りだ。

「む、あぁ、そうか定例会議か。まぁいい、特段報告することもなかろう。」

今はとても会議に参加するような気持ちにはなれなかった。
適当に理由をつけて会議を欠席しようとする父の姿はアンドラスにも不思議に映り、
彼女は受付嬢に手を振ると父と共に中庭の方へと歩き出す。

「まぁ、会議に参加されないのですか?珍しいですね、お父様が会議をキャンセルされるなんて。」

どんな小さな会議にでも、時間の都合がつけば参加して厳しい意見を示す父。
熱心さは多くの騎士に伝わり、彼らは身が引き締まると口をそろえていた。
そんな彼が見せたまさかのサボりは、アンドラスにとってはちょっとした事件であり不思議そうに顔を見上げてくる。

「たまには息抜きも大事だ。ふふ、興味あるものを見るとすぐ飛んで行ってしまうお前の悪癖が移ったかもしれん。」
「ま!私はそんなに言うほど会議をサボったりはしていませんよ!」

アンドラスが会議に来ないという報告は配下からしばしば受けていた。
何をしていたかと聞けば、興味があるものへ惹かれて時間を忘れていたということばかりである。
だが、本人にはそこまで自覚がないらしく、アルトシャンの言い草に頬を膨らせた。

「その言い方だとそれなりに会議をサボっているようだな・・・。まったく、騎士達が困る顔が頭に浮かぶぞ。」

彼自身も、時折アンドラスが私服で城を抜け出していく姿は目撃している。
その後をいつも騎士達が追いかけて町へと出て行くが捕まった試しがない。
自由にはさせてやりたいが、騎士団に属する以上規律を守ることは大事なこと。ため息をつき戒める。

「そんな顔をするな、別にお前を試しに来たわけでも叱りに来たわけでもない。」
「ごめんなさい、でもやっぱり会議より直接自分の目で見たほうが早くて。」

叱られてしまい、しょんぼりを肩を落とすアンドラスだが、
アルトシャンは彼女の頭に手を置くと静かにすべりのいい金髪を撫で始めた。
会議をサボることはよくないが、彼女が遊びにいくために城を抜け出しているわけではないことを皆は知っている。
彼女もまた、言い出しづらそうにしていたがアルトシャンの優しい手に撫でられて勇気を絞る。

「とは言え、軍務中に子供たちに連れられて球技はいただけんがな。」
「う、それは・・・その、ごめんなさい。あれだけの笑顔で懐かれたら断れなくてつい・・・。」

予想以上に父に自分の行動が筒抜けである事を知り、顔が歪むアンドラス。
だが、ヘタに言い訳をしても、自分がそういうことが得意ではないことを知っている彼女は
俯きながらも素直に謝った。やはり、彼女は何も変わっていないように思える。

「ははは、お前らしいな。確かに現地確認も大事だ。だが騎士達の声も聞かねばならぬぞ。
 騎士もまた、お前が愛するアスクの民の一員には変わりないのだからな。そして、お前と同じように民を守りたいと願う同志でもある。」

いつも通りの親子の会話の中から、アンドラスの変化を見つめるアルトシャン。
決してハデスによる侵食など感じられない。むしろアスクを守る騎士として日に日に成長する姿は頼もしく
自分の娘がこれほど力強く、そして優しく成長していく姿を見守る事ができて幸せだった。

「決して仲間を疑うようなことはするな。いいな?」
「はい、気をつけます。私、町をふらふらしてばかりでお父様にご迷惑をおかけしてばかりで。もっと騎士団内のことも見てみます。」

素直な、そして誠実な透き通った声が返ってくる。やはり可愛い。
純粋に輝く彼女のサファイアのように輝く蒼い瞳を見下ろして笑いかけると、アルトシャンは何度も頷きながら
彼女の頭にやった手で彼女の頭を撫で続けてその成長を褒め喜んだ。

(お前は私にようになってはならない・・・。)

選択を誤ったばかりに、身内にまで警戒しなければならない今、彼女には同じ道を決して歩んで欲しくなかった。
これだけ人を愛し、懐く事が出来る人間だ。疑心などに心を囚われて輝きを失って欲しくない。
支え、支えられる、その関係を彼女が保ち続ける事を祈るばかり。

「うむ、だがアンドラス、お前にはお前のやり方がある。民への接し方は今までどおりでよいと私は思うぞ。
 人間の傍で常に輝き守り導く光の熾天使、その気質をお前は強く継いでいる。それはとても真似できるものではない。」

アルトシャン自身も、出来る限り現地をその目で確かめ、耳で聞くことを大事にしてきた。
だが、アンドラスのやり方はそれをさらに進化させたやり方。彼女の立場だからこそ出来るそれは、
シャニーの捕獲失敗やネクロ教の拡大で広がる民の不安を誰よりも受け止め解かしてくれている。
もっともっと、民の傍で彼らの拠り所となる存在となって欲しかった。

「民はお前の事を慕っているし、文官たちもお前には態度がまるで違う。調和の光か、なるほどな。」

彼女が歩むその先々には、いつでも笑顔が咲いている。不安に沈んだ民の顔を未来へ向けて再び見上げさせ
長年対立し続けてきた文官でさえも心を開き、笑顔を見せて協力的なのである。
調和の光こそが、彼女の体に流れる熾天使の気質。それを大事にして欲しかった。

「いえ、私の光はどちらかといえば制圧する光でした。調和の光・・・それはシャニーだと思います。
 彼女とルセンで、そしてカレワラで剣を打ち合ってみて感じたのです。彼女のマナが何と穏やかで優しいものなのか。」

いつも父に褒められたら心の底から喜んで飛び上がってしまうほどなのに、今回は褒められてもちっとも嬉しくない。
それどころか、皆が期待する光と真逆の道を進もうとしていた事を改めて思い知らされ、
彼女は俯いて唇を噛みながら、心の中に溜め込んでいた淀みを吐き出しはじめた。

「私の剣は己の憎悪を載せるだけのものでした。
 これだけたくさんの民が愛してくれ、平和を祈ってくれているのに、それを乗せることもなく。」

今まで、己の正義のよりどころは全て民の想いだといい続けてきた。
それなのに、剣に載せて振り下ろしたものは彼らを守ろうとする意志ではなく、殺意だけ。
彼らから力を受け取っておいて、それをまるで違う方で使う自分は、ただの裏切り者としか今捉えられなかった。

「どうしたのだ、あれほどにシャニーのことを憎んでいたはずではないか。」

突然に彼女が堰を切ったように零し始めた想いに困惑するアルトシャン。
以前はシャニーを倒す事ばかりを口にして黙々と剣を振るっていた彼女とは思えない。
彼女は目で父を見上げて謝ると、また俯いてしばらく黙っていたが、また静かに語りだす。

「私は自分の愚かさが恥ずかしくなりました。民のためと自分にそして民に嘘をついて。
 己の存在価値を守るためだけに破壊の道を極めようとしていたことが。民の為に本当に戦うべきは彼女じゃない、私自身だったんです。」

信じたくはない、だがレイに、ヴァンに、そしてシャニーに見せ付けられて気付かされた。
民の為なんてそんなのは大嘘だ。剣を握っている理由は彼らのためなんかではない、自分の為だったと。
そんな自分が嫌だった。民に愛されたい、愛したい。その想いが彼女から偽りの仮面を引き剥がしたのであった。
彼女はまたひとまわり成長し覚悟を決めている。彼女の言葉の一つ一つからそれを悟ったアルトシャンは
しばらく彼女の顔を見下ろして頭を撫でてやった後、ついに本題を振った。

「・・・道を極めるために、ハデスとも契約したというのか。」
「!!お、お父様・・・ご存知だったのですか?」

まさか一番に知られたくなかった人に最大の過ちを知られていることを目の当たりにして絶句する。
どれだけ後悔しても、過ちに気づいて道を正しても、決して取り戻せないことがある。
今にも消えてしまいそうな小さな声は、罪悪感をありありと伝えてくる。

「無論だ、お前の聖光が暗黒に染まっているのを見たとき、私は悪夢かと疑い目の前が真っ暗になりかけたぞ。」
「ごめん・・・なさい。仰るとおりです。あのころはもう心が憎悪に支配されて、心が真っ黒でヘドロのようでした。
 民を守る力を手に入れるためとは言え、私は一時でも暗黒神に心を委ねた事が恥ずかしい。」

今も体の半分を流れるハデスの血。彼女は右手に紫焔を燃え上がらせて見せた。
やはり、ハデスとの契約は彼女の意志によるもの・・・否定したかった事が現実となり瞳が色を失うアルトシャン。
揺らぐ紫焔を見つめ、絶望を口にする父の顔を見るのが辛くて、辛くて、もう心が引き裂かれそうだ。
どうしてあの時、あんな判断ができてしまったのだろう。
シャニーを倒したい、自分の存在価値を守りたい、そればかりで父や民の笑顔が、すっかり見えなくなっていた。
その結果、多くの人を悲しませてしまった事を改めて思い知らされたアンドラスは俯き涙を零すしかできなかった。

「この前シャニーと剣を打ち合って確信しました。復讐と粛清に明け暮れ、破壊と犠牲を崇拝する暗黒教団。
 ああなってはいけない。例え暗黒神に侵食されようとも、彼らに比べれば・・・私の心は・・・遥かにシャニーたちに近い。」

ハデスのマナをじっと見つめるアンドラスを前に、アルトシャンは愕然としながらも冷静を保った。
契約がアンドラスの意志とは言え、彼女は既に過ちを知っている。
ところが、彼女が突然シャニーの名前を出して彼女に近いと言い出したものだから眉間にシワが寄る。

「お前はシャニーを認めるというのか?前も言ったはずだ、彼女の光がもたらす先にあるものが何であるか。」

いくら娘が相手であろうとも、これだけははっきりさせて置かねばならない。
今や地方はシャニーを英雄視してとてもやりにくいが、彼は神から啓示を受けているのだ。
このまま彼女を放っておけば世界は滅ぶ。愛する娘の為にも、大事なことだ。

「勘違いなさらないでください、お父様。彼女のことを認める認めないなど関係ないのです。
 ただ、彼女が私個人の敵ではなく、アスクの敵に変わっただけです。」

シャニーへの個人的な恨みは消えた。存在価値を守ろうとした小さな自分を戒めて。
だがそれでも、アンドラスは自分がアスク帝国に仕える騎士である事を忘れてはいない。
敵であることに違いない事を確かめるようにはっきりとした口調で父への忠誠を口にした。

「ならば何も言わん。お前にまでシャニーを擁護されては私も困ってしまう。」

白の騎士団や地方の者達だけではなく、この中央でさえも意見は一つではない。
世界の破滅を防ぐ為に、これからいよいと磐石の体勢を整えていかねばならない時なのに。
その中で、右腕であり民の信望も厚いアンドラスの意見がひっくり返ったらにっちもさっちも行かなくなってしまう。

「擁護なんてしません、彼女の行動が帝都の民の不安を煽り、地方を感化扇動している事に違いはありませんから。
 恨みはなくなったけど、けれど対峙すべき相手であることに変わりはありません。」

帝都内でも、シャニーを擁護する動きを最近見るようになった。
だが、それでもアンドラスが彼女を敵と看做して剣の柄に手を取る様を見て、
アルトシャンは内心ほっと胸を撫で下ろしていた。だが、腹にヘドロのように溜まる不安はこびりついたまま。

「お前が民の為に力を振るってくれているなら嬉しい事だが・・・ハデスとの契約はお前の意志に間違いないのか?」

口では嬉しいと言ってはいるが、心の中では今でも信じられず拒絶し続けていた。
そんな力を手に入れてまで民を守って欲しくなかったからだ。
彼女にも幸せになってもらいたい。手に入れた力は、間違いなく彼女を不幸にする。

「私の意志・・・確かに結局は私の憎悪が招いた事です。私が道を踏み外しさえしなければこんなことには。」
「どういうことなのだ?お前自らの手でハデス神との契約に望んだわけではないのか?」

素直なアンドラスの答えがどうもスリガラス越しにものを見ているかのようにぼやけている。
本当に彼女の意志であったならば、質問にすぐに首を縦に振っただろう。
だが彼女は俯くと自分の失敗を口にして後悔するばかりなのである。
何かある、娘の様子にすぐに何かを察したアルトシャンは彼女の頭に手をやって静かに撫で、
目をくしゃくしゃにして今にも泣き出しそうな彼女を落ち着けていく。

「マヴガフ大司教に契約をお手伝いしていただきました。」
「マ、マヴガフだと?!あやつめ・・・やはりっ。」

ようやくに息を整えて、後悔を飲み込んだアンドラスが口にした名前。
嫌な予感はしていたが、どうしてこう悪い予感ばかりが的中してしまうのだろう。
ずっと警戒し続けてきたあの男の名前を娘が口にして、アルトシャンは怒りに目を、そして拳を振るわせた。

「私はその時契約がハデス神との血の盟約だとは知りませんでした。力が欲しいか、それだけを大司教はお聞きになって。」

言い訳がましいことは言いたくなくて、ずっと黙ってきた。
だが、父が心配していることがその眼差しから、そして言葉から痛い程に伝わってきて
もうこれ以上隠している事が出来なくなった。本当は、一番に聞いて欲しい相手だったから。

「お前は応を返したわけか。マヴガフめ・・・娘に手を出すとは断じて許せぬ。」
「私が悪いのです。皆から私の存在価値は自身で見つけるものと教えてもらっていたのに、他に無価値の理由を求めて・・・。」

マヴガフを庇うような事を口にするアンドラスを、アルトシャンは両手で抱きしめた。
どこまでも何と優しい子なのだろうか。あのような卑劣な男でさえも守ろうとするなんて。
無価値などでは決して無い。それを説くように強く抱きしめ、何度も頭を、そして背中を撫でてやる。
だが、彼女はまだ分かってはいない。ハデスの血を引くということが、どれだけ恐ろしい事なのか。
己の意志とは関係なく一生免れぬ汚れた烙印が彼女にまで押し付けられてしまったとは・・・。

「でもお父様、私はどうすれば良いのでしょうか。ハデス神は世界の理を腐敗させ民を絶望に陥れる悪神。
 そんな神と契約を結び、その血を半分とは言えこの身に・・・この身に流す私が・・・私が!」
「落ち着くのだ、アンドラス!」

だが、おかれた状況を理解できていなくとも、彼女なりに恐れていた。
自身の身に降りかかることなどではない、民のことを心配していたのだ。
もし自分の身に宿る悪しき血が民を苦しめる事になったら・・・そう思うと恐ろしくて堪らなかった。
自分は民を守る剣になりたい、そう願った彼女の悲痛な叫びをアルトシャンはしっかりと介抱して受け止める。

「そうだ、落ち着いて父に想いを打ち明けてみろ。」

強く抱きしめてやると、彼女は父の胸に顔を埋めてしばらく泣いていた。
それでも彼女も騎士。すぐに己を律して涙を飲み込む。

「そんな私が民の為など・・・なれるのでしょうか。存在自体が既にもう・・・。」
「バカなことを考えるものではない。お前はお前、お前の意志がすべてを決するのだ。力というものは意志を持たぬ。」

娘が、かつて若い頃真実を知ってすぐの自分と同じ恐怖に苛まれている。
恐ろしい、民を守るどころか、民を絶望させる血を自分が持っていることが。
いっそ死んだほうがいいのではないかとさえ考え自殺を図ったこともあったが、今では愚かしい自分を恥じていた。
そんな道を娘に歩んで欲しくない。大切なものは血ではなく、意志だとアルトシャンは知っていた。

「善神の力であろうともシャニーのように破滅へ導く力となるように、
 悪神の力であろうともお前の民を思う気持ちが本当なら、素晴しい力になるはず、私はそう信じている。」

手に入れてしまったことをいつまでも後悔しても仕方がない。
過去は変えられないが、未来はいくらでも変えられる。彼女が変らず民を想いつづければ
宿す血は必ず彼女を支える力となることを確信していた。今まで自分が歩んできたように。
娘の頭を撫で続け、諭し続け・・・強く心を持ち続けることを説く。
それこそが、ハデスを抑える最後にして最強の砦。

「本当にそうなのでしょうか・・・ええ、そうですとも。私はこの世界を、民を愛しています、心から!」

不安だった。だが、この民を守りたいという思いは嘘ではないと断言できた。
シャニーと戦い、悪しき心を削ぎ落とした今は、手に入れた力を全て民を守ることに使うことが出来る。
自分で自分を励まし、勇気を振り絞って前を向くことを決めた。

「そう、だから私はこのマナも皆の想いと共に剣に載せることを誓ったの。民を守り包む剣として戦う為に。」
「立派だアンドラス、それでこそこの剣帝アルトシャンの娘。今のように動揺してどうしようもない時こそ誰のための力か考えるのだ。」

もう一度右手にハデスのマナを燃え上がらせてみる。
確かに不吉さを象徴するような不気味な紫紺のマナ。だがそれは神界の力だ。
光と闇と、二つの神界の力を宿す自分にしかできないことはたくさんある。
その自分だけで民を守ると強く誓う瞳は紫紺を映しても決して濁ることは無かった。
思った以上に娘は強く、たくましく成長している。彼女のその意志を信じ、アルトシャンは彼女の歩む道を讃えることにした。

「はい、ありがとうございます。はぁ、何だか心がすっきりしました。」

父に教えを受けて、自分の考えが間違っていないと自信を持って嬉しそうに頷くアンドラス。
だが、アルトシャンが笑顔を見せて彼女の頭を撫でてやると、
まるで糸が切れたかのようにそれまでの強張った表情が溶けていく。

「そうだ、ちょうどこんな時間ですし、ティータイムにしましょう。焼いておいたクッキーがありますから行きましょう。」
「それは楽しみだ、茶を飲みながらもっと話を聞かせてくれ。」

前までとはまるで別人のように明るく朗らかなアンドラスの表情。
それだけ見ても彼女が吹っ切れたことは優に察する事が出来るし、この先の彼女の成長が楽しみだった。
彼女に手を引かれるまま、笑いながらついていくアルトシャン。

(マヴガフ・・・これ以上はさせんぞ。)

手を繋いでみても、彼女からハデスの悪しき意志は感じられなかった。
今彼女に流れているのは、ハデスの力を宿しながらも民を守る温かいマナ。
ほっとしながらも、アルトシャンはマヴガフへの警戒を一層強めるのであった。
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