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 ←5話:覚悟の翼 →7話:錬金戦艦グングニル
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter18 闇の騎士と光の天使

6話:荒くれイルカ

 ←5話:覚悟の翼 →7話:錬金戦艦グングニル
 ごうっと己のマナを吹き上げて、背中に浮かび上がる三対の翼。
もちろんマナで作り上げた幻術だが、そのマナの力は本物。
そのマナを錬金銃へと注ぎ込み、彼女はカミユのこめかみに銃口を更に押し付けた。

「こんな部屋に居たらストレスでどうにかなってしまいそうだ。やはり広い空の下でないとな。」

作り上げた翼をばさばさと羽ばたいて見せて、翼に触れた壁を抉り衛士たちの悲鳴が上がる。
近づこうにも彼女は強烈なマナで創られた翼に守られ、おまけにカミユを捕えられて
彼らはどうすることも出来ずにいる。錬金銃を構えようと、撃てるはずもない。

「シ、シャニー、一体何のつもりだ。」
「そろそろお暇させてもらうことにしたのさ。私にはこんなところで幽閉の姫を演じている時間はないのよ。」

痛い程に突きつけられる銃口、トリガーにかけられた指は震えている。
明らかに興奮しているシャニーに、カミユは冷静を装って彼女に問う。
天使とは思えない、まるで悪魔のような笑みを浮かべながら口にした彼女の言葉に周りが即反応する。

「カ、カミユ様!くっ、おのれ!銃を離せ!」
「下手なことをすればお前達の大事なリーダーの頭が吹っ飛ぶぞ!」

だが、こういうシーンはシャニーのほうが断然慣れており、主導権は彼女にあった。
何せ彼女はデムピアス海賊団の副頭領だ。海賊時代は船で他の海賊船と戦う事だってあった。
まるでその時を思い出したかのように、いつもとまるで違うドスの聞いた声が部屋に響き、
慣れた手つきで銃を天井へ向けると一発放って周りを威嚇する。

「へえ、結構荒っぽいこと出来るじゃない、泣き虫の割には上等ね。」

まるで水を得た魚の如く銃を手に荒っぽくカミユの首根っこを引っ張るシャニーの姿は様になっていて
むしろこの状況を楽しんでいるようにさえ見えてくる。いつもとまるで違う妹分の姿に、
海賊としてのシャニーを見たことのないエルピスが賞賛を口笛に載せる。

「敵を欺くには味方からってね!トパーズの使い方なんて誰が教えるもんですか!」

大芝居を斬ったつもりが、自分でもサマになっているのが分かってぐいぐいカミユを部屋の外へと引っ張り出していく。
今では故郷の再興に粉骨砕身だが、16までは短剣、銃なんでもござれだった身。
錬金銃を握りこめかみに突きつける姿はとても手馴れていて、衛士たちは身動きが取れなくなってしまった。

「み、みんな、私は大丈夫だ。彼女の言うとおりにするんだ。」
「ふふ、物分りがいいじゃない。じゃあこのままドックまで案内しろ!」

これ以上彼女を興奮させない為に、カミユは部下たちに銃を降ろすように指示した。
だが、彼女はそれだけでは満足せず、目配せで彼らに銃を棄てさせ、カミユを盾にしながら歩き出す。
本当は今背中にたたえた翼で海を越えられればいいが、あくまで幻術。
ゲイルの許へ戻るには海を渡るしかなく、船を奪う必要があった。

「な、なんということだ!シャニーが逃げ出したぞ!守りを固めろ!」

一気に騒然とし始める基地内。あちこちで緊急警報が鳴り響き、赤色灯が駆け回る。
一体これだけの人数がどこから出てきたのかと思うほどの人数。
だが彼らは数を持ってしてもただ見ているしかできなかった。

「シャニー、考え直してくれ。私は君に敵意を抱いているわけではない。」

何せ彼女は今も引き金に手をかけたまま、カミユのこめかみに銃口を突きつけているのだ。
下手なことをすれば今の彼女が何をするか分かったものではない。
手を出せないまま、必死に彼女を説得するカミユの無事を祈るだけで後ろをついていくだけの衛士たち。

「黙れ!トパーズを奪い、世界が破壊されていく中幽閉して!
 私をせっかく手に入れた幸せから引き離して、よくそんな事を言える!私にとってお前は敵だ!」
「シ、シャニー・・・。」

何とか彼女を落ち着かせようとしたのだが、火に油を注ぐ結果となってしまった。
彼女は柳眉を釣り上げると、カミユの仮面越しの目をぎっと睨み付けて怒鳴りつけた。
敵、明確に彼女からそう告げられて、彼は言葉を失うしかなかった。
うな垂れる彼に怒りを抑えきれないシャニーは胸倉を強くつかんで銃口を更に押し当てる。

「カミユ総督!おのれシャニー!喰らえ!!」

これ以上彼女の好きにさせておいたら、カミユの身に危害が及ぶ。
彼女の行動に危機感を覚えて衛士の一人が、ついに引き金を引いた。
炸裂する錬金銃。だが、シャニーを包むマナは圧倒的な防護力で銃弾全てを掻き消す。

「バカ!止めろ!撃つな!諸君、道を空けろ、彼女を刺激してはいけない!」

ひとりの一撃を皮切りに、他の衛士たちも一斉に銃を構えだす。
だが、それを止める手が高々と翳されて、彼らはやむなく銃を降ろす。
指示したのは他でもないカミユだ。彼はむしろ彼女に道を空けるよう指示したのである。

「この道は本当にドックに繋がっているんだろうな?」

カミユの命で衛士たちが引いても周りにマナを張り巡らせてレーダー代わりにしながら進む。
地の利が相手にあることは変わりがないのだ。
いつもは仲間もいるが今は一人だけ。目つきも自ずと変わってくる。

「もちろんだ。戦艦のドックと艦載機の格納庫に繋がっている。」

厳しい眼差しのシャニーを仮面越しに見つめるカミユの口調は沈んでいた。
彼女が敵視していることは分かっていたが、面と向かって言われ銃を向けられると心が引き裂かれそうだった。
そんな彼の気持ちなど知る由もない彼女は、ぐいぐいと彼を引っ張りながら先へと急ぐ。

「・・・見事な戦備・・・。これほどまでの戦艦に錬金艇に・・・恐ろしい・・・。」

狭い通路をぬうように進んでいった先に見えてきたのは、突然開かれた空間。
そこには海賊船なんかより遥かに大きい、金属でできた戦艦がずらりと奥まで並んでいた。
はるか遠くは明かりが暗くて見えないが、一体どこまで続いているというのか、この沈黙の艦隊は。
その時を待つかのように、不気味に光る砲塔を見上げ、息を呑むシャニー。

「錬金戦艦グングニル・・・。錬金エネルギー砲である主砲の射程距離は75キロで帝国艦の25%増し、
 艦首の魚雷にも錬金エネルギーを充填できるようになっている。」

まるで別時代にでもタイムスリップしたかのような、あまりにも超科学的な光景。
ゾッとするほどに整然と並んだ最高芸術品たちに言葉も出ないシャニーへ
カミユはその性能の突出さを口にして見せ付ける。これこそが、白の騎士団の力だと。

「艦載機、艦載艇の性能ももちろん帝国より上だ。そして攻撃面だけではない、動力も最強と謳われたレピオン戦艦を上回る。」
「あ、あのレピオンを?!・・・戦争でも起すつもりだったのか。」

レピオン戦艦といえば、ルケシオン海賊の中でも1,2を争う規模のレピオンハンターの代名詞。
頭領であるラルプが莫大な資材と技術を凝縮させて作り上げた世紀最強といわれる海賊船である。
その実力を誰よりも知るシャニーにとって、それ以上の力が目の前にこれだけ並ぶと聞けば震えを止められなかった。

「あながち・・・間違った表現でもない。私はアルトシャンを止めようとしていた。」

シャニーが口にした最悪の末路。それをカミユは否定しなかった。
もしアルトシャンが最後まで聞く耳を持たずに、世界を破壊する道を選んだその時は、彼は帝国を滅ぼす覚悟でいた。
国が滅ぶか、世界が滅ぶか、二択となれば後者しか択はない。

「この船・・・メントが蘇ったのかと錯覚したわ。全く同じよ・・・メントの戦争で使われた兵器と・・・。」

シャニー以上に震えていたのは、ペンダントの中にいたエルピスだ。
彼女は実際に戦争を経験している身。今目の前にある戦艦たちが、実際に大地を燃やしつくしている光景を
その目に焼き付けた彼女にとって、今の美しい世界が破壊されると思うといても立ってもいられなかった。

「そんな戦争の為にこの創造の力を使おうとしていたというの・・・。許せない。
 この指輪は返してもらう!希望はそんな悲しみを振りまく為の光ではない!」

悲しみを生み出す力が、創造のマナによって作り出されようとしている。
自分が願うものとまるで正反対の使い方が為されており、その集団がトパーズを狙っている。
その理由など知れたこと。シャニーはついにカミユの指先からトパーズを奪い返す。

「もちろん、こんな戦艦を使うことはないさ。もしこれがマイシソアの空を飛ぶような事があれば・・・世界の終わりだ。」

ところが、カミユの口から出た言葉はシャニーの眉間を歪ませた。
誰がこの戦艦たちを作るように指示したのか、そのくせどこか人事のようである。
使わないのに何故作ったというのか。彼の意図が分からずに、彼女は睨むばかり。

「だが、人間は確実に進化しつつある。そして私のように思いとどまらず、得た力を試したくなる者も・・・。」

どうやらカミユは、この作り上げた力を抑止力として考えているようだ。
そして彼がにおわせたのたのは、抑止力と言う均衡を壊そうとする者の存在。
もし均衡が破られてしまえば、それは戦争を意味する。

「な、なんだと・・!?誰だそれは!それがアルトシャンだというのか!」
「いや、彼は逆だ。そうした過ちを防ぐ為に進化を止めようとしているんだ。だから君が狙われる。創造の力を司る熾天使の君が。」

本来はアルトシャンもカミユも、同じ場所を目指しているはずだった。
均衡の崩壊、戦争による世界の荒廃を防ぐ為にそれぞれに道を歩んでいる。
だがそのやり方は真っ向から対立していた。対立すべきではない相手だと知りつつも。

「人間の進化を止めるですって・・・?正気の沙汰とは思えない・・・そんな幸せを奪うような事、許せるはずないじゃないか!」

シャニーの耳には、アルトシャンの考えた方が異常としか聞えてなかった。
幸せな未来を創ろうと前を向き歩いていくことこそが人間だ。進化を止めるということは未来を奪う事。
相手がアルトシャンではないと分かっていても、胸倉を掴んで怒鳴ってしまう。

「むろんだ、だからこそ私はアルトシャンを止めようと思っているのだ。少しは私の考えが分かってもらえたか?
 こんな、こんな創造の力が破滅を生むような使い方をしてはいけない。だが、その為に時には必要となることもある。」

悲しげな口調で創造の力の誤った進化の方向を見上げるカミユ。
もし間違ったまま突き進めば、ここにある、人間に創造されたただ殺戮する為に生み出された力が人間を滅ぼす。
だが、どんな力も人間の使い方で道は変わる。過ちを止める為には、この一時の過ちもやむを得なかった。

「頼む、君には生きてもらいたい、生きて進化を促して欲しい。だから、今このひと時だけでもいい、指輪を諦めてくれ。」

しばらく戦艦を見上げていたカミユはばっと振り返るとシャニーの両手を強く取った。
仮面越しにでも分かる、彼の懇願の眼差しがシャニーの瞳を見つめてくる。
やはり、彼もどこか根っからの悪人とは言い切れないものを感じるシャニーは視線を逸らす。

「残念だけどそれはできない、どんな理由があろうとも。私は私のやり方でアルトシャンを止める、それだけだ!
 この指輪は私と言う媒体を介して人々の夢を光に変える力!私はこの力を授かった時誓った、それを破るわけには行かないんだ!」

だが、シャニーがぎゅっと握り締めたのは、ポシェットの中の封筒だった。
思い出される、愛する者たちの笑顔。トパーズを諦めれば、彼らの笑顔を守る事はできなくなる。
誰のための力か、それを思い出した彼女はドックに浮かぶ一隻の錬金艇目掛けて駆け出していった。

「あ、シャニー!待て!待ってくれ!くっ、どうして分かってくれない・・・!」

疾風を身に纏わせてかける彼女はあっという間に小さくなってしまい、伸ばした手が彼女の背中に触れることはなかった。
これだけ、これだけ説得しているというのに、どうして分かってくれない。
何故彼女がわざわざ危険の中に飛び込んでいこうとするのか、彼は悔しさに口元を歪めていた。

「総督!ご無事でしたか!」
「ああ、私は無事だ、彼女が攻撃してこない事など分かっていた。」

リーダーが解放されて慌てて駆け寄ってくる衛士たち。
カミユは彼らの興奮を宥めるように彼らに手を翳して無事を知らせると、シャニーの背中を見つめる。
敵であろうと、無意味に相手を傷つけない。その信念を貫いた背中を。

「総督、シャニーを傷つけたくないお気持ちはお察ししますが、背に腹は変えられません。どうか・・・攻撃指示を!」

彼女がやろうとしていることは決まっている。錬金艇による基地からの脱出。
今逃してしまえば、時間がなくなってしまうかもしれないのだ。
アルトシャンが、そしてマヴガフが動き出してからでは遅い。沈黙し、慎重に判断を選ぶカミユ。

「・・・よし、分かった。総員、戦闘配備につけ!シャニーを追うのだ!
 銃兵は弾薬に麻酔薬を装填せよ!彼女にはまだ喋ってもらわなければならないことがある、生け捕りにせよ!」

これ以上は彼女を庇う事は出来なかった。世界の存亡がかかっているのだ。
彼女は一度痛い目を見なければ分からない人間。ついに掲げられるカミユの手。
それを見た衛士たちは怒声で返し、彼らは銃を手に騎士の中を雪崩の如く駆け抜けるのであった。

「くっ、右を見ても左を見ても白、白、白・・・くそっ、不気味な連中だ!」

インビジブルを唱えておいても、お構い無しに銃撃を浴びせてくる衛士たち。
どうやら錬金術の力でこちらのマナの反応を読み取られているらしい。
銃弾を神界一と謳われた韋駄天で避けながら、少しずつドックへと近づいていく。

「シャニー、私がマナシールドで防ぐから、脱出手段を考えなさい!」

いちいち彼らから逃げていては、地の利が相手にある以上何れ包囲されてしまう。
浴びせられる麻酔弾からシャニーを守りつつ、エルピスは妹分にはっぱをかけた。
言われずとも、そう言わんばかりにシャニーは衛士たちのもとへ突っ込み、体術と短剣術で道を切り開いていく。

「そう簡単に私は捕まえられないぞ!エルピス、ごめん、だけど今は・・・。」
「守るための光ならやむを得ないわ!私が弓になってあげるから存分に見せ付けてやりなさい!」

シャニーが言い出す前にすでにエルピスはうずうずしていたらしい。
言い終わりもしないうちに彼女はまた姿を変えて立派な弓となったではないか。
さすが精霊、などと驚いている余裕はない。がっと目の前に浮かぶ弓を手に取ったシャニーは
詫びの言葉を何度も頭の中で唱えながら左手にマナを集めて矢を作り出す。
目の前からは麻酔弾があられの如く降り注ぐが、エルピスに任せ照準に集中する。

「喰らえ!アストレア!」
「追え!ひるむな!麻酔銃で応戦しろ!」

道をふさぐ衛士たちだが、アストレア相手ではかなわないことは知っている。
ばっと身を左右に投げ出して回避した彼らの無事を確かめながら先へと駆けるシャニー。
その背後から迫るカミユたちの視界に映ってきたのは、一隻の潜水艇。

「シャニーめ、錬金艇を奪うつもりか!ヴァン、我々は戦艦で島の遠洋に先回りだ!」

これ以上追いかけても不利となるだけ。追跡は配下に任せて、彼はヴァンと共に別の策に出ることにした。
基地の中で捕らえられればそれが一番だが、万が一に備える必要があった。
まさか彼女相手に戦艦まで使うことになるとは思わなかったが、それほどの準備が必要な相手なのだ、彼女は。

「行かせるか!なっ、残像だと?!」
「いやしくも希光と呼ばれたこのシャニー、そう簡単に捕まるか!」

ようやく捕えたかと思ったシャニーの腕。だが次の瞬間ふっと景色に溶け込んでしまう。
つかんだのは彼女が作り出した幻術で、もうあんな遠くに本人がいる。
再び彼女を追いかけて駆け出そうとしたときには、もう照準は絞られていた。

「これで終わりだ!喰らえ!」
「どわあああ。なっ、船を奪うつもりだ、ハッチを閉めろ!」

空を引き裂いた光の矢が衛士たちを貫くことはなかった。
だが、彼らの足元を抉った光は堅牢なる鋼鉄の床をいとも簡単に吹き飛ばして烈風を吹き上げた。
身を守ることで必死な衛士たちの視界には映っていた。潜水艇に滑り込むシャニーの姿が。

「シャニー、あなたこんな船の操作方法なんて分かるの?!」

一人乗り用の小型の潜水艇。だがその装備はしっかりしていて脱出には十分だ。
ところが、それはこの船が普通の動力で動くものならの話。あれこれ計器を弄りだすシャニーだが、
エルピスはモニターに映し出される衛士たちの姿がどんどん大きくなってくることに焦りだす。

「へっ、荒くれイルカの異名を持つこのシャニー様にこんな船!
 動力が錬金エネルギーに変わっただけよね。よおしメインエンジン始動!お願い、動いて!」

見たこともない機器が並んで少しの間固まってしまうシャニーだが、
違うところこそあれ、基本は船だ。海賊王の娘として長年船に乗ってきた彼女は
持てる知識をフル回転させて、祈りを篭めて始動ボタンを押す。唸りだすエンジン、湧き上がる笑顔。

「よし!!行くぞ!全速前進!浮上角10度!」

動力さえ起動させてしまえばこちらのものである。
彼女は席に滑るように座り込むと操縦桿をガッと掴んで一気潜水艇を走らせ始める。
早い。こんな小さな船だというのに、何と言う馬力だろう。だが、水面上に見えてきたハッチはどんどんしまっていく。

「間に合わないか・・!この艦載艇の武装は・・・魚雷だけか。やるっきゃない!」

いくらこの船のスピードを持ってしても、明らかにハッチが閉まるほうが早い。
だが、この基地から逃げる事が出来る最後の道だ。おめおめと引き下がるわけには行かない。
魚雷の発射口に注水し、照準をハッチへと絞る。

「照準よし!1番発射!2番も発射だ!」

慣れた手つきで照準を合わせ、立て続けに発射し、艦内に炸裂音が響き渡る。
エルピスにはこのときのシャニーがまるで別人のように映っていた。

「だめか・・・?!」

だが、やはりカミユらしく、守りは鉄壁に作りこんであるらしい。
魚雷がちょっと当たっただけではびくともしてくれず、ハッチはいよいよしまってしまった。

― 魚雷にも錬金エネルギーを装填できるようにしてある。
「そうか!それだ!」

その時だった。ふいにカミユから聞かされた錬金艇の性能の1フレーズが頭に浮かぶ。
まるで稲妻が走ったかのように彼女は目を見開いて大きな声を張り上げた。
閉まってしまった運命の扉をこじ開けるには、もうこれしかない。彼女はポシェットから何かを取り出す。

「なら・・・お願いみんな!力を貸して!!」

取り出したのは、みなからの励ましの言葉が記されたあの封筒だった。
中から手紙を取り出し、みなの言葉を、子供達の絵をじっと見つめ、ぎゅっと抱きしめた。
こんなところで負けるわけには行かない。愛する者たちを守りたい、そして彼らと共に幸せになりたい。

「ああ、みんなの笑顔・・・私は帰りたい!!」
「この力は・・・!ふふ、シャニーいいわよ!見せ付けてやるのよ!私たち天使の力を!」

見る見るうちに高まる波動。シャニーの周りには希望のマナが渦を巻いてあふれ出し
突然に沸き立ち始めた光にエルピスも最初こそ驚いたが、妹分が何をしようとしているのかすぐに分かった。
光のマナは潜水艇を包み込んでいく。彼女は魚雷にマナを送り込んでいたのだ。

「いっけええ!熾天使の力、見せてやる!」

ついに発射された魚雷。アストレアほどの威力はなくとも、神々しく輝く一閃が水中を走って行き、
ハッチに着弾した途端、あたりの水が全て吹っ飛んでしまうのではないかと思うほどに膨れ上がった。

「よっし!全速潜行、脱出だ!」

水泡がすべて収まると、姿を現したハッチは無残な形にぐにゃりと曲がって大きな口をあけていた。
思わずガッツポーズしたシャニーは強く操縦桿を握り、海の奥へと消えていく。

「な、なんという力だ・・・。あれが・・・熾天使の力。」
「何を感心している!追うぞ!」

超合金の絶対強度のハッチが今、完全に負けて穴が空いている。
その姿に唖然とする衛士たちだが、後から駆けてきた仲間が彼らの背を叩き、我に帰る。
彼らも慌てて錬金艇に乗り込み、シャニー達を追う。いよいよ戦場は大海原へと移る事になる。
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