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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter18 闇の騎士と光の天使

12話:僅かな綻び

 ←11話:盟友動く →13話:戦い以外に出来ること 前編
「結局、シャニーは見つからずじまいだったのか。」

一方、イカルスにある白の騎士団の本拠地には、続々と錬金戦艦グングニルが帰還していた。
あれから数日間、近辺の海を空から、海底から、くまなく探したがいい情報は何もなく、
ついに最後に帰還した副旗艦艦長、ヴァンからも首を横に振られてカミユはため息をついた。

「あの海域は何もレーダーを遮るものはない。完全に幻術に巻かれたとしか思えん。」

まだ諦めがつかない様子で海を眺めるカミユに、ヴァンはあっさり言い切った。
自分を置いて基地へとツカツカ戻っていってしまうヴァンに、カミユもやむなく目線を切り歩き出す。

「しかし、一体どういうことなんだ。彼女は脱出用の錬金石を使って脱出したと報告にあったが。」
「その通りだ、オレ達が錬金艇を回収した時には、既にモヌケの殻さ。」

ヴァンはあっさりと事実を語るが、どうにも腑に落ちないのは、彼女の脱出方法だった。
彼女はこちらの技術を駆使して錬金艇から脱出したらしいのだが、それはもちろん白の騎士団の者しか使用方法は知らないのだ。

「あれは我々しか扱い方を知らぬはずだ。となると・・・もう消去法的に内通者がいたとしか考えられん。」

本当は仲間を疑うなんてしたくはないのだが、それしか可能性がなかった。
傍に錬金術研究に携わっているレイ博士がいたのなら話は別だが、
彼女は錬金術などとはまるで別世界にいた人間だ。それが錬金術と分かる事さえ奇跡なのに。

「カミユ、ひとつあいつと知り合いのオレから助言をあげるよ。キミの考えている彼女の幸せと、彼女が求めている幸せは全く正反対だ。」

今でもカミユは諦めていないようだ。どうにかしてシャニーを手元に戻そうと考えているようで、
顎に手を当てながら酷く渋い表情をしている。だが、ヴァンにはさすがにシャニーが哀れに思えた。
カミユにとっては守るつもりなのだろうが、シャニーにとっては檻に押し込められるのも同然なのだから。

「・・・なんだって?それはどういうことなんだ、ヴァン。彼女は何か言っていたのか?」

ヴァンの言葉は、完全にシャニーの味方をするもので彼の困惑の目がヴァンを見つめた。
― ・・・お前なのか?ヴァン。
シャニーを逃がしたのは、もしかしたらヴァンなのか。だが、ヴァンは静を保ちつつカミユを睨む。

「彼女は彼女の手で民を幸せにしたいと思っている。その為に動き、傷つくことは彼女にとっては不幸ではない。
 むしろ、動く事を阻まれることのほうが彼女にとってはよっぽど不幸だ。今回のようにな。」
「お前は私がシャニーを不幸にしていると、そう言いたいわけだな?」

彼女の邪魔をしてやるな、ヴァンの目が、そして歯に衣着せぬ言葉がカミユを突き刺す。
自分が彼女の邪魔になっている。不幸にしてしまっている。そう言われたも同然だが
彼は意外にも感情を荒ぶらせることも、動揺することもなく海を見つめる。

「確かにそれは分かる・・・だがこれ以上は見ていられないんだ。」

今の彼女の思想のままであるならば、自身の行為は邪魔でしかないだろう。
彼女のやりたいようにやらせてやりたいのだが、これ以上は命に関わる。
きっと一度遠くから眺めれば、考えは少しでも変わってくれる。そう願っていた。

「今回の脱走はあいつの幸せへの渇望から来たもの。他人の幸せだけではない、自らのものへも含めた、な。
 それを押さえ込もうとしても、また同じ結果になるだけだ。キミが押さえつけようとすればするほど、彼女は翼を広げて抵抗するぞ。」

やはりカミユは何も分かってはいない。シャニーの脱走の真の理由が。
何も熾天使としての使命感だけではない。彼女は帰りたかったのだ、彼女が愛する幸せの許へ。
それを邪魔すれば誰だって抵抗するに決まっている。敵対しなくてもいい相手と敵対することは愚策以外の何者でもない。
ヴァンは口調を強めてカミユに迫り、顔を仮面に近づけると重い口調で脅しをかける。

「その抵抗がしまいにはどこへ行きつくか・・・まずまず考えてからこれからの作戦を練るべきだとオレは思うがな。」
「しかしな・・・彼女を逃がしてしまったというのは最悪の事態だ。」

今までにないようなヴァンの警告の仕方に、カミユも思わず喉が締まり口元が歪む。
行き着く先・・・そんなものは分かっているし、想像もしたくない話だ。
作戦の練り直し、その選択肢はやむを得ぬものであり、カミユは悔しそうに言葉をかみ殺し下を向いた。
だが彼が心配していたのは自分達の作戦のことなんかではない。
そんなものはいくらも練り直せばいい。だが、それは彼女が無事である間でなければ何の意味もない。

「今の彼女には、自分を守る手段が何もなくなってしまったのだからな。くっ、今アルトシャンに遭遇してしまえば・・・。」

懐から取り出した宝石。その輝きは主から引き離されて泣き塗れた涙の如きものだった。
この作戦は、自分の支配化で彼女を保護するからこそ成り立つものだった。
それが今、弓も翼を失った状態でシャニーは闇に飛び込んでいってしまったのだ。

「守る手段など、最初からあいつは持ち合わせていないさ。そして今も、そういう意味ではあいつは何も失ってはいない。」

ヴァンの見え方は違っていた。むしろシャニーは、このイカルスで新たな力を手に入れ、
いや・・・元々彼女が持っていた強さを力と目覚めさせて、以前より更に強くなって戻って行ったように感じていた。
だが、それを口にした途端だ。カミユの拳が基地の鋼鉄の壁を抉る。

「君はゲイルが傍にいるからと、そう言いたいのだろう。残念だが、私にはそうは思えないのでな・・・ッ。」

シャニーは力を持たないまま保護から逃げ出し、ゲイルに身を預けた。これは最悪な事だ。
独りならまだ彼女は自衛に最大限神経を注ぐだろうが、彼女はゲイルを信じきってしまっている。
脆き盾なら、無いほうがまし。そう怒りを握り締めるカミユの手にそっと自身の手を重ね、ヴァンは最後に警告を放つ。

「オレ達が思う思わないなど関係ないのさ。二度は言わんさ、だが練り直すべきだ。取り返しのつかなくなる前に。」
「恐ろしいことを言わないでくれ。・・・分かった、思慮してみる事にしよう。」

取り返しがつかないこと、それは考えなくとも分かる最悪の結末。
彼女を思うばかりに、彼女を追い詰めてしまっている。それはカミユも分かっていた。
騒ぐ胸をぐっと手で押さえ、彼は気を飲み込んで自室へと戻る。

「・・・とは言え、今私の手についにトパーズが握られたのか。とりあえず・・・第一段階は最低限完了したわけだ。
 これでアルトシャンがあの子を狙う理由はなくなった。あとは、どうやって彼らを倒すかだな。」

アルトシャンがシャニーを狙うのは、彼女が神界の力を使って人間を進化させるからだ。
彼女の力を無限大に膨らませるこのトパーズさえなければ、彼女はただの女性。
そうなればもう、合理主義の塊であるアルトシャンは彼女に興味を示すことは無いはず。

「そうなると・・・やはりこのトパーズの使い方を知る必要がある。
 ああ、やることだらけだ。落ち着け、まずは何をすべきか整理するのだ。最優先は何だ・・・。」

急がなければ彼女が妙な気を起こしかねない。
だが、アルトシャンを倒すには、圧倒的な力で一気に短期で仕留める必要があった。
そうでなければ大陸を戦渦に巻き込むことになり、要らぬ犠牲が出る。それだけは避けなければならなかった。

「そうだな・・・考えるまでもなかったな。まずは楔を打ち込んでおかねばなるまい・・・。」

優先順位を決めて整理していくとおのずと見えてくる。カミユは顎に添えていた手をさっと解くと、
何かに取りつかれたかのようにツカツカと歩いていき、錬金艇に飛び乗るとあっという間に空へと消えた。
残された飛行機雲を、ヴァンはじっと見つめていた。


「イスピザードよ、セインの消息は掴めたか。」
「いえ・・・あれから全く便りもなく。おのれ白の騎士団め、なぜセインまでをも。」

サラセンから帰国したアルトシャンは、迎えに来たイスピザードに開口一番右腕の安否を確認していた。
だが、腹心の表情はすぐれずに、それだけで大体を察したアルトシャンは口元を渋くする。
彼以上に不安なはずのイスピザードは、見えぬ敵の思惑に苛立ちを隠せずにいた。

「何か知られては不味いことを彼が掴んだと考えるのが順当でしょうか。」

あれこれ詮索してみるが、どうにも手がかりが少なすぎてお手上げ状態だった。
彼らは帝国を凌駕する錬金術でレーダーをかいくぐり、その消息をすっかり消し去っていたのだ。
いつもは切れのある推測を立てるイスピザードも、材料があまりにも不足していて困惑しているようだ。

「いや、それなら生かしておく必要などないだろう。何にせよ、無事であることを信じるしかあるまい。」

セインからは失踪してからすぐに手紙が来て無事だという事を伝えてきていた。
だがそこからの二週間、もうすっかり連絡が途絶えて生きているかどうかも分からない。
セインに、そしてシャニーに。大事なものたちが尽く謎の集団に飲み込まれ、心が押しつぶされそうなイスピザード。
そんな彼の許に突然朗報が飛び込んでくる。

「アルトシャン総統!ご報告いたします。聖騎士セイン様がお帰りになられました。」

アルトシャンもイスピザードも一瞬耳を疑った。
彼がなんと自力で帰還したと言うのである。すぐには信じられず、時が固まる室内。
何度も騎士の言葉を頭の中で繰り返し、電撃が駆け巡るような感覚が頭に走る。

「な、なんだと?!無事なのですか?!」

アルトシャンより先に声をあげたのはイスピザードだった。
彼は騎士の傍まで駆け寄ると、その肩を掴んで思わず声が裏返る。
セインの父であることを知っているその騎士は、イスピザードに笑顔で答えた。

「はい、酷く疲れたご様子ではありますが、特別外傷もないようです。」
「ああ、神よ・・・ご加護に感謝いたします・・・。」

もたらされた吉報に、イスピザードは手を結んでその場に崩れた。
口にはせずとも、セインが失踪してからの2週間、ロクに食事も通らなかった。
いや、食事を抜いて願掛けをしていたのである。息子の無事だけをただひたすら祈って。
その願いが通じ、息子が怪我もなく帰ってきた。彼の様子に、アルトシャンの口元も緩む。

「それは吉報だ、手厚く看護してやってくれ。私も一つ胸の痞えが取れて心が晴れたよ。」

アルトシャンにとってもセインは息子同然の大事な部下だった。
新米騎士の時から手塩にかけて育ててきた。彼のいない間はどうにも調子が狂い不安ばかりが湧いたもの。
その暗雲がぱっと晴れて、彼は笑顔で騎士に帰還の英雄への看護を命じる。

「それが、セイン様は総統とお話しをしたいと言ってもう部屋の外に・・・。」
「アルトシャン様!この度は申し訳ありませんでした。敵に捕らわれて捕虜として生きるなど、アスクの恥です・・・。」

騎士が事情を説明し終える前に、外から飛び込んでくるセイン。
もう辛抱ならないといった感じで首輪を外された犬のように突っ込んできた彼は
アルトシャンと目が合うなりその場に跪いて土下座を始めたではないか。
彼の服はぼろぼろの埃まみれで、苛酷な環境から脱走してきたままであることを如実に表している。

「よい、無事に帰ってきてくれて礼を言うぞ。お前がいないと説教する相手に欠いて敵わん。」

ふっと口元が柔らかくなったアルトシャンは静かに歩き出すと、セインの許へ屈む。
そして彼の汚れた頭に躊躇いもなしにその手を置くと、まるでわが子のように撫でだしたではないか。
びっくりして顔をあげたセインの目の前には、父のように優しい鬼総統の顔。

「アルトシャン様・・・。」
「酷く疲れているようだな、まずは体を清めて着替えて来い。落ち着いて話を聞こう。」

どこか、自分の知るアルトシャンとはまるで別人のような顔が目の前にある。
これは夢でも見ているのだろうか。まん丸に見開かれたセインの目が柔らかい笑みを見上げる。
そんな顔に更に笑顔を見せたアルトシャンはセインの頭をぽんぽんと撫でると、彼に目配せするのであった。


「セインよ、いろいろ聞きたいことはあるがまず聞きたい。白の騎士団の本拠地はどこだ、どこへ連れて行かれた?」

シャワーを浴びて仕切りなおした後、アルトシャンは用意させた温かいコーヒーを一口するとついに本題へと入る。
単刀直入、無駄な会話は一切しないところは相変わらず彼である。
彼は白の騎士団の本拠地へ一気に攻め込み形勢を確定させるつもりだった。

「申し訳ありません、目隠しをされていて・・・。脱出する時も、巨大な錬金艇に忍び込んで・・・船を下りたらサラセン港でした。」

アルトシャンの質問に答えづらそうに下を向くセイン。
脱出する事で頭が一杯で、周りの景色をあまり覚えていないというのである。
だが、アルトシャンは渋い顔をせず次へと質問を進めた。昔なら騎士ともあろう者がと怒鳴ったはずなのだが。

「では幽閉されていたところは暑かったか、寒かったか、どちらだ。」
「かなり肌寒いところでした。もしかしたらレビア地方なのかもしれません。」

顔を見合わせるアルトシャンとイスピザード。温暖な気候のマイソシアで肌寒いといえば、
もうそれだけである程度地方が絞られてくる。高原地帯のミルレスか、豪雪地帯のレビアか。
この情報が手に入っただけでもかなり有用。二人は頷きあうと、セインへと視線を戻す。

「ふむ・・・そうか。で、お前が私に言いたい事とは?」

風呂を浴びたとは言え、やはりかなり疲れ果てた表情をして蒼白い。
最低限の質問だけにとどめ、彼に特別休暇を付与するつもりだが彼もまた何か言いたい事があるようで
今か、今かとそれを我慢しているように、話したくてウズウズしているのが分かる。

「はっ、白の騎士団はどうやらシャニーからトパーズを奪い取ったようです。」

顔色が急変し口元が歪んだのはイスピザードだ。娘を守る大事な力が失われたのである。
彼とは対照的に、アルトシャンの眉がピクリと動く。ルセンで見せ付けられたあの強大な神界の力。
それが今シャニーから失われたというのだ。これもまた吉報であり、口角が釣り上がる。

「ほう・・・連中もたまには面白いことをしてくれる。これで熾天使の力が人間界を押さえ込む危険はとりあえず遠のいたわけか。」
「ええ、後は白の騎士団からトパーズを奪い取ればよろしいかと。」

今まで邪魔ばかりして作戦をことごとく潰してくれた白の騎士団。
本拠地が大分絞り込まれ、今までの仮を返すべく一気に叩き潰してやろうと思っていたが
たまには役に立つ事もあるようだ。力は分断され、邪魔者も照準を絞れそうで、一気に事態が好転してきていた。

「今がチャンスです、シャニーは捨て置き、我々は白の騎士団を追います!」
「待て、セイン。白の騎士団を捨て置け、私たちの標的はあくまでシャニーだ。」

機会は待ってくれぬと、早速出撃の準備をするべく席を立ち駆け出すセイン。
だがその背中に大きな声が響いてその足を止めさせた。彼の命令に思わず眉間にシワが寄る。
何度も頭の中で命令を再生する。シャニーを狙え、その命令に変更はなかった。
目が、口元が、そして手が震えだす。どうしてそこまで彼はシャニーを殺そうとするのか。
もはや今彼女は、どこにでもいる普通の街娘でしかないのに。

「ど、どうしてですか?!もはや彼女には何の力も残されていません。それよりは白の騎士団のほうが脅威のはずです。」

シャニーが死んだわけではないから、警戒を続けるぐらいならまだ話は分かる。
だが、この機を逃せば白の騎士団はすぐ逃げてしまうだろう。
ようやく邪魔者たちに吠え面をかかせることが出来るチャンスだというのに、それをみすみす見過ごせというのだ。

「分かっていないな、お前は。彼女はその存在そのものが力なのだよ。民の進化への渇望を促進する力だ。」

アルトシャンが恐れていた力は、何もアストレアによる熾天使からの粛清ではなかった。
彼女が無闇に人間にアストレアを向けないことなど分かりきっている話。
総身から希望を振りまいて人間を進化させ導く熾天使の光。普段なら彼女ほど頼もしい守護者もいない。
だが今は、その光そのものが人間を滅ぼす破滅の力。それは彼女自身を滅さなければ止まることはない。

「確かに熾天使は力を失った。だが希望としての力は失っていないのだよ。奴がアスクに抵抗し、人々を扇動し続ける限りな。
 希望の一番厄介なところだ。それ自体は力はなくとも、民の心を活性させる力を持っている。民を敵にまわしては我々の負けだ。」

さっと席を立ち、大きく開かれた窓から町並みを見下ろすアルトシャンの目が細くなる。
この白く美しい町並みが、眩しすぎる光の中に飲み込まれ、掻き消されてしまう。
それを防ぐ為には、徹底さが必要だった。希望の力は、アンドラスを見てよく分かっていたからだ。
彼女の歩いた周りを見よ。ルアスの民達の何と活き活きした表情を。
熾天使の力となれば、その程度で済まないことは明白で、錬金術一つとっても均衡は悪い方向へと傾いているのだ。

「一刻も早く奴を探し出し、息の根を止めるのだ!分かったか、セイン。復唱せよ。」

最悪の事態が引き起こされる前に、あの光を少しでも早く踏み潰してしまわねば。
殺害を命じるアルトシャンの顔は、先ほどまでの優しさがまるで嘘のように別人であった。
いや、これこそが本来のアルトシャンなのだが、セインには彼の心がどこにあるのか、まるで見えなくなっていた。

「は・・・我々はシャニーを撃破するべく作戦を行います。」

力なく命令を復唱し、アルトシャンを見上げれば厳しい表情のまま頷いている。
もうこれ以上説得しても無駄のようだ。主に背を向けたセインはとぼとぼ歩き出す。
曲がった背中を見つめるイスピザードの眼差しは悲しげだった。

「・・・イスピザード、レーダー集積チームに情報をいつでも調べられるように準備しておくよう言っておいてくれ。」

セインが出て行ったことを確認すると、イスピザードの肩にぽんと手を置く。
見上げてきた彼に首を横に振り、容赦はしないことを改めて言いつけると、アルトシャンはまた別の命令を彼に下すのであった。

「はて、何か思い当たるところでもございますか?」
「ああ、ちょっとな。」

いつもは作戦内容をこと細かく指示するアルトシャンだが、今回は何かを含ませた。
それでもイスピザードは何も聞くことはしないで頷くと早速部屋を出て行く。
窓からセインの力なく歩く姿を見下ろしながら、アルトシャンはルアスの町並みの更に向こうを睨みだした。

「本当に白の騎士団がレビア方面から来たならば、どんな迂回路を通ってもどれかのレーダーに映るはず。」

もう一度、あの時の光景とセインの証言をパズルのように組み合わせていく。
確かにバラバラだった情報がきれいに一つの真実へと繋がっていくのだが、
それは途中でどうしてもかみ合わなくなっていく。突然部屋を出るアルトシャン。

「西に迂回すれば本国の、東に迂回すればヤアンたちの、そして直進すれば我々遠征隊の・・・。」

白の騎士団が操るのはあれだけ巨大で強力なマナを湛えた錬金艇である。
どこから現れようとも、そのマナはレーダーに残るはずなのである。
だが、当日のレーダーには何も残っていなかったことを彼は覚えていた。

「あの錬金艇は南から来た・・・どうもセインの説明と矛盾している・・・。」

そう、あの錬金艇は南の空から現れ、そして南の空へと消えたのだ。
わざわざレーダーを迂回する為に大陸を大きく迂回してきたとも考えられなくはないが、万が一もある。
北へと帰ったとのセインの証言とまるで食い違い、彼は事実を確かめるべくレーダー室へと向かっていた。
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