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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter18 闇の騎士と光の天使

16話:殺意の修羅道 後編

 ←15話:殺意の修羅道 前編 →1話:東方の異変
「アンドラス!行け!」

そんなことできない。目の前で大事な人が大変な目にあっている。
おまけにそれが自分をかばう為に身代わりになってくれた人だというのに。
だが、固まる彼女にヤアンは渾身に叫んだ。「お前はこの男と関わってはいけない!」

「チィッ、おいヤアン、テメェ!一体どういうつもりだコラァ!」

目で必死に訴えられて、アンドラスは涙を振り切って駆け出した。
後もう少しと言うところで邪魔が入り、マヴガフはその尖りきった眼光をヤアンに突き刺す。
だが、それ以上に鋭い眼差しがすぐさま言い返してきた。

「それはこちらのセリフだ!」

前々からアンドラスに付きまとい、何か怪しいとは思ってきた。
今までは決定的な証拠がなく手が出せなかったが、今なら話は別だ。
「アンドラスに何をしようとしやがった!」叫んだヤアンに帰ってきたのは冷笑だった。

「ヒャハハッ、知れたこと聞くんじゃねーよバカが!」

彼は腹を抑えながら蛇のように舌を出して大げさに笑って見せた。
彼はまっすぐに指を指し、見下した笑みを投げつける。「分かってんだろォ?テメェの体が一番にナァ!」
ヤアンの体に突き刺さった暗黒の龍は、すっかり彼の体の中に溶け込んでしまっている。

「俺は殺意のマナはコントロールできるんでな。」

だが、ヤアンも負けじとせせら笑いを浮かべてぽんぽんと自身の胸を叩いてみせた。
妙なマナが入り込んできたが、彼はこの暗黒のマナを抑える術を知っていた。
元々は自身も扱っていた。「何ともないぜ?」残念だったなと言わんばかりに呆れてみせた。

「さすがは元デルクレビスの修羅ってところか。
 なら聞えるんじゃねぇか?面白れぇだろ、ハデスは復活しつつあるんだぜ?」

とんだ邪魔が入ったが、これは逆に好都合かもしれない。
まだアンドラスはここで途中退場するには惜しい駒だ。もう少し別の件でも利き駒に使える。
その案件が終わるまでの間に仮置きするならちょうどいい。

「なんだと?!ハデスはシャニーが封じたはずだろう!」

マヴガフが放った信じられない言葉に思わず瞠目したヤアン。
いつもの口先だけなら歯牙にもかけることはない。
だが、今自身の体に流れ込んできたマナは、間違いなくあの忌々しいマナそのものだった。
とても、彼が戯言を口にしているとは思えない。

「なぁ~に腑抜けた事抜かしてやがんの。お前、何か勘違いしてねぇか?
 俺様が無駄に各地を周っていたと思ったか?テメェらマフィアの巣食うあんな辺境にまで赴いてヨォ。」

もう少しいろいろ知っているかと思ったが、かつての修羅の長も随分平和ボケしたものである。
この世界の住民たちはハデスがシャニーに敗れたと、都合のいいように事実を湾曲させている。
もちろんそれは、真実から目を背けるための大嘘。
自分達で作った嘘で隠した真実を見せつけられてさも信じられないといった表情を見せる彼らは狡猾なのかそれとも・・・ただのバカなのか。

「まさかてめぇ・・・。」

マヴガフがかつて口にしていたことを思い出す。次の先戦へと移った、と。
地方を支配するなんてそんなちゃちな作戦ではなかったのだ。
「どおりで・・・貴様は元々ミルレスにもサラセンにも興味など・・・。」
全てを理解したヤアンの顔を見下ろして、マヴガフは悟る。ただのバカだったのだと。

「よぉーやく気付いたかよ、鈍クセェ野郎だな。
 ゲームに出遅れたテメェの為にボーナスをやんぜ。あんましトロイのがいてもつまんねぇからな。」

ただのバカなら普通は相手にはしない。時間の無駄。
大人しく片田舎でお山の大将に満足していればいいものを、ヤアンはこのゲームにおける重要な役割を今彼自身が引き受けたのだ。
もうこうなれば、知らぬ、関わらぬは許されない。ボーナスと言う名の絶望をマヴガフは語りだす。

「ハデスの完全な復活には3つの要素が必要だ。ひとつはハデス神の魂、ひとつは魂を増幅させる多くの魂、そして・・・。」

舐めるような眼差しでヤアンを視界に捉えながらゆっくり歩いてくるマヴガフ。
至近距離まで近づくと、彼はポケットに突っ込んでいた手を持ち上げた。「ひとつは魂を収める器、だ。」
そう言って伸ばしてきた手先がヤアンの胸を刺す。今入り込んだあのマナが、ハデスの魂だというのだ。

「それでアンドラスを器にしようとしていたわけか。」
「そうだ。あれほどの強力なマナを宿す器もネェからな。」

確かに、彼女は熾天使シャニーのホムンクルス。湛えるマナは人間とは比べ物にならない。
彼女ならば、神のいわゆる原始体を納めておくには十分だろう。だが、それだけが目的ではないらしい。

「そしてシャニーを始末できりゃあ、熾天使の光もハデスの支配下におくことが出来るってワケよ。」

ニヤニヤと来るべき至高の世界を思い浮かべるマヴガフの口元は蛇の如く大きく裂けて釣り上がっている。
アンドラスを支配下に置いたまま、シャニーを殺害できれば光は闇のもの。
そうしたとき、真の勝利と言うものがハデスのものとなるのだ。
創造の光りが全てを引き裂きなぎ払う剣を生み出し、ハデスの豪腕に握られる事になるのだから。

「残念だったな。だがもうハデス神の魂とやらは俺が取り込んじまったぜ。」

だが、ヤアンはその壮大な計画の終焉をせせら笑った。もはや神はヤアンの中で枷にかけられたも同然だからだ。

「確かに残念だよナァ。テメェじゃ長くは持たネェよ。精々1ヶ月ってトコロかね。」

ヤアンの笑い声を掻き消すように甲高い声で笑い出したマヴガフにヤアンの眉間が歪む。
マヴガフの笑いはただの虚勢ではない、明らかに痛くもかゆくもないと言ったところだ。
それを示すかのように彼は言った。「俺がアンドラスを器に選んだ理由ってのはもう一つあんだよ。いや、こっちのほうが本命って奴だ。」

「知りてえか?知りてえよなぁ!いいねえ、その不安に塗れた顔、たまんねえぜ!」

まるで読めないマヴガフの意図、それをちらつかされてヤアンは口にできない不安が渦巻いていた。
とても隠しとおせるはずもなく、表情から見破られてマヴガフはその不安を舐め取るように笑っている。

「いいぜ、教えてやんよ。いいか、よぉく聞けや。」

彼は顔を押し付けるようにしてヤアンへと迫ると、じっと目を見つめてふいに笑みを浮かべ、
「俺が選んだ理由はな、奴が創造の錬金術で生まれた命だからだ。」そう、息が吹きかかるくらいの距離で語ったのだ。

「ハデスだぜ、神様なんだぜ?納めるには相応の器ってモンが必要だ。
 けどよう・・・人間みたいな出来損ないじゃ使いモンにならねえんだよ。すぐにマナの崩壊を起してお陀仏だからな。」

神界のマナというのは、人間にとっては過ぎた力だ。そんなものが突然体の中に入ったら崩壊するのは当然のこと。
そこらの買い物袋に海を全部放り込もうとするようなものだ。仮置きにさえならないのでは意味がない。
どうしてもこの作戦の上でそれが引っかかっていた。「そいつを錬金術が可能にしてくれたってわけだ!」狂った歓喜が響く。

「錬金術と俺達の輪廻転生術があれば神は完全なる力を手に入れる!
 アヒャヒャヒャ!どーだよ!最高だろ!愉快だろ!ヒャーッハッハッハッハ!」

まるで魔物が叫ぶかのごとき甲高い狂気が拾い大法廷の中に響き渡る。
聞けば聞くほどに苛立ちを覚える声。だが今は、それを止める術がない。
宿すマナは間違いなくハデスのもの。ヘタに手を出しても勝てる相手ではないことはヤアンには分かっていた。

「てめえはどんだけ人の命を弄んだら気が済む・・・!」

ギリギリと拳が音を立てるが、それでも突っ込んでいくことはできない。
怒りを向けたところで、マヴガフが動じるはずもなく彼は両手を広げて嫌味な笑みを浮かべてきた。

「散々殺めてきた修羅のテメェが言えることか?」

立場が変われば言う事も変わると言うわけだ。矛盾でできた人間らしいではないか。
軽く嘲笑ってやると、矛盾を突かれて何も言えないヤアンが怒りをかみ殺すように舌打し始めた。
だが次の瞬間、「俺様の目指すあるべきに人間なんていらねぇからどうなったっていいんだよ。」マヴガフの放ったその言葉に目じりが釣り上がる。

「そんなことをアルトシャンが許すと思っているのか!
 旦那が錬金術の研究を認めているのは、錬金術が正義に使われることを想定しての話だぞ。お前のような悪党を裁くためにな!」

何で、こんな事になってしまったのだろう。闇から震える蒼い瞳が事の行く末を見つめていた。
怒りに血走るヤアンの目、マナ吹き上がり悪魔の剣の如く細く切れ上がる黄金をぎらつかせるマヴガフ。
いつも知る人間の、知らなかった顔。その震える瞳に気付いたマヴガフの口元がまた裂けるように釣り上がる。

「セイギ?正義だぁ?!独善者のほざく正義ほどくだらねぇゴミもねえよ!」

まるで自分に向かって言われたかのようにまっすぐ突き刺さった言葉にアンドラスが固唾を飲み込む。
今まで穏やかに接してきたマヴガフの本音がそこにはあった。ゴミ、自分の想いがそう吐き捨てられたのだ。
彼女の動揺を確かめたかのように彼は続ける。「テメェらが正義ってんなら俺様も正義ってモンよ。」
セイギノミカタは所詮、目くそが鼻くそを笑っているだけに過ぎないというわけだ。

「お前が正義だと・・・?ふざけるのも大概にしろ!」
「ふざけてなんかネェよ。仲良くしよーぜ、仲間じゃねーか?」

もちろんヤアンは背後からアンドラスが見ていることなど気付いていない。
目を血走らせて、その太い声で叫べば壁にヒビでも入ってしまいそうなほどだ。
だが、マヴガフは飄々とした態度で言ったのだ、仲間と。
眉間にシワを寄せる相手を楽しむように。「世界のあるべきを求めてる同士だろ、ナァオィ?」

「俺はヨォ!正義って言葉が大好きなんだゼェ!便利な言葉だからヨォ!ヒャハハハ!」

広い石造りの部屋にこだまする、悪魔の叫び。
それは心の奥底から矛盾を突き崩された悔しさとひしひしとした怒りと湧き上がらせる。
正義、その言葉によって推し進められてきたことは何だった?そう問いかけた彼に返す言葉がない。
扱いやすい便利な言葉で黒を白と言い続けてきた、その意味では同類なのかもしれない。

「くっ・・・こいつ・・・本気で狂ってやがる・・・。修羅・・・のような、いや――」

確かにやり方は同じ。正義という麗句で全てを覆い隠し、人の弱みを握り、利用する。
だが、マヴガフのやろうとしていることは明らかに度が過ぎたもの。
とても人間が出来ることではない。「お前は本当の悪魔か!」怒声に帰ってくるのは狂喜だけ。

「確かに許しはしないだろうぜ。だが、奴も哀れなもんだ。もう身動きできねえぜ。」

目の前に居るこんな修羅上がりのカスなど相手にするのは時間の無駄だが、
その背後で自分は傍観者と決め込むあの碧眼は、もう少し真実を教えておいてやったほうがよさそうだ。

「暗黒教団と与していたとなれば民を敵にまわすからな。あの気位の高い男が今更何が出来るよ。」

お前もだ、そう言わんばかりにヤアンの後ろを睨む。
ナイフの如く切れ上がった中でぎらつく黄金は獲物をしっかりと見据えて離さない。
気の弱い女だ。案の定、今の話を自身に置き換えたかのように瞳が泳いでいる。

「へっ、残念だが、俺の中に封じ込んである限りお前の野望はいつまでも野望のままで終わる。」

まるで歯牙にもかけていないことを気付いていないのか、ヤアンが挑発してきた。
だが、切り札を見せてもマヴガフの顔には不機嫌ひとつない。それどころか、また嘲笑が浮かぶ。
「テメェもつくずく馬鹿なヤロウだぜ。」意図を図ろうとするヤアンに吐き捨てる。

「抑えこんでいるつもりとはなぁ?ヒヒヒッ、面白れえ、面白れえよテメェ。」
「なんだと・・・!?」

何も知らないというのは、本当に幸せなことである。真実とは絶望の事だ。
神に作られた命である以上、真実に近づけば近づくほどに絶望を知る事になる。
この男はそれを知らずにのこのこ“この領域”へと踏み込んできた。ならば教えてやろう。
パチンと新たなフェーズの幕開けを知らせるべく指を鳴らしたその途端だ。
「うぐっ、うおおおお・・・!」目の前で崩れるヤアン。それを見下ろすマヴガフの口元が釣り上がる。

「ホラホラ!素直になれや!テメェの道に戻れ、そう修羅道にな!
 血を求めろ!肉を貪れ!狂気の鬼、それがテメェにお似合いの道だわ!ウッハッハッハ!」

神をこんな人間崩れが封じ込められるはずがない。そんな事は、ちょっと考えれば分かる事。
自分が制御できないような人形を誰が創るというのか。
人間はそれも分からずに誰かさんを作り出したようだが、向こうのほうがよっぽどお利口さんのようだ。

「・・・殺す!いや・・・俺はもう戻らん!うおおおお!」

ハデスのマナに侵されて自我を失いかけているヤアンはかつての衝動を抑えることで必死だった。
殺意のマナにぎらつく眼光は赤く光り、その目がこちらをむいた気がしてアンドラスは腰が抜けていた。

「ふふふ、染まっちまえば楽になるのにヨォ・・・。どこまでもバカな野郎だぜ。」

そうはならん、そう告げるかのように睨み牙をむき出したヤアンは人間の跳躍力とは思えないほどの力で飛び上がった。
まるでアンドラスから離れるかのように司法院の天井をぶち抜いた彼は滑るように夜空を駆け闇へと消えていく。

「ま、精々足掻いてみせろや?その足掻きも良い足しになるってモンだぜ。ヒヒヒッ。」

どこへ逃げようが、帰る場所など彼にはない。時限爆弾は既に仕組まれた。
放っておけば、勝手に次の行動への布石を打ってくれる。髪逆立ち眼光切れ上がる長身の男。
彼の横顔に浮かんだこれ以上ない悪意に染まった笑みに、アンドラスは心の底から震え上がっていた。

「そんな・・・そんな・・・こんなことって・・・。」

今まであんなに紳士的だった男が、まさかこんな悪魔が地に降り立ったかのような残酷狂気な悪党だったなんて。
このままここにいたら、ヤアンと同じようにされてしまう。
危機感が体中を駆け巡り、彼女は足音も憚らずにだっとその場から駆け出していった。

「大司教、あの娘はいかがいたしますか?」

魔道書にベルトをかけ腰にしっかりとしまい、飛んでしまった帽子を見つけ歩いていくマヴガフ。
彼の視界にもアンドラスの後姿は映っていたはずだ。だが何も指示が飛んでこないので、
身を潜めていたネクロ教の司祭達が闇から溶け出すように現れて問うが、
返ってきたのは「放っとけ」その一言だけ。困惑する司祭たちに、マヴガフの口元がまた上を向く。

「ヤアンがダメになったときの代わりが必要だ。何より、あの女はアルトシャンを縛る良い枷だからなァ。壊すにはもったいネェよ。」

なるほどと頷く司祭達。もうすでに包囲網は出来ているのだ。
アルトシャンにしろ、アンドラスにしろ、ここまで暗黒教団と密接に関わっていることが世に知れれば終わりだ。
主導権は既にこちらが握っている。もがけばもがくほど、立場を悪くするだけ。
それは本人達が一番分かっていることだ。彼らに使う時間は惜しい、今はもっと大事なことに費やすべき。

「それより、例の件、ピッチを上げとけ。復活祭までには何としても完成させとけよ!」

大司教の命に、司祭たちは静かに頭を下げ闇へと消えていく。
ひとりになったマヴガフは興奮にはちきれた口から狂喜を叫び、繁栄の町に絶望をまたひとつ植えつけるのであった。
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