FC2ブログ
現在の閲覧者数:

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←16話:殺意の修羅道 後編 →2話:貧乏性
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  • 【16話:殺意の修羅道 後編】へ
  • 【2話:貧乏性】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter19 泪なき友誼

1話:東方の異変

 ←16話:殺意の修羅道 後編 →2話:貧乏性
 あれだけべそをかいていたというのに、ゲイル達と合流した後は毎日笑顔のシャニー。
今日も朝からフンフンと鼻唄を歌って機嫌よく、ルアスのある方角を指差した。

「さぁ!五賢陣も倒したし!アルトシャン、待ってろ!」

アルトシャンやアンドラスを退けたことで帝都が大分近くなった気がする。
尤も、彼女はアンドラスにコテンパンにやられていたはずだが、そこは誰も突っ込まない。

「待てよ、五賢陣って言うからには5人いるんじゃないのか?」

珍しくまともなことをゲイルが口にして、シャニーがぽかんとしている。
たしかに、その呼び名からしてそう考えるのが普通だが、シャニーは「えーっ」と不満そう。

「私たちが倒したのはフェアリーゼだけよ?マヴガフだって・・・倒せてないし。」

エルピスが悔しそうに唇を噛む。今まで遭遇した五賢陣はまだ二人だけだ。フェアリーゼとマヴガフ。
そして倒すことができたかという見方に変えれば、まだ一人だけである。
マヴガフはピンピンしていたし、真正面からぶつかってとても倒せる相手ではない。

「あっれえ・・・。」

小難しい顔をして眉を歪める様子からするに、どうやら全員倒したつもりになっていたらしい。
「じゃあ残りの3人って誰だろう。」しばらく悩んでも出てこずに降参したかのように問う。
その質問はとてもシンプルだが、誰も答えを出せる者はいない・・・かと思われた。

「賢者イスピザードと聖騎士セインはルアスにいるのだろうな。」

あっさりとメルトから2名の名前が出てきて、ぽんと手を打つシャニー。
まさか本当に思いつかなかったのかと怪訝な目線を注いでやるが、どうにも違うようだ。
大方、認めたくないといったところか。彼らが、敵として立ちふさがっている事を。

「イスピザードさんやセインさんと戦えというの・・・。」
「シャニー、何度も言わせるな、これは戦争だ。戦わねば敗者に未来はない。」

案の定、シャニーからは戦いを避けたがっていることがありありと篭った言葉が漏れた。
だが、今回はメルトもその気持ちに同情してやることはできなかった。
ここまで来た以上、やるところまでやらねば、待つのは死。だが、「でも!」とすぐ遮ってきた。

「彼らは悪人とは思えないよ!」

ルケシオンで共に過ごした時のことも、最近は少しずつだが思い出してきた。
あんな優しい人たちがどうして。イスピザードにいたっては逃がしてくれたり、アドバイスをくれたり。
きっと何かあるんだと語るシャニーに、メルトは首を横に振った。

「戦いは何も殺し合いではない。戦い方はお前に委ねられている。」

相手は力で押し込めることしか考えていないだろう。
だが、彼女がその力に力で対抗することはしないことを守り手としてよく理解しているつもりだった。
ぱっと咲く笑顔。「ありがとうメルト。」柔らかく微笑んだ彼女から自然に感謝が漏れてきた。

「私、やっぱりイスピザードさんの顔を見てるとどうしても・・・。」

それから先は口にはできなかった。自分でも甘いとは分かっている。
だけど、今までイスピザードが攻撃を仕掛けてきたことはないし、何よりあの眼差しが気になっていた。
もの悲しげな、自分をじっと見つめる眼差しはどうしても敵とは思いたくなかった。

「あなたの考えには賛同するわ。あの人たちなら、話をすれば分かってもらえる、そんな気がする。」
「だが、気を抜くなよ。背後にアルトシャンがいることを忘れるな。」

エルピスまでシャニーの味方をするものだから、メルトはとっさに改めて警鐘を鳴らした。
分かってる、そんな風にシャニーが頷き、エルピスも彼女の背をひとつポンと叩いて励ました。

「大丈夫よ、シャニー。私たちがついてる。信じたようにやりなさい。」

姉貴分の優しくも頼もしい言葉に、シャニーは嬉しそうに目を三日月にして何度も頷く。
だが、ゲイルはそんな彼女達に賛同し、がんばろうとはとても言えなかった。
イスピザードはともかく、あのセインという男とは、どうにも馬があいそうにはない。

「俺はセインはよくわからねえよ。あいつの狙いはお前より俺みたいだったし。
 ルケシオンでもやたら馴れ馴れしくしてやがったしな、あいつ。」

いくら当時、シャニーがアスクと友好的な関係を築いていたとは言え、セインの行動には違和感があった。
帝都を守らねばならないはずの聖騎士があんな大陸の南方まで遊びに来る時間などあるはずがない。
おまけにシャニーにまとわりついて、まるで自分からシャニーを守っているかのようだった。あの時から、既に。

「シャニーちゃんに気があるんじゃねーの?で、お前はその恋敵・・・っておいおいマジになるなって。」

今ある情報だけを組み合わせれば出てくる当然の答えをレイが口にする。
だが彼は言ってから後悔した。ゲイルが凄まじい形相で睨んできたからだ。
「俺じゃなくてセインを睨めよ。」悪友の苦し紛れの一言にようやく牙を収めるゲイル。

「シャニーはルケシオンの代表、希光。一方お前はただの海賊だからな、帝国の認識は。」
「ふふ、残念ね?ホントはあなたがリーダーなのに。」

この旅でのリーダー格は一応ゲイルだが、ルケシオンでの肩書きは海賊である。
いや、ルケシオンでもシャニーを影ながら支えているのはゲイルであることは優に想像できる。
珍しくエルピスがゲイルをフォローしてくれたが、ゲイルは眉間にシワを寄せた。

「まぁそんなことはどうでもいいぜ。シャニーを狙われるよりかよっぽどマシだ。」

誰のために、何のために今までシャニーとがんばってきたか、それを考えれば肩書きなど無用な長物である。
そんな上辺だけ見てシャニーを狙ってきているなら、ますます怒りが湧く。
自分も、彼女も、心の底からあの町を良くしたい、変えたいと戦っていたのにそれにちゃちゃを入れてきたわけだから。
だが、ゲイルにも傷ついて欲しくないシャニーが悲しげな顔をしてきたものだから、「それよりだ」と無理やり話を変える。

「セインたちを合わせてもまだ4人。一体残りの一人はどこにいるってんだ?」

その問いには、誰も答えを出すことはできなかった。
もう帝国の人間でこれ以上知っている人物が思い当たらないのだ。

「方角的に考えてサラセンかルケシオンだな。」

消去法からメルトが仮説を立てる。それは間接的にサラセンだと言っているようなものだ。
サラセン、ルケシオンにいた頃はよくサフィと文通していたが今どうなっているかまるで分からない。
急にゲイルの顔が曇る。サラセンはゲイルの故郷だからだ。

「あー、そういえばギルマス会議にもサフィちゃん出てきてなかったな。」

思いがけない話をレイが思い出したかのようにあまりに能天気な風に話しだす。
ルアスでも情報通の彼だ。おまけに今回は自分の目で見たような口調にゲイルは思わず悪友の肩を掴む。

「なんだと?!サフィがやられたって言うのか!」

非戦闘員の体を鍛えぬいた腕でがくがくと揺さ振る。脳みそがシェイクされるような感覚に、
レイはたまらず尻餅を突いてしまい、ゲイルは申し訳なさそうに手を取って立ち上がらせた。

「いや、それはわからねえけど、武閃ってギルドのマスターが出てきてたぜ。」

今も頭がぐわんぐわんする。メガネに指を当ててずりあげながら当時のことを語るレイ。
サフィとはサラセンの修行僧時代からの友だ。2年前の戦争でも共に旅した面倒見のいい姉貴分だった。
あの日は彼女と久々に談笑しようと楽しみにしていたから、変わりに現れた怪物のような巨漢は印象に残っている。

「武閃だと・・・?聞かん名前だな。となると・・・既存のギルドを倒してトップに立った線が濃厚だな。」
「そんなバカな・・・。あのサフィがそう簡単にやられるとは思えねえ・・・。」

世界のギルドの事情には最も明るいはずのメルトですら知らないギルド。
そうなれば、最近勃きたギルドである事は間違いないだろう
親友の敗北がにわかには信じられなくて、視線が落ちるゲイル。

「なぁレイ、その武閃のマスターってどんな奴だったか覚えてるか?」

だがその顔をすぐにあげたゲイルは、落ち着きのない視線をレイへと向けた。
かなりの情報通である彼だ。顔だけでなく何かいろいろ知っているかもしれない。
だが、彼から帰ってきたのは、「うーん」という期待とは真逆の渋い顔。

「俺もアンドラスと話をしているのを見ただけだからなぁ。だけど、しっかり覚えてるぜ。
 化け物みたいな巨体に違わぬ恐ろしいマナを宿してやがった。以前、デルクで遭った修羅たちみたいな。」

明らかに、この世界の人間ではなかった。デルクレビスと言う死の世界で生き残る為に
他を殺しその力を取り込んで膨らんだ殺意のマナを宿す鬼達。彼らと同じマナの臭いは今も忘れられない。
サフィたちが倒した者達が宿す恐ろしいマナ。不穏な空気が一行の中に漂い始める。

「そんな・・・そんなこと・・・。」

その時だった。突然に震え始めた者がいた。シャニーだ。
彼女はいきなり瞳を振るわせ始めると、小さく首を何度も振りながら何かを否定しようとしている。
「どうしたんだ、シャニー?」それに気付いたゲイルが声をかけると、彼女は蒼褪めた顔を向けてきた。

「私、その人に心当たりがあるかもしれない・・・。」

皆の視線が一斉にシャニーの方へと向けられた。どの顔も彼女に言わんとしている事は同じだ。
だが、彼女はまた俯いてしまい、その“心当たり”を口にしようとはしない。
ゲイルがついにたまりかねて彼女の肩に手を伸ばそうとしたときだった。
「・・・私も何だかいやーな予感がするわ。」そう口にしたエルピスから、思わぬ提案が出てくる。

「ねえ、サラセンに行ってみない?時間がないのは分かってるけど、
 中央を攻めるなら地方からの挟み撃ちにならないようにしておかないと危険だし。」

どうやら彼女もどこか思うところがあるらしい。
何より、サラセンをサフィたちがまとめられていないのでは、ルアスへ赴くとき後方が心もとない。
ぐるっと皆の顔を見渡し、最後にメルトと視線が合う。彼はすぐに首を縦に振った。

「よし、念には念を入れておいたほうが良かろう。どの道、トパーズを奪われたままではどうにもならんしな。」

恐らくはサフィたちの後任ギルドは帝国とパイプが既に繋がっているはずだ。
帝都への突撃のチャンスはたった一度きり。その前に、潰せる懸念は潰しておかねばならない。
指を弾いてメルトの答えに賛同したエルピスを先頭に、一行は舵を切る。

「シャニー、心当たりがあるって誰のことなんだよ。」

歩き出してしばらくしても、シャニーからもエルピスからもやはり心当たりについては触れられなかった。
サフィの顔を思い浮かべ、痺れを切らしたゲイルは相棒を見下ろしてみるが、
彼女は「ごめん、ゲイル。」とだけ口にすると、答えを口にしようとはしなかった。いや、できなかったのだ。

「今は・・・言えない。そんなこと・・・信じたくないから。」

言っている意味が分からない。信じる、信じないではなく今起きている事実を知りたいから聞いているのに。
何とか聞きだそうと彼女に迫るゲイルの肩にぽんと置かれる手。
振り向けばそこには悪友の真剣な眼差しがあり、彼は静かに首を横に振った。

「実際にサラセンに行けば分かることよ。今はサフィちゃんの無事を祈ろうぜ。」

彼女をこれ以上傷つけてやるな。そう言われている気がして、視線を逸らすゲイル。
幼馴染だったサフィ。故郷を捨てた自分に代わり任せてきた親友。
自分がサラセンに残っていたら・・・そう考えついつい表情は険しくなる相棒の横顔に、
ますますシャニーは頭に浮かぶ男の名を口にできなくなっていった。


 半日歩いたところで休憩がてら小さな村を訪れた一行。
店から出る時、どっこいしょと掛け声をかけながらリュックを背負うゲイルがおっさん臭く見える。
だが、今思えばかなりの荷物である。自分が背負ったらぺしゃんこになりそうだと息を呑むシャニー。

「ごめんねゲイル、いつも荷物持ちさせちゃってさ。」
「いいっていいって。お前のそのほっそい体じゃ何も持てないだろ。」

思わず感謝の言葉が出る。ゲイルがいなかったら困ることばかりである。
いきなりの労いの言葉に照れくさそうにしたゲイルはにっと白い歯を見せながら笑って見せた。
頼もしい彼の言葉が嬉しくて、ふと彼の腕をツンツンと指で突っついてみる。まるで岩のように硬い。

「はー、こういう時だけはそのムッキムキが羨ましいよ。」

いつもはむさ苦しくて敵わないが、重いものを持ったりするときだけはあのくらいあれば、といつも思ってしまう。
ところが、それを聞いた途端ゲイルはそれまでの笑顔が明らかな苦笑いへと変わっていく。

「い、いや、いいんだよ。おまえはそのまんまで。」

声もどこか先ほどまでとまるで違い、何かを取り繕うと必死に言葉を繋いでいるように思える。
怪訝な眼差しを送ってますます慌てるゲイルを楽しむシャニーとは正反対に目が泳ぐ。
そのうち、ぽんと一つ手を打った彼女の顔に、にやりといたずら好きな笑みが浮かんだ。

「ははーん、私の美しすぎるボディラインに見とれちゃってるんだね。」
「お、おう。お前細くてきれいだからなぁ。」

ホルターネックの白いワンピースはボディラインを強調するには十分なファッションだ。
彼女は腰をくねらせて悩ましげなポーズをとって見せてやった。
だが、それに反応したのはレイだけで、当たり障りの無い反応をしたゲイルは相変わらず目がどこか焦っている。

(腕力まで手に入れられたらこっちの身がもたねえっつうの・・・。)

今でも支配力は既に大半シャニーが握っているようなものである。小遣いしかり、夕飯しかり。
これに加えて物理的な力まで加わったら、完全な封建主義となってしまう。
口にした言葉はウソではないが浮かれすぎだろうに。相棒に褒められてご機嫌なシャニーは妖艶なポーズをとり続け、
調子に乗ったせいでついにメルトに叱られてしまって頭をさすっている。
今はこれで大人しくなっているが、腕力を手に入れたらこうも行かなくなると思うと息が詰まる。

「それにしても鞄がなんだかパンパンだね。何がこんなに入ってるんだろう。」

救いを求めるようにメルトの説教から逃げ出してきたシャニーがゲイルの腕を取る。
その時だ。体に触れた鞄の感触は固く、かなりたくさんのものが入っていることをうかがわせた。

「そらお前、調理道具とか着替えとか、いろいろあるからなぁ。」

じっとリュックを見つめるシャニーに、当たり前のような答えを返してリュックを背負いなおす。
リュックの肩掛けは重そうに張っており、それを背負うゲイルの背中を引っ張るがゲイルのたくましい筋肉はびくともしない。
だけど、少しでも相棒の苦労は減らしてあげたい。もう一度リュックを触れて改めて彼女は唸った。

「うーん、やっぱゲイルも大変だし、一度荷物整理しようよ。」
「それがいい。ちょうどこの村には銀行がある。そこで整理するといい。」

シャニーの提案にメルトが賛同してくれた。こんな旅路だ、身は軽ければ軽いほうがいい。
何より無駄なものを持っていてはいざと言う時大切なものを持ち運ぶ事ができない。
ミスをなくすにはまず身の周りの整理整頓から。メルトが指差す先には小さいながらもメガバンクの支店がある。
ちょっとでも軽くしようと顔を赤くしながらリュックを両手で持ち上げるシャニー。
非力な彼女を笑いながらも、と共に銀行へと歩んでいくゲイルの足取りは軽かった。
関連記事
スポンサーサイト



総もくじ 3kaku_s_L.png 当サイトの小説における登場人物たちのご紹介
総もくじ  3kaku_s_L.png 当サイトの小説における登場人物たちのご紹介
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【16話:殺意の修羅道 後編】へ
  • 【2話:貧乏性】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【16話:殺意の修羅道 後編】へ
  • 【2話:貧乏性】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。