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 ←1話:東方の異変 →3話:乱心の守護神
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter19 泪なき友誼

2話:貧乏性

 ←1話:東方の異変 →3話:乱心の守護神
 どうして彼らの良く先ではすぐに騒がしくなるのだろう。
穏やかだった村、のんびりしていた鳥たちは仰天して飛び上がる。

「ちょ・・・なにこれー!」

素っ頓狂な声が上がるまで、そう時間は必要なかった。
銀行に不要なものを預けようとリュックをひっくり返した途端だ。
まるで伏魔殿に踏み込んだかのように、中身は混沌としていた。

「もう!こんな使いかけの薬をどうしてこんないっぱい別の入れ物に入れておくのさ!」

がみがみとシャニーの説教が始まって頭をかくゲイル。
言われても仕方がない。使いかけの瓶薬をまとめずに放り込んでいたのだ。
これではかさばっても仕方がない。空瓶が入っていないだけマシというレベルである。

「いやあ、やっぱ戦闘の時ぱっと手にとってさっと呑まないと危ないじゃん。」
「終わった後ちゃんと整理してよ!すごい場所を無駄に食ってたじゃない。」

ゲイルの言いたい事も分かる。一瞬で戦況に決着がつく状況で瓶の事など考えていられないことは。
だが、ゲイルの困ったところは、使ったことを忘れて戦闘が終わると「腹減った」しか頭にないことだ。

「いやあ、すまんすまん。やっぱ整理はお前がいないとダメだわ。」

昔は同じことでよくサフィに叱られた覚えがある。今だけは年下のシャニーがお姉さんに見える。
「もう、私がいなかったらどうするのさ、ゲイルは。」それを知ってか、ぶつぶつと説教を漏らしながら
シャニーはリュックの中に転がっている薬の瓶を片付けると、更に眉間にシワを寄せた。

「これも・・・ああ、これもじゃん!こっちには上着がくしゃくしゃに丸めて入れてあるし!」

後から後から、出てくる、出てくる。ゲイルの苦笑いは引きつっていくばかり。
まるで0点のテストの隠し場所が親に見つかった子供のようだ。
どんどんと積み重ねられる整理対象に、エルピスも呆れて苦笑い。

「ゲイルが独り身で生きてたら、きっとゴミ屋敷が出来上がるんでしょうね。」

「茶化すなてめえ!」ゲイルが拳を突き上げてエルピスに目線を向けると、彼女はさっと逃げてしまう。
だが、追いかけようにも背後から鋭い視線が飛んで、また萎んでいく。
こうした整理も含め大分シャニーに任せている部分がある為か、頭が上がらない。

「おー、綺麗にすると半分もスペースが空くんだな、すげええ・・・。」
「すげえ、じゃないでしょ!」

まるで人事のように感心して見せるゲイルの腕に、シャニーは思わずパンチ、パンチ。
「もう、もっと整理してよね!」そう彼女が言うのも仕方がない。
整理をしたら、あれだけパンパンだったリュックは腹が減ったゲイルの腹のように凹んですっきりしているのだ。

「はは、マジでスマン。じゃあ要らんものを銀行に預けとこうぜ。」

やっぱ自分はシャニーがいないとダメなんだと改めて思い知らされ、感謝の気持ちを篭めてぎゅっと腕の中に抱きしめる。
そうされるとシャニーも弱くて、口元を尖らせながらもそれ以上の説教は飲み込んで窓口へと歩き出す。
だが、穏やかには終わらなかった。やはり割れ鍋には綴じ蓋らしい。

「申し訳ありませんが、ちょっとお預かり品の整理をお願いできませんか?」

窓口の銀行員から困った表情で依頼された内容に、ゲイルもシャニーも顔を見合わせた。
この旅が始まってから作った偽名の口座だ。そんなにたくさんものを預けた覚えはない。

「へ?俺そんなにたくさん預けてたっけ?」
「ええ、お預かりできる点数をオーバーしています。」

きょとんとして顎に指を添えながら一体何を預けたか考え出すゲイル。
やっぱり、自分が整理整頓して、わざわざ銀行に来て物を預けるなんて、
そんな几帳面な事をする光景が恥ずかしながら自分自身でイメージできなかったが、銀行員は一枚の紙切れを寄越す。
「こちらがお預かりしている品と、依頼者のリストです。」それじゃよろしくと言った感じで
それだけ言うと、彼は他に客もいない窓口を離れ、奥のほうでぷかぷかタバコをふかしだした。

「うわあ、めちゃくちゃ預けてあるじゃねえか・・・。」

シャニーが伸ばした手の横から手を伸ばすゲイル。身長差のせいでリーチの分はゲイルにある。
何とか取り返そうと手を伸ばしてくるシャニーを遮って中を覗いたゲイルは口元を大げさに歪めて見せた。
確かに大量の品がそのリストには載っているが、「俺こんなの預けた覚えは・・・。」やっぱり、ゲイルにはその品々に覚えはない。

「シャニー、殆どお前のじゃないか。これはさすがに預けすぎだろう。」

ゲイルの横からメルトが覗き込み、開口一番犯人の名を口にした。
うっと目元を強張らせるシャニーの様子にぴんときたか、エルピスが金庫の中へと先に入っていった。
今度はシャニーが0点のテストが見つかったような気分だった。

「あっれえ・・・いつの間にこんなにたくさん。」

すっとぼけて見せるが、ゲイルに手を引かれて金庫へと入っていく。
中では転移術によって本店倉庫に保管されていた問題児達が次々と召喚されて来ていた。

「おいおい、こんな皮鎧なんか預けておいても使わねーだろ。」

召喚されてきた一つは明らかにこのメンバーの間では誰も使わない品。
周りを見渡せばそんな品がごろごろとしているではないか。
確かにゴミではないが、使えないのでは預けておいても意味がない。

「これも!何でお前、使えもしないこんなオーブなんぞ預けてあるんだよ。」

「メルトが使うかもしれないから!」そう答えようとしたシャニーの言葉を喉に押し込めたのは、
ゲイルが宝の山から摘み上げた一つのオーブであった。
どう考えても、このメンバーの中で使えるものは誰もいない。
反論に窮していると、向こうで山を漁っていたエルピスのため息が聞え何かを両手に抱えてくる。

「ポーションの空き瓶まで入ってたわよ・・・。」

使いかけで放り込んでいたゲイルのほうがまだマシに思えてしまう。
これにはさすがにゲイルもシャニーに呆れ顔を浴びせてやる以外に思いつかなかった。
「シャニーにとって銀行はゴミ箱なのかしら・・・。」彼とエルピスは顔を見合わせて苦笑い。
うっとしてもうシャニーには何も言い返すことが出来なかった。

「こっちにもあるぞ。何でお前・・・ディド目玉なんか銀行に入れている・・・。」
「シャニー・・・あなたの趣味を疑うわ・・・。」

騎士の中の騎士と言われた歴戦の勇者も、さすがに目の前にドンと目玉が現れて度肝を抜かされた。
目玉なんぞ集めるのはネクロ教か、趣味の悪いコレクターぐらいだ。
メルトでも気味悪がる光景に、エルピスは全身の毛が逆立って思わず妹分を冷ややかな横目で見下ろした。
「ち、違うもん!」とついに反論してきたが、ここまで決定的なものが出てきては違うも何もなく誰も相手にしない。

「何かに使うかもしれないでしょ!そう思って預けてあったの!」

まさかの言葉が飛び出してきて、誰もがシャニーのほうを振り向く。
もちろん、納得させられてではない。呆れた眼差しが一斉に降り注いで追い詰められる。

「何かって何だよ・・・そんなのいつになるんだよ。」

そんな何かが訪れる日はまず来ない。誰もがそれを知っている。
だがあまりにもシャニーが真剣な眼差しでこれを宝の山だと訴えかけてきたものだから、
苦笑いしながらゲイルは空き瓶の山や目玉を顎で示唆して彼女を諦めさせにかかった。

「いつか!その時のために!備えあれば憂いなしって言うでしょ!」

だがなぜかシャニーも引こうとはしない。ゲイルが捨てにかかったものを取り上げると
両手でぎゅっと抱きしめて隠してしまった。どうしていいか分からず困惑するゲイル。

「シャニー、備える事と溜め込むことは違うぞ、整頓だけでなくちゃんと整理しろ。」

メルトからまで叱られてしまうが、それでも諦めない。
まるでわが子を守る母のように腕の中に隠して身を丸める彼女に、男二人は理解に苦しんでいた。

「備えになるようなものなら預けておいても良いけどよ、これじゃ肝心なものを預けられねーじゃん。」

とりあえず説得しようとゲイルが声をかけてみるが、やっぱり反応はない。
仕方なく、彼女が抱えてしまったもの以外で整理できそうなものを探し出す。
だが、探すまでもない。預けてあるものの大半は、その類だ。

「これもいらねえよな、捨てるぞ。」
「ああ!だめえ!取っておいて!」

あまりに腕に中に抱え込んでしまった為か、シャニーは身動きが取れないらしい。
その場から大きな声で叫んできて、向こうでタバコをふかしていた行員がびっくりしている。
懇願して伸ばしてきた腕の先でゲイルにつかまれているのは、ステリクシャの入っていた空き瓶だ。

「シャニー、お前もしかして・・・捨てられないクチか?」

取っておく理由が分からない。おまけに彼女なりの理由もどこか掴みどころがない。
ようやくここでぴんと来た。彼女は目的あって残しているわけではない。
ただ単純に、捨てられないだけなのだと。図星か、慌てだすシャニー。

「だって・・・今捨てたら二度と会えないんだよ!いつか役に立つかもしれないのに!」

目を潤ませながら訴えかけてきた。言っていることは確かにそうだ。
だが、ゲイルはメルトと顔を見合わせてため息をついてしまった。
時々、ゲイルには彼女が分からなくなる時がある。不思議な人ナンバー1だ。

「あのなぁ・・・。そういうのを貧乏性って言うんだぜ。」

ルケシオン復興の旗手に就いてからというもの、資金に困らなかったことはなかった。
そのせいなのだろうか。こうして使えるものは取っておこうとする癖がついたのは。
だが、程度と言うものがある。やんわり叱るが、彼女は苦笑いするだけ。

「は、はは・・・いいもん。私は貧乏でも心は裕福だから。」

こういうことを平気で言えるからまた不思議な人間である。
確かに、先日全財産を故郷に送ってしまった為、今も財布には小銭しかない。
もちろんそういう問題ではなく、ゲイルはすぐに彼女の頭に軽く拳骨を落とす。

「バカなことを言っていないでさっさと整理しろ。さもないとお前を棄てて行くぞ。」
「わぁ!そんな酷いこと言わないでよ!」

どうにもゲイルは甘いものだから、シャニーも甘えてそのままで済まそうとしているのが見え見えだ。
だが、彼とは違い、メルトは厳しかった。ばっさりと彼女の言葉を斬り捨てると、
エルピスを伴って足早に銀行を出て行こうとしているのだ。
これにはシャニーも飛び上がり、仕方なく宝の山と対面してため息をついている。

「うう・・・ごめんね、あなた達のことは忘れないからね。」

悲痛な面持ちで宝の山を二つの山に仕分けしていくシャニー。
そして、ついに全て仕分け終えると、片方の山の処分を行員にお願いしたのだが、
まるで命をとられる人間かのようなその蒼褪めた顔にゲイル達は呆れ以外の感情が湧いてこない。

「・・・相当な貧乏性だぜ、ありゃ。」

自分の相棒とは言え、今だけは他人の振りをしたいゲイルは銀行の外に飛び出した。
だが、エルピスは意地悪な笑みを浮かべるとシャニーの前に詰まれた“宝の山”を指差した。

「棄てられない性格のおかげであなたも棄てられないで済んでいるのかもよ?」

「何を!」といつも通り顔を真っ赤にして言い返してくることを期待していた。
ゲイルとはこう言うケンカ友達で、茶飯事の事。ところが、今回は言葉が返ってこない。
彼のほうを見て思わずぎょっとした。恨めしげな目で彼が睨んでいたのだ。

「俺今グサッと来た・・・グサッときたもんね・・・。」
「あら・・・意外にクリティカルヒット?」

何かシャニーとケンカでもしたのだろうか。まんざらでもないゲイルの表情は震えていた。
最初は謝ろうかと思ったが、屈強な男の情けない恰好には思わず笑いが噴出してくる。
笑うなと睨んでくるゲイルが余計に笑える。結婚前から既に上下関係ができてしまっているらしい。

「ものを大事にするというのは褒めるべきだが・・・これはさすがにな・・・。」

うな垂れるゲイル、それを見て面白がるエルピス。もうシャニーの貧乏性などどうでもいいらしい。
メルトだけが、手続きの為に書類記入する行員の横で、
今も“宝の山”を今にも泣き出しそうな顔で見つめるシャニーにため息をつくのであった。


「はぁ~。」

悲壮な決別から三十分後、不機嫌さが抜けきらないシャニーは大きなため息をついていた。
周りは清々しい緑、そして寒空だが高い蒼い空。重い気持ちなんて吹き飛ばしてくれそうだが、
いつも太陽のような彼女が曇っているとどうもパーティの気持ちも重い。

「どうしたんだよ、またため息なんかついて。」

だいたい彼女の言いたいことは予想がついているが、こういうときは大抵声をかけて欲しいときだ。
横を並んで歩いて彼女の悩みを聞いてやろうと思ったのだが、
彼女はまるで避けるようにスピードを落としてゲイルの後ろを歩き出す。

「だってさぁ・・・。」

心配してゲイルもスピードを落とすものだから、またシャニーもスピードを落とし・・・。
それを繰り返して。ついにシャニーは周りを見渡してため息をついた。

「右を見ても・・・。」
「ん、何か用か?」

彼女が振り向いた先にはメルトがいつも通り仏頂面で歩いている。
彼女の視線を感じて振り向くが、途端シャニーは不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。
何かあったかとゲイルのほうに視線を送るが、ゲイルも困惑した眼差しだ。

「左を見ても・・・。」
「何だいシャニーちゃん。今日は辛そうだねえ。」

メルトを避けるように振り向いた先には、今度はニヤニヤするレイの顔。
彼はメルトとは違い心配してくれるのだが、今は彼に慰めて欲しい気持ちでもない。
彼女は逃げ場を求めるように、誰の顔もないはずの正面を向いて大きく重い息を吐く、そこにはゲイルがいたのだ。

「そんでもって正面を見ても・・・男ばっかなんだもん!」

どうやらむさいこの状況が今の彼女には堪えられないらしい。
紅一点といえば聞こえは良いが、実際は無骨な騎士、ナンパ男、そしてガチムチ男、劣悪な状況だ。

「しょーがねえだろ!俺を見てそんながっかりした顔するなよ!」

今までだってこういう状態は見慣れたものだったはずなのに、シャニーの不機嫌さはない。
おまけに、それをフィアンセの顔を見て言うものだからゲイルもむっとして言い返した。

「悩み多き乙女にこの構成は地獄だわ・・・。はぁぁぁ、エルピス早く帰ってきてえええ・・・。」

空を仰いで叫ぶように姉貴分の名前を呼んでまるで救いを求めているかのようだ。
今エルピスは偵察の為に、一人先方の状況を確認しに行っている。

「何言ってんだよ、俺に相談すればいいじゃないか。」

だが彼女の悩みに、そんなことかと軽くため息をついたゲイルは彼女の肩に手を置いた。
フィアンセ同士、悩みは何だって言葉にしてきた。
だが今日は余程ご機嫌斜めなのか、その手をぱっと払い除けてきた。

「ゲイルにできないようなことだってあるの!」

こんな事をされるのは彼女を怒らせてしまった時か、怒り度がすごい時だけだ。
でも、今日は自慢ではないが彼女に怒られるようなことは何一つしていない自信があった。
さっき銀行で大切な“宝”を棄てさせられた事がよっぽど気に障ったのだろうか。
「隠し事はなしって約束したじゃないか。」そう言ってもう一度彼女に歩み寄るが、
何度か首を横に振ると彼女にため息をつかれてしまった。

「はぁ・・・これ以上私に言わせないで。」
「??」

まるで彼女の言いたいことが理解できずに、困惑して眉間にシワを寄せる。
絶対彼は分かってくれていない。顔から悟ったシャニーは彼の手を払うとレイのほうを向く。
「こいつを何とかして。」そんな気持ちが伝わってくる。

「レイさん、このデリカシー0にしっかり教育しといてね!」

ぷりぷりしながら、彼女は早足になると一行の前を一人で歩きだしてしまった。
苦笑いするレイとは対照的に、ゲイルは相変わらず口をへの字に曲げて相棒の態度を理解できずにいる。

「何なんだ?あいつ、今日はやたらプリプリしやがって、アレの日か?」

シャニーが不機嫌になる日が毎月定期的に訪れることは、フィアンセとして毎日生活を共にしてきたゲイルは身を持って知っている。
だから彼女が機嫌の悪いときは「アレの日か?」と茶化すものだから毎回大騒ぎになる。
今日も例に漏れないらしく、前方からギラリと何か鋭いものが走ってレイはすくみ上がった。

「・・・分かってるんなら察してやれよこのバカ・・・。」

ゲイルの方は慣れたものだからか、そんな視線を浴びせられても平然としている。
だが、周りにとっては堪ったものではない。彼女の大事な日にゲイルが怒りを買って出血騒ぎになるのは結構だが、
こちらにまでその火の粉が飛んでくるのだから。怒られるのを知っていて口にするあたり、
やっぱりゲイルはマゾなんだとレイは確信したのであった。
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