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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter19 泪なき友誼

3話:乱心の守護神

 ←2話:貧乏性 →4話:帰省と再会
 午後になるとシャニーの不機嫌も少しずつ収まってレイ達はほっとしていた。
無論、ゲイルが無傷で済む事は無く、コブがいくつか出来ているがそれで済んだならレイ達にとっては上々である。
過ぎ行く道のカンバンにサラセンの名が出始めた頃である。一つの村にたどり着く。

「まったく、これはどうしたことだ。」

その村の住人と思しき農夫が困惑の表情を浮かべて自身の農地を見下ろしていた。
こういう困った顔をしている人がいると放っておけないのがシャニーである。
何かを察して、すぐに手にしていた鞄をゲイルに放り投げると農夫の下へと駆け寄っていく。

「どうしたんですか?何かあったんですか?」

見知らぬ乙女に話しかけられて、困惑した眼差しを彼女に向けてみる。
憤りをぐっと飲み込むように一度視線を外すと、「どうしたもこうしたも」と苛立ち隠せない口調が帰ってくる。

「最近武閃の連中が逃げて来るんだよ。」

彼はサラセンがある方角を見つめて、大きな重いため息を吐き出した。
その表情には今も困惑と苛立ちがはっきり刻まれていて、シャニーたちの不安を沸きあがらせた。
一体今サラセンで、何が起きているというのだろうか。

「武閃と言うと、今サラセンを統治しているギルドの事か。」
「そうだ。中には逃げる合間に物を奪っていくものまでいるし。」

農夫が困っているのはまさにその盗人のせいであった。
メルトの問いに彼の視線が再び畑に向けられて、そちらへ視線を移した彼らは言葉を失った。
見るも無残に農作物が荒らされている。中にはこの混乱に乗じた盗人までいるらしい。

「俺達はあのヤアンって男を信じていたのに、一体何が起こってしまったんだろうな。」

武閃がサラセンの統治ギルドとして収まってから、ヤアンが一貫してきた方針。
それは有言実行と言う彼の言葉の通り、これまでずっと守られてきた。その均衡が最近になって突然破られたのである。
理由は定かではないが武閃自体に異変が起きていることは目の前の光景を見ても明らかな事だった。
その時である。「ヤアンですって・・・?!」そんな突拍子もない声を上げた者がいた。シャニーである。
彼女は名前を聞いた途端蒼褪めて、口元を手で押さえて悲鳴を押し殺していた。

「そ、そんな・・・。」
「どうしたシャニー。ヤアンって奴、やっぱ前も言ってた心当たりがある奴なのか?」

彼女は以前も口にしていたのだ。だが、信じたくないとその男の名を教えてはくれなかった。
今、どうしても逃れられない事実が横たわり、ゲイルからの問いに首を横に振れずにいた。

「修羅の長だよ!前の戦争で、ハデスとの戦いでも一緒に戦ったんだ!」

自分の想いを認めてくれ、人を殺める事にもう二度と拳を振るわないと誓ってくれた心優しき鬼。
彼が憧れた光の世界。別れの時にその日差しを浴びながら見せてくれた笑みは今も覚えている。

「何だと?!そいつが今度はマイソシアで何か企んだっていうのか。」

だが、ヤアンを知らないゲイルにとっては全く正反対の人物像が描かれていた。
修羅、それはかつてデルクレビスであらゆる生をその拳で握り潰してきた者達だ。
彼らが今度はマイソシアに侵食してきたというのである。サラセンに・・・サフィが危ない。

「ヤアンさんはそんな人じゃない。」

だが、ゲイルの不安をシャニーは怒ったような口調で全面否定してきた。
彼女の人を見る目が確かなことはゲイルも良く知っており、彼女の怒りに口を閉ざした。
彼女も怒鳴ってから自分に気付き、ばつ悪そうに俯くと「立身したら顔を見せてくれるって・・・約束してたのに」そうつぶやいた。

「どうも悪人とは思えないけど・・・。あなたもさっき信じてたとか言ってたわよね。」

シャニーの口ぶりから、エルピスも同調して確かめるように農夫に問うてみる。
だが、「だが、ヤアンは一般人には手を出さないとは言えマフィアの長だ。」震える目で彼は警告してきたではないか。
この一行が、厄介ごとに首を突っ込もうとしている事が分かったからだ。

「君たち、サラセンに行こうとするなら止めておいた方がいいぞ。
 ゴットファーザー、ヤアン。奴に目をつけられてその拳から逃れられた者はいないそうだ。」

いくらヤアンと紳士協定があるとは言え、よそ者の干渉に彼らが穏やかである保障はどこにもない。
今までヤアンの拳は専ら悪人へと向けられてきたが、ヘタに波風立てれば自分達の生活にまで波及するかもしれないのだ。
特に、今の緊張した状況であれば尚更に。彼はそれを恐れて、被害が出ても抗議せずに済ませてきたのである。

「じ、じゃあサフィは大丈夫だろうか・・・。」

誰の胸の中でも一番に胃をきりっとひねりあげていたのは親友の安否だった。
その中でも、幼い頃から同じ釜の飯を食ってきたゲイルはもう辛抱ならずに口に漏れた。
すると、意外な答えが返ってきたではないか。

「サフィさんは今もサラセンにいるはずだ。道場の看板を取り戻す為に鍛錬してるだろうよ。」

思わずその場にへたり込みそうになるほどの安堵。
湧きあがりそうな涙をぐっと堪えた。無事、だがこの目で見るまではまだ、その時ではないと。
今回は逆にシャニーがゲイルの肩に手をやって、ウインクして励ましてあげた。

「ヤアンさんは他の修羅とは違う。話せばきっと分かってくれるはずだよ!」

改めて、彼女は仲間にヤアンのことを話す。彼はただ殺意で動く修羅ではなかった。
そして今、彼がマイソシアで信用されるほどになっているというのだ。
会ってみたい、その心が彼女を仲間への説得へと走らせていた。
「どの道、サラセンに行くんだろ?」レイの言葉に、シャニーは嬉しそうに頷いた。
どうやら他の仲間達も同意見で、シャニーの言葉に反論するつもりはないらしい。

「ねえ、サラセンは今普通には入れないの?」
「帝国の方策が変わってから警備が強化されてるな。」

村人にいても立ってもいられない眼差しを向けると、彼はサラセンのほうを向いて重い言葉を漏らした。
そして、もう一度シャニーのほうを向いて問うた「・・・本当に行くつもりなのか。」
華奢で可愛い娘だが、その芯はとても強いことは瞳を見れば分かる。答えは大方、予想がつく。

「ヤアンさんは私の知り合いなの!話を聞きたいんだ!」
「おっかねえともだちがいるんだな、嬢ちゃん・・・。」

人は見かけによらないとはこういったところか。どう見てもどこかの町娘だというのにあの男の知り合いだというのである。
彼はしばらく腕組みをしていたが、彼女の瞳がとても冗談やお遊びを方っているとは思えず、
ついについて来いと歩き出す。「この村に武閃から逃げてきた奴が住んでる。話をしてみろ。」
シャニーは仲間達に一つ頷くと、先頭を歩いていくのであった。


 案内されたのは農夫の家の離れだったたところにある。中には今も頭を抱えて、血走った目が空を泳ぎ、
とても普通の心理状況とは思えない屈強な男が隅っこにうずくまっていた。
どうにも声をかけづらいが、「あの・・・。」とシャニーは意を決して彼に話しかけてみた。

「以前武閃に所属されていた方と聞いたのですか?」
「?!熾天使!」

目線があった途端、男はすぐに逃げ出そうとしたが、もうそこは既に壁の前。
追い詰められた血走る目がもう一度シャニーを見た途端だ。叫んだ彼は、手足をばたつかせながら寄って来て
まじまじ見上げると「俺はかつてデルクレビスで修羅として生きていた者だ。」と告げてその場に座り込んだ。
シャニーとヤアンが仲がいいことは知っている。きっと助かったと思ったのだろう。

「ええ・・・ヤアンさんと共にマイソシアで暮す人々がいるとは聞いてたけど、本当だったんだ・・・。」

目の前に巨漢が座り込み、自分の手を振るえながらにとる姿にシャニーは言葉を失っていた。
かつて修羅と恐れられていた人たちが、こんな穏やかそうな人に変わっている。
そんな人たちが酷く怯えている。たくさんの情報が一度に頭に流れ込みすぎて、言葉が詰まる。

「なぁ、どうしてお前は逃げ出してきたんだ?ヤアンはどうしたんだ?」

哀れそうに見下ろすシャニーの瞳が少しずつ涙で潤み始めている。
その彼女に変わり、ゲイルが男のもとにかがみこんで顔を見上げた。目は充血しきり、今にも泣き出しそうだ。
「ボスは・・・変わっちまった。」その目がゆっくりスライドしてきて、搾り出されたのはその一言だった。

「前はあんなことする人じゃなかった・・・。」

ヤアンがいたおかげで、この世界で暮すことに自信を持てるようになった。
まさに自分達の指導者と誰もが疑わなかった。だが、自分が今こんな事になって精神を病んだのも、
他の仲間が散り散りになったのも、あのヤアンが豹変してしまったからだ。

「いや、今でもボスは変わってはいない・・・けど・・・。」

あれだけ頼りになったボスが、ある日突然鬼のようになって暴れまわる。
その現実を思い出しながら、どうしてもそれを飲み込めない。
だが、拭い去れぬ事実は彼に悲鳴を上げさせた。

「う、うわああ!」
「どうしたんですか!しっかりしてください!」

こんな体格のいい男が縮こまって震え悲鳴を上げる様は異様としか映らない。
すぐにシャニーが彼の体に触れ落ち着かせた。
今までどんな強敵を前にしても怯える事のなかった自分が・・・その事実をぐっと飲み込み、男は静かに語りだした。

「ボスは共存の道を歩み、地元民からも信望厚かった。」
「あれ、前のギルドを倒して侵略したってワケじゃないのか?」

彼の語った経緯に一番に違和感を覚えたのはゲイルだった。故郷が知らない連中に蹂躙されている。
そう思って胃が絞り上げられるような思いの中ここまで来たのに、まるで事実は違うのだ。
「無礼な」と、ゲイルの言葉に苛立ちを見せる男の目には光が戻ってきている。

「俺達は正式に前ギルドマスターに勝負を挑んで勝利し、正式に統治ギルドに収まったのだ。」

マフィア業とは言え、筋は通したつもりである。
また、マフィアとは言え、ヤアンと交わした誓いに従い、悪人以外には決して拳は振るったことはない。

「さっきも言ったとおり、俺達はボスの下、地元住人と共存の思想を大事にしてきた。マフィアとは言えど、な。」

先ほどの農夫の言葉、そして今目のまで静かに語る男。
彼の眼差しはサラセンのほうを見つめている。恐らくは、残してきた者達を案じているのだろう。

「それがどうしてこんなことになってしまったんですか?」

彼らは他の帝国の連中とは違い、腹を割って話が出来るに違いない。
そう確信したシャニーは男の目をじっと見つめてはっきりとした口調で問う。
男は最初と惑っているようだったが、相手はボスの友。

「ボスが時々・・・人が変わるんだ。まるで血を求める鬼みたいに・・・。」

とても強い男だった。力を持っているが、それを収め民を守る力を持っている男。
それは、この目の前にいる乙女との約束を果たしているからだ。
誰もが憧れる彼が、ある日を境に人が変わったように暴れるのである。ルアスから帰ってきた、あの日から。

「俺が逃げた時も俺を殺そうとしたのはボスだ。」

信じられない、そんな言葉さえもが喉に詰まって出てこないシャニーの瞳から涙が零れる。
彼女の涙の意味を男は分かっていた。だからこそ、もう一つの真実を伝えなければならないと意を決し、
「だけど、逃げるよう叫んでくれたのも・・・ボスだったんだ。」その言葉に、先ほどよりシャニーの目が見開く。

「何か裏がありそうね。やっぱりシャニーの言う事も間違ってはいなさそうだわ。」

腕組みをして話を聴いていたエルピスが仲間達を見渡して語りかける。
彼らの意志が、サラセンへ向かうという一つへと決まるまでそう時間はかからなかった。

「俺達も何かあると持って何度もボスに聞いたけど、何も教えてはくれなかったんだ。」

全てを語り終えた男は、がっくりとうな垂れて懐かしき栄光の時を思い出していた。
あれはもう既に過去のものなのか、いや違う。これから、これからだったはずだ。
「頼む、ボスの親友なら何か教えてくれるかもしれん。ボスを助けてくれ!」気付くと、シャニーの両肩を持って懇願していた。

「ならば我らにサラセンへの安全な道を教えてくれ。あるだろう、組織専用の抜け道が。」
「なんだと?!」

もうすでにサラセンへと向かうことを決めていた一行。シャニーは優しげに微笑んで頷く。
この世界に本当に天使がいるのかと思えるような笑顔に映る。だが、次の瞬間、突きつけられた条件に男は仰天していた。
さすがメルト、こういった事例に関しては裏の話を良く知っている。

「・・・分かった、お前たちを信じよう・・・。どの道このままじゃ組織は終わりだ。」

秘密通路を知られるということは、いざというときの備えを失うということ。
だが、画龍点睛を欠く・・・いや、心臓さえ止まった今のままでは備えも何もない。
彼は藁をも掴む思いで、地面に一つの絵を書き出した。

「なぁ、さっき正式に勝負を挑んだって言ってたけど、じゃあ前のギルドのマスターは生きてるのか?」

地下通路の説明を終えた男は、ヤアンの、そしてサラセンの無事だけを祈ってひたすら祈りだした。
やはり、侵略の末の勝利と言うわけではないらしい。ずっと抱いてきた不安を、レイがついに問う。
その質問にはゲイルもはっと目を見開いて男の答えを待つ。

「ああ。奴はボスを倒そうとしてる。このままじゃボスが不憫だ、絶対何かあるのに!」

サフィたちは今回のことで、ヤアンからサラセンを取り戻そうと動いているらしい。
彼女達が今も壮健である事にはほっとするが、事態が良くない方向へ動いている事を知り、
誰もが猶予のない状況に表情が固くなっていた。

「良かったな、とりあえずサラセンへ行く二つの目的は既に果たされた。」

だがメルトは冷静におかれた現況を整理して、要らぬ不安から一行を目を覚まさせた。
サラセンへ向かう理由は、帝国の支配からの開放とサフィたちの救出だ。
サフィたちは元気だし、サラセンは帝国の支配下とは言え独自の自治を保っている。
あとは、その自治を守ってきたはずの男の豹変の理由を知り、諌める事だけだ。

「うん。あとはヤアンさん・・・。」

男から教えてもらった地図を紙に書き写したシャニーは小屋を出た。
その視界はじっとサラセンのある方角を見つめて、今にも泣き出しそうだった。
「どうして・・・?きっと教えてくれるよね・・・。」大事な友達の答えを信じ、彼女は手を結び祈った。



「カムフラージュの為とはいえ、この黒ずくめの恰好はなぁ・・・。」

武閃の者達が外遊する時に身を包む黒いスーツ。
「同じ恰好をしていれば隠し通路を歩いても怪しまれないだろう」村を後にするとき、話をしてくれた男の提案だった。
だが、いつも上半身はシャツ1枚のゲイルにとって、これは妙に着心地が悪い。

「そう?かっこいいじゃん!」

ところが、相変わらず新しいことをするときはハイテンションで元気100%のシャニーはご他聞に漏れず、
「ふっ、海賊シャニーはマフィア装束もばっちし着こなすぜ!」と今日も妙に嬉しそうだ。
どうやら一度こういう黒ずくめをしてみたかったらしく、いろいろポーズをとってコスプレイヤー気分である。

「あなたが一番似合ってない気がするけど・・・。」

そんなご機嫌をぶち壊す一言に、シャニーはエルピスに頬を膨らませながら突っかかった。
だが、こんなほけほけとした人間が黒装束に身を包んだところで何の威圧感もないのは誰もが思っていること。
「まったくどこまでも遠足気分な連中め。」またしても、メルトから叱られて二人して小さく舌を出す。

「無駄口を叩いている暇があったらさっさと歩け。」

ツカツカと革靴の底で石畳を叩き先頭を歩くメルト。その姿に姉妹はぽかんとしていた。そこにはマフィアがいたからだ。
元騎士とは思えないほど、ハードボイルドなダンディフェイスはオールバックに決まった髪型と相まってマフィアの恰好が似合っていた。
くすくすと笑う声が聞こえ、メルトは思わず赤面すると咳払いして彼女らを黙らせにかかった。

「それにしても港からサラセンまで坑道を掘るとかすげえな・・・。」

拳で壁を叩きつけてみるゲイル。返ってくる音と衝撃から、しっかり作りこんである事が分かる。
立派なつくりの地下通路、これを一から掘ったというからなかなかの団結力だ。

「かつてデルクレビスで生きていた者達だ。この程度造作もなかろう。」

力を持った者達だ、作ること自体は出来るかもしれない。
しかし地下通路を作った目的が、サラセン港へ行き来する民の不便さを解消するためだとすれば驚くしかない。
かつて命を握り潰してきた者達だ。それが今、民を守るために生きている、その変わりようには。

「ね、ねえ、誰か歩いてくるよ!」

耳のいいシャニーがすぐに足音に気付き、ゲイルの腕を引っ張った。
すぐさま聞えてくる靴の音。民の為に作った地下通路、その一環で作られたここは隠し通路だ。
歩いてくるとすれば、武閃の連中しかいない。想定していた事とはいえ、手に汗がじとっと滲む。

「よーう同士!なんか港でいいもの売ってたか?はっはっは!」

厳つい男、その眼差しはやはりかつて修羅だったらしい威圧感を持っている。
あまりの巨体にごくりと息を呑んだシャニーだったが、彼はこちらを見つけると、
まるで親友かのようにそれまでの険しさを消して、手をあげながら笑顔で声をかけてそのまま去っていった。

「なんか悪の組織って感じがしねーな。もっとドスが利いてるのかと思ったぜ。」

へなへなと座り込んでしまったのはレイだ。どうやらシャニー以上にビビっていたらしい。
「何あなた、まなさビビってたの?」情けない姿にため息をつくエルピス。
彼女に手を伸ばして立ち上がらせてもらおうとするが、そう甘くはなかった。

「まったく優男なんだから。」

彼女はレイの手を叩いてそっぽを向き、悲しげな眼差しを送るレイに皆苦笑い。
ほっとしたところもあった。武閃は村人や元部閃の男が言っていたとおり、頭がしっかりとした組織のようである。

「とは言え、マフィアは密売や密輸と深い関わりがあるだろう。」

それでも、メルトは元騎士からか、彼らの存在自体を肯定はしなかった。
彼らが民を守るためと集める資金は黒、または浄化された白だ。闇の世界を作り上げていることに変わりはない。
「サラセン港が昔のルケシオンともなりかねない。」彼の言葉に、シャニーも俯いた。

「なんか昔の自分達を見てるみたい・・・。海賊を名乗りながらも地元とは共存を図って・・・。」

確かに海賊として、いろいろ悪いこともしてきただろう。その資金で、父デムピアスが故郷を支えてきたことを彼女は知っている。
それを悪とは言い切れない。「お前の代になれば、お前のやり方をすればいい。」父がそう言ってくれるのも、
もしかしたら、誇り高き海賊王にもそう言った気持ちがあるのかもしれない。もっといい方法が、きっとある、と。

「闇の世界との繋がりはともかく、まずはサラセンに行ってみないと連中に行動もわからねーよ。」

妙に彼らに親近感を持ってしまっているシャニーへ警鐘を鳴らしたのはゲイルだった。
彼はまだ、武閃を信用したわけではなかった。サラセンが、故郷がどうなっているのか、早く知りたかった。

「ゲイル、気持ちは分かるけどあまり血の気に走らないでね。」

彼の言葉にいつもの穏やかさがないことにシャニーも誰よりも早く気付いた。
もう2年以上、一緒に暮している相棒だ。彼があせっていることはすぐに分かる。
そっと彼の腕に手を添えてやんわりと注意してやると、彼は驚いたように目を丸くした。

「わかってら。」

相棒に要らぬ心配を掛けてしまっていることに気付き、彼は吐き捨てるように前を向く。
「俺はもうサラセンの人間じゃねえからな」そう口にしたが、それはシャニーへ向けてというよりも、
自分自身に言い聞かせるようで、彼女も一つ頷くと相棒の横を歩いていった。
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