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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter19 泪なき友誼

6話:聖務日課

 ←5話:男ってヤツは →7話:過ぎたるは及ばざるが如し
 あれだけこっぴどくシャニーに叱られたというのに、もう元通りなのは若いからかタフだからか。
翌日、町に出ていたレイは上機嫌で帰ってくると、ゲイルの前に腰掛けて早速自慢しはじめた。

「さーて、今日もオレ様、しっかり働いたぞ。」

レイの働いたはあまりアテにならないのだが、今日は珍しく聖職者の服を着ている。
一応、司祭の彼だから今日は本当に聖職活動をしたのかもしれない。
「何だよ、やたらご機嫌じゃねーか。」と、一応聞いてみることにする。

「オレ様の人徳のおかげでな、また入信者を獲得できたってわけよ。」

良くぞ聞いてくれましたと言わんばかりにニッと白い歯を見せると、
テーブルの上に数枚の何かが書かれた紙を滑らせた。だが、ゲイルは目を細くして無愛想に視線を逸らしてしまった。
「へー、なーんだ。」彼のあまりにもそっけない態度に、レイがため息をつく。

「なーんだじゃないでしょ、ゲイル君。」

だが、ゲイルは聞く耳を持たない。レイはあの場で済んだからいいかもしれないが、
ゲイルは部屋に戻ってからも散々叱られたのである。「堂々としなさいよ!」と言われてどうしようかと思った。
そのままベッドに押し倒してやろうかと思ったが、ぐっとその気持ちを押さえ込んだ。
他の女性ならそういうサインかもしれないが、シャニーの場合は恐らく違う。もしかして、で事を起して違ったら今度こそ死刑だ。
せっかくあの時我慢したのに、これ以上レイに振り回されたら大変なことになる。

「まぁまぁそう言わずに見てくれよ、オレ様の成果を。」

それでもレイは諦めず、テーブルの上に散らばる紙を手にとってゲイルに見せ付けた。
どうせまた町で見かけた女性の写真だと思って歯牙にもかけなかったゲイルだが、横目で見た中身に声が出る。

「おっ、マジで名前が並んでるな。」
「だろ?だろ?」

それは確かに、お堅い聖職者教会のロゴ入りの、様式が整った入信希望者リストだった。
意外にも数も多く、「オレ様がんばったんだぜ?」というレイの言葉もあながちまんざらでもないのかもしれない。

「まぁ、俺にとっちゃこんなリストよりシャニーのレシピが増えるほうが嬉しいけど。」

だが、ゲイルは手にしていた紙をすぐにまたテーブルの上に放ってしまった。
おまけにあろうことか、また相棒のことを口にする幸せものっぷりを見せ付けてきて、レイは恨めしそうだ。

「はぁ、お前はつくづく喰う事しか能のない男だねえ。」

ぽっきりと首を折ってため息をついてみせるレイ。ゲイルにかかるとなんでもシャニーや食い物のことになってしまう。
今もゲイルの頭の中は、シャニーのご機嫌が戻ったかどうかしかないようである。

「ははは、それほどでも。あいつの飯ならいくらでも食える自信があるぞ!」
「・・・褒めてねえっつーの。」

ますます首を折るレイにガハハハと腹から笑うゲイルだが、それもすぐにしょんぼりと萎れる。
今日からその彼女の料理が半分しか食えないのである。
絶望にはあっと大きくため息を吐くと何だか腹の中まで持っていかれたようで虫が鳴った。

「ん・・・なんだかこれ、女の名前ばっかりじゃねーか。」

空腹を誤魔化そうと手にしたのは、さっき放り出したレイの“成果”だ。
特に見るでもなく眺めていた時、ゲイルは妙な事に気づく。
だが、レイのほうは息を吹き返して「よくぞ見抜いた!」とぽんと手を打ってゲイルを讃えだす。

「そりゃお前、女性は神聖なんだ。声をかけなくては失礼だろう。」

よく分からない信念を当然と言わんばかりのすまし顔で語られて唖然としたゲイルは、
「そういうことか。」と目がまた細くなって侮蔑の眼差しをレイへと送る。
多情伝道師の名は今でも健在で、どうやら布教の名目でナンパをしに行っただけのようである。

「そんなこと言ってると、また神官長に叱られるぜ。」

敬虔な信者なのだが、ナンパ癖だけが玉に瑕でよく知られていた。
そういう意味では今の生活はレイにとって天国だろう。首に縄をかけようとする人間がいないのだ。

「おいおい。」

いやなことを思い出させられたからか、レイの顔が渋く歪む。だが、それも一瞬の事。
「って・・・あそこ歩いてお姉さん!キレイじゃねーか?!」もうすでに目は次の獲物へと移っていた。
これはダメだと言わんばかりに両手を広げ呆れるゲイル。

「しらねーよ。俺にそんな話を振るな。」

昨日の今日である。もし今シャニーのご機嫌を損ねるような真似をしたら今度こそ死刑が待っている。
そんな人の気持ちも知らず、“そっち”の世界に巻き込もうとする悪友を大げさに邪険した。
「連れないねえ!」レイは何が楽しいのかニヤニヤしながら通りを歩く女性に情けなく垂れ下がった目線を送る。

「うーん!クールビューティ!働くお姉さんもオレ様大好きよ!」

一人で大興奮して叫ぶものだから、ゲイルはヒヤヒヤもものだ。
早合点のシャニーに聞かれたら巻き添えを食らってしまう。それにしてもレイの女好き留まる事を知らず
ゲイルは「お前・・・女の形をしてれば誰でもいいんじゃねーのか。」と呆れに引きつった。

「失礼だなぁ、ゲイル君はよう!」

ところが、突然真剣の顔になったレイが顔を押し付ける勢いで迫ってきた。
少々言い過ぎたかと思ったゲイルだが、次に悪友が叫んだ言葉に思わず肩がずり落ちそうになった。

「そうは言うけどな、オレ様が入信を勧めるのは神の祝福を受けられそうな麗しい女性だけだぞ。」
「そんな事を自慢げに言われても困るんだが・・・。」

まだ語り足りないといわんばかりのレイの口に栓をするように、興味がないと突っぱねた。
結局は、勧誘は美しい女性に声をかけるための口実というのがますます真実味を帯びただけだ。
彼のすごいところは、それを真顔で言う事である。ゲイル相手だけではない、神官長を含む全てだ。

「ま、でも、女性は顔を見かけたら必ず声をかけるぜ、それが礼儀ってもんさ。」

ものは言いようと言う言葉が、レイほど似合う人物もいないかもしれない。
彼なりの礼儀に、ゲイルは「へぇ・・」としか答えようがなかった。
だが、どうやらレイはそれを納得したという意味で捉えたらしく、満足そうにするものだからすぐさま一言加える。

「礼儀っつーかどう見たってナンパにしか見えないぞ・・・。」

これだけ説明したというのに、この罪深き男は何一つ理解していないではないか!
そんな嘆きを顔に顕にして天を仰ぐレイ。声をかけられる女性も大変である。どう見てもナンパであるのに、
イア信教の司祭にこんなリアクションを取られたら、何か罪深きことを犯してしまったかと錯覚してしまうだろう。

「これだからマナー知らずの田舎者は困るねえ。」

次の瞬間、明らかに見下した眼差しがレイから注がれて田舎者という言葉に正直むっとした。
田舎者ほど田舎者と言われると腹が立つわけだが、この時ばかりはゲイルも田舎者でよかったと思ってしまっていた。
これがルアスのマナーだとしたら、そんなマナーの中で生き抜く自信がなかった。

「・・・それが都会スタイルなら、俺は田舎者のままで良いわ・・・。」

どうにもレイと喋っていると疲れてくる。早々に話を切り上げようとあえて腰を折ったのだが、
レイは逃がしてくれそうにない。だがその時である。レイの白衣が突然後ろから引っ張られた。

「神の加護を受けられそうになくて、麗しくもない女の形もしてなくて悪かったわね!」

そこには風船かと思うほどに頬をプクウッと膨らせたシャニーがいて、レイの事を睨んでいた。
おまけに次々自虐的な言葉を並べてレイに迫るものだから、話術には長けているはずの彼もさすがに言葉に詰まっている。
「おいおい」と悪友がかわいそうに見えてきたゲイルが間に入った。

「何でお前がいきなり怒り出すんだよ。」

レイが一番聞きたかったであろう質問を代わりに彼女へぶつけてみる。
すると彼女は目をトキントキンにしてまたレイを睨むと、ドンと彼の胸を手のひらでついて猛抗議。

「だって!レイさん最近私にナンパして来ないし、入信の勧めなんかしてきたことないぞ!」

これだけ長い時間行動を共にしているのに、彼がシャニーにナンパを仕掛けたのは、たった一度だけである。
それは、シャニーがゲイルと出会って間もない頃。この旅で再会してからは、
隣の女性にナンパすることはあっても自分には見向きもしなかった。

「お前・・・レイにナンパしてほしいのか?」

呆れた相棒の言い分にゲイルも今回ばかりは彼女に侮蔑の眼差しを送ってしまった。
どうせ彼女はレイに女だと認められていないとでも言いたいに決まっている。
一番困ったのはレイに違いない。「い、いや!俺もさすがに人妻に手を出したりは・・・。」

「まだ私はゲイルのお嫁さんじゃない!レディーなの!ピュアなの!分かった?!」
「あ、はい!すいませんです!」

もうこう答えるしかなかったが、レイの視線はすぐにゲイルのほうへ向き、困惑を浮かべた。
一応レイだってナンパをするときは女性の指先を確認していた。
シャニーは確かに彼女の言うとおり未婚ではあるが、悪友の彼女に手を出せるはずがない。
相棒の暴走にむしろゲイルがレイに申し訳なくなってきて目で詫びるのだが、そこに火に油を注ぐ人間がやってきた。

「あら、残念ね。私にもしっかり勧誘が来たっていうのに、あなたには来ないなんてねー?」

耳のいいエルピスが面白そうな話題を聞いて寄ってこないはずがなかった。
天使の位を退いた彼女に、「下界で神を崇める側になったならどうぞイア信教へ!」と営業活動をしたのは確かだが
彼女は明らかにこの場を“盛り上げる”為にわざと面白おかしく言っている。

「な、なにいい?!」

案の定、沸点の低い油のようなシャニーはエルピスが持ってきた話に大爆発。
「ちょっと!レイさん、これってどういうこと!」既婚者にも声をかけた事実を突きつけて顔を押し付ける。

「い、いや、これからしようって思ってたところでして・・・。」
「まったく、こんな美女が傍にいながら・・・ブツブツ。」

完全に彼女のペースになってしまい、レイは再びゲイルのほうに救いを求める。
普段ナンパしていると「サイテー」と連呼する連中が、今度はナンパしろと言ってくるのだ。
だが、こちらを向かれてもこうなったシャニーをとめることはゲイルにだってできない。
「諦めて耐えろ。」長年相棒をしてきたゲイルがたどり着いた究極の対処法に、レイがぽっきり首を折ったときだった。

「ほお、ルケシオンの義賊は浮気には寛容なようだな。」

浮気と言う言葉にびくっとシャニーの肩が跳ね、背中が反射的に反った。
声がしたほうを振り向けば、メルトが嘲るような笑みを浮かべて見下ろしている。

「そ、そんなつもりで言ったわけじゃないもん!」

あれだけ二人が手こずっていたシャニーが表情を一変させて焦りだす。
鮮やかな形勢逆転に、ゲイル達は顔を見合わせていた。

「ゲイルの顔を見てみろ、お前がレイにナンパされたいなどと言うからしょぼくれているぞ。」
「そ、そんなことねえよ!」

シャニーを押さえ込んだメルトは余裕さえ見せて、ゲイルに反撃のチャンスまでくれたではないか。
この機会を使わない手はない。最初は否定したが、彼はやや大げさに背中を丸めて俯くと、
シャニーを恨めしそうな目で見上げてぼそっと言ってやった。

「でも、シャニーが俺に満足してないってのは分かったかな。」
「そんなことないって!」

相棒のストレートな言葉は、いつもゲイルに口で負けないさすがのシャニーでも焦った。
すぐにゲイルに飛びついて彼への変わらない気持ちを示すとレイを指差した。

「私はレイさんに女と認められてなさそうだったから!」

言い訳をしてみるが、ゲイルの折れた首は直ってくれず腕を引っ張って揺さ振ってみる。
だがそれでもいつものゲイルの元気はすっかりとどこかへ飛んでしまっている。

「いいぜ、俺よりイイ男は世界に一杯・・・。」

ついには掴んでいた腕を振りほどかれて、放り出されてしまった。
完全にいじけてしまったゲイルは背中を見せたまま、ブツブツとネガティブなオーラを吐き出す。

「ああもう悪かった!ごめんなさい!」

やっぱり普段はガンガンとゲイルを攻めることが出来るシャニーも、根は弱いらしい。
相棒にそっぽを向かれてしまった途端焦りだし、ついに折れて謝りだした。
「ゲイルにさえ女だと思われればそれで良いよ!」レイが目をまん丸にしたのにも気づかず、ゲイルの腰に手を回してしがみついた。

「はは、やっぱお前は素直なヤツだな!」

その途端である。しょぼくれていたゲイルから突然腹からの笑い声が飛んできた。
何か悪い夢でも見ていたのかと見上げてみると、そこには振り向かれたゲイルの顔があり、
彼女を見下ろして微笑みかけており、くるっと体もシャニーのほうを向くと頭に手を置いた。

「自信持って言える。お前を世界で一番愛せるのは俺。俺にとっての女はお前だけ!」

相変わらず他見他聞憚らない熱いバカップルに、口笛を吹いて冷やかすエルピス。
だが、シャニーにとっては心の底からうれしい言葉だった。ぎゅっとそのまま抱きしめられて
戻ってきた温かさに身を寄せると、頬を膨らせながらゲイルを見上げる。

「・・・試したな、ゲイル。」
「ハハ、いつものお返しだ。」

いつも扱き使うシャニーに、少しは懲りたかと膨れる頬の中にある小さな鼻を押してやる。
彼も嬉しかった。シャニーはやっぱり可愛いやつで、彼女の言葉はどんな賛辞より嬉しいものだ。
彼女の頭を撫でてやると、彼女も頬を膨らせながらもその口元は笑顔で拳をゲイルの固い胸に叩き着ける。

「いやあ、仲睦まじいねえ。」

恋人同士というよりも、どこか兄妹にさえ見える二人にレイは頭の後ろに手をやりながら眺める。
だが、やっぱり彼の興味は人妻にはない。すぐに目線は市場を行き来する人々へと移る。

「おーっと、あそこのお姉さん、結構ボインだな・・・。」

彼の女性を見つける目は、下手をしたら盗賊よりも遥か遠くまで鮮明かもしれない。
ものの数秒で女性を見つけると、「見てみろ、ゲイル!」とゲイルを手招きした。
ふっと笑うエルピス。どうなるか楽しみといった感じだ。もちろん、メルトは呆れている。
「あ?なんだ?」案の定、すぐにゲイルはレイに言われたほうを向く。

「ゲイル!今あのひとの胸見たでしょ!」

振り向いた途端だ、何だか耳が熱くなったかと思うとギリギリと悲鳴を上げだした。
すぐに視線を元に戻すと、そこには目を三角に釣り上げたシャニーが睨みあげてきていた。
さっきのしおらしさはまるで仮面だったのか、時が巻き戻ったかのような錯覚に陥るゲイル。

「いや・・・お前こそなに見てんだよ。」
「うるさいうるさい!」

ゲイルはもちろん、彼女が言うように見知らぬ人の胸なんて見ていない。
むしろガン見しているのはシャニーである。どうやら相手と自分を比べてモンモンしているらしい。
呆れたゲイルが彼女の頭を持って視線を自分に戻すと、彼女は地団駄を踏んだ。

「やっぱ男なんて大ッ嫌い!」

シャニーが決まり文句を口にする。いつもはゲイルを狼狽させるにちょうどいい言葉なのだが、
その言葉にまるで攻撃力なんてない。「と、言いつつゲイルには抱きつくんだな。」メルトの指摘はいつも的確だ。

「ゲイルは別なの!」

本当にそれで周りが納得するかなど、シャニーにはどうでもいいことのようだ。
彼女は一つ叫ぶと、ゲイルの胸に顔を埋めてぎゅっと胴に回した腕を締め上げた。

「はぁ・・・・。」

誰もが呆れ顔をしているのはシャニーも分かっていた。
だが今は、こうして愛する男の胸の中にいられることが嬉しくて、周りにそれを見せ付けたかった。
最初は呆れていたゲイルも、「どこにも行かないで」そんな声が聞こえてきそうな彼女の姿に強いハグで返して二人で笑い合った。
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