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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter19 泪なき友誼

9話:盲目のレジスター

 ←8話:モンスターカメラ →10話:ダブル・クロス
 今日もルアスは人がごった返している。気をつけて歩かないと肩がぶつかってしまいそうだ。
そんなメインストリートから外れると、まるでそれまでの喧騒が嘘かのように静まり返る。
生活臭溢れる裏路地を歩いていくと、見慣れたレンガ造りの教会が見えてくる。

「わーい、アンドラスだ!」

教会から顔を覗かせた子供が、遊びに来た彼女の姿を見つけた途端歓喜の声を上げ、
元来た道をかけていき、仲間達にイベントを知らせる。「みんな、アンドラスが来たぞ!」

「おはよう、今日も相変わらず元気ね。」

彼らの元気な声が蜂の巣を突いたように広がって壁の向こうを駆けているのが分かる。
門をくぐると、待っていた子供たちが彼女の足元に集まって抱きついてきた。

「お花摘みしようよ!ね!」

一番に抱きついてきた女の子が早速アンドラスを遊びに誘うが、それを横から男の子が押しのける。

「違うぞ、今日はサッカーをするって10億光年前に約束してたんだ!」

ところが最近は女の子も強い。押しのけ返して鼻を押し付けあう。

「分かった分かった、一日長いんだからケンカしないの。」

今日は休みをとって、ゆっくりこの静かな教会で過ごす事に決めていた。
早速幸せな出迎えを貰い、彼女はポシェットから袋を取り出して皆を宥める。
「クッキーあげないわよ?」彼女のお菓子の味を知っている子供たちはぴたりとケンカをやめた。

「えー、今日は一日いてくれるんだ!」

だが、子供達がクッキー以上に反応したのは別のことだった。
いつもアンドラスは忙しいので遊びに来ても精々2時間くらいだった。
それが今日は陽も高くないうちから一日中。夢のように彼らは思えて飛び跳ねていた。

「そうよ、だから順番ね?順番。」

彼らの無邪気な笑顔を見渡しながら、アンドラスは子供たちにクッキーを渡しながら宥める。
どの顔も素直でいい顔だ。彼らから元気を貰った彼女は、「じゃあまずサッカー?からね。」と踏み出す。
彼女にとっても、ここに来ると知らないことがたくさん子供達から学べるので楽しいのだ。

「アンドラス、シュートしてシュート!」

いつもは優しいお姉さんだが、一緒に遊ぶとなると何も知らないので子供達が先輩だ。
転がってきたボールをとりあえず足で捕まえたが、どうして良いか分からずおろおろするアンドラスに
後ろから走ってきた子供が指示を出した。シュート・・・その言葉の意味をロードするところから始まる。

「え?よおし、ゴールに蹴り入れれば良いのね。」

すぐに理解した彼女は足元のボールを見つめると、小さく舌を出しながらやや後ろへ退き、
勢いをつけてつま先をボール目掛けて思い切りふりあげた。

「うりゃあああって、あら?!」
「やーい、へたくそー!」

つま先にはボールがぶつかる衝撃がなく、想定していた反動がなくて足が空を切る。
バランスを崩して尻餅を突く彼女に、周りから大爆笑が注がれた。
よく見ればさっきシュートを指示した子供がボールを持ってにやついている。「パンツ丸見えだったぞー!」

「くう・・・今の絶対狙ったでしょ・・・。」

男の子たちはアンドラスが転ぶ時に見せたパンツににやにやしていた。
そんな男子達を女子達が非難しているが、アンドラスも立ち上がると地団駄を踏んだ。「もう!今度は許さないんだから!」
今度こそ、彼らがぐうの音も出せないほどかっこいいシュートを見舞ってやると意気込んで、彼女はドレスを揺らし駆けていった。


「はーはー・・・サッカーって結構疲れるのね・・・。」

数十分後、髪が乱れたのを直すこともしないまま彼女は肩で息をしていた。
向こうでは子供達が足らないと言わんばかりに彼女の名を呼び、手を振っている。
騎士として体が鍛えているはずなのだが、子供達の元気にはまるで敵わない。

「これは姫様、まぁなんと言う格好をなさっているのですか。砂だらけではありませんか。」

そこに現れたのはこの教会兼孤児院の責任者、イスピザードだ。
彼は遠くから彼女に頭を下げたが、近寄ってみて彼女の姿に目を疑った。
すぐさまブラシを取り出すと、手際よくドレスについた砂を落としていく。

「あ、イスピザード。ありがとう。」

いつでもこうしてイスピザードは自分のことを気にかけてくれから感謝の気持ちが自然ともれる。
「うふふ、ちょっと子供達とサッカーをしていたの。」今も元気にはしゃぐ子供達を見つめながら
ふと彼女が漏らした言葉に、イスピザードはもう驚きもしなかった。

「ドレスでサッカーなど、アルトシャン様の耳に入ったら大目玉ですぞ。」

好奇心旺盛なのは良い事なのだが、まだまだ貴族淑女としての自覚に欠けるというか。
仕方ないのかもしれない。まだ生まれて1年経っていない。今は一番吸収できる時期だ。
「ささ、こちらへお着替えください、汚れを落として置きます。」汚れても大丈夫な動きやすい服を差し出した。
貴族が着るには安い服だが、アンドラスにとってはこっちのほうが都合がいいだろう。

「ありがとう、イスピザード。私も最初は軽く遊ぶ程度にしておこうと思ったのですが・・・。」

ドロだらけになったドレスを見て、今更になって後悔する。
確かにこんなドレスを見たら他の貴族がどんな顔をするか分からないし、何よりアルトシャンの雷が落ちる。
だが、今も自分を呼ぶ子供たちの声を聞くとそんな事どうでも良いことに思えてしまうから不思議だ。

「何事にも夢中になれることは素晴しい事です。」

そんな彼女を、イスピザードは叱ることはせず、むしろ背中を支えてやった。
今はやんちゃ坊だが、きっと数年後にはもっともっと視野の広い素晴しい存在となっているに違いない。
子供を育てるということは、辛抱が必要な事。それを彼は知っていた。

「しかし、何か良い事でもありましたかな?」

そしてその辛抱の一つが実を結んだ、その確信があった。アンドラスの表情が、前とは違う。

「え?どうして?」
「最近どこか姫様のお顔がお柔らかく見えます。ほら、子供達もあんなふうに喜んでいますし。」

表情はその人間の心を映す鏡のようなものだ。どれだけ、態度、言葉で取り繕おうとも
その者の目、口元、それらを見れば大抵考えていることは分かる。
だからこそ、彼はマヴガフを警戒しているのだ。塗りたくる柔和さ、帽子の下に隠れるあの目、間違いなく悪しき鬼。

「ふふ・・・まぁね。」

それに比べて、アンドラスは何も隠さない人間だ。だからこそ、守ってやる必要がある。善を装い忍び寄る鬼から。
彼女は心を見透かされたようで最初はきょとんとしていたが、しばらくすると大きく伸びをしながら
自然な笑顔を子供達へと向けた。「やっぱり大好きな人たちと笑っているほうが幸せだなって。」

「そのとおりにございます。姫様のそのような晴れ晴れとしたお顔を見られて爺も幸せです。」

心からの言葉。言葉も喋れない時からずっと世話をしてきた。
ホムンクルスとして生まれた彼女とはまだ1年くらいの付き合いだが、ずっとずっと一緒だったような錯覚さえある。
本当の子供のように接してきた彼女の心からの笑顔に、自然と真心がもれた。

「毎日お越しいただけるのはありがたいことなのですが、アルトシャン様にお叱りを受けるのでは?」

それにしても、彼女は見回りの一貫と言って毎日孤児院に来るのだが、
アルトシャンがそれを知らないはずがない。本当に見回りなら彼も何も言わないだろうが
こうして子供達と遊んでいることが耳に入るのも時間の問題だ。

「同じ剣を振るなら、壊す為じゃなくて守るために握りたい。」

しばらくその問いに答えずにじっと空を見上げていた。ようやくに彼女の瞳が動くと、
そっと子供たちのほうへ視線を向けて決意を語り、「そのための修行よ、修行。さぼっているわけじゃないわ。」
まるで悪気もない笑顔をイスピザードへ向けたかと思うと、また顔には真剣が浮かぶ。

「今までの剣にこびりついた錆を落としに来ているの。」

視線は動き、今度は向こうに立てかけてある剣へと向かった。今でも恐ろしい、あんな剣を自分の本心、正義と言って
何の躊躇いもなく振るってきたことが。だが今気付いたのだ、遅くはない。
落とすべき錆は、まだ落とせる。もう自分に嘘はつかないと決めた。「憎悪って言う錆をね。」

「まさかそれは!」
「この前彼女と一騎打ちをしてみて分かったわ。」

彼女の言葉にぴんと来ないイスピザードではない。すぐに言葉の意図を汲み取り、目を見開いて見せた。
その反応に静かに頷いた彼女は、手のひらを開いてじっと見下ろしだした。

「やはり私の敵は自分自身でしかなかったんだと。そして私が剣を向けるべきは、皆の幸せを奪おうとする者。」

悪を押さえ込むかのようにぐっと手のひらを握り締め、視線は再び子供達へ。
守るべき者たちはたくさんいる。力を与えてくれる彼らのために力を使うこと、そんな当たり前のことにようやく気付き、悪い夢から覚めた。

「もちろん、彼女が敵であることに変わりはないわ。」

それでも、事実は何も変わらないことだけはハッキリさせる。帝国へ攻め込み、民を不安に陥れるなら容赦はない。
「でも、もう私個人の敵ではなくなった・・・それだけよ。」落胆するように俯くイスピザードにそう付け加えた。

「・・・そうご自身で決断なされたことそのものが立派にございます。やはり姫はオーレイル家の跡取りとして相応しいお方です。」

自分を見つめる強い心を養った彼女に、イスピザードは悲しみをぐっと隠して賞賛を惜しまなかった。
彼女は悪夢から覚めた。きっと真澄の瞳を取り戻した。ならばきっと、二人向かい合い、心から想いをぶつけ会うことができれば
きっと事態はいい方向へと向かう、それを信じた。

「いえ、私はまだいろいろ知らない。だからこうして学びに来ているのよ、子供達は純粋だから。」

周りは孤児院へ行くと遊んでいると思うようだが、アンドラスにとっては違った。
最初は何も分からなかったが、次第に大人にはなくて子供たちにあるものが見えてきた。
純粋な心だ。彼らは全てを純粋な瞳で見つめ、純粋な想いを語る。色眼鏡なく映る世界を知りたかったのだ。

「やれやれ、やはりここにいたのか?アンドラス。」

その時だ、あまり孤児院へ行く事を良しとしていないひとりの声が突然聞こえてきた。
それまでの穏やかな眼差しが一変。きょろきょろと落ち着きを失った蒼い瞳が上官の姿を映す。

「あ・・・!いえ、それは、その・・・。」

セインだ。イスピザードは何でも自分の言葉を否定せずに聞いてくれるから言えるが
彼に対してはちゃんと説明しないと納得してもらえないことは分かっている。
でもそれが彼女は一番苦手だった。「剣の修行に来ていたのです!」セインの目元が歪んだのがはっきり見えた。

「サッカーも剣のための修行とでも言い訳するつもりか?」

何でばれているんだろう、そんな事でも考えているであろう瞳がまん丸に見開く。
これ以上彼女を口でしかっても仕方ないので、彼は苦笑いするイスピザードへと体を向けた。

「父上ももう少しアンドラスに厳しくしてください。最近すぐにふらふらと城を出て行ってしまうのです。」

部下である以上、上官に行き先を告げることは常識である。
だがいまだに子供のように興味あるものを見つけるとわき目も振らず飛んでいってしまう。
彼女に振ろうとしていた仕事は当然自分が片付けるか、他の部下に任せなければならない。
今日は休みを確かにとる話は聞いていたが、用事があるからだと聞いていた。
それで不満が出てくれればまだ叱りやすいのだが、「姫の為なら」と騎士団内でもファンが多い彼女はどうしても守られてしまう。

「ほっほ、まぁいいではないですか。」

その筆頭がまさに最も身近な存在のはずの父である。まるで悪気もなく笑って見せられては何も言い返せない。
「父上・・・。はぁ、始末書を書かされる身にもなってくれ。」泣き言を口にしたセインだが、今日ばかりは彼女の放浪癖に感謝していた。

「まぁいい、アンドラス少し話がある。父上、少しアンドラスをお借りします。」

わざと怒っているような怖い顔をアンドラスに向けてやれば、彼女はうっとしてしおしおと後ろをついていく。
一度振り向いた彼女にイスピザードは笑顔で見送り、彼女は大きなため息をついて孤児院の影へと消えていった。

どこまで行くのだろう。孤児院の中庭の奥、子供たちの声もかなり小さくなってしまった時、
そう聞こうと彼女が息を吸い込んだ時だ。それを待っていたかのようにセインの足が止まる。

「あ、あの、本当にごめんなさい。父上にはどうか知らせないでください。」

先制で彼女は謝罪を口にした。よっぽどアルトシャンが怖いと見える。
蒼褪めた顔に、セインは笑って見せた。「そんなことをするつもりはないさ。君は民の評判は高いからね、いつでも話を聞きに来てくれると。」
叱ろうにもどうにも叱れない理由がそこにはあった。恐らくこの国の騎士の中で、最も民に近く、
そして最も民を理解しようとしているのは、彼女なのだろう。

「ヴァン兄様がよく教えてくれたのです。城にいては民の声は聞こえない、いつでも話を聞きにいけと。」

風のように表れ、闇に溶けるように消えるあの死神と呼ばれた男。その心は確かに常に民が中心にあった。
まるで彼女は、その心だけを継承したかのようだった。やり方はともかく、あの男なりに彼女を支えたのだろう。
自分にしか出来ない道を進む為に、自分の代わりとなる守護者を帝都に残したのである。

「そうか・・・あいつももう少しやり方に気をつければ本当にいい騎士になれるというのに、残念な男だ。」

彼も民からの信望は厚かった。だがアンドラスと決定的に違うのは騎士からは嫌われていた事だ。
一人の力では限界がある。それを知っていても、彼は彼の道を選んだ。
騎士としては惜しい。だが、世界のためとなれば彼にしか担えない役割ともいえる。
だが今は“騎士として”の意見を口にして、話を本題へと振る。

「そんなことよりだ、この宝石を指にはめてみてくれないか?」

さっと周りの気配を確かめると、懐から小さな箱を取り出して中をアンドラスへ見せてやる。
蒼い瞳に映った美しい黄金色の宝石に、彼女は一瞬言葉を失った。

「まぁ、こんな大きな宝石なんてめったに見られないじゃないですか。」
「ふふ、気に入ってくれたかな?さ、ちょっと指にはめてみてくれ。」

静かに手に取るととセインは彼女へと差し出した。それにしても大きいトパーズだ。
貴族として宝石はよく見るものだが、こんな大きさのものは初めてで感嘆しか漏れない。
日の光を受けて神秘的な輝きを放ち、吸い込まれてしまいそうな宝石を目の前にして、アンドラスはなぜか身構えた。
そんなはずはないが、宝石に睨まれた気がしたからだ。
「さぁ。」と、セインが再び勧め、はっとしたアンドラスは静かに指輪を通した。

「ああ・・・きれい・・・うっとりするくらいきれいな宝石ですね。」

今までいろいろな宝石を身につけてきたが、これほど素晴しいものは初めてだ。
だがセインが指先を見つめながらはしゃぐ彼女に、まるで笑み一つ浮かべることはなかった。

「君は希望のマナを扱えたはずだな?君のマナをその宝石に送り込んでみてくれないか?」

いきなりの話にきょとんとするアンドラスだが、言われるままに手先へマナを送り始める。
何かが違う、マナがトパーズへと見る見る吸い込まれていくではないか。これは面白い。

「わぁ・・・すごい・・・なんだかマナがすごい膨らんで・・・!」

途中までは普通の宝石と違う反応に好奇心からどんどんマナを注ぎ込んだが、
注ぎ込んだマナがどんどん膨らみ、手先を自身の力で抑え込めなくなってきた。
妙を感じた時には体が宙を浮きそうになり、彼女は堪らずマナを注ぐのを止めて左手を右手で押さえ込んだ。
焦燥とした表情を浮かべる彼女を覗き込むようにして「どうした?」と心配そうに見つめてくるセイン。
彼女は冷や汗を拭うとふうっと大きく息を吐き出していた。

「これ以上はダメです。何だかマナに押し潰されそうになって吹き飛ばされそうになりました・・・。」

自分のマナのはずなのに、自身で抑えきれないほどにまで膨らんだマナにゾッとして顔は蒼い。
「そうか・・・。」ハンカチを渡して背中をさすってやる。だが、はっきりした。アンドラスはこの指輪を扱える。
扱い方を知っている。それだけで十分だった。「どうやってマナを流し込んだのだ?」
またしても突然の質問である。どうやって息を吸っている?と聞かれたも同然だ。

「え?」
「どうやってマナを今のように膨らませたのだ?そのやり方を教えてくれないか?」

ぐっと顔を近づけてきて問うてくるセインの表情は真剣そのものだ。
「どう・・・と言われても・・・。」だが、とても答えに困る質問に彼女は眉をひそめてしまった。
目線を逸らして自身の行動を思い出してみるが、期待されている答えはどうしても浮かんでこない。

「うーん、ただマナを流し込んだだけです。」
「本当にか?何か考えながらやったとか、何でも良いんだが。」

セインがここまで聞く理由は、もちろん自分でも僅かに扱える希望のマナをトパーズに注ぎ込んでみたからだった。
宝石はうんともすんとも言わず、アンドラスがびっくりしたような反応も起きなかった。
アンドラスが扱ったときの宝石の反応は明らかに違う。何かある、そう確信していた。

「・・・やっぱり特に何も・・・。」

だが、その推測に反してアンドラスはがっかりするように肩を落として大きく息を吐き出すと首を横に振った。
がっかりしたいのはこちらのほうなのだが、セインは表情一つ変えずに
「そうか、分かった。」とだけ口にすると彼女へ手を平を向けた。

「悪かったな、じゃあ宝石を返してくれ。」
「えー、いただけるのではないのですか?」

何も教えてくれずにとんとんと話を進めていってしまうセインにちょっとだけ悪態をついて、
宝石を手で隠して身を退いてみせた。するとセインは真に受けたようで、ぐいっと手を突き出してくる。
「当たり前だ。」その反応を楽しむかのように、アンドラスはくすっと笑った。
「なんて冗談ですよ。」すぐさまトパーズを指から外すと、セインの手の上に丁寧に乗せる。

「そんな宝石いりません。恐ろしいです、そんな力を手にするなんて。」

確かに、見ているだけなら本当に素晴しいものだ。今もセインの手のひらの上で放つ黄金の輝きはうっとりして吸い込まれそうだ。
だが、触れてはいけないものだと彼女は直感していた。マナを注ぎ込んだ時、凄まじい力に振り回されると共に
どこからともなく誰かの声がたくさん折り重なってきたのである。マナに振り回され、声に押しつぶされそうだった。
「君のその考えは正しいよ。」子供たちに呼ばれて戻っていくアンドラスの背中を見つめながら、ぽつりと漏らす。
セインはしばらくトパーズを見下ろしていたが、その目が再び強さをとりもした。

「だが・・・今はもうそうは言ってられないんだ・・・。」

次の作戦へと移るべく、彼はエルモアを駆って町へと消えていった。
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