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 ←10話:ダブル・クロス →12話:侵食する闇
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter19 泪なき友誼

11話:崩れ落ちた牙城

 ←10話:ダブル・クロス →12話:侵食する闇
「こ、これはアルトシャン総統!総統御自らお越しいただけるとは。」

アルトシャンが昨晩のうちに連絡を入れたのは帝国軍の情報解析部だった。
馬車に乗って本人が直接現れたので責任者が施設から慌てて飛び出してきた。

「挨拶は適当でよい。」

ろくなもてなしの準備をしていなかったので平謝りの男に手のひらを向けて止めさせると
自ら先頭を歩いて施設の中へと入っていく。「すまないな、急に準備をさせて。」
だがさすが信頼を置く男だ。あれだけの短期間のうちにしっかり準備はしてくれたらしい。

「我々がルセンで希光と対峙した日一日のレーダーの記録を見せてくれ。」

それを最初に聞いたときは、男もその意図を測りかねたのだが、
それが白の騎士団追跡の重要資料だと聞き、そしてまさか内部犯の可能性との示唆に誰も部屋に入れずに準備を進めていた。

「これですね。今からロードします。」

髪を短く整えた目つきの鋭い男はメガネを指先でずり上げながら機器を操作し始める。
「しかし、この日は特に何もなかったような。」さすがである。既に一度調査をしていて、おまけに覚えていたらしい。
だが、彼の目にさえ留まらないとは、さすがカミユと言ったところか。

「・・・やはり北側の空にマナ反応はないな。」

レビア方面の空をずっと注視していたが、錬金艇が航行したときに現れる特有の巨大なマナの波動は検出されない。
予想通りの結果にアルトシャンは顎に手を添えながらちょび髭をさする。

「ルセンのこのマナ反応は我々のトールハンマーと希光のアストレアか。」

平穏だったルセンの空が突然真っ赤になり、直後真っ白に染まって何も見えなくなる。
マナの濃度を示すフィルターにかけてみているためで、
時刻を見ればちょうどシャニーたちとルセン橋梁で戦闘を繰り広げた時間である。

「は、このマナ波動はトールハンマーのものです。そしてこの波動はアストレアかと。」

確かに、橋の外から広がる赤い波動はトールハンマーの砲撃を示すように橋の内側へと伸びている。
だがその直後、あたり一面がペンキで乱暴に塗り込んだかのように真っ白になって画像が潰れてしまっている。
これがアストレアである。白の表示は赤より上位。

「拡散型ならともかく、高密直撃型でさえ赤表示のマナ濃度なのに、アストレアは更に上なのか。」
「トールハンマーはこの帯域の下層にあります。敵のマナは・・・ゲージが振り切れて真っ白ですね。」

驚愕して舌を巻くアルトシャン。右下に出ているマナ濃度表示へ目を移す―Unknown・・・計測不明。
帝国軍が使うような規模の大きな計測機器でさえ収まりきらないマナ。ごくりと思わず息を呑む。

「・・・あの状態でもこれほどの破壊力を誇るとは。」

記憶を失ったシャニーの一撃が、完全な状態での一矢ではなかった事くらい優に想像できる。
それでもすでに人智を超えていることを、真っ白になった画面が物語っている。
「やはりあの力を放っておくわけにはいかんな。」それを許せば、世界は白に飲み込まれる。この画面のように。

「うーん、これ以外にはどうにもこれといったマナ反応は見当たりませんね。」

アルトシャンの横で黙々と解析を続けていた男がふうっとため息をついてモニターから顔をあげた。
彼の落胆を聞かずとも、アルトシャンにもそれはわかった。アストレアの光以外、錬金艇特有のマナはモニターに映りこむことはなかった。
次にマナが現れたのは、あのシャニーをさらった瞬間。一体どこに隠れていたというのか。

「よし、ヤアンに繋げ。」

突然の指名に意図を測りかねたように表情は明るくないが、男はアルトシャンの指示に従った。
しばらくするとモニターに葉巻を加えた巨漢の顔が映る。

「呼んだか?アルトシャンの旦那。」

サラセンは今日も晴れているらしく、ヤアンの後ろに広がるサラセンの町並みが遠くまで見渡せる。
「旦那がこんな風に呼びつけるなんて珍しいな。」彼は忙しそうに筆を走らせていた。

「うむ、他でもない。白の騎士団がトパーズを奪い去ったとうちの騎士が伝えてきてな。」

モニターの向こうでヤアンの太い眉がピクッと歪んだ事が分かった。
彼がシャニーの親友であることはアルトシャンも知っている。大方、奪った相手への憤りだろう。

「ほお、そんな目の色変える情報じゃねーじゃねーか。むしろアストレアの脅威はなくなって好都合ってところか?」

明らかに不機嫌そうな口ぶりだ。新しい葉巻を取り出すと乱暴に端をかじりとり、くわえて火をつける。
まるで自分を落ち着かせようとしているかのようだ。
彼のまぶたの裏には浮かんだのだろう、トパーズを失いすすり泣く友の姿が。

「いや、そうも楽観していられん。希光の強さはトパーズによるものではない。」

だが、アルトシャンは違った。あくまで冷静に状況を捉えて敵を分析していた。状況は、何も変わっていないと言っても過言ではない。
「ヤツの一番厄介なところは民を立ち上がらせるところだ。」あの光が民から集めたものであることは知っている。
トパーズはそれを集める媒体、そして熾天使の体はマナを湛える器に過ぎない。

「アストレアの光より、民がヤツに感化されて生み出す創造の光のほうは私にとっては恐ろしい。」

彼女自身の力など高が知れている。だが、彼女が集める光の源、それが問題であった。
彼女が光を集めるべく民の進化を促し、それが無秩序な進化へとつながり世界の均衡を破壊する。
一度世界を蝕んだ破滅の系譜を食い止めるべく、今まで戦ってきたのだ。だが、事態は悪化の一途。

「まぁそうだがな。で?用件は何なんだ?」

その光に救われた身としては、アルトシャンの抱いている危機感は杞憂以外の何者でもなかったが
彼は“神からの啓示”を信じきってしまっていた。何でも魔を司る女神らしい。イアか?
だが、宗教がらみに興味のないヤアンは軽く話を流して本題へと戻した。

「うむ、我々が希光らとルセンで一戦を交えたことは知っているはずだ。あの日のサラセンの周辺のレーダーログを転送してくれ。」

ハッキリと覚えている。あのルセンでの一戦の翌日、ヤアンが乗り込んできて抗議してきたのだ。
彼の気持ちを知っているからあま掘り起こしたくなかったのだが、やむを得ない。

「あん?レーダーログだと・・・?」

案の定、彼は眉間に深いしわを浮かべたがすぐに違うことに対して疑念を向けた。

「まぁいいが、何でだよ。あの日ここら辺はとんでもない砂嵐だったぜ。なーんも映ってねえはずだが。」

本当は戦闘が行われたその時にシャニーたちの許へ行ってやりたいところだった。
だが、当日サラセンは凄まじい風が吹き荒れて視界0だった。
明らかにマヴガフに乗せられていることをアルトシャンへ伝えようと思ったのだ。
もちろん、翌日彼が強く警告してきたことを、今アルトシャンは思い出していた。
シャニーは生かしておけないが、まさかハデスを破る唯一の光が白の騎士団などに渡ったとは。

「いいから転送してくれ。白の騎士団が乗ってきた錬金艇の経路を探っているのだ。
 うちの騎士は北から来たのではないかと言っているのだが、もう消去法的にサラセン方面しか経路がなくてな。」

シャニーを山車に使い、ルセンでの一戦を誘導した。そしてまんまとトパーズを手に入れた・・・。
ここまでまさか念密に計算されていたとは・・・。だが、まだそうは決めつけられない。
だからこそ、こうして証拠を押さえに来ているのである。「錬金艇だと?!」だが、ヤアンは鼻で笑った。

「あの中を飛ぶなんて巨大戦艦でも無理だぜ?第一、そんなでかいのが飛んでりゃ俺たちが撃ち落とすしな。」

徒歩も無理という環境で空を飛ぶことができる錬金艇があったら見てみたいぐらいだ。
「まぁ言いたいことは分かる。」それはアルトシャンも分かっていた。尽く帝国を欺いてきた白の騎士団が
マフィアが守りを固める場所へわざわざケンカを売りに行くとは思えない。

「とりあえず送っておくぜ。たぶんモス一匹映らんぜ。」

通信はそこで切れ、しばらしくてヤアンから言葉通り当日のデータが送られてきた。
すぐにモニターに映し出し、当日のマナの波動を追う。波形が上に下に激しくうごめき落ち着かない。

「うむ・・・確かにこれは酷いノイズだな。磁気嵐が発生しているのか?」

荒ぶるマナの波動を見るだけでも、当日の厳しい気象をうかがい知れる。
何よりも、錬金艇が飛行としたと思われる巨大なマナの流れはどれだけ追っても見つからなかった。
出力を落とせばあるいはこの磁気嵐の中なら・・・いや、そんなことをすれば失速は間違いない。

「この中を錬金艇が安定して航行することは不可能かと思われます。まして、レーダーに捕われないような舵取りなど・・・。」

メガネをずりあげながら画像を注視している男も彼と同じ意見を口にした。
根拠がないと気がすまないアルトシャンだが、これでもうサラセンという選択肢も消え一つ胸が晴れた。
「と、なると大陸北方から白の騎士団が訪れたという仮設は否定されたな。」矛盾点が消えれば、後は一つ一つ事実を積むだけ。

「あの時南方から錬金艇が襲来したことも有力な材料だ。そして・・・やつらは反転して南方へと消えた。」

当時の状況を確認するかのように、彼らが現れたときのマナ反応を追ってみる。
やはり彼らは南方へと逃れたしい。だが彼らの消息はぱたりとルアス南方の森で消えている。
ノカンの生息域である。ここまでは帝国のレーダーも設置できていない事を、相手は知っているのだ。

「1日レーダーには北方に巨大なマナ反応を発見できませんでしたので、
 敵錬金艇はカムフラージュではなく、そのまま南方へ逃走したのかと。」

しらみつぶしに、様々な解析を用いてみたがレビア地方は一日平和なものだ。
困惑した表情を浮かべながらも、男も確信した様子で北からの襲来説を否定した。

「・・・もう一度この基地から捉えたレーダーのログを見せてくれ。」

逃亡するときは見える相手のマナが、出没する時には見えない。
ノカンの住処に白の騎士団の拠点があるとも思えない。
あのリスヒテンだ、存在自体リスクになる者を信用するとはとても思えなかった。
「何か・・・何か見落としている気がする。」もう一度投じのルセンのモニターを覗き込む。

「北にマナの反応はない・・・そしてこれはトールハンマーによるマナ、そしてアストレア・・・。」

何度確認しても、その場には二種類のマナしか存在していない。
赤いトールハンマーと白のアストレア・・・直後赤は飲み込まれ白一緒に染まりあがるルセンのマナ濃度計。

「アストレアは恐ろしい破壊力ですね。あたり一体がこのマナで真っ白になってしまっています。」

一体どれだけの威力なのだろうか。まるでその白で世界を飲み込まんとする力は、
ルセンだけではなく、周辺地域すべてを真っ白に染め上げていた。その威力が赤ラインまで落ちてくるのは
ルアスにようやく差し掛かるあたり。見開かれる目。「そうか!それだ!」アルトシャンが叫ぶまで間はなかった。

「このマナレーダーを強度別に層別してみてくれ!」

突然の指示にあたふたしながらも、テキパキと解析結果をモニターに映す。
全てが映し出された途端だ。男も操作の手を止め、「ああ?!」と声を上げた。

「な、何ということだ。アストレアのマナに隠れて南方から強烈なマナ反応が!」

それまで真っ白でしかなかったルセンに突然現れた白でも赤でもないマナ反応。
それは南方から突然に現れて、少しずつカレワラ森のほうに近づき突如消えた。
恐らく出力を落として待機していたのだろう。全ては・・・計画通りだったというわけである。

「やはりそういうことか。希光のマナに隠れて南方から飛来していたのだな。」

思わぬ盲点だった。アストレアばかりに目が行くことまでカミユの手の内だったというのか。
「見えたぞ、カミユ・・・!」だが、その算段も外れた今、確実に彼は追い詰められている。

「この角度はイカルスでしょうか。それなら今まで連中の拠点が見つからなかった事も説明がつきますね。」

現れたマナ反応を逆に追っていくと、それは海を超えて孤島イカルスにたどり着いた。
全てのつじつまがあう。最初・・・シャニーを海上におびき寄せたあの時突然現れたあの時も
イカルスから来たというのなら足がつかないのも頷ける。

「それだけではない、もう一つ重要な事がわかった。」

もちろん、彼らの拠点を絞れたことは成果だ。だが、そう簡単に攻め込むことはできない。
無警戒の間にどれだけ相手が軍備を整えているか、想像するだけでも恐ろしいし
地の利は相手にある。無理に攻め込むことは帰って不利を招く。今回の解析の最も重要な成果は、
カミユという人物が既に一人に絞られたという事である。

「奴らはアストレアの発射の瞬間が掴めていたということだ。奴らにアストレアを操る技術があったか、それとも間近で見ていたか。」

妙な感じはしていた。シャニーは一度はアストレアを放ったが、仲間の再三の要請にも
次の一発を放とうとはしなかった。もし放っていれば、その一発で全ては決していたというのに。
もしあれが、彼女の意志ではなく白の騎士団の操作によるものならば・・・。

「ですが、アストレアを操れるならば最初から彼らがその技術で攻め込んでくるのではないでしょうか。」

やはり解析・諜報を仕事にする組織の長だ、なかなかに頭が切れる。
アルトシャンもそれは同意見だった。トパーズ無しでアストレアを操れるなら、最初からシャニーを狙ったりしないだろう。

「うむ、だがそれだけではない。」

彼らがどの程度の技術を持っているのかを調べる事も必要ではあるが、今一番の懸案は別だ。
カミユをひとりの候補に絞る事が出来る決定的な証拠、それが二つもあれば十分だった。

「我々がルセンでシャニー達を待ち構える作戦自体が・・・すでに奴らに知られていたということだ。」
「た、確かに・・・。それで内通者がいると?!」

ここまで来ると、男もそれを否定できなかった。前々から白の騎士団が先回りして妨害していると言う話は知っていた。
だが、どんな組織でも諜報機関は備えているもので特段異常な話でもないと片付けていたが、これはまるで事情が違う。

「消去法的にそれしかないだろう、いくら密偵が優れていたとしても、あそこまで緻密に作戦を練るには不十分だ。」

アルトシャンが内部を怪しんでいることに、男も焦りを隠しきれなかった。
確かに今手元にある情報を全て勘案すると、それしかもう残らない。
だがもしそうであれば、今この瞬間も貴重な情報が盗まれている事になる。

「すぐさま全員の身辺調査を実施すべきでしょうか?」

なんでも行動は早いほうがいい。特にこのような軍事的な話となれば、一刻を争う事態だ。
ばっとアルトシャンを見上げた彼は提案するが、その焦燥としたメガネの奥をアルトシャンは見つめ首を横に振った。

「待て、相手はなかなかの切れ者だ。そう簡単には行くまい。」

今までも国内の諜報機関は内外問わず調査をしてきたはずだ。
それをかいくぐってきた相手に今更そんな事をしても無意味・・・どころかこちらの動向を嗅ぎ付けられるだけだ。
「気づかぬ素振りをして相手が尻尾を出すのを待つのだ。」今まで敵がしてきた手法で逆に仕掛けるしかなさそうだ。

「熾天使しか扱えぬトパーズを用いて一体何をしようとしているのか・・・見せてもらおうか。」

未だにアルトシャンには見えなかった。カミユたち白の騎士団が何をしようとしているのか。
だが、少なくとも帝国にとっては敵であり、シャニーたちにとっても味方ではないだろう。
その不可解な行動を今度はこちらが監視する側に回る。決着の日は近いと確信した。

「相手は必ず仕掛けてくる。トパーズを手に入れたのなら、なおさらな。
 そしてその時は近い・・・待っているぞ、カミユ。いや・・・。」

睨みつける先は遠くはない。まさか、そんな身近で今まで暗躍し続けてきたとは。
嘘もつけないような生真面目な顔をして、ずっと欺き続けてきたとは。信じられず、憤りは隠せない。
ぎりっと拳を握り締めると、ばっと広げて横にいた男へ命を下す。

「お前たちレーダー班は引き続きシャニーたちと白の騎士団の発するマナ反応を追え。今回のようなことがある、様々な視点から頼むぞ。」
「はっ!全てはアスクのために!」

白の騎士団はもうすぐ自分のこの手でしとめてやる、だがその前にシャニーを仕留めるほうが先だ。
部下に監視を任せると、彼は敬礼を返してツカツカと皮ブーツを高く響かせ次の行動へと移る。

「・・・今は泳がせておいてやろう。の希光の始末が終わったら、次はお前だ。」

また潰すには惜しい。その“表の顔”を使ってシャニーを始末する事には使える。
まずは世界の破滅を導くあの熾天使を。あの血さえなくなれば、白の騎士団のような感化されて立ち上がる者もいなくなるのだ。
先を強く見据える剣帝の眼差しは、決着へと向けられていた。
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