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 ←4話:ゴキ賊 →6話:烈風
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter20 進撃のアブソリッター

5話:ケンカ友達

 ←4話:ゴキ賊 →6話:烈風
 しばらく空を見上げて考えに耽る。シャニーは大分技術をものにし始めている。
これならアルトシャンとの一戦にも間に合うだろう。だが、倒すべきは彼ではない、それは皆が気づいている。

「・・・。」

目の前にもそれを悟ってか、己の肉体をいじめ続ける男が見える。
ぼうっと眺めているとただの往復運動だが、それをもうかれこれ10分ぐらい続けているのだ。

「498・・・499・・・500っと!ふぃー!」

気持ちのいい声を上げながら額に光る汗を拭ったゲイルが腕立ての恰好からばねの様に飛び上がった。
「よおし、次は正拳千本だ!」休むのかと思いきや、彼はその場で素早く、そしてぶれの無い拳で空を裂きだした。
そのたびに飛び散った汗が太陽に光る。
「ふん!ふん!」今度は風を切る音がテンポよく聞こえ出し、まるで旋律のようである。

「あー、そろそろ新しい必殺技を考えないとなー。」

シャニーが大分元の実力に戻りつつあり、手合わせも簡単には勝たせてくれなくなってきた。
何より決戦が近いのだ。今まで以上のド派手な技を探すべく、色々振りや構えを試しだす。

「あなたって、時間があれば筋肉を鍛えているわよね。」

せっかくの休憩時間なのに休む事もせずにひたすら体を動かし続けるゲイル。
躍動する筋肉、流れ落ちる汗が陽に滲み、とても考え事なんかできなくてエルピスは声をかけた。

「ん?そりゃあ鍛錬は自分を裏切らないからな!やった分だけ自分に帰ってくると思えばヤリガイがあるだろ?」

ニカっと白い歯を見せながら二の腕の筋肉を見せ付けてくる。
確かに鍛え抜かれた立派な体だ。女性では決して真似できない芸当だが、エルピスはため息をついた。

「言ってることは尤もだと思うけど、むさいわ。」
「うるへー!どうせ俺は野暮で野蛮な脳筋ですよ!」

むさい、それは昔から言われ続けてきた言葉。シャニーは海賊団で育ったからか慣れていたらしいが
それでも最初はケンカの売り文句によく使ってきたものだ。もう慣れっこと言わんばかりに開き直る。

「ええ、その通りね。よく分かってるわね、脳筋でも学習するのね。」
「こ、このヤロ・・・。」

だが、相手のほうが口は数枚上手。あっさりと更にムカつく言葉で返されて引きつる口元。
言い返せるものならしてみろと言ってくる翠緑の瞳が恨めしい。

「お前はシャニーの手伝いでもしてくればいいじゃねーか、むさいならわざわざ俺の傍にいなくたって!」

夕飯の前に稽古している理由はもう一つある。ふらふらしているとシャニーの作る料理の匂いに惹かれてしまうのだ。
もちろん調理場で巨体がうろうろしたら何を言われるかは決まっている。
おいしい料理を食べたいからこそ、我慢が必要だと彼はこの旅で学んでいた。

「うーん、あなたを見てると何だかいい暇つぶしになるから。」

引きつりが口元だけではなく目元にまで侵食していく。
目の前にはどうにかイタズラを仕掛けてやろうとする悪意ある笑みが広がっていた。

「俺は見世物じゃねーっつの。まったく、何とかして俺をおもちゃにしようとしやがって。」

その手には乗らんと、彼はエルピスにまるで犬を追っ払うかのように手を払う。
だが一度捕まったら逃がしてくれるはずもなく、トレーニングどころではなくなってどっかりと座り込んだ。

「あら、前も言ったけど親愛の証だと思えば良いのよ。ほら、刃を打ち合わせた仲じゃない。」

悪気なく浮かべてくる笑みは本当に悪魔かと思えるほど。
だが、彼女がふと口にした2年前の記憶にゲイルの口元が緩む。
あの時、今目の前で笑う乙女は絶望に沈んだ狂気の目でこちらを睨んでいたのだから。

「あの時はこんな風に二人で話をする日が来るなんて夢にも思ってなかったぜ。」

倒してはいけない相手だと分かっていた。だが、絶望の熾天使の精神に取り込まれた相棒を救い出すには
熾天使の精神と肉体とを切り離す必要があった。今でもあの感触は残っている。
エルピスの、そしてシャニーの体をキュレックで引き裂いた感覚は。
それもあってか、今もキュレックではなく拳の稽古をしていた。やはり我が道は、これなのかもしれないと。
思い出したくなくて視線を今に戻す。「話をってよりオモチャにされる日のほうが正しいか、くそっ。」
そこには、あの頃とは別人のようなイタズラ好きな笑みがある。

「ふふ、私はむさくても別にあなたのこと嫌いじゃないわよ。すぐ沸騰するけど、そういう熱いのも悪くないと思うわ。」

口では素直に言えなくとも、ゲイルへの感謝は忘れたことはない。
自分を、そして後継者を今まで守り続けてきてくれた男だ。
彼がいなければ、もしかしたら今頃この世界はまた永い眠りについていたかもしれない。メントのように。

「何だよ、お前に褒められると何だか気持ち悪いぜ。お、俺は稽古してんだから声かけるなよな!」

いつも顔をあわせればケンカばかりの相手にいきなりかけられた言葉にゲイルは顔を赤らめた。
シャニーにありがとうと言われるのは嬉しいが、エルピス相手だとまるで勝手が違う。

「はは、照れちゃって、かわいいんだから。」
「うるへーうるへー。」

突然立ち上がって拳を突きだし始める男に笑いかけるその顔は優しい。
これがかつて世界を破滅に導いた粛清のエルピスと呼ばれた墜ちた熾天使とは思えない。

「・・・ゲイル、私はあなたに言わなきゃいけないことがあるわ。」

しばらくゲイルの横顔を見上げていると、思い起こされた記憶が彼女に呼びかけてきた。
まだ言えずにいたことがあるだろうと。今、ちょうど話題にでた今こそ言う時だと。

「ん?昨日のイタズラはお前の仕業だったのか!」

ところが、そんな彼女の気持ちなどまるで知る由もないゲイルの目が三角になる。
つい昨日もイタズラの餌食になったばかりのゲイルにとって、エルピスのカミングアウトはそれ以外ないからだ。
「あ、あれはシャニーよ!」思わぬ先制カウンターに慌てるエルピスの前で地団駄を踏むゲイル。

「あいつめ、お前が加入してからどうもイタズラ好きが加速してたまんねえ。」

シャニーひとりでも手が焼けるというのに、エルピスとタッグとなるともうお手上げ状態だった。
向こうで料理をするうなじを恨めしそうに睨む。いつもああして淑やかにしていればいいものを。

「あなた、あの子に尻に敷かれるなんてガタイの割にホントお人よしなのね。」

ゲイルが見た目の割りに大人しい人間であることは前から知っていたが
まさかこうまで頭が上がらないでいるなんて予想もしなかった。叱られる姿を思い出すだけで笑えてくる。
「尻に敷かれてるわけじゃねえよ!」今回も彼は禁断の言葉に超反応してきた。分かりやすい男だ。

「逆らったら俺は生死の狭間を彷徨うんだ、下手に手出しできねえよ。」
「へえ、あの子怒ると意外と怖いものね。どんな裁きが下るの?」

顔を真っ青にして語るものだから、一体どんなことをあの子がするのかと興味津々のエルピス。
普段朗らかの塊のような妹分がどう豹変するのだろうか。

「晩飯抜きの刑、期限はあいつの気分次第!ああ、考えただけでも餓死しそう。おっそろしいだろ?」

みんながシャニーの上手い飯を食っている時に、自分だけひもじい想いをする、
そんな光景を創造するだけで震えが着て、真っ蒼な顔を同情目的で向けてくるゲイル。
「・・・あなたらしいわね、ホント。」呆れてもうこれ以上何もかける言葉が見当たらない。

「それを尻に敷かれてるって言うんだと思うけど、まぁいいわ。なんか追求したら疲れそう。」

肝心なことはゲイルが決定権を持つようだが、完全にシャニーに肝を握られていることは分かった。
器が大きいというか、情けないというか、何にしても親友らしくて笑ってしまった時だ。はっとする。

「って!もう、あなた達はどうしてそう自分のペースに持って行くのが得意なわけ?」

シャニーにしてもゲイルにしても、どうして彼らと話をしていると論点がズレていくのだろうか。
特にシャニーと話をするとついつい脱線話で盛り上がって、そのまま戻れない事も多い。
「はは、すまねえすまねえ。」悪気のない笑顔が頭の後ろに手を置きながら詫びて来る。
シャニーの場合は最後まで話を聞いてはくれるが、それでも脱線していくわけだが
ゲイルは最後まで話を聞けない猪のような奴なので単刀直入に言う必要があることを忘れていた。

「で、何なんだよ、言わなきゃいけないことって。」
「はぁ、なんだか心の準備が吹飛んじゃったわ。」

せっかく決めた心だったのに、まるで肩透かしを食らったようで勇気が吹飛んでしまった。
だが振った以上話さなければならないし、ゲイルも見下ろしてくるから仕方なく腹をくくった。

「あのね、あの時は本当にごめんなさい。」

それでも、さっきとはまるで違う小さな声しか出てくれなかった。
ゲイルは聞えてくれたのだろうか。もう同じことは言えない・・・そんな心配は無用だった。

「あの時??やっぱお前なんかいたずら仕掛けてたのか?!」

心配は無用だったが、別の心配をしなければならなかった。
相変わらず猪のようなやつである。おまけに最近早合点でどうにも困る。
一緒に暮していたせいでシャニーと似てきたのだろうか。「ち、違うわよ!」すぐさま否定するが一度飛び出した猪は止まらない。

「そうか、あの時シャニーのケーキ食ったのはお前だったんだな!」
「いや?!あれとは別よ!」

何とか話を戻そうと適当な返事をしたのが間違いだった。思わぬぼろが出てしまい、互いの間で時が止まる。
「・・・あ。」今更ながらに失態に気付いても、もう言葉は腹の中には戻ってくれない。

「あれのせいで俺がどれだけあいつからタコ殴りにされたか・・・ううう・・・。」

あの時は正直死を覚悟したものだ。シャニーの大好きなケーキを食べたらどうなるかくらい
相棒のゲイルは一番心得ているのだが、日ごろの行いが祟って疑われ
飯抜きだけではなく麺棒まで持ち出すものだから修羅場と化した。戦慄の記憶に泣き出すゲイル。

「それはそれで置いといて!」

話を振り出しに戻そうとした途端、恨めしそうな目がギロリと顔を覆う腕の隙間から光った。
修羅場はもちろんエルピスも見ていた。あんな大炎上の中にとても身を投げられず見ているしかできなかったのだ。
「・・・まぁそれも謝るわ。ごめんなさい。」謝罪より名乗り出ろと目が訴えてくる。

「私が謝ったのは、デルクレビスであなたと殺し合いをしてしまったことよ。」
「ああー。」

このまま話が脱線したままだと機会を逃してしまう。そう思ったエルピスは相手の反応を見ずに一気に口にした。
後に引かないさっぱりした男なので、ゲイルも次の話題に相槌をうつが、あまり興味がなさそうな返事だ。

「どんな理由があろうとも、親友の恋人であり、そして私のことをとも、仲間と言ってくれたあなたを傷つけてしまった。」

神界最強の光を扱う事を義務付けられた熾天使。生まれた時から、義務にくくりつけられていた。
その重責に押し潰され、失敗を愛する者たちに責められ、絶望した彼女がとった道は世界の粛清だった。
神界に断罪された彼女は、封印されたシャニーの心の中で目覚めてからも考えは変わらずに
シャニーの体を乗っ取って粛清をかけようとした。彼女も、ゲイルも、仲間と受け入れてくれたのに。

「なーにみずくせえこと言ってんだ、やめろやめろ。」

それ以上2年前の悲劇を記憶から引っ張り出そうとするエルピスに手を払いながらやめさせる。

「結果こうして丸く収まったんだし、いいじゃねーかよ。もう終わった事だ、恨んじゃいねーよ。」

あの戦いの結果ゲイルは勝利し、エルピスは、そして体の持ち主シャニーもキュレックに引き裂かれ命を落とした。
最愛をこの手で殺めた絶望に数週間立ち上がれなかったが、
相棒は自分の呼びかけに応えて還って来てくれた。熾天使として転生して。
エルピスが戦いを挑んだのもシャニーを転生させるためだと知った今、彼女への恨みなど何もない。
「ああ、強いて言えば、ケーキを食った時黙っていたことぐらいだな。」冗談を交えてその場の空気を和ませようとした。

「それは・・・そうなんだけどね。私はもっと違うやり方をできてさえいれば、あなた達は悲しまずに済んだと思うと。」

悲しみの連鎖は自分達で食い止めなければならないはずだった。
それに巻き込んでしまったことは間違いなく己の過ち。
今あの頃の自分を見返すと、何と愚かだったのかと責めても責めたりない時がある。

「へえ、ただの高飛車で鼻持ちならない嫌な奴かと思ったけど、やっぱお前、いい奴なんだな。」

いつものプライドが高そうな表情はまるでなく、別人かと思うほどの静けさがある。
シャニーとも約束していた。もうエルピスを責める事はしないと。だが、どうにも本人の心は未だ整理できていないらしい。

「お前の気が済まないなら言ってやるさ。お前のせいでシャニーは流さなくていい涙を、俺は流さなくていい血を流した。」
「・・・。」

今でもゾッとする事がある。相棒の体を自らのキュレックで引き裂いた時のあの感覚が手先に戻る事があるのだ。
びっくりしてその都度シャニーを抱きしめてその柔らかい温もりを確かめずにはいられない。
彼女も同じだ。時々怖い夢を見るという。死んでしまい、ゲイルと離れ離れになる夢を。
どちらも、過去の戦場で刻まれた記憶。それを話してやると、エルピスは絶句してしまった。

「だけど、涙を流したのはシャニーだけじゃないし、血を流したのも俺だけじゃない、そして世界を愛したのも、だ。」

翠緑の瞳から光が失われかけていたとき、ふいに大きな感触が肩に乗った。
はっとして見上げてみれば、そこにはゲイルの優しい笑顔があった。

「シャニーとアリアンを助け、そして世界に希望を蘇らせる為にお前は弓を取った。そうだろ?」

思わず目じりが熱くなるのを堪えて、視線を逸らすので精一杯だった。
それでも何度も首を上下に振って意志を伝える。何が正しかったのかは今でも分からない。
だが、必死に闇の中でもがきながら戦ったことは間違いない。自分が果たせなかった夢を為そうとする相棒に全てを託し支える為に。

「俺もシャニーとお前、そして世界を守るために剣を振るった。目指すものは同じだったんだ、誰も悪じゃない。」

悪と言っても二種類の悪がある。欲望の為に心から不幸と災厄の渦に世界を巻き込んでやろうと絶望を撒き散らす悪魔と、
望んで悪になったわけではない者が。罪はゼロではない、だが救われるべき被害者でもある。
もう、過去に全てを清算し、新たな世界は動き始めたのだ。いつまでも過去を枷と引きずるのはよくない。

「そう言ってもらえたら私も救われるわ。あなたと再会した時、何て言われるか正直怖かったのよ。
おまけにあなたに先手とられちゃって。ずっともやもやしてたのよね。」

この旅への動向を決意したのも、2年前受けた恩を返すためという事が大きかった。
まず真っ先に謝ろうと思ったが、意外にも先にゲイルに謝られて言えずにいたが、これで胸がすっきりした。

「シャスが言ってたじゃねーか、未来は創るもの。創る限り運命は夢を受け入れると。」

あまり天上界のことは好きではない。自分たちの都合でしか動かないからだ。
特にシャスは、シャニーを連れ帰ろうと自分と培った記憶さえ簡単に奪おうとした相手。
今も信用はしていないが、その娘の面前もあり彼女の一言を出す。

「俺達は確かにつらい運命にぶち当たった。けどその運命を俺たちの想いで希望に変えたんだ、何も謝ることなんてねーよ。」

むしろやめてくれと言わんばかりの苦笑いがエルピスの心を癒してくれる。
何だろう、今まで張っていた糸が急に緩んだかのように「そう、はぁ、良かったわ。」と切株に座り込むエルピス。

「何だか心の荷が下りた気がするわ。ふふ、ゲイルありがとう。
私たちの夢を受け継いでくれて、そしてこうして私たちを救ってくれて。」

人々を愛し、世界を守りたい。その想いは同じはずだったのに。
絶望の中で逆に破壊してしまった自分を受け入れて、意志を継いでくれた妹分。
その強くも脆い光を今まで身を挺して支えてきてくれた守護者に思わず感謝が漏れた。

「よせって、お前にそんな感謝されたらなんか後が怖いぜ。」
「まぁ、そんな言い方しなくたっていいじゃない。」

だが、ゲイルは素直には喜ばずにむしろ身を退いたではないか。
おまけにその言いぐさときたら。彼の目は日ごろの行いを引き合いに出しているがお構いなしに踏み込んでやる。

「私、あなたのこと好きよ、友として一緒に旅が出来て嬉しいわ。」

何か、夢でも見ているのだろうか。念のため頬をつねってみる。念には念を入れぐいぐいと。
やっぱり痛くて涙が出る。頬をさするゲイルにエルピスはため息をついた。

「なんか今日のエルピスは別人みたいだな。いつも通りにしろよ、調子が狂っちまうぜ。」

このケンカばかりしているような奴に感謝を口にされるとどこか照れくさい。
視線を逸らしてやるが、エルピスはくすくすと笑いだしていておもちゃにされている気もする。
・・・結局、いつも通りなのか?やっぱり納得がいかない。

「それによ、神界最強のエルピス様に勝利できたお蔭で色々自信もついたしな。」

このままでは何だか悔しいので、得意顔でどんと胸を叩いて見せた。
エルピスの表情が一変したことにも気づかず、彼は自信満々。
「今じゃあちこちで烈風の二つ名で通ってるぜ!」なんて言うものだから一気に雲行きが怪しくなる。

「まぁ、あなた本気で私に勝ったって下界で言いまわってるわけ?!」

神界最強がこんな下界の野蛮人ごときに倒されたなんて“デマ”が神界に伝わったら一大事である。
慌てて聞き返すが、「あ?そうだぜ、事実だし。」とツルっとした顔で返すゲイル。

「はっはっは、神界最強を倒す最強、泣く子も黙る烈風ってその筋じゃ有名なんだぜ。」

いつもこうやって自慢しているのであろう。腰に手を当てて何とも誇らしげだ。
エルピスのほうはわなわなしながら表情が消えていた。これは由々しき事態である。
「・・・聞き捨てならないわ。」彼女の負け台詞を得意げに見下ろすゲイルだが、その顔が歪む事になる。

「いいわ、今は精霊としての力しか引き出せないけど、それでもあなた相手なら十分!」
「へ?」

何かを決心したかのように立ち上がると、目の前で手の中にバタフライナイフを素早く取り出し光らせるエルピス。
何か嫌な予感がして呆然と様子を見ていたゲイルだが、次の瞬間エルピスがまっすぐ指を向けてきた。

「武器を構えなさい!今度は私も本気で挑んであげる!」

マナをその身に滾らせて作り上げた透き通る翼。
それで宙を打って飛び上がった彼女から叩きつけられた一方的な宣戦布告にゲイルが慌てないわけがない。
何とか距離をとろうと後ずさりしながら両手を向けて宥める、宥める。

「ちょ、ま、待て!待て!」
「ふふ、大丈夫よ?脳筋のあなたに弓で勝つなんて無粋な真似はしないわ。」

これでも手加減してやるつもりだ。倒すだけなら空中から延々矢を降らせてやればいいがそれではプライドが許さない。
短剣にマナを燃え上がらせると、その鋒をまっすぐにゲイルへ向けて不敵な笑みを浮かべる。

「いや、そうじゃなくてだな!さっきまでの態度は一体ドコへ行ったんだよ!」

ゲイルにとっては卑怯以外の何者でもない。こっちは飛べないのに、相手は空と言うアドバンテージがある。
シャニーでさえも手合わせする時に使ってきたことはないのに、節操がないもいいところだ。
おまけにあれだけしおらしくしていた人間がである。

「あーら、あなたが言ったのよ?いつも通りにしろってね。」

それとこれとは話が別だといいたかったが、目が三角に釣り上がる彼女はすでに飛びかかる寸前。
慌てて拳を構えるが、既に足元は逃げ一択で後ずさり続けていた。

「な、なんだってそうなるんだよ!待て、話せば分かるって!」

追い詰めるようにゲイルが一歩下がればその分にじり寄ってくる。
何を言っても止まることはなく、ゲイルは意を決すると背中を向けて駆け出す。
今の状態の彼女と戦ったらろくな結果にならないのは目に見えている。

「待ちなさい!そのツンツン頭!スキンヘッドにしてやるわ!」

牙をむきながら翼に力を篭めるエルピス。神界一の韋駄天の前で脳筋の足などまるで意味を為さず
あっという間に詰め寄られて、まるでスズメバチに刺されるかのように空中から襲われ続けるのであった。
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