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 ←12話:剣を失った帝 後編 →14話:悪夢の具現
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter20 進撃のアブソリッター

13話:古の縁

 ←12話:剣を失った帝 後編 →14話:悪夢の具現
 穏やかな日差し、その下にありながら重い影を引きずる黒い男。
彼は帽子の下から黄金の邪眼で太陽を見上げ、忌々しそうに舌打ちして見せた。
だが、この関係ももうすぐ終わる。
天界でのうのうと過ごす裏切り者共をこの手で引き裂く日が目の前に迫り、鮮明にイメージできる。

「クッフッフ・・・楽しいショーをお見せしましょう。前座って名の恐怖をね・・・。」

最高のショーを演出するには、前座にもこだわる必要がある。
彼はポケットに手を突っ込むと、目の前に見え始めた大きな精霊殿を見上げてほくそ笑んだ。


「アリアン!ゴミ出ししたの?!今日は燃えるゴミの日よ!」

これが精霊の言葉だろうか。主婦よろしくのセリフを吐く相手は、今もスオミで留守番中の旦那だ。
エルピスに言葉で尻を叩かれたアリアンは、へらへらと笑いながら返す。

「いやぁ、今薪割りしててね。この斧が重くて重くて・・・。」
「もう!貧弱なんだから。」

泣き言を口にする旦那に呆れるエルピス。自分がやった方が断然早いのだが、
今は留守を彼に任せているのでどうにもじれったい。マナで繋がった二人はいつでも会話ができるのだが
アリアンの斧に振られてあげる情けない声はうんざりする。

「早く出さないとおいて行かれるわよ!」

もう一度尻を叩くが、「そんなこと言われても・・・。」と返ってきて思わず睨み返した。
これをされてしまうとアリアンもどうにも抵抗できなくて、彼はため息をつきながらまだ半分は残っている山を見て首を折る。

「やれやれ・・・人使い荒いんだからもう、エルちゃんは。」

エルピスが扱き使うのは今に始まった話ではないが、それでもやっぱり文句のひとつも言いたくなる。
ところが、それに反論するエルピスの言葉は不思議とない。おやっと想っていたその時だ。
「まったくですよネェ。」明らかにエルピスとは違う声が背後から聞こえてくる。

「ああいう威勢だけの女は一度痛い目にあわせたほうがいいですヨ?」

ただの観光客ではない、突き刺さるように背後から迸るマナにはっと振り向くと、
そこには見たこともないひょろ長いダークスーツの男。

「ん・・・?君は・・・。!」

最初は馴れ馴れしい口調に知り合いかと思ったが・・・いや、確かに知り合いだった。
手に持っていた斧を切り株に突き刺すと、じっと相手を見据える。

「ほう、テメェはちゃんと覚えていたか。あのクソ羽女と違って。」

黒のソフト帽を手にとって丁寧に頭を下げてきた男は、帽子を被りなおすとまるで態度が急変した。
帽子の下から舐めるように見つめてくる黄金の蛇眼が、宿命の相手が覚えていた事を喜んでいる。

「フェンネルか・・・。やはり、封じられているのはフェイクという事なのかい。」

どうにもつまらない。エルピスと違い、表情一つ変えずまるで取り乱すことをしないからだ。
アリアンは前々から気付いていた。封じたはずの、いや、封じたものよりさらに強力な暗黒のマナが
この世界のあちこちを飛び回っていたことを。「さすがに切れるな、智の熾天使さんよ。」マヴガフもにっと口元を釣り上げる。

「テメェは話がしやすいぜ、あのクソ羽女と違ってな。」

何よりも、エルピスが既に遭遇しているのだ。化身の中でも最もハデスに近い悪夢に。
それが今目の前で何が嬉しいのか、口元に笑みを浮かべて帽子の下からちろちろと目を光らせている。
「ア~、無駄だぜ、ヤメとけ。」彼の情報をもっと詳しくエルピスから聞こうとした途端だ。
絡み付くような声がそれを阻む。

「エルピスと作戦会議なんて無粋な事しないで、このショーを楽しめや?」

にやにやしながら手先に短剣を召喚して、金属のこすれるチャラチャラとした音が耳に触る。
彼の手先で遊んでいるのは間違いなく神獣ヨルムンガントだ。なるほど、これは“本物”なのかもしれない。

「私の妻を散々にやってくれたらしいね。今度は私に仕返しをしにきたというわけかい?賢くないと思うけど。」

あの短剣が、エルピスを切り裂き、噛み砕いた。そう思うと怒りが湧き上がるが、彼は表には出さなかった。
それが相手の力の源である事を知っているからだ。それに、魔法と短剣では状況は圧倒的に有利だ。

「テメェはテメェでムカつく野郎だな。何だよその余裕ヅラはよォ?」

ちっと舌打しながら不機嫌を口元にあらわにして睨みつける。
威勢だけのクソ羽女も嫌いだが、こういう飄々とした相手も見ていてイライラする。
だが、自分にとっては善神の創った人形はすべてイライラの対象だと改めて察すると、マヴガフはふっと笑って見せた。

「いや、違うね。エルピスをあんな大陸正反対へヤアンを使って引き離して・・・。」

だが、マヴガフのことなどお構い無しに、アリアンは顎に手を添えながら空を眺めていた。
ぶつぶつと独り言を漏らしながら導き出した答えに、前方から口笛が正解を告げる。

「そういうことだ。ヒヒヒ、分かってるじゃねーか。それだけ話が分かってるんなら単刀直入に言うぜ?」

感情を顕にして突っ込んでくるエルピスとは違い、この男は接触していても面白くないどころかムカつくばかりだ。
おまけに彼女のように切り刻んで悲鳴を上げさせることも出来ない事をマヴガフは分かっていた。
今の状態で全力でぶつかって、互角に戦えればいいほうだろう。

「その必要はないさ。君は私の答えが分かっているはずだろ?」

先手、先手を打って挑発を潰すアリアンの顔が面倒くさそうに歪む。
実力的に余裕のある相手だと分かっているからこそ出来る顔。
だがそれでも、その顔が逆にマヴガフに腹を抱えさせた。智の熾天使も、この程度というわけだ。

「ヒャハハハ!ア~、テメェら夫婦ってのはマジ面白いぜ。そのマゾ具合、バカじゃね~の?」

甲高く笑うマヴガフに、アリアンは首をかしげていた。勝てるとでも本気で思っているのだろうか?
だが、相手の態度を見る限りどうやらそのようで、懐から取り出した魔道書に視線が釘付けになった。

「そこまで覚悟決めてるんならたっぷり遊んでやんよ。テメェも知ってんだろ?コレ。」

やっと面白くなってきた。それまでの余裕面が歪んだからだ。
手に持った漆黒の魔道書を軽く振ってやりながら、白い歯を見せて口元を釣り上げる。

「ダイモニオン・エムブレム・・・。」

かつて神界で神の次の位にいたアリアンが知らないはずがない。「一体どこまで封印の解除を済ませている?」
そして、その魔道書が善神達によって封じられている事ももちろん知っている。
だがそれが今、製作者の許へと戻り、かつてを取り戻しつつあることは迸るマナから気味が悪いほど分かる。

「知りたいか?知りてぇよなぁ!いいぜ、見せてやんよ!」

帽子を懐にしまうと、魔道書の表紙にタッチしてマナの共鳴を図るマヴガフ。
途端、周りに衝撃波が走り、魔道書は自ら展開して主の周りに幾重もの魔法陣を構築して渦を巻いた。

「ヒャーッハッハッハ!どーよ!どうだ見たかこのマナを!」

噴き上がる烈風に逆立つ髪。顕になった黄金の蛇眼が狂喜を叫ぶ。
歯を食いしばるアリアンの周りを暗黒のマナが吹き荒れて反逆者を串刺しにしようとでもするかのようだ。
幾重にも重なった魔法陣の中心に立つマヴガフは流れ込むマナがもたらす快楽に天を仰ぐ。
「ケヒヒヒ!ダイモニオン・エムブレムッ起動!!」彼が一つ命じると、烈風は爆風となって辺りを暗黒の風と閃光で包み込んだ。

「ぐっ・・・これほどのマナと君はひとりで戦ったというのか、エルピス・・・。」

もう、吹っ飛ばされないようにするだけで精一杯だった。魔法障壁を展開して傷こそ受けないが、
周りを包み込む暗黒のマナが、フェイクではない本物で触れるだけでこちらのマナを侵してくる。

「いいこと教えてやるぜ。」

ようやく閃光が収まり始めたかと目をこじ開けて周りを確かめようとした時、せせら笑いが聞えてきた。

「クソ羽女と戦った時は、この半分ぐらいの力しか解放できなかったんだぜ?」

ようやく開けた視界、そこには容姿こそ何も変わらないものの明らかに人間ではないマナを湛えた男がすらっと立っていた。
噴き上がるマナが天を焦がし、逆立つ髪は刃向かうものすべてを突き刺す短剣かのようだ。
その周りには無数の邪蛇がうねり、飢えた神獣たちはチロチロ舌を出しながら主の命を今か今かと待っている。

「つまり、だ。クソ羽女が傷一つ付けられなかった力の倍以上の力に、テメェはケンカを売ったわけだ!」

表の顔を創っていた仮面が全て吹き飛んだ彼の眼差しは、まさに悪魔と言うに相応しいもの。
彼の周りをうねる邪蛇が構成する魔法陣、彼のテリトリーというべきかその中に入ったらどうなってしまうのか分からない。
今も彼が迸らせるマナによって地響きが続き、周りの森は吹飛んで枯れていく。
その様子を見つめると、悪神はまた一つ笑って高笑いをし始めた。

「この様子だと・・・ほぼ封印を解放したのか!」

目の前にある力は、神界の力を知っているアリアンにとっても未だかつて遭遇したことの無いもの。
当然だ、ダイモニオン・エムブレは悪神界の理を創りあげた原初にして最強の魔道書なのだから。
人間たちはこれを恐ろしい力と呼ぶのだろう。神界の力をこの下界で開放して見せる彼にアリアンもさすがに焦る。

「ひっひっひ、そういうことだ。どォだ?こええだろ?動けるかァ?ヒャハハ!」

マヴガフからほとばしる紫炎のマナが噴きあがり、彼が歩くたびに魔法陣に触れた場所が死に絶えていく。
魔法陣からあふれ出すマナが地面に流れ込んで、彼が笑うたびに地響きが起こった。

「くっ・・・。そしてこの封印を奪いに来たということか!」

だが、まだ開放が完全ではないことはマヴガフの顔を見ればすぐにわかる。
もし完全な力を手にしてしまったら、彼は世界を絶叫と絶望で覆い尽くして余りある。
今この封印首の皮一枚でこの世界が存えているのである。
ようやく身構えたアリアンをにんまりと見降ろすと、マヴガフは邪眼を見開いて悦を叫ぶ。

「痛い目見たくなければさっさと場所を教えな!そうしねえと、夫婦共々今度こそあの世だぜ!」

相手は所詮熾天使崩れの精霊、こちらは完全な神。
それに加えて、天上界の理を司る魔道書までついている。
勝ち目がない事くらい、智の熾天使と呼ばれロオに仕えた男ならすぐ理解するはずだ。
もちろん、はいそうですかと言うような相手でないことぐらい目に見えているが。

「ア~、テメェらは死んでも神界での居場所なんかねえよな?」

皮肉を楽しそうに口にする。彼らが精霊となったのは神界に反逆して熾天使の位を剥奪されたからだ。
要は罪人として島流しを喰らったわけである。「ゲヘナでも来るか?一生監獄暮らしがお似合いだぜぇ!」
悪神界には罪人用の監獄がある。その最上階にある独房を準備してやるくらい造作もないことだ。

「私の仕事は、この封印を守ることだ。ここを退く事はないよ。」

どれだけ挑発されようとも、アリアンが表情を変える事はなかった。全く持ってつまらない奴。
すぐに顔を真っ赤にして突っ込んでくるエルピスはからかい甲斐があった分、彼の態度はいらいらさせてくれる。

「ったく、テメェら偽善者ってのはどーしてそう死に急ぐかねえ。ま、いいぜ、男の歌声なんぞ聞いてもツマんねえしな。」

エルピスを甚振る時は楽しかった。煽りにすぐ反応してくれるし、悲鳴は何度聞いても最高に興奮させてくれる。
だが、アリアンはまだ力量に余裕があることを知ってか、涼しい顔のまま。
いや、違う。彼は知っているのだ。なぜ、ハデスがわざわざ不意打ちではなく堂々と正面から現れたかを。

「私を殺したら君は封印を開放できなくなるぞ?血の気にはやるのはいいが、冷静になったらどうだい?」

いらいらさせるすかした喋り方。本当のことだからますます神経を逆立てる。
だが言っていることは確かな事。エルピスを殺さずにおいたのもそれが理由だ。

「んなこたテメェが心配することじゃねェよ。」

舌打したマヴガフはポケットから手を引き抜き、ぱっと開くとその手に足元の魔法陣から邪蛇が飛びついてきた。
腕に絡まった蛇は短剣へと姿を変え、アリアンへ向けた鋒の先に好戦的な眼差を向ける。

「吐くしかなくなるまで甚振りゃいいだけだ。エルピスみてえにナァ!!」

ばっと手が撓ったかと思うと、ヨルムンガントが大顎を開けてアリアンへと襲い掛かった。
テレポートで回避したアリアンは、向こうで太い木々を噛み砕き紫焔に燃え上がらせる邪蛇に息を呑む。
「いいか?主導権は俺様にある。」その恐怖に染まった横顔をにんまり見つめたマヴガフ。

「古の縁・・・そろそろ終わりにしようぜ?」

また一本手元に投げ短剣を召喚すると、彼はその刀身にアリアンを映して黄金の目を開かせた。
3000年間ずっとこのときを虎視眈々待ち続けてきた。ようやく、嘘と裏切りが生み出したこの縁も終わる。

「それはこちらのセリフだ。ここでハデスのマナ、滅んでもらう。」

これはちゃんと相手をしないと、ここら一体が消し炭にされてしまう。
人間達に被害を出すわけには行かず、アリアンは向き合うと普段着を光に溶かして神界の衣に身を包む。

「おうおう、強気に出てきたもんだな!じゃあ挨拶代わりにくれてやらあ!」

無数の蛇が魔法陣からマヴガフへと這い上がり、彼の腕に絡みつく。
左右の手に召喚された短剣たちをマヴガフは狂喜に満ちた目で狙いを定め、電光石火に投げ放つ。

「ファイアビット!!その程度で私を倒せると思われちゃ困るよ。」

指先に召喚した火球を次々放って蛇たちを黒コゲにして撃ち落しいく。
呪文も唱えず次から次へと放って見せる魔法は、エルピスの弓に勝るとも劣らず早い。

「さすがだな。あのクソ羽女とは違うってことか。」

ところが、それを見せられたマヴガフはますます声に奇を乗せて悦を叫んでくる。
また一本、短剣を手元に召喚した彼はジャグリングしながら舌なめずり。「こりゃあおもしれえなあ!」

「行くぜ、アリアン!久々に楽しめそうだぜ!ヒャッハー!」

さすが盗賊の神と言うべきか、姿格好はどう見ても戦闘には不向きなスーツ姿だが、
まるで風かと思うほどのスピードで突っ込んできた。

「くっ・・・。まさか本物のヨルムンガントと相対することになるとはね!」

風に引き裂かれるような感覚。間一髪テレポートで回避したが、
頬に伝わる鋭い痛みに手をやれば指先が赤く染まった。これが完全な力を手に入れてしまったら・・・。
それを考えるだけで戦慄が走った。だが、恐らく今の感じ、すばやさはこれが限界だろうか。

「俺様も嬉しいぜェ?ヨルムンガントも喜んでるぜ!」

あのニタニタする顔は何度見ても神経を逆撫でるが、それ以上に興奮しているのはマヴガフだ。
ダイモニオン・エムブレムからあふれ出して自分の中で駆け回るマナは確実にかつてを取り戻しつつある。

「どっから千切って欲しい!特別にリクエストどおりにしてやんぜ!」

もうこの段階でも、この世界を塵にするくらい造作もないことだ。
見ろ、いくらでも絶望を雨と降らせる短剣を精製できるこの力を。
先ほどとは比べ物にならない本数のヨルムンガントを投げ放ち叫ぶ姿はまさに悪魔であった。

「フレアバースト!何度来ても無駄だ!封印には指一本触れさせないぞ!」

だが、雨を枯らすかのように吹き上がった業火が邪蛇のすべてを焼き尽くす。
さすがかつて魔術師の神ロオの懐刀として神界で名を馳せた男。
その魔術の腕はまるで落ちてはいない。それまで面白がっていた顔が歪む。

「チィッ、中級魔法で遊びやがって!そろそろ本気で行くぜ!」

短剣を握り締めた彼は今度は飛びかかってきた。両手に持った短剣で襲い掛かる。
その素早さたるやまさに閃光。テレポートが追いつかず、気付けばもう目の前に迫られていた。

「ぐっ・・・!」
「チィッ。」

飛び掛るその姿は、まさに大蛇が獲物狙い大顎を開けるかの如し。
だがその大牙は寸前のところで阻まれた。

「このマナシールドを食い破れなければ君に勝ち目はない!」

紙装甲の魔道師など、ヨルムンガントの前ではおやつにもならない。
だがこの男は違う。彼の魔法障壁は重厚な鎧が紙と思えるほどの強固な守り。

「完全に守りに入ってやがる。」

結界さえ守ることが出来ればそれで良いという頭が見え見えの戦法につまらなさそうにするマヴガフだが
次の瞬間、その口角は上を向いていた。「ヒヒッ、いいぜ?そのまま俺様の攻撃、受け続けていてくれよ。」
マジックシールドに召喚したヨルムンガントを投げ続ける。

「逃がしはしない!ファイアストーム!」
「んぐっ?!」

だが、アリアンもただ防戦一辺倒と言うわけではなく、相手の隙を見逃してはいなかった。
すかさず炎の上級魔法をマヴガフ目掛けて放ち、彼は爆風で塵の如く吹っ飛んだ。

「チッ、クソ!やっぱり威勢だけのクソ羽女とは違うな!おもしれえよ!」

すぐに空中で体勢を整えて着地するマヴガフにはまだまだ気に障る余裕がある。

「やはりダイモニオン・エムブレムの開放はまだ完全ではないようだね。」

しかし、今の一撃でアリアンは確信していた。この状態なら、まだ倒せる。
彼は手先に業火を召喚すると宿敵を睨み据えた。「再び封印されてもらう!」
ダイモニオン・エムブレムも、そしてマヴガフも、この世界にいてはならない、いるはずのない存在だ。
均衡を正すべく、アリアンはごうっと手先を膨らませた。

「ヒヒヒッ、その威勢、どこまで続くかな?大どんでん返しってモンがあるかもしれねえぞ?」

灼熱に赤く染まりあがるマヴガフの顔。陰影濃く彫り付けられた彼の顔には
ますます悦がはっきりと浮かび上がり、不気味な余裕がアリアンに先手を打たせた。

「そうは行かない!私の火炎魔法、防ぎきれるか!」

手元から放った火炎が宙を焦がし、まっすぐにマヴガフへと襲い掛かる。
迫り来る火炎を最後まで見下ろしていたマヴガフは、見切ったかのように跳躍して躱す。

「へっ、そう簡単に喰らうかよ!さっきのはテメェの力を見ただけだわ!」

まるで風に溶けるかのようにその場から姿を消した彼は、距離を取ってヨルムンガントを投げつけてきた。
マジックシールドで受け止め、空中を邪蛇に乗って飛び回る悪神へ再び火炎を浴びせる。

(おかしい・・・なぜフェンネルはこんな攻め方をするんだ。)

戦闘は実力伯仲に見えたが、アリアンは違和を覚え始めていた。
(こいつの性格なら・・・もっと突っ込んでくるはずだが・・・。)力を手に入れた今、
殺戮と破壊を好むこの男なら狂喜を上げて襲い掛かってくるはずだ。
魔法と神獣がぶつかり合う音だけが時を刻んでいく。
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