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 ←13話:古の縁 →1話:決断の夜
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter20 進撃のアブソリッター

14話:悪夢の具現

 ←13話:古の縁 →1話:決断の夜
「うひゃ、始まったみたいだ。」

突然起きる地響き、向こうを見上げればもうもうと煙が立ち上っている。
「そんじゃあたしもがんばるとしますか!」手で庇を作って見上げたフェアリーゼは腕をぐるぐると回すと歩き出す。
ローブを引きずって向かった先は神殿だ。しばらく中を歩いた彼女の足が止まる。

「ここだな、魔法陣。」

そこは封印の間。アリアンたちが守ってきた封印術が施されている場所である。
彼女はがらんとした広大な空間の真ん中に屈むと、ローブに手を突っ込む。「ええっと、ここでこのナイフを・・・。」
とりだしたのはヨルムンガントだ。おっかなびっくり摘み上げられて、神獣は不機嫌をあらわにする。

「お、おい!あたしだってあんたと一緒にいたいわけじゃないんだよ!文句ならあんたのご主人様に言えよ!」

酷く暴れるヨルムンガントを両手で押さえつけながら愚痴を漏らす。
何とか彼女のところから抜け出そうとするヨルムンガントの鋒をそっと下へと向ける。

「よぉーし、大人しくしてくれよ。あんたを魔法陣の真ん中に差し込めばそれで終わりなんだ。」

ただ広い空間と言うわけではない、この部屋一面に悪神を封じる為の魔法陣が施されているのだ。
慎重にダガーをその真ん中に突き刺そうと息を呑むフェアリーゼを嘲笑うかのように、戦闘音が地響きを連れてきて目を白黒。

「よし!刺したぞ!」

早くこのおっかない任務から逃れたくて、彼女は一思いにヨルムンガントを魔法陣へと突き刺した。
その途端である。ヨルムンガントが紫紺に輝いたかと思うとそれが魔法陣へと一気に伝わっていく。

「うわぁ?!何だこの光!」

魔法陣が紫紺に輝きだし、膨れ上がってくる。
この場にいたらとても危険だと直感するが、なにぶん広大すぎて走って逃げる余裕なんてない。
「マジックシールド・・・うわああ!」とっさに魔法障壁を張るが、輪廻転生による魔力の低下は著しくまるで無意味。
軽々とまるで枯れ葉がもまれるかのように宙をきりもみ。

「これが・・・ヨルムンガントの力・・・なんて力なんだ・・・。」

あんな小さい短剣一本が、こんな大きな結界を破壊しようとしている。
紫焔に犯された魔法陣は砕け、崩れ、一匹だったヨルムンガントが今や宙を無数に飛びまわり、
弱りきった魔法陣にトドメを刺そうとあちこち食いつき毒を流し込んでいく。
その光景に、フェアリーゼは言葉を失うしかなかった。
「わあああ?!」ところが、そんな傍観している余裕さえヨルムンガントは与えてくれなかった。
何とフェアリーゼにまで食いついてきたのである。「あたしはあんたの主の右腕なんだぞ!!」
目を白黒させてローブから叩き落とす。見境ない連中に、もう最後まで見届けてなどいられず彼女は逃げ出した。

 突然の地響き、アリアンがはっとした時にはもう最期の瞬間を迎えていた。
部屋に収まり切らなくなった邪蛇達が神殿の天井を食い破り、青空へと食いついたのである。

「?!な、なんだと?!封印が!!」

直後、猛毒に犯された魔法陣は完全に崩壊し、結界を構成していた均衡が崩れる。
目を見開き広がる光景に言葉を失うアリアンをマヴガフは腹を抱えて笑う。

「ヒッヒッヒ・・・だーから言っただろ?大どんでん返しがあるかもしれねえってなァ?」

僕がどうやらうまくやったようで、また一つトリガーが引かれた事を察知したマヴガフの黄金が切れ上がる。
溢れる、体に流れるこの感覚。近づいてきた、かつてをまた一つ取り戻した。
甲高い笑いで緊張を引き裂くと、彼はアリアンを指差して嘲笑を浴びせる。

「テメェとクソ羽女を出来るだけ引き剥がした甲斐があったぜ。もし二人なら・・・こんな失態犯さねえもんナァ?」

一人じゃ何もできない半人前精霊様だ。作戦は見事に的中し、向こうでヨルムンガントが勝利の雄叫びを上げている。
信じられないが、目の前の邪悪なマナが一層膨らんだことがアリアンに事実を叩きつけてくる。

「共謀者だと?!封印を解くほどの力がこの世界にある・・・そんなばかな!」
「俺様が手を下さずとも、雑魚に加護って形で渡した俺様のマナだけで十分だとしたら?」

勇み足を踏もうとするフェアリーゼを諭し、このスオミの封印を後回しにした理由はまさにこれだった。
十分に封印を開放してあれば、自ら赴かなくとも済む。
せっかくここまで準備してやったのだ。雑魚でもガキの遣いくらいは出来るだろう。

「はじめから君は時間稼ぎのつもりで私の前に姿を現したのか!」

違和感はやはり杞憂ではなかった。ただ単に、自分の気を引くためだけだったとは。
気付けなかった悔しさと、封印を開放されてしまった絶望感がアリアンの表情を歪めさせる。
キモチイイ、最高にタノシイ!マヴガフが一番大好きな表情が目の前にある。

「ア~、封印を完全に解いた状態だったらへでもないだろうがな。
 今の状態じゃテメェと拮抗がいいところだろうからな。なぁにも打ちのめす事だけが勝ちじゃねえからな。」

自分でも自分の言葉とは思えないが、今の状態では仕方がないことだ。
最高の悦は、全てを手に入れてから改めてじっくり味わえばいい。
今すべきことは、とにかく勝つことだ。勝てばいい、それが全て。

「今の俺様にとっての勝ちは、テメェから封印を奪い取ることだ。ゴミ処理なんぞ後からでいいからヨォ!」

まるで奪い取ったことを見せつけるかのように、マナを開放して周りに撒き散らす。
荒れ狂う暗黒の風を前に、全てのものが色を失っていく。
絶望を見せつけられて、アリアンは唇を噛むしかできないでいた。

「いててて・・・マヴガフ~、何とか仕事終わったぜ~。」

その時だ、ふいに後ろから情けない声が上がる。
食いつかれた腕や尻餅をついてひりひりするお尻をさすりながら顔を見せたのはフェアリーゼ。
成果を褒めてもらいたかったのだが、逆に主に牙を向けられた。

「バカが!とっとと消えろ!死にてえのか!」

とっさに叫んだマヴガフの横を音速にすり抜けていく灼熱の風。
舌打ちした時にはすでにフェアリーゼの前に烈火が迫っていた。

「ヒッ?!わ、わあああ!!」

なんとか一発目を避けたフェアリーゼだったが、アリアンは立て続けにファイアビットを撃ってきた。
アイスランスやマジックシールドで防ごうとしてみるが、とても歯が立つ魔力ではない。
シッポをまいて逃げていく彼女へ牙をむき出しにするアリアン。

「お前か!封印を解いた者は!ただでは済まさん!」

怒りをむき出しにしてフェアリーゼに火炎魔法を放とうとするアリアンの耳に神経を逆撫でる笑い声が入り込んでくる。
そちらに鋭い眼差しを向ければ、勝ち誇った笑みを浮かべるマヴガフが黒の魔道書を閉じていた。

「あ~れま、そんなことより解かれた封印のこと心配したほうがいいんじゃねーの?ヒャハハハ!」

どうにもならないことを知っていて、この男はわざと楽しげに話しかけてきた。
ぎりっと悔しさと怒りを噛み砕く。一度解かれた封印をもう一度復旧するとなると、膨大な時間が必要なのだ。

「くっ、ダイモニオン・エムブレムを使って下界を破壊するつもりか!」

間違いなく、封印を再構築するよりも、マヴガフが手に入れた力で下界を炭に帰るほうが早い。
ところが、マヴガフは「はぁ?!」とまるで見当違いなことを聞いたかのような反応をして見せてきた。

「んーなちいせえことで満足するかよ。この魔道書の開放がサプライズの一つに過ぎねえって言ったら・・・どうだ?」

懐から取り出した帽子をそっとマナの放出がなくなり元通りの髪型に戻った頭に載せる。
だがそれでも、帽子の下から覗く野心に塗れた黄金の眼はしっかりと見据えてきて舌なめずりしている。

「ヒャーハッハ!何も言えねえか!
 面白れえだろ!興奮するだろ!ヒャハハ!待ってろよ!そのうち見せてやらあ!」

真実を語らず、慌て、不安に陥る顔を見て狂喜を叫ぶ。その悪魔の叫びはますます聞いた者の心へ絶望を植えつける。
悪循環であった。それを断ち切れずにただ見ることしか出来ない無力さにアリアンは立ち尽くすばかり。
作戦は終わった。ふと時計を見下ろすと、ひとつニンマリと笑みを投げつけてマヴガフは帽子を取って頭を下げて見せた。

「んじゃ、あばよ。精々封印の修復でもがんばるこっとな。」
「くっ!」

怒りに任せたファイアビットをマヴガフへ投げつけるが、業火は無情にもマヴガフの体をすり抜けていった。
錬金術・・・彼は記憶の書を使ってどこかへ転移してしまったようだ。
とんでもないことが現実となり、ひとり残されたアリアンは膝から崩れ落ちて手を突いた。

「ま・・・作戦どーりってわけよ。」

普段なら気付くだろう、まだこんな近くにいるというのに。絶望は人間から視界を奪う。
木の上からアリアンを見下ろし、また不気味に笑い出すマヴガフ。

「あとは・・・1箇所だけか。いよいよだなァ、クソ共!!」

もうすぐ、もうすぐだ。裏切り者を全て噛み砕き、新たな理が全てを統べる世界の憧憬が目の前に迫っている。
狂喜を叫び消えるマヴガフ。その悪魔の叫びははるか彼方の町まで覆って人々に不安を植えつけたという。


「アリアン!一方的にマナを遮断して!ちゃんとゴミ出ししたの?!」

ようやくにアリアンとマナでコンタクトを取れるようになったのは30分後の話だった。
お説教をするとよく耳を塞ぐようにマナを遮断してしまうから今回もそうだと思っているエルピスの声が
アリアンには余計に胸を釘を打ちつけられたような感覚にさせた。

「大変だ、エルちゃん。マヴガフに・・・フェンネルにしてやられた!」

だが、時は一刻を争う。真実を相棒に告げると、理解できていない眼差しが返ってきた。
しばらく声を失い、視線彷徨うエルピスは明らかに事実を受け入れられていないようだ。

「え・・・どういうことなの、アリアン!フェンネルが現れたの?!」

聞き間違いであって欲しい・・・。たが、最も恐れていた事が起きてしまったことを受け止めるしかなかった。
途端、彼女の目は見開き、焦燥に駆られ震える早口がアリアンを揺さ振る。

「ああ・・・協力者がいた。奴に気を取られている間に、そいつにやられた・・・。」

信じられなかった。あのハデスの化身が、自分以外を信じるなんて。
狡猾な悪神は、誰も信用せずに全て大切なことは自分の手で下さねば気が済まない性格のはずだった。
封印の開放は、別に大した問題ではないとでも言うのか・・・?

「封印を解かれてしまったの?!」

だが、そんなことは今考えるべきことではなく、エルピスの声にはっと我に帰るアリアン。

「奴はこのタイミングを狙っていたんだ。君と私が一番離れるこの瞬間を。」

二人の精霊が離れ、最もその力が弱まったこの瞬間を狙ってくることは想定できていた。
だがまさか、協力者がおり、おまけに悪神自ら手を下さずとも容易に開放できるまでに力を取り戻していたとは。
思い出せば後悔ばかりで、アリアンはただ詫びるしかできずにがっくりと肩を落とす。

「じ、じゃあ残っている封印っていうのは・・・たった一つだけ?!」
「・・・そういうことになる。」

封印が1つと2つではまるで意味が違う。残り1つなど、首の皮1枚というより蜘蛛の糸1本で繋がっているようなものだ。
精霊が守る封印が突破された今、残りの1箇所の封印ができることは、マヴガフに見つらないように祈ることだけ。

「申し訳ない、私がいながら。」

どんなに詫びても取り返しのつかないことをしてしまった罪悪感がアリアンを俯かせていた。
だが、エルピスは崩れたアリアンにそっと手を差し伸べると、見上げてきた旦那にふっと笑いかけた。

「いいえ、あなたが無事でよかったわ。私では、まるで相手にならなかったもの。」

自分が対峙したときよりもっと恐ろしい力と戦ったことは優に想像できる。
無傷で還ってきてくれた最愛の旦那の背にそっと言葉をかけると、彼女は安堵の涙を流して見せた。
だが、アリアンのほうはその優しさに甘えることはしなかった。時は一刻を争う。

「このことをシャニーちゃんたちに伝えてくれ。フェンネルが封印を解いて一体何をするか分からない。」

少しでも早く彼の謀略を打ち破らなければ、この世界が再び終末に向かうことをとめられなくなってしまう。
今はまだ、封印の大半を開放したとは言え未完の状態。今ならまだ間に合う。
その焦りをそのまま妻にぶつけるアリアン。いつも冷静な彼の態度にエルピスは違和を覚える。「どういうこと?」
何をするか分からない・・・とは、彼らしくない分析だったからだ。

「フェンネルは魔道書の開放が最終目的ではないと言っていた。奴の目的を果たさせる前に、何としても止めなければならない!」

ダイモニオン・エムブレムの解放の次のステップを踏まねばなしえない事・・・。
それが単に下界の破壊と天上界への復讐に留まらないことは優に想像できる。
だが、エルピスはどんと胸を叩いた。何を企んでいようとすべきは変わらない、奴を止める事。

「分かっているわ。帝国をとめたら、すぐにマヴガフを追うわ。」

それでも、すべきことの順序を変えるわけには行かなかった。
マヴガフを倒すには、それだけに集中できなければ、多くの協力を得なければ、決してなしえない。
チャンスは一度きり・・・もし失敗したら、光を失ったら、勝ち目はない。

「アリアンも頼むわよ!」
「ああ!封印の力を取り戻す為に全力を尽くすよ!」

このままマヴガフの思惑通りに言ったら、封印の再構築なんかしても無意味かもしれない。
だが、妻たちががんばってくれればきっと間に合う。今はそれを信じるだけだ。
そう、全てが、各々信じて死力を尽くすのみ。

「シャニー・・・。アルトシャン、アンドラス、お父さんにマヴガフ・・・今が正念場よ。」

アリアンとの会話を終えたエルピスはすぐさま談笑する仲間達の背中を追った。
その瞳の中に、これから起きる死闘を終焉させる鍵、希望の光を振りまく熾天使の姿を映して。
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