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 ←8話:神の審判 →10話:己が手にする弓を信じて
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter21 さまよう魂

9話:ノスフェラートの誘い

 ←8話:神の審判 →10話:己が手にする弓を信じて
 深夜、フクロウが寂しく鳴く中を潜入服に身を包んだシャニーが一人歩く。
腰の両側に短剣を下げ、用途さまざまな爆弾を身に忍ばせた。用意は万全を期して挑む。

「約束の場所は・・・ここのあたりね。」

願わくば、これらの活躍の機会無く終わって欲しい。
いや、きっとそうすると彼女の調和の意志は変わってはいない。
だが、多くの者に指摘され続けてきた。それが甘さになってはいけないと。

「あったわ・・・。目印の廃墟。」

今こそがその時なのだと己に言い聞かせながら歩んだ道。
ふと足が止まった場所では、月明かりに照らされた廃墟が出迎えてくれた。
もう恐らくずっと人の営みが失われた、それでも主の帰りを待つ悲しげな佇まい。
「?!こ、この光景・・・。」父の姿を探してぐるっと廃墟を見渡していた時だ、シャニーの頭に電撃が走る。

「夢と同じ・・・同じだよ!」

― おいで、アンドラス。
幼い自分がやさしく名を呼ぶ男性の許へ駈けていくあの夢の中に現れた光景。
確かに色褪せ、朽ち果て、夜に沈んでいるが、間違いなかった。

「ということは、ここって私が生まれた家ってこと・・・?」

思わず駆け出して廃墟に近づき、風雨に晒され続けたぼろぼろの柱に手をやる。
急に湧き上がってくる感情。窓から中をのぞけば、未だに台所の棚には食器が並んでいた。
幼い子供が使うおもちゃや砂いじりの道具もそのままに・・・まるで時が止まっているかのようだ。
思わず拾い上げる。幼い頃、この砂場で自分は遊んでいたのだろうか。

「お父さん!どこなの?!どこにいるの!!」

はっとして月を見上げる。ここに来た目的は、感傷に浸ることではない。
この光景を含め全て、全てを知るために来たのだ。
砂場に立ち上がり、父を呼ぶ。まるであの夢と、同じように。

「まだ・・・着てないのかな。そんはずないよね。」

返ってくる声はない。静寂が彼女の心を押し潰しそうだった。
どうして幸せな生活は急に色を失ってしまったのか。
今まで堪えることができたものが、かつてを偲ばせるものたちのせいで溢れ出しそうになったその時だ。

「ヒッヒッヒ・・・飛んで火にいる羽女ってかぁ?」

ぞくっと背筋が凍りつき、口元が針で縫いつけられたかのように引きつる。
聞こえるはずの声とまるで違う、今一番遭ってはいけない存在の声が背中を舐めてくる。

「マ、マヴガフ・・・!?ど、どうしてお前がここに!」

短剣を引き抜きながら振り向けば、そこにはヨルムンガントを手先で回転させて遊ぶ悪魔の姿。
彼はその黄金の蛇眼で鋭く彼女を見据えると、一つ舌なめずりして天を仰いだ。

「ウッハッハ、テメェそれを本気で言ってんのか?バカだろ?バカじゃないの~??」

いつも通りの相手をとことんまで貶める嘲笑が彼女を襲う。
彼は固まる彼女をにんまりを見下ろすと、ヨルムンガントの先を彼女へ向ける。

「邪魔クセェのがひとりでふらふらしてんなら・・・逃す手はネェじゃねえか!」

今までは利用価値があるから生かしてきただけのこと。
だが、もうすでにアンドラスという代わりがいる今、用無しということなのか。

「くっ・・・まさかイスピザードさんはお前が!」
「ハァ?」

いくら辺りを見渡しても、父の姿はどこにも見えない。彼が遅れるはずがなく、代わりに姿を見せた悪魔。
気づいた時には推測をぶつけていたが、彼は眉間にシワを寄せた。「どうしてそんなことしなきゃいけないワケ?」

「テメェ、何か勘違いしてねえか?」

にっとまた神経を逆撫でる笑いを浮かべたマヴガフから投げつけられた言葉。
「わかんねえって顔だなぁ、オイ?」彼が一体何を掴んでいるというのか。
睨むだけで何も出来ずにいる弱者に、彼はたっぷりの絶望を塗りつけてやった。

「俺様もイスピザードも五賢刃同士、つまりナカマだ、ナカマ。」

今・・・この男は何と言った?自分の父と、世界を破滅させようとする悪魔が、仲間?
にわかには信じられない、頭の中で何度自問しても受け入れられない。必死が首を振らせる。

「違う!お父さんはお前とは違う!世界の為に戦ってきた人だ!」
「ハァ?!」

一体お前がイスピザードという男の何を見て、知ってそんな口を叩くのか。
口先だけ、ただハデスを認めたくないだけの出任せを、マヴガフは覗き込むように腰を折って目線の高さを合わせてきた。

「世界のためダァ??面白いこと言うね~シャニーちゃんヨォ!」

明らかな蔑みが男の顔を悦に染め上げてケタケタと絡みつくような笑いで怒りを舐めとってくる。
今のシャニーに出来ることは、その嘲笑に負けないようにまっすぐ対峙し、睨み返すことだけ。

「んじゃ、答えてみな?な~んで俺様がこの場にテメェが来ることが分かったか。」

分かっているはずなのに、どうしても否定しようともがく姿が堪らない。
ただあの男と敵対しているという事実の何倍にも膨れ上がる絶望が見て取れる。

「言えねえなら言ってやんよ。あのジジイから聞いたからだよ!
 テメェはまんまと罠にはまったってワケだ!マジ頭ワリィ!ヒャハハハ!」

腹を抱えながら愚か者を指差して天を仰ぐマヴガフ。湧き上がる絶望と失望。
だが、それを彼女は跳ね除けた。イスピザードは、今まで一度足りと嘘を言ったことはない。

「そんなバカな!お父さんはそんな事をする人じゃない!」

笑いを掻き消すかのように腕で広がる絶望を払い大声を張り上げた。
どこまでも救えない奴。高笑いを止めたマヴガフの顔に、一層の蔑みが浮かぶ。

「ま、そう信じたままでいな。ぼやぼやしてるとおっ死ぬぞ!」
「!」

ぎらりとマヴガフの眼光が鋭く闇に走ったその刹那、シャニーは森の奥に光る眼を見逃さなかった。
自分目掛けて音速に飛んできた何かが頬を鋭く引き裂いていく。

「くそっ、ヨルムンガント・・・。」

頬を伝う感触は、掠っただけではない事を優に知らせ、痛みが走った頃には既に顎に雫が垂れていた。
主の下へと戻っていく神獣は、次こそはと大顎を開けて獲物を見据えている。

「ほお、上手く避けたな。そうこなくちゃ面白くないわ。」

戻ってきた短剣をその手の中に収めたマヴガフは、手の内にナイフを隠すとぐっと握り締める。
するとどうだろう、彼の指間からまるで牙が生えるかのようにナイフが飛び出してきて、
どれもがその鋒に紫焔を吹き上がらせて邪蛇が叫びを上げる。

「遊んでやんよ!」
「舐めるな!私だって前までの私じゃない!」

両手にした六本のナイフを慣れた手つきで放ってくるマヴガフ。それを持ち前の機敏さで避けて見せると、
彼女もまた短剣にマナを燃やして飛びかかる隙をうかがって姿勢を低く構える。

「いいねえ、その余裕のない表情!殺すことしか考えてない眼!たまんねえ!」

これが光の熾天使の目つきか?宿敵に愛する者を貶められた怒りが燃え上がっている。
何が悪神と違うというのか?暗に問うてやるが、返ってくる言葉はない。

「こりゃ楽しめそうだ。行くぜ、羽むしりとって俺様の部屋に飾ってやるよ!」

こちらのほうが面白くていい。義務や大儀で挑んでくる連中とは違う、
心が求めるもので挑んでくる相手なら、痛めつけ甲斐がある。死ぬまで向かってくるだろうから。

「これでも喰らえ!いっけえ!」

どんどんとヨルムンガントを投げつけてくるマヴガフは相手がダガーと見て距離をとっているらしい。
だが、以前の自分とは違うといったシャニーは早速弓を召喚して光を放って見せた。
連射速度なら間違いなく自分に分がある。得意の二本撃ちで押さえ込みにかかる。

「相変わらずヘタクソだな?当たんなきゃ意味ないんだぜ!」

何故、何故当たらない。あんなにエルピスと特訓したというのに。(は、早い?!)
ヨルムンガントに掴まったマヴガフが矢の雨の中、宙を滑る様に距離を詰めてくる。
見事な体術で避け、たった一本のナイフで弾き落とし、結局一発も当たらぬまま至近距離へ。

「ぎゃあ!」
「おいおい、もうお寝んねか?前とは違う?どこが?ねえどこが?」

滑空する勢いそのままに宙を引き裂いた長身を生かした長い蹴り。
直撃を受けたシャニーの華奢な体が宙を錐揉みして砂場に叩きつけられた。
宙で受身を取ることなくダウンする熾天使に邪蛇の勝ち誇った笑みが吐き捨てられる。

「くっ・・・。まだまだ!」

トパーズがない今、熾天使としての権能を開放することは出来ない。
直撃は許したが、ああするしかなかった。下手に回避行動をとっていれば、
踵から飛び出していたナイフの直撃を受けることになっていた。

「この!でやああ!」

立ち上がりざまに消えた彼女は風に載って、にじり寄ってきていたマヴガフとの距離を一気に詰める。
しばらく倒れたままでいたのも、相手を油断させる為だ。ファントムグラインドで喉元を狙う。

「ほお?まずまず短剣も上達したんじゃねえか?」

だが、彼は特に防御の構えを取ることもなく、ポケットに手を突っ込んだまま渾身に歯を食いしばる天使を見下ろしていた。
彼女の短剣は、彼を守る神獣達がしっかりと食いついてその猛進を押さえ込んでいたのだ。

「その短剣でどれだけの人間を殺してきた?」

両手を塞がれた彼女に襲い掛かる邪蛇たち。とっさに短剣を手放して後ろへ跳ぶ彼女に余裕を見せ付けてやる。

「殺してはいないよ!この短剣で切り裂けるのは、お前みたいな闇のマナだけだ!」

言われた瞬間はざくっと胸を切り裂かれたような感覚に陥った。
だが、己が歩んできた道を思い出してその恐れは杞憂であることを確信する。
今握るダガーは、制圧の光ではない。断言できる、守る為のもの。

「じゃあやってみろよ。切り裂いてみろ!おらおらどうした!!」

さも愉快そうな声が静寂の夜に響く。大口を叩いている割に彼女の短剣は一向にマヴガフの減らず口を止められないでいた。
それどころか、ますます勢い乗るのは彼のほうで、打ち合っても互いのマナは爆ぜることもない。

(くそっ、どうしてっ。どうしてだ!)

確かに何度も自身の短剣が、マナがマヴガフを捕えている。
だが、業火に手で汲んだ水を浴びせるかのように、ますます勢いを増す紫紺。
(何で私のマナが通用しない!?)焦りが色濃く彼女の顔に刻まれていくが、それでも隙は見逃さない。

「もらったぁ!ファントムグラインドだ!!」

大きく振りかぶったマヴガフの腕の下を華奢さを利用して潜り抜け、
伸び上がるように喉元をその短剣で渾身を篭めて衝く。自身のマナが相手のマナの流れを裂く確かな手ごたえ。

「あ?何だって?聞えねえなぁ?シャニーちゃんよぉ?」

だが、目を見開いて震わせていたのはダガーで貫かれたマヴガフではなかった。
それどころか、彼は喉をやられたというのに何もないかのように喋っているではないか。

「う、嘘だ・・・貫通してるはずなのに・・・。」

今も間違いなく自分の腕は彼の喉へ伸びており、マナの波動が首の後ろへと衝きぬけ吹き上がっている。
それなのに、ダメージは愚かまるで何も触れていないかのように相手は自然だ。
にんまりと見下ろしてくる口元を舌がなめずっていく。

「答えを教えてやろうか?テメェが雑魚だからだ!!」
「ぎっ?!ぐはっ。」

逆に喉へ手刀を押し込まれ、崩れた背中へ突き落としてきた肘うち。
地面に叩きつけられる寸前で手を衝くが、間髪いれずまわし蹴りが飛んできた。
まるで丸太で殴りつけられたような衝撃に華奢が吹飛び、砂場に叩きつけられる。
喉をやられてまともに呼吸が出来ず、今度はすぐには立ち上がれない。

「キッヒッヒ・・・つまんねえなぁ?まだ精霊の方が手ごたえがあったぜ?」

咽りながらようやく手をついて四つんばいになった彼女との距離を詰める。
短剣を手元とで遊ばせながら見下ろす眼差しは余裕綽々で、顔を真っ赤にして涙を浮かべる熾天使とは対照的だ。

「本気で来ねえなら・・・俺様から行ってやらぁ!」

短剣を逆手に持つと大きく跳躍し、彼の姿に月がすっぽりと隠れる。
神獣が大顎を開ける鋒を真下に向け、重力に任せて未だ立ち上がれないでいるシャニーの頭上を狙う。

「?!ぐう!!」

四本の短剣が交差し、マナ同士が爆ぜて止まる。立ち上がる勢いを使ってマヴガフの攻撃を受け止めたが、
支えきれず膝を衝き、腕も少しでも気を抜けば目の前まで迫った大牙が鼻を持っていきそうだ。

「ほお、受け止めたか。だが・・・どうして膝突いてんだ?」

少しずつ体重をかけてやれば、相手の顔が見る見るうちに歪んでいく。
彼女の顔とヨルムンガントの鋒が少しずつ距離を失い、そしてついに敗北を赤く刻みつけ始めた。

(くそっ・・・。だけど・・・何なんだ、この感覚・・・。)

何かが、何かがおかしい。ハデスのマナと戦っているのに、以前と何かが違う。
確かに背筋が凍りつくような、自身と正反対のマナ。だが、何かが違うと直感が叫ぶのだ。
彼女がどこか渾身を揮えないのはその違和のせいだった。

「ほらほら、立てよ!“お前だけは許さない”んじゃなかったのかぁ熾天使サマよお!」

ついにはマヴガフはヨルムンガントから手を離してしまった。
主の助けを失っても、神獣は己の意思だけでシャニーの抵抗をぎりぎりと押しやっていく。
両腕を防御に使ってしまっている彼女は、マヴガフにとっては実にいい恰好だ。

「がはっ!ぐあ・・・。」

手刀をわき腹へと突っ込んでやる。見開かれた目が色を失いかけたが、それでも頭上の守りは崩さなかった。
だが、明らかに震える両足は内へと折れて限界をあっさり知らせてくれる。
「おいおい、足元がお留守だぜ!」軽く足払いしてやるとそのまま崩れ落ちた。それでも膝を衝き必死に食いついてくる。

「もうヘバったのか?つまんねえぞ!!」

もう一度強烈な蹴りを浴びせられて庭を転がる。
痺れる体に鞭打って顔をあげれば、マヴガフが嘲笑を投げかけてきていた。早く立て、と。

(何なんだ、この感覚・・・。ハデスのマナでは・・・ない?)

目の前にいるのは間違いなく宿敵。倒さなければ世界を守る事ができない相手。
動かない、体が動かない。直感が叫ぶのだ。本当に戦うべき相手のマナなのか、と。

「今のマナ・・・間違いない。」

自分の感覚を信じろ、今まで最愛に、そしてもう一人の父に、ずっと言われ続けてきた。
短剣を杖代わりにようやくによろけながらも立ち上がった。

「何をごちゃごちゃ言ってんだ?今更命乞いしたって遅いぜ!」

口元から垂れる血を拭っただけで突っ込んでこようとしないシャニーを挑発する。
それでも彼女は駆け出そうとせず、それどころかその場をしっかり踏みしめて短剣にマナを宿す。

「来い!同じ手は二度は食わないぞ!」

あの華奢な体でヨルムンガントを受け止めようとでも言うのか。
渾身を振り絞っているのか、彼女の短剣は金のマナに輝いて激しく燃え上がっている。
「おもしれえ。」逆に仕掛けてきた挑発にマヴガフの口角が上を向く。

「んじゃお望みどおり、ぐちゃぐちゃにしてやんぜ!」

手元に召喚していた投げ短剣をふっとマナに溶かすと、握りなおされたのはダガーと呼ぶには重たげな赫灼なる短剣。
ハデスのマナで創り上げられた刀身はフランベルクの如く波打ち、
ところどころ返しがあるそれは、明らかに敵の殺傷を目的にしていた。
それを手にヨルムンガントに掴まりシャニーの許へ一直線の顔は破壊衝動につりあがっていた。

「・・・っ。ぐ・・・あ・・・。」

見開かれる瞳。突っ込んできたダガーを受け止めたのはダガーではなかった。
ごうごうと燃え上がる紫焔が創り上げる刀身。それは完璧なまでにシャニーの腹を捉えたのだった。

「クリティカルヒ~ット!うっはー、痛そ~う。」
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