FC2ブログ
現在の閲覧者数:

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←2話:闇を喰らう蛇 →4話:さまよえる騎士
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  • 【2話:闇を喰らう蛇】へ
  • 【4話:さまよえる騎士】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter22 存在価値

3話:粛清者

 ←2話:闇を喰らう蛇 →4話:さまよえる騎士
 錬金術の結晶、記憶の書で転移した先、果たしてここはどこなのだろう。
だが、周りの装飾品があからさまに魔界の代物であり、ネクロ教の関係であることは分かる。

「ち、アンドラスの野郎、ドブネズミみたいな真似しやがって。」

今はまだ生かしておいているが、それにしても腹が立つ。
人形の分際で神に意見するとは。やはり虫唾の走る熾天使の血は争えないと言うことか。

「ま、あいつに何が出来るってな。そんなことより次だ、次。」

用が済んだらズタズタにして部屋にでも飾ってやるか。
だが今はそのためにも、いちいちイライラしてはいられない。着実に準備の全てが整いつつあるのだ、計画通りに。

「これはマヴガフ大司教様。お越しになるのをお待ちしておりました。」

部屋から出て暗い通路を抜けた先の部屋で出迎えたのはやはりネクロ教の黒きローブだった。
彼は大司教の姿を見ると静かに頭を下げて帰還を祝福する。

「お勤めごくろーさまです。ま、固い話抜きです。例の件、進んでいますか?」

彼もまた帽子をとらずに笑みを見せてやるが、その口調はすぐに柔らかさを棄てる。
司祭は一つ頷くと、マヴガフを部屋の中央へと招く。

「は、器は輪廻転生にて練成完了し、あとはお戻りになられるのを待つのみです。」

マヴガフの前に姿を現したのは、高さ20メートルは優に超える巨大な龍だった。
培養用のカプセル中で今は静かに眠るが、その漆黒の鱗一つとっても邪悪さが滲み出している。
錬金術によって生み出された依り代。これがハデスの器。
「ほう・・・これは素晴しい・・・。」これにはマヴガフも両手を広げて感嘆を漏らす。
これぞ創造の錬金術の最高峰。伝説のドラゴンたちの長所を集めた完全究極体である。

「くっふっふ・・・これがあればもうアストレアなど恐れるに足りませんね。」

暗黒神ハデスもまた、本来の姿は目の前で眠るような漆黒の龍だった。
今、無慈悲なる王が復活しようとしている。笑いが止まらない。

「・・・テメェの皮引ん剥き終わったら、この世界を真っ白にしてやんよ・・・。」

完全なる魂、完全なる体、完全なる鍵、それらが全て揃う時が近づいている。
思い浮かべるだけでわくわくした。切り札がまるで通用しない、あの羽女の絶望に色を失う顔が。
舌なめずりしてその時を待つ。今度こそ徹底的に痛めつけて息の根を止めてやる、と。

「いや、それだけで満足できる代物じゃねえな。」

だが、熾天使を血祭りにあげることなど完全復活の王にとっては造作も無い事。
もっともっと、いや、ついに本題へと入ることが出来る。

「神界もろとも全部掻き消してやるか!ヒャハハハアッ!」

悪魔の叫びが部屋中に轟く。無慈悲なる王が復活すれば、もう止められる者はいない。
それは腐りきった神界も例外ではない。嘘で塗り固めた連中など、この龍の爪一突きで砕いてやろう。
想像すればするほどに、マヴガフの狂喜に満ちた蛇眼が見開かれる。

「我らも心待ちにしております。ハデス神がお導きになる新しい世界。」

大司教の自信に満ちた姿に、司祭もまた手を合わせて祈りを捧げだした。
哄笑を止め、じっくりとカプセル中のより代を見つめて舌なめずりをしたマヴガフは
いつの間にか周りに集まってきている信者達に伝える。変革の時を。

「ふふ、もう目の前にまで来ている。見え始めていますよ、新たな憧憬がね。」

わっと湧き上がる信者達は、次から次へとハデスやマヴガフに万歳を捧げて祈る。
今頃天界の善神共は焦っているだろう。だがもう止められないはずだ。
止められるものなら止めてみればいい。己が課した契約に縛られて精々もがけばいい。

「んーで、もう一つお願いしておいたほうはどうですか?」

この計画の中で最も重要なキー技術が確立されていることが分かると、
浮かれる事もなく彼はすぐに次を求めて、信者達の歓声を背に歩き出した。
「はい、そちらも帝国の裏ルートを介して入手しておきました。」予定通りの言葉が帰ってきた。
もっとも、“もうひとつ”のほうについては特段心配などしていなかったが。
今の状況なら、どうとでもなることは分かっていたからである。

「ヒヒヒ・・・混乱を極めて足元おぼつかない連中などちょろいもんですネェ・・・。」

決められた中で現状維持と保守が大事な、まるで善の連中の思考回路そのままの人間がどれだけ多いか。
そんな連中は緊急事態でどうして良いか分からず右往左往するばかりだ。
そこに上手い話が転がり込めば、後先考えずすがりつく。実に操りやすい、さすが善神の作品だけはある。
「ふーむ。」司祭に案内された巨大な格納庫に聳える立派な錬金艇を見上げて顎に手を添える。

「ま、連中にはこれでも過ぎたおもちゃでしょう。こんだけあれば十分ですかネ。」

人間達の技術の最高峰がずらりと並ぶが、マヴガフにはちんけなおもちゃにしか映らない。
神が宿るあの暗黒竜に比べれば。こんな仮初で絶望させるつもりはない。
ニッと口元が釣りあがり、阿鼻叫喚広がる憧憬を楽しむ。

「しかし、本当によろしいのですか?連中が意図通り動くとは思えませんが。」

いつも完璧な大司教に意見することなどありえないこと。
だが今回はさすがに司祭もマヴガフの持ってきた計画に不安げだ。
彼が利用しようとしている連中が、あまりにも信用ならないからだ。

「それでいいのですヨ。」
「は、はあ。」

ところが、彼はいつも通りの柔和な笑みに戻ると短く一言宣言してきた。
― 俺様に間違いはない。
繊細、緻密、用意周到にして神出鬼没。どこまでも完璧。
今までを見る限りきっとそうなのだろうが、司祭もさすがに要領を得ない様子だ。

「最後の結界を破壊するための番人どもを動かすポーンとして動いてくれればいいんです。
 チェックメイトのとり方なんて、いくらもありますから。」

どんな駒にも、それなりの使い方というものがある。
何かしら活躍を求めるわけではない、後ろから突っつけば動くことだけならポーンでもきること。
アクションを起こし、この歪な均衡を崩してくれさえすればいい。
むしろ今はポーンの方が良い。下手に動き回れても邪魔なだけだ。

「ヒッヒッヒ・・・面白くなってきやがったぜ。もうすぐだ、もうすぐ最高のショーが始まる。」

隠れアジトを出たマヴガフは眩しい陽射しを帽子の下から睨みあげる。
もうこの偽りの光とも永遠に決別できる日が近づいている。もう、目の前まで。

「おらおら、善神共よお!俺様を止めて見せろや!ヒャーッハッハッハ!」

今ものうのうと雲の上から見物を決め込んでいる善神に向かって挑発する。
都合のいい嘘だらけの世界も終わりだ。手出しを出来るはずが無い。
自分達が作り上げた契約とやらに勝手に縛られていればいい。先に裏切ったのは向こうなのだ。

「そうは行くか!」

その時だ。どこからともなくヒーロー気取りが声を張り上げる。
「あ?フン、行け!」飛んできた高密度のマナの塊へヨルムンガントを投げつけて吹き飛ばす。
まだこの程度の力で刃向かおうとなどと考える者がいるようである。

「貴様の悪行はここで終わる!総員、突撃!ネクロ教本部を壊滅せよ!」

現れたのはまたしてもカミユだった。彼は配下に突撃を命じると自らもエルモアに乗り飛び出した。
一面、白、白、白。錬金術で次々転移されてくる騎士達にマヴガフは舌打した。

「なんだぁ?軍隊アリかよ、テメェら。うじゃうじゃ気持ちわりいな。」

さすが善神共の操り人形と言ったところか。どうしても抗うらしい。
まるで連中が手出しできない代わりに差し向けられているかのようである。
だが、それにしては随分と舐められたもの。にっと口元に笑みが浮かぶ。

「数で押せば勝てる・・・そりゃまさに雑魚の考えることだなぁ、オイ?」

自然と嘲笑が腹の奥から漏れてくる。まるで善の天使たちと同じだ。
結局、善神共にとっては天使だろうが人間だろうが、使い捨ての道具に代わりはないと言うことか。

「押さえ込め!奴にヨルムンガントを放たれる前に距離を詰めるんだ!」

薄ら笑いを浮かべる彼へただひたずらに突進を指示するカミユ。
前から後ろからはもちろん、左右からも、そして帽子の下から見上げれば上空からも降りてくるではないか。

「ヒッヒッヒ・・・相当に俺様のデータを研究してきたみてえだな?距離を詰めれば短剣相手なら槍有利、と・・・。」

カミユは神にでもなったつもりか。今まで散々に下級兵士を送り込んできては犬死させてきた。
まさかそれがこの作戦の為だとすれば、それはとんでもなく愚かな指揮官だ。

「ま、いいわ。テメェらには過ぎた演出かも知れねえが、俺様もちょうど試したくてな。」

立ち上がる度胸さえ木っ端微塵にしてやったらどんな顔をするだろうか。
そろそろメインショーが始まる。その前にちょっとしたリハーサルを行うのも悪くない。
「狙撃班!対ハデス用錬金砲用意!」騎士達の突撃を嘲笑うかのように、マナで空中に浮かび上がる。
だがぬかりはない。無線で連絡すれば、巨大なトールハンマーが照準をマヴガフに向け動き出す。
砲塔の先から溢れ出すマナに、マヴガフは舌なめずりして見せた。

「反対属性の光のマナを凝縮したトールハンマー・・・ってところか。へっ、くだらねえ。」

人間共もよく考えたものだ。だが、知恵でどうにかなるレベルには限界がある。
所詮善神の操り人形の分際で何が出来るというのか。
掠めていった強烈な砲撃を横目に、彼は徐に腰にかけた魔道書に手をやる。

「じゃ、俺様も見せてやるとするか。ダイモニオン・エムブレム・・・リミッター解除っと。」

そっと漆黒の表紙に触れてやれば、真ん中に埋め込まれた赤の宝石が輝きページが展開されていく。
そこへマナを送り込めば共鳴するように魔道書が光り、
封印されていたインデックスのその先が開放されていくではないか。

「総督!マヴガフから異常なマナ反応!計測不能!これまでのデータと桁が違います!」

マナ圧を測るレーダーは真っ白になって振り切れていた。息を呑むカミユ。
この反応は、エルピスのアストレアと同じだ。渦巻く紫紺の烈風がマヴガフから放たれて、
触れるだけで体が木っ端微塵に切り刻まれそうなほどに体を貫いてくる。

「セイクリッドポータル接続・・・ストロングフォルト連結!全方陣展開!」
「な、なんだ?!この地響きは!」

空中にいるマヴガフは地上のざわめきを楽しむかのように見下ろすと、徐に胸元で印を結びだす。
その途端だ、立っていられないような地響きが起こったかと思うと、
マヴガフから紫紺が一閃噴き上がって天を貫き、空を一気に暗雲に包み込んだ。

「?!あ、あの魔法陣は?!」

ようやく体勢を整えたカミユの視界に映ったものは、にわかには信じられなかった。
空を覆う暗黒に今くっきりと、遥か地平線まで貫いた紫紺の蛇。
それらが今、空じゅうにひとつの巨大な魔法陣を作り上げているではないか。

「ケヒヒヒ!焼き付けろ、極上の絶望を!ダイモニオン・エムブレム起動!!」

その魔法陣の中心。その真下に構えるマヴガフが地上に叫んだ次の瞬間、
魔法陣から強烈なマナが彼へと降り注ぎ、まるで星でも炸裂したかのような烈風と閃光が包む。
猛烈な衝撃波にあたりの木々は吹飛び、大地は砕かれ、力なき者は全て飲み込まれていく。
まるでこの世の終わりかのような白に包まれ、何も聞えない、何も見えない中マヴガフの狂喜だけが辺りに響き渡っていた。

「ひゃ~、大分昔の感覚に戻ってきたなぁ。こりゃあ完全開放が楽しみだぜ。」

ようやくに視界が開けてくると、魔法陣の中心目指して渦巻く分厚い黒き雲。
全てが飲み込まれる中心、魔法陣の真下へ視線を移せば、黄金の蛇眼がぎらつく悪魔が降臨していた。
マナに前髪が吹き上がり、黄金の蛇眼で見下ろすその口元は破壊の悦に飢えている。

「そして・・・この自己生成したトリガーも開放されれば・・・キヒヒ、楽しみだぜヒャハハ!」

ひとり、破壊し尽くされた大地の上で歓喜を上げて天を仰ぐ。
善神共も今の均衡の揺らぎを観測したはずだ。どう焦っているか、その顔を想像するだけで楽しい。
「怯むな!トールハンマーで撃ち落せ!」だが、連中に止める術などないことは分かっている。
それを示すかのように、奴らの操り人形は以前と代わり映えのない突撃を繰り返しだしていた。
漆黒の魔道書を横目に見下ろし、完全なる復活を楽しみにしてそっと懐へしまう。

「やれやれ、こんなんで光のマナか。
 俺様の知ってるシャニーはこんなもんじゃねえぞ?随分と熾天使様も舐められたもんじゃねえか。」

トールハンマーから炸裂した光のマナ。それは本来ハデスのマナを倒す唯一の力。
だが、自分の知っているマナとは明らかに異質で混じりけだらけのそれは見ていてがっかりする。
あの羽女のマナは、もっと強くもっと温かく、そしてもっと真澄に輝く白の光。

「俺様があのクソ羽に変わってテメェらに粛清をくれてやるぜ!」

両手にさっとヨルムンガントを召喚すると、地上にうごめく気味の悪い白を見下ろす。
早く食わせろと爆ぜるヨルムンガントをぐっと握り締めて舌なめずり。

「・・・ざっと1000人ってとこか?こんなに自殺願望者をどこからかき集めてきたんだか。」

空を焦がす光がマヴガフ目掛け音速に突っ込んでくるが、もう避けるまでもない。
彼は動く事もなく地上を見下ろし続け、正確無比な照準は彼を光の中に飲み込む。
歓声が上がった次の瞬間、一気にどよめく。

「ま、いいわ。それだけ死にてぇならお望みどおりにしてやら。」

一気に悦に口角が釣り上がる。見ろ、あの絶望に沈み歪んだ顔を。
彼らの絶望が一気に空じゅうを覆いつくし、ダイモニオン・エムブレムがすべてを飲み込んで
自分へどくどくと送り込んでくれる。気持ちいい、実に気持ちいいマナが体に溢れて来る。

「そ、総督!トールハンマーが通用していません!」

カミユもこれには表情を失うしかなかった。部下から報告されずとも、目の前の光景は絶望一色。
ますます輝きを増す天井の魔法陣、そしてマヴガフの周りに噴き上がるマナは勢いを増し、
地上へ吹きつける烈風に吹き飛ばされないようにすることで精一杯になってきている。

「あ、あれが・・・ハデスの・・・ダイモニオン・エムブレムの力・・・。」

圧倒的な力を前に立ち尽くす。どうすれば良いのかまるで分からない。
うっと背筋が凍りつく。絶望を舐めとるように、マヴガフがカミユを見ろ降ろしてきたのだ。
これだけ距離が離れていても分かる。あの黄金の蛇眼に捉えられている事が。
「惜しいねえ、キミたち。完全復活の状態をおがめなくてさ~。」明らかにバカにした声が空から降り注ぐ。
必死にトールハンマーや錬金銃で応戦するがまるで無意味。

「ま、その分痛くなくて済むってことで・・・大人しく死ねやあああ!」

湧き上がる絶望を存分に楽しんだマヴガフは、両手に握るヨルムンガントを頭上に掲げる。
すると蛇達は主の手先に集まるとひとつの大蛇へと姿を変える。
ついに主の命が下り、一つ大きなうなり声を上げた蛇が大顎を開いて大地へ向けて飛び出したではないか!
「オラオラ、飢えてただろ!ヨルムンガントォ!」空を引き裂くようなうなりを上げながら天から突き刺さる剣の如く突っ込む大蛇。
大顎を開ければ、もう空はすっぽりと覆い隠されて、人間達は為す術なく逃げ惑う。「全ての魂を喰らい尽せ!」

「ぎゃあああ?!」
「ぐおおお!」

地面に突き刺さった蛇はそのまま地平線へ向けて大顎開けすべてを砕きながら大地を割っていく。
飢えた蛇は人間達を噛み砕き、あるいは丸呑みし、
悲鳴さえもが凄まじい破砕音の中に掻き消えて、悪魔の狂喜だけが響き渡った。

「ヒャーッハッハッハ、足掻け!嘆け!もっと叫べやオラァオラァ!」

一匹でも世界を食い尽くしてしまう貪欲さだというのに、マヴガフは二匹、三匹と大蛇を召喚して下界へと放つ。
地は抉れ、森は飲み込まれ、人は食い砕かれ。あの巨大なトールハンマーでさえ、
大蛇は丸呑みして腹の中で大爆発を起しても飢えた眼光はぴくりとも動かない。

「こちら遊撃隊!カミユ総督応答願います!」

何とか必死に逃げ回っていた騎士が無線機に蒼白になりながらかじりつく。

「我ら部隊は壊滅的被害を受け奇襲にしっぱ・・・がはっ?!」突然後ろから襲い掛かる重く吐き気のするマナに沈む騎士。
マヴガフは倒れた騎士の頭を踏みつけながら、横に転がる無線機を拾い上げた。

「おーおー、本人は安全な場所からノンキに観戦か?ずぅーいぶんといい身分だな、オイ?」
「くっ、ハデス!」

やはり今回も突撃してきたカミユらしく男は影武者だった。
気に入らない、そろそろ本人が頭を下げに来ても良いだろうに。
彼はしばらく大蛇が大地を食い尽くす阿鼻叫喚に向けてマイクを向けてやる。

「テメェの部下死んじまったから俺様が戦況報告してやんよ、全滅だ、ゼ・ン・メ・ツ!!」

まるであちこちにブラックホールが生まれたかのように、何もかもが消失していた。
今も何かないかと、飢えた蛇が大地にかじりつき、唸りをあげている。
もうここには、一人たりとも、いや草一本たりと生は残っていない。

「俺様のヨルムンガント一発で1000人あの世行きだ!どーよ、俺様超ツエエエだろォ?!」

言葉を失うカミユに向かい、マイクに音が割れるほどこれでもかと悦を吐き出し哄笑が響く。
ダイモニオン・エムブレムの動作チェックがてらちょっと遊んだだけでこれだ。
これから先のメインショーはもっと楽しいことが始まると思うとその口調は弾むばかり。

「今度はテメェが来いよな、それともビビって来れねえか?チビっちまうか?アヒャヒャヒャ!」

出来るならこの光景を見せてやりたいものだ。いや、きっとカミユは見ているに違いない。
ここに差し向けられた連中は、カミユにとってはただの駒に過ぎないのだろう。
前回もそうだ。こうやって戦闘力を分析しているのだ。
分析したところで無意味、それが今回の解析結果だろうが。

「あ~、あのシャニーとかいうガキにも見せてやれよ、きっとアイツ顔真っ赤にするだろうナァ、キヒヒ。」

正直、カミユなどどうでもいい存在だった。それよりも、あの羽女だ。
ついに長き縁にもピリオドを打つことが出来る。先代の分まできっちりと払わせるつもりだ。
どんな顔にしてやろうか、腹から笑いが込み上げる。
たっぷり甚振ってから料理し、やはり最後は踊り食いが一番いいだろうか?

「ま、精々全員で束になって来いや。ショーのフォナーレは役者勢ぞろいじゃないとモリあがらねえだろ?んじゃな~!」
「待て!ハデス!」

一方的話し続けて、そのまま無線機を切ろうとするマヴガフ。
ようやくに反論しかけたカミユだったが、無線機の向こうで不整合な音が通信を遮断してしまった。
恐らくは破壊されたのだろうか。がっくりと肩を落とす。

「くっ・・・もはや奴は手に負えない・・・。彼女達がなんとか覚醒してくれないと・・・。」

もう人間の力ではどうすることも出来ない領域にまで悪神は目覚めてしまった。
これを止められるのは神界の力しかない。彼は妹に祈るしかなかった。
関連記事
スポンサーサイト



総もくじ 3kaku_s_L.png 当サイトの小説における登場人物たちのご紹介
総もくじ  3kaku_s_L.png 当サイトの小説における登場人物たちのご紹介
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【2話:闇を喰らう蛇】へ
  • 【4話:さまよえる騎士】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【2話:闇を喰らう蛇】へ
  • 【4話:さまよえる騎士】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。