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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter23 信じるあるべきのために

3話:強行突破

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 弾き飛ばされるキュレック。直後襲い来る剣を拳で跳ね飛ばす。
キュレックを扱い始めて3年だが、やっぱり拳のほうが何かしっくり来る。
「くそったれ!俺が背面を取られるとは!」だが、そんなことを言っていられる状況ではなかった。
ついにルアス城門までたどり着いたゲイル達だったが、親衛隊と案の定激突したのだ。
さすがに親衛隊と言うだけあって今までの連中とは違う。
ゲイルもまた背面を取られて、もう少しで槍に貫かれるところ。
弾かれたキュレックを取りに戻ることも無く、修道士の動きで槍をかわし拳を見舞う。

「あら、さっきは突っ込んでくるだけなら大したことないって言ってなかった?」

そんな中でもエルピスから挑発が飛んできた。
彼女は楽しむかのように敵の攻撃をまるで柳の刃のように避け、
槍に飛び乗ったかと思うと騎士を飛び越え、バタフライナイフが宙に光った。
彼女が着地すると、悲鳴も上げずに倒れる騎士。精霊に挑もうなど、3000年早いというものだ。
「どこ見てるの?こっちよ?」騎士たちを翻弄する風が駆け回る。彼らの反応を楽しむ声。
彼らはまるで動きを追えている様子ではなく、またバタフライナイフが光る。

「ふふっ、所詮はその程度なのね。
「エルちゃん!危ない!」

一人倒して一撃離脱しようとした時だった。不意に頭に聞こえてくる声に勘付いた時には遅かった。
背後に迫る槍。彼らは囮を使って数で押し込みにかかったのだ。
見開かれる目。四方から突き向けられた槍を前に為す術がない。
翼があれば・・・。だが、目の前まで来て突然槍が弾き飛ばされていく。

「おおっと、オレ様株上がったかな!」

見上げれば周りにはイアの聖光。
後ろから聞こえてきた声に振り向けば、レイが魔法障壁を展開していた。

「そんな顔しないでちょーよ、まったく、油断しちゃダメだって!」

危機一髪を救ってもらったとは言え、やっぱり軽い口調は癪に障るらしい。
むっとするエルピスに苦笑いしながら前を指差す。
「いっけえ!」横ではエルピスを守るようにシャニーが光の矢を打ち込んでいる。
本来人間を守る為のこの矢では彼らは倒せない。だが、痺れて倒れてくれるだけで十分・・・のはずだった。

「?!効かない?!」

ところが彼らは痺れる素振りを見せる事も無く突っ込んでくるではないか。

「相手はお前の情報を調べつくしている。抵抗装備をしているに違いない、力任せは禁物だ!」

メルトの警告を聞かずとも、親衛隊が何かしら対策をしていることは分かる。
突っ込んできた剣をマナで創り上げた短剣で受け止めようとした時だ。
感触が無い・・・気づいた時には短剣を貫通して剣が目の前に迫る。

「うあっ!くっ、マナの短剣も通用しない・・・。くっ!」

やはり、自身の希望のマナへ何らか対策をしているらしい。今まで多くをマナに依存してきた戦い方を急に否定されて、
さっと腰から鋼製の短剣を引き抜くが、一度攻められると切り返せない。

「照準ロック・・・ふふ・・・死ね!」

大勢に攻められ、押し込まれそうになっている盗賊ほど狙いやすいものも無い。
陣の後方から狙いを定める照準。ロックオンまで済むと狙撃手はほくそ笑んで引き金を引いた。

「?!シャニー!くそっ、弾き飛ばしてやる!」
「危険だ、やめろ!」

紫紺のマナがまっすぐ宙を引き裂いてシャニーの喉元へ喰らいつこうと轟く。
それにいち早く気付いたゲイルは目の前の敵を拳で跳ね除けると
メルトの制止など耳にも入らず錬金砲を吹き飛ばそうと駆け出した。
「うおおお!!」マナの塊に拳を打ちつける。何とか弾き飛ばせるかと思ったその矢先だった。
突然拳の先が痺れ始め、彼は直感する。これはただのマナではない。ハデスのマナだ!

「ぐはあ!!し、しまった、シャニー!」

力を奪われた拳はあっという間に弾き飛ばされて壁に叩きつけられる。
屈強な肉体はすぐに立ち上がるが血相を変えた。

「え・・・?!き、きゃああああ?!」

まるで気付けていない相棒は今も騎士達の猛攻に耐える事で精一杯。
ゲイルの叫びにようやく破滅のマナの存在に気づくも、既にどうしようもない距離まで迫っていた。
表情を失う見開かれた瞳が叫ぶ悲鳴が辺りを劈く。
「シャニー!!」堪らずゲイルも叫ぶが、彼女はすくんで動けないのだろうか。
ばっと騎士達が四散し、残された彼女が紫紺の光に照らし出される。

「シャニー!避けろ!!」

自分はともかく、彼女が一番苦手とする闇のマナ。
あんなものが直撃すれば命に関わる。声が裏返るほどに叫ぶ。

「こ、こんな距離じゃムリだよ!くそっ!」

空を覆いつくそうと線ばかりの巨大なマナの塊。
あたりの全てを飲み込み、唸りをあげる。まるでお前を食わせろと大顎を開ける怪物の如く。
逃げ場なんてどこにもなかった。とっさに弓に光の矢を番えて放つ。
「なっ?!」目が飛び出しそうになるほどに見開かれる。目の前で起きた光景を誰もが信じられなかった。

「アストレアが・・・弾かれた?!」

光速に放たれた矢は、まっすぐ紫紺のマナへと突っ込んでいった。
いつもなら光で包み込んで貫いていくはずだったのに、逆に飲み込まれてしまったのだ。

「はっはっは、それはハデス神の闇のマナをお借りしたもの。貴様の光など相手にもならん、死ね!」

高笑いしているその口調は間違いなくネクロ教のものだった。
絶体絶命の中、紫紺の光に照らされるシャニーはもう悲鳴を上げることも出来なかった。
駆け寄ってくるゲイルが光で見えなくなっていく・・・。

「くっ!きゃあ!?」

その時だった。ふいにゲイルではない何かに突き飛ばされた。
自分と錬金砲の間に立ちふさがったのは明らかにゲイルとは似ても似つかない細い骨格。

「アンドラス?!」

ようやくその正体にシャニーが気づいた時には案の定、マナの直撃を受けて吹っ飛ばされていた。
だが彼女はすぐに立ち上がると自分の許へ駆け寄ってくるではないか。

「大丈夫だったか?シャニー。」

さっと差し出される手。すぐに取って立ち上がるがシャニーは気が気ではない。
すぐにアンドラスの体を上から下まで焦燥とした眼差しで見つめる。

「それはこっちのセリフだよ!ハデスのマナなんか受けて。レイさん!アンドラスを治療してあげて!」

彼女も自分と同じ希望のマナを宿している人間。
それが逆属性のマナを受けたらどうなるか、嫌と言うほどシャニーには分かっていた。
すぐにレイに声をかけるが、それよりも先に駆けてきているレイに「私は大丈夫だ。」とアンドラスは止めた。

「私の体には半分同属性のマナが流れているのだからな・・・。」

このマナが人のために役に立つとは思っていもいなかった。
だが、今目の前で心配そうに見つめてくる熾天使が教えてくれた。
どんなマナであろうと、その色は己の意志により決まる。
さっと振り向いたアンドラスは一歩踏み出すと親衛隊に向かって大きく叫ぶ。

「親衛隊よ、私はお父様と話がしたい。剣を収めてください。」

こんな無意味な戦いで流れて良い血は、涙は、そして時間はない。
だが、その彼女に対して親衛隊が向けてきたものは敬礼ではなかった。
静かに構えを取り、引き金に指を添える。

「ならぬ。持ち場に戻られよ。拒むのであれば幻騎士といえど容赦はせぬぞ!」
「くっ!」

刹那、炸裂する錬金砲からまた紫紺のマナが唸りをあげた。
とっさに彼女はアイスランスを投げつけ、空中でぶつかり合ったマナが飛び散った。
やはり、相手は光のマナに対して何らか対策している。辺りに漂うマナに口元が厳しくなった。

「これはハデスのマナ・・・やはりお前達はネクロ教徒か!」

親衛隊までがまさかネクロ教団に乗っ取られていたとは。
今父はどうしているのだろうか。不安が湧き上がる顔に浴びせられる嘲り笑い。
彼らは既に次の一撃を準備して引き金に手をやっていた。

「ふっ、知れたことを。腐りきった騎士団の連中では総統をお守り出来まい?」

ギリッと口元が怒りを噛締めた。長年培ってきた国の誇り。
それを今、こんな暗黒教団に蝕まれている。刀を強く握り締めて踏み出したのはメルトだった。
いくらアスクを離れた身とは言え、愛した騎士団を貶められては黙ってなどいられない。

「おのれ・・・ルアス騎士団を冒涜し、破壊した罪、その身で味わってもらうぞ!」

刀身に蒼焔を滾らせて、それは彼の怒りを体現するかのようだ。
― 面白い
そう言わんばかりにほくそ笑む親衛隊たちの照準がアンドラスからメルトへと移る。
その時だ。さっとメルトの前を遮る手。

「鬼神殿、ここは私に任せて欲しい。彼らはお父様を苦しめ続けた私の敵です。」

父を自らの手で救ってあげたい。今まで自分の為に多くの苦しみに堪えてきた父を。
そして過ちは過ちと認めて、国の為に世界の為に戦って欲しい。
できるのは自分しかない。アンドラスは剣を抜くとまた一歩距離を詰める。
「いい加減目を覚ませ。」だが、親衛隊たちはアンドラスにまたしても冷笑を浴びせてきた。

「お前の父のアルトシャンではなく、創造の錬金術と輪廻転生論を融合させたマヴガフ大司教なのだ。」

この人形はいつまで人間ゴッコをして遊んでいるつもりなのだろうか。
未だに人間と思い込んで彼らと行動を共にするとは、とんだ親不孝ものである。

「黙れ!私を愛で慈しみ、いつでも目にかけ、守り育ててきてくれたのはアルトシャンだ!私にとっての父はアルトシャンただひとりだけだ!」

確かに、世界に対して取り返しのつかないことをしてしまった人だ。
だがそれでも、自身へ注いでくれた愛は本物だった。彼以上の愛はない。
その愛を冒涜し、苦しめるものから守る剣が今宙に一閃を描く。

「どは?!」
「何とも罪深い、ハデス神の力を賜ったと言うのに刃向かうとは。」

閃光の一撃を受けた者は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
あっけに取られるシャニー。自分ではまるで倒せなかった相手を一撃の下に葬るアンドラス。
その眼差しに宿る覚悟は、もしかしたら自分より強いのではないかとさえ思えるほど鋭い。
だが、親衛隊たちにはまるで動揺する素振りはなかった。
むしろ、好都合。もう生かしておく必要もないのだ。

「お父様はいつでも私に教えてくれた!いかなる力であろうと、民のために考えて揮えと!」

与えられた力かもしれない。だが、その力を操るのは自分だ。
自分がその力で何をしたいのか、ずっと皆教え続けてくれた。ただそれを、己の憎悪が声に振り向かせなかった。

「私は今、お父様の教えの下、自らの意志でこの力を使っている!操り人形では、もうない!」

本当はずっとこうしたかった。だが、創られた人形という烙印がそれを阻んできた。
多くの人々の愛が、そして熾天使の光がようやくに長かった闇に光を指し示し、
前を向き立ち上がった彼女の眼差しにはもはや迷いも曇りも一切無い。
「おのれ反逆者め、喰らえ!」ハデス神から力を賜りながら、神に逆らう愚か者。
ますます生かしておけぬと彼らの照準は全てクグツへと向けられる。

「?!な、なぜだ、何故直撃を受けて平然としている!」

確かに錬金砲のすべてをアンドラスは浴びている。
なのに彼女はまるで風を受けているかのように髪を靡かせるだけ。
また一発直撃を受けるが、手をあげるとアイスランスを召喚して投げつける。

「忘れたか!私の体には・・・ハデスのマナが流れている事を!」

同属性のマナには強力な抵抗が働く。
相手がそれを利用して、シャニーの光の矢を弾いている事も彼女は知っていた。
炸裂するアイスランスが親衛隊の陣に突き刺さり、引き裂いていく。

「お前達のその鎧、知っているぞ。錬金術研究所で開発していた、対熾天使用高性能反射アーマー!」

いつか自分もあの鎧を着込んでシャニーを追い詰め、この握る剣で一突きにしてやろうと考えていた。
恐ろしい、自分を救おうとしてくれていた人間にあそこまで殺意を抱いていたとは。
だが今は違う。同じ人間として、人々を愛する者として。
自分にしか出来ない事で仲間を守る。

「確かにその鎧を持ってすればシャニーのマナは無効化できる・・・。だが、私は総監督の立場上、その弱点も分かっていてな!」

散り散りになる親衛隊へ追撃のアイスランスを打ち込み、だっと踏み込む。
戦火の中に舞う剣姫の鋭い眼光が強く目を見開き、標的へと剣を振り下ろした。
流れるように振り抜かれる剣。

「そ、そんなバカな!ぎゃあああ!?」

踊っているかのように双剣を揮うアンドラスの前に為す術なく倒れる親衛隊。
彼女の演武が終わった時、全てが地に沈んでいた。
後ろ目に彼らを見下ろしたアンドラスは剣を払い、乱れた髪に手串を入れた。

「ハデスのマナの前では紙にナイフを通すが如し・・・。」

あっという間の出来事だった。
呆然と戦況を見ていたシャニーはアンドラスの圧倒的な強さに声が出なかった。
あれだけ強い人でも闇に溺れてしまいそうになるものなのか。

「あんなに苦戦していたのに・・・アンドラスたった一人で・・・。」

全滅した親衛隊の許へ駆け寄り、見下ろす。自分では絶対にこんな大人数を相手になど出来ないだろう。
それを、同じ血が流れる彼女の強さと勇気に思わず感嘆が漏れる。
アンドラスはシャニーへ視線を向けると、はっきりと言い切った。これが、救ってくれた者へのひとつの恩返し。

「このマナは確かにハデスのもの。だけど、民の為に使う私の意志がある限り、このマナは民を守るマナだ。お父様や・・・ご先祖様ロダシャナキと同じように。」

ぱっと笑顔が口元に浮かび、頷くシャニー。ありがとう、その表情から伝わってくる感謝の想い。
だが、本当に感謝したかったのはアンドラスのほうだった。
分かっていても、独りでは抜け出せなかった闇から引き揚げてくれた光。

「それを聞けばアルトシャンは喜ぶだろう。一刻も早く彼の元へ行かねばならぬ。」

こんなにも皆が自分を必要としてくれる。そして、自分にしかできないことがある。
何か生まれ変わったかのように心が軽い。
メルトの言葉にも素直に頷き、目の前に聳える見慣れた城の高きを臨む。

「だけどアンドラス、さっきも言ったが君はアルトシャンと戦うことは出来ないだろ?」

勇気を振り絞る彼女のそばにそっと寄り添って治癒魔法を施すレイ。
父の下へ剣を握り駆け寄るなど、きっと彼女の性格では内心震えているに違いなかった。
だが、向けられた眼差しは今までのどこか自信のない人の目をうかがうような弱いものではまるではなかった。

「戦いに行くわけではありません。お父様をお救いに行くのです。」

戦うことだけが、父を救う方法ではない。
教えられたのだ。相手の心を聞き、己の想いを伝え続ければいつか必ず分かり合えることを。
相手の心と向かい合うことは苦しみを伴うこと。
それを避けてしまうからこそ、力による鎖に頼ってしまう。楽だからだ。

「お父様はマヴガフに命を握られているから止む無く剣を握っている身。私が元気な姿を見せればきっと心を開いてくださると信じています。」

熾天使は教えてくれた。鎖で繋ぐのではなく、絆で結ぶ事を。
言葉では簡単だが、それがどれだけ苦しみに耐え、相手を受け入れ
そして自身の意志が確固としていなければ出来ない事か。思い知らされた。
だが、民を愛する意志は負けてはいない。それは父にさえも。

「だが、アルトシャンはこうも言っている。世界をあるべきへと導く、その為に熾天使は亡き者にせねばならぬと。」

彼女の意志を信じたいところだが、アルトシャンは有限実行の男。
彼を良く知るメルトの言葉は、アンドラスも否定は出来ない。
それでも彼女の強き意志は揺らぐことない。

「それはまた別の話です。少なくとも今はハデスの復活を防がねばならぬ時とお父様も分かってくださるはず!」

何をすることが国の為、世界の為になるか、父ほどの人間なら分かっているはず。
それをアンドラスは信じて疑わなかった。その強き意志は確かに調和の光の強さを思わせる。
だが、それは同時に致命的な弱点を孕んでいる。
それをずっと見守り続けてきたメルトは、首を縦には振ろうとしなかった。

「ならばこれだけは答えてくれ。もし、お前の言葉をもってしてもアルトシャンが動かなかった時はどうする。」

チャンスは一度きりしかない。その時になって狼狽することがあってはならないのだ。
常に最悪を考えて行動できるものだけが生き残り、志を果たすことが出来ることをメルトは知っている。
鋭い鷹の眼光が若き光に決断を迫る。

「その時は刃に訴えてでも止めます。私の知っている優しいお父様に戻っていただく為に。」

びっくりしてアンドラスを見つめるレイに、彼女は小さく頷いてレイの腕をしっかり握り締めた。
「戦う為に剣を握るわけではないです。この剣は、守る為の剣。」辛い、だけど父がこれ以上過ちに呑まれることを見ているだけは辛い。
今まで愛しんできてくれた父を、自分の言葉で、想いで救い出してあげたい。
彼女の眼差しに、レイも覚悟を見て彼女を信じることにした。

「シャニー!アンドラス!無事だったか!」

その時だ。後ろからふいに蹄の音が駆け込んできたかと想うと
颯爽とエルモアの背に乗って現れたセインが飛び降りて二人を見つめて安殿笑みを浮かべてきた。

「に、兄さん!?ヴァンも!どうしてここに?」

兄から抱きしめられたシャニーは目を白黒させた。突然の抱擁だが、ずっと求めてきたもの。
思わず受け入れようとしたが跳ね除けてしまった。
後方で腕組みしてこちらを睨むヴァンの姿にも気付いたからだ。

「決まっている、お前達を援護しに来た。帝都内は我らの勢力が住民を避難させている。安心してくれ。」

兄の力強い言葉にほっと胸を撫で下ろすシャニー。
彼らの活躍は、この高台から見下ろす城下町にひとつの戦火が上がる様子もないことから証明されていた。
今までずっと胸の奥で痞えていたものが一気に安堵と共に外へ吐き出され、
彼女は感謝を伝えるべく、一度は跳ね除けたセイン胸に自ら飛びつく。

「それはありがたいな。味方は多いほうが良い。アルトシャンだけではないからな・・・。」

そっとシャニーの頭に手をやり、取り戻した家族の温もりに目を細めるセイン。
だが、メルトは厳しく現実を皆へ伝えて立ち止まることを許さなかった。
アルトシャンを止めることは、真の目的を果たす為のひとつのステップでしかない。
少しでも彼を早く説得すれば、被害は少なくて済む。

「そういえばマヴガフのヤロウはどこにいるんだ?もしかしてこの城の中に・・・?」

そう、倒すべき真の相手の居場所は未だ掴めていない。
ようやくに弾き飛ばされたキュレックを拾い上げたゲイルは城を見上げる。
この城の中で全てが決着するのか・・・それにしてはどうにも静か過ぎる。
「いえ・・・大分マナは遠いわ。」彼の勘が正しいことを、エルピスが伝えてくる。

「だけど、絶対に私たちの様子を監視している。油断は出来ないわ。」

自分達にとっては遠い距離。だがきっと、マヴガフにとっては手のひらの上。
神の手のひらの上で転がされていると思うと何とももどかしい。
だが、自分達人間は独りでは何もできないし、目の前の事をひとつずつしか片付けられない。
今しなければならない最善をひたすら追うのみ。
「とりあえず今はアルトシャンだ。」シャニーは城を見上げると、トパーズの力を解放して翼を背に広げる。

「彼を止めてルアスでの争いを終わりにしよう!本当に戦わなくちゃいけないのは別にいるんだから!」

先陣を切って駈けだすシャニー。本当はこの翼で飛んでいきたい。
だが、仲間と一緒でなければこの戦いは止められない。
彼女の覚悟を受け取った仲間たちは、熾天使の背を追い城の中へと消えていく。
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