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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter23 信じるあるべきのために

6話:血と死

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 大剣を地面に叩きつけ、砕き割る。
まるで、彼女達の想いをもこうなるのだと見せ付けるかのように。
迸る雷閃。刀身に走るマナが開戦を告げ、振り下ろされるとシャニーに襲い掛かる。
「なかなかやるな!」牙をむく雷を機敏な身のこなしで避けながらアルトシャンへ何とか近づこうとする。
シャニーの動きを褒めながらも、アルトシャンも次々大剣を振るいまるで雷撃の壁の如く降り注いでなかなか近づけない。

「さすが五賢刃を倒してきただけはある。」

彼女の機敏さをもってしても、剣帝の雷をかいくぐる隙を見つけられず避けるので精一杯。
他の者達も攻める者、守る者がはっきり役目を分けて隙が無い。
さながらどこかの軍の精鋭のようでアルトシャンも賞賛を惜しまない。

「お願いだから剣を収めてください!」

それでも、未だにシャニーには戦う意志は無かった。「今は争っている時ではないはずです!」
このままでは、マヴガフがハデスとして世界を暗黒に沈めてしまう。
それを防ぐ為に、今この場にいる誰もが書けるわけには行かないというのに。

「いや、だからこそ決着をつけねばならぬのだ。ハデスの復活を阻止する為に。」

彼らが信じるあるべきは、今は同じはずだった。
だが、その為に為そうとする事はどうしてこんなにも逆行するのか。
調和と融合、それを力とするシャニーでも、今回はアルトシャンの道を認めるわけにはいかず叫び続ける。

「そんな誰かを犠牲にして為す平和なんて平和じゃない!」

昔の自分なら同情していたかもしれない。
自分が戦場の露と消えようとも、皆が幸せになってくれるならそれが自分の幸せ・・・。

「そんなものがあなたの言うあるべきなのですか!」

だが、彼女は昔の自分を否定するかのように、“そんなもの”と言って見せた。
心のどこかで、自分に嘘をついている。知っている。

「私はあるべきの為なら死も厭わぬ。本人が良いなら問題はなかろう!」

ようやく少しずつ距離が縮まってきた。だが、そこへ振り下ろされる渾身。
叩きつけられた大剣からまっすぐに地面が裂けて、
飲み込もうと地割れが走ってくる。とっさにトパーズにマナを宿し、翼を立てて宙に出る。

「あなたの目指すあるべきとはいったい何なのですか!」

まさに剣技の七変化とでも言うべきか。宙に出ることを想定していたかのように
今度は翼を引き裂く風刃が空を走る。あんな風に飲まれたら翼が引きちぎられそうだ。
翼を消して着地すると、シャニーは駆け出し、短剣を握り締める。

「無秩序な進化を管理し、人が人を滅ぼさぬよう、人による人の支配を終わらせる事だ!」

渾身に振り下ろされた大剣、迸る雷撃。
それを自身のマナを周りに巡らせた魔法衝撃で退け、迫り来る大剣をダガーで受け流す。
ついに迫る龍虎の眼差しが交錯し、あるべきを叫ぶアルトシャン。

「くそっ、やっぱり拳のほうがやりやすいぜ!」

このままシャニーだけを戦わせるわけには行かないが、キュレックは大剣相手にはどうしても不利だ。
剣をしまい、だっと駆け出したゲイルはシャニーを守るべくアルトシャンへ鋭い回し蹴りを浴びせる。
剣で受け止めた彼とシャニーの距離が開き、ゲイルは休まず拳への連携に入る。

「すなわち、神に世界を返し、神により世界を支配する事。それこそが我が目指すあるべきだ!」

師に破門されてから、それでもずっと修行だけは欠かさなかった。
まだ道へと戻ることは許されていないが、それでも今は最愛を、そして世界を守る時。
狂気の剣帝が叫ぶ世界のあるべきを、双拳で砕くかのように受け止め弾き飛ばす。

「その神っていうのがハデスってことなのかよ!?」

やはり修道士としての身のこなしのほうが自分にはあっていると思える瞬間。
大剣を浴びても怯むことなく拳を振るい、アルトシャンを吹き飛ばす。
このマイソシアは人間達の意志で作り上げてきたもの。
たとえ神の意志が運命を操ろうとも、意志を持ち未来を創るのは人間。
それを止めてしまおうとする男が描く憧憬を、ゲイルは拳で跳ね除けた。

「否!我に信託を下した神はハデスではない。」

だが、アルトシャンも既に心は決めていた。
神は言ってた。このままでは均衡は崩壊し、人間が人間を滅ぼすと。
希望を滅せよ、そして均衡を取り戻せと。それは光を憎むハデスの言葉ではない。

「何だと?!じゃあどこのどいつなんだ!そんな神を名乗るバカタレは!」
「智を司る冥界の大賢者インカと、真実の語り部メリスだ!!」

大剣と拳がぶつかりあい、互いのマナが炸裂して両雄は反動で吹き飛ばされた。
巨体でがっしりと地面をつかみ着地したゲイルは、そしてシャニーやエルピスも
アルトシャンが口にした名前を信じられずに目が震えていた。
天界の神々が、ハデス以外にも人間を滅ぼそうと動いているというのか。

「そろそろ決着をつけようぞ!我が剣を前にひれ伏すが良い!」

距離を開けたアルトシャンは両手で大剣を握り、その刀身に業火を滾らせ始めた。
アルトシャンにとっても、彼らとイタズラに時間を無駄にするわけには行かない。
マヴガフを止めねば・・・その思いに躊躇いはなく、間をおかず振り下ろされる大剣が両陣営の明暗を分けたかに思われたその時だ。
灼熱に染まるエントランスの中を走る鋭い冷気。

「ア、 アンドラス?!」

アイスランスがアルトシャンの大剣を阻み、鈍くなった一撃を受け止める双剣。
見下ろしたアルトシャンは仰天して思わず名を叫ぶ。自身を阻んだのは何と娘だったのだ。
右腕になると約束してくれたはずの、たった一人の家族。

「一体何のつもりだ?」
「お父様、これ以上苦しむのはやめてください!」

驚きに見開かれていた眼差しが剣のごとく鋭く切れ上がり、見上げてくる蒼の瞳を睨む。
それでも彼女は怯むことなく、父へ訴えかけた。

「たとえお父様が良くても、私はお父様を失うなんて絶対に嫌です!」

ずっと隠してきた思い。世界のためなら、自分はどうなってもいい。
そんな事を本気で考えられる人間なんて、誰もいない。皆幸せになる為に生まれてきた。父だってそれは同じ。

「退くのだ、アンドラス。希光を倒せば済む話。邪魔をするではない。」

二度はない、そういわんばかりの威圧的な眼差しがアンドラアスを貫く。
だが、彼女は強く、強く首を振って父の前から退こうとしなかった。
父が本気で国の為に自分か、シャニーか死ぬしかないと思っているなら、すべきはただひとつ。
彼を止める。彼を世界の誰より愛する娘として。

「だめです!シャニーとは手を取り合わねばならない相手です!あるべき進化の為に!」

はっきりとした口調は凛として、鬼気迫る眼差しの剣帝を受け止め続ける。
その言葉をまっすぐ見下ろすアルトシャンの顔にもはや表情はない。
いつもの優しい父としての顔に少しでも早く戻って欲しくて叫ぶ娘を前にしても、覚悟は揺るぎなしを見せ付けるかのように。

「人間は気付き、変わっていけます!私たちがすべきことは、進化を制御することではなく、人々に気付かせることなのです!」

気付いたものだからこそ、人々にそれを伝えなければならない。
皆と想いを共有して初めて、思いは形に変わっていく。
決して独りで抱え込んではいけない。必死に訴えかける。
「お前までそのようなことを言うのか・・・。」娘のまさかの言葉にアルトシャンは絶望するかのような疲れた声で返し、
窓の外へ視線をやり、今もくすぶる高き塔へ目配せする。

「あの錬金術を見ても、まだそのような事を言えるか?」

創造の錬金術の恐ろしさを知っているから、自ら破壊したのではないのか。
父と娘の交差する眼差し。だが、アンドラスの眼差しは決して揺るがなかった。

「今回の事件で民は気付きました。錬金術の脅威を。人々は気付き、自ら制御し新たな進化の道を歩み始めたのです。」

自分も誤った道へと踏み出そうとしていたが、結果これでよかったと思っていた。
大事件に発展した事で、人々が錬金術に対する従来の奨励一辺倒へ待ったをかけたのだ。
大事なことは、抱え込むことではなく人々に真実を見せる事。

「もうこれ以上、お父様が苦しまれる必要はないのです!どうか、どうか剣を収めてください!」

自分がまず双剣をしまうと、駆け寄って父の腕にすがりつく。
いつも自分の頭を撫でてくれる優しい父に戻って欲しい。
今にも泣き出しそうな懇願の眼差しを浴びせられて、アルトシャンは静かに目を瞑る。

「・・・お前だけには、幸せに生きてもらいたいと思っていた・・・。」

かつてはすべては国の為に、そう誓って生きてきた。愛することを奪われて。
だが、アンドラスが生まれてからは彼女の為に生きようと願った。
取り戻しかけた愛。だが、やはりこの暗黒の血はそれを許しはしてくれなかった。
目を瞑ったまま、吐き出すように漏らした言葉は疲れ果てていた。

「だから何とかお前だけでもハデスの血から解放されて欲しかった・・・だがその希望も露と消えた。」

民に愛される娘の姿を見つめるたび、血が知れ火あぶりにされる娘の姿がどうしても脳裏に浮かび。
絶望の中それでも愛だけのために前を向いてここまで何とか歩んできた。
だが、唯一の灯火は無情にも暗黒の中で潰え、暗闇に残された男は今視界を断って闇に沈む。

「今、ハデスは復活しつつある。そして今、この場に最後の鍵が全て揃ってしまっている・・・。」

マヴガフはこの状況を目を細くして観測しているに違いない。
このままでは、あの男の思うがまま。娘は人形とされ、世界は悪魔のブレスを浴びて無と消える。
静かに首を振る。そんなことは、世界を統べる帝国の総統として見過ごすことは許されない。

「アンドラス、お前は私の大事な娘だ。お前のことは誰を差し置いても幸せにしてやるつもりだった。」

静かに目を開く。そこには変わらず手を結び祈る娘のまっすぐな眼差し。
見つめれば見つめるほどに辛い。彼女に一体何の罪があるというのだろう。
だが、剣帝の覚悟の眼差しはまっすぐ彼女を見下ろして震えないよう威厳で覆われる。

「私は幸せです。お父様のような偉大な先駆者の方のお傍でいつでも愛しんでいただけて。」

ぐさりと心に突き刺さるような言葉。幸せにしてやれないでいる父の懺悔を包んでくれるような。
彼女の僅かな幸せまで、奪ってしまおうとしているような男を、彼女は愛してくれている。
見れば見るほどに辛くて、彼は視線をきった。

「だが・・・このままではお前は不幸の道を歩む。
 ハデスの器として・・・人々から憎まれ・・・そんな事にはなって欲しくない。私はお前を守る義務がある。」

最初はただの道具のつもりであったのに、今どうしてこんなにも愛おしい。
彼女の幸せだけ守る事ができれば、それで十分。そんな風にさえ思えてしまう。
だが、愛するが故にもはや決断の時が迫っている。
じろりと、彼は横目でアンドラスを見下ろし、心の中で何度も詫びた。

「そして・・・今私がお前にしてやれることは・・・・これだけだ!!」

彼女へ正面を向けたかと思った刹那、大きく手を広げたアルトシャン。
その腕には間違いなく大剣が握り締められており、誰もがその後起きる事に気付いて踏み出そうとした時には、
すでに振り下ろされた大剣を前にアンドラスが衝撃に天を仰いでいた。

「?!!かはっ・・・お、おとう・・・さま?」

重い、重い金属音が鈍く響き、膝を衝き倒れる。
宙に投げ出された視界から愛する父の顔が消え、地面に叩きつけられて見開かれる。
時が止まり、広がる赤い血の池だけが広がっていく。

「アンドラス?!」

真紅を蒼の瞳に映し、ようやく体の硬直から解き放たれたシャニーは無心に駆け寄る。
抱き上げてアンドラスに呼びかけるが、彼女はもう目を開けてくれない。

「アンドラス・・・ハデスの血を身に流す以上・・・生きていくことは苦しみと悲しみに押し潰されることになる。」

シャニーに続いて仲間達も彼女を囲むようにしてアンドラスを見下ろす。
敵対しているはずのものにさえ、娘は愛されている。
だが、彼らが真実を知ったときの顔を見たか?ハデスの血を知り、驚愕に震えたあの瞳たちを。
これが世界中の無数の瞳となって娘を蝕むと想うと、アルトシャンはいても立ってもいられなかった。

「お前だけは血の浄化で陽の下を歩き、民を導いていって欲しかった。
 情けないが・・・親としてお前にしてやれる最善は・・・これしかないのだ、許せ・・・。」

自分と同じ道は絶対に歩ませたくは無かった。愛のない日々がどれだけ辛かったことだろう。
もうすっかり乾き切って、慣れてしまったこともある。だが、その乾ききった心が何をした?
愛を知らず、幸せを忘れた心は他の者の幸せを平気で奪ってきた。
どれだけ憎まれても国の為と背を向けてきたが、同じ道を娘が歩むと想うと、それはまさに絶望だった。

「アルトシャン!てめえ何を考えてやがんだ!アンドラスはお前の大事な娘じゃなかったのか!」

目を怒りに震わせて、まるで修羅かと言うほどの形相でアルトシャンを睨む。
拳をギリギリと握り締めながら、ゲイルは怒りの咆哮を彼に浴びせる。
アンドラスはあれほど父に愛を捧げていたのに、その愛に黒く冷たい鉄を浴びせたのだ。
愛で包んでやることもせず、その鉄で守ってやることも無く。

「大事だからこその決断なのだよ・・・。」

今も正面を向けず、視線を切ったままのアルトシャンから漏れ出す言葉にもはや威厳はない。

「私が生み出してしまった命だ・・・その命に重石をくくりつけたまま生かすことは出来ぬ・・・。」

彼もまた計り知れない恐怖と絶望からの選択であったことは、目をくしゃくしゃにして涙を絞る姿からうかがい知る事はできる。
だが、震える手が握る剣は真っ赤に染まり、ひとつの命を壊した。

「許せない・・・許せない!自分の勝手な思いで命を簡単に握り潰すなんて!」

それまでずっとアンドラスの顔を見下ろしていたシャニー。
裏切られても、それでもアンドラスの顔には絶望は無かった。彼女の無念を想うとあまりにもやりきれなくて、
シャニーもまたどうしようもない怒りを強く噛み砕いてくしゃくしゃになった瞳をかっと見開くと魔王を睨みあげた。

「やはり彼はハデスの血族よ、やっていることは何も変わらないわ!」

ロダシャナキの血、そう聞いたときはもしかしたら、そんな風にも考えた。
だが、やはり悪しきは血ではなく、その心。今まさにそれを証明した男へエルピスは強く言い放つ。
彼もまた、マヴガフと同じ。だが、それを聞いてアルトシャンは睥睨してきた。
「やっと分かったか?ならば剣を構えよ。」まるで開き直ったかのような言葉さえ吐き棄てて。

「光と闇と、どちらの唱えるあるべきこそが貫かれるべきか、縁に決着をつけようぞ!」

ついに正面を向いた魔王の眼差し。
だが、もうそれは娘に降ろされてくることは無くて、まっすぐにシャニーを見据えていた。

「許せない・・・アンドラスの想いがあなたには何も分かっていない!愛は押し付けるものじゃないのに!!」

ここまで人の愛を傷つけて平然としていられることが許せなかった。
彼なりの愛だと言うのかも知れない。
だが、愛は人を包むもの、守るものであり、決して押し潰すものではないはずだ。
ついに怒りに震える手先に光のマナが召喚されようとした、その時だった。

「って・・・シャニー・・・。」
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