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 ←6話:血と死 →8話:帝の帰還
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
Chapter23 信じるあるべきのために

7話:復活と創造

 ←6話:血と死 →8話:帝の帰還
「って・・・シャニー・・・。」

ふいにしたから聞えてくる声。
はっとして見下ろすと、弱々しくダガーを握ろうとする自分の腕を引く手。
「アンドラス?!大丈夫?!」うっすらだが、失われたと想った蒼の瞳が見上げてきている。
すぐに声をかけ、レイに治療を頼もうと外される視線を、アンドラスは強く引きとめた。

「お父様は・・・死ぬつもりだわ。ハデスの血を・・・なくすために。だから血の浄化をしようとした・・・。」

娘だから、いつでも彼が説く世界のあるべきを聞いてきたから、父の覚悟は分かる。
自分を心から愛してくれた事も。だからこそ、自分を斬り捨ててでも彼が為そうとしている事も見える。
だが、同じく父を愛した者として、それは止めて欲しかった。

「そして今もお父様は私のことを・・・愛してくださっている。
私を置いて・・・死ぬことが・・・怖いから・・・恐ろしいから・・・・・だから・・・。」

もう息もままならない薄い呼吸が、それでも必死に訴えかけてくる。
父に怒りをぶつけないで欲しいと。どうしてこんなにされても愛で包もうとできるのか。
その空の如く大きな愛に、父もまた震える口元から侘びが溢れ出す。

「アンドラス・・・お前には本当に申し訳ない事をしたと思っている・・・。
だが・・・やはり私は軍人だ・・・国に感情を優先させることは・・・できない。」

娘の目を見て話をすることが出来な自分が情けない。だが、こうしなければ世界が滅んでしまうのだ。
たったひとつの愛と、世界中の命と。天秤にかけられるはずがない。
「違うよ!」だが、シャニーはそれを量ることそのものを否定した。

「軍人が守らないといけないのは何なのさ!名誉?メンツ?!貴方は間違えてるよ!」

世界を守ろうとすれば、今一番しなければならないのはマヴガフを止めることのはずだ。
それに優先して彼が何をしている?
軍人として最後まで貫き通すことなのか。

「守らなければならないのは・・・愛してくれる人たち・・・人々が国を創っていく・・・。」

死ぬことこそが国の未来を創ることだと父は思いつめてしまっている。
だが違う。国を創るのは総統ではなく、人々なのだ。
総統としてなすべきは彼らを守る事。死んでは決してなしえないことだ。
何とかして父を救い、民を守ってほしい。その想いが震えるアンドラスの腕を伸ばさせる。

「お願い・・・シャニー・・・私のマナをあなたに託す・・・。お父様を助けて・・・。」

そっと重ねられた弱々しい手がしっかりとシャニーの手を握りしめる。
その途端だ、静かに流れ込み始める光のマナ。

「!!」

間違いなくそれはアンドラスのもの。
体に流れ込んでくる同じ光がシャニーへもたらした者は多くの声だった。
彼らの声を目の当たりにして瞠目して光を受け入れる。

「お父様は・・・望んであなたと戦っているわけじゃない・・・ハデスに・・・縛られて・・・お願いしま・・・す。」

まるで大海の如き広く湛えられた光が隆々と体に流れ込み、融合していく。
アンドラスが集めてきた多くの夢をその器に湛えたシャニーは見届けた。
自分に全てを託して逝く乙女の涙を。ぎゅっとその手を握り返した。
必ずや、想いを届けて世界を守ると。

「アンドラス?!アルトシャン・・・てめえ!!」

顔を揺さぶるゲイル。だが、もはやその手に彼女の息が触れることは無い。
怒りに握りしめられた拳から煙が上がり、気弾が溢れかえる。
爆ぜる怒りの先には、今も目線を逸らし続けるアルトシャンがいた。
シャニーは上着をさっと脱ぐとアンドラスに被せてやり、静かに顔に手をやって目を瞑らせた。

「・・・シャニー?」

いつまでもアンドラスの横で屈んでいる彼女に声をかけるゲイルだが、
彼女に反応は無い。その代わりに彼女の周りには凄まじいマナのオーラが迸っていた。

「アンドラス・・・あなたが振りまいてきた希望・・・皆がくれた想い・・・全部私の中を駆け巡ってる!」

どれだけ民を愛して守ろうとしてきたか、シャニーは彼女から受け取ったマナからひしひし感じ取っていた。
彼女が集めた笑顔。彼らはシャニーへ叫んでくる。アンドラスへの親愛、アルトシャンへの敬愛。
そして口々に言うのだ。幸せになりたいと。
それらの声がシャニーの奥底から、今まで感じたこともないようなマナを湧き上がらせてその眼差しを確かとさせている。

「思い出した・・・思い出した!全てを!それだけじゃない、新たなマナが私に力を与えている!」

噴きあがり、彼女の周りを包み込む黄金色の光。
仲間たちは知っていた。これこそが、かつて彼女が湛えていた熾天使の光。
いや・・・あの時よりも更に真澄に光り輝くそのマナは以前にも増して温かい。
これだけ輝いているのに眩しいとは思わない柔らかい光が太陽の如く燃え上がっているのだ。

「アルトシャン!私はアンドラスと、そして彼女を支え愛した人々の想いを彼女に代わってあなたに届ける!」

振り向き、その眼差しで強くアルトシャンを見据えたシャニーは指をさして彼に告げる、人々の声を。
彼に求められるものは、断罪でも贖罪でもない、人々を守ることなのだと。
強くトパーズを握りしめる。途端だ。
凄まじいマナがエントランスに膨らみ、窓という窓が弾けて、背中から膨らんだ聖光が屋根を貫いた。
「あ、あの翼は!」思わず声を上げたエルピス。そう、それはかつて自らの背にあったもの。

「・・・ふふ、やっと蘇ったわ・・・熾天使エルピスが。」

妹の背中にたたえられた三対の翼。それはかつて自分が湛えていたものであり、
また同時に、自分が扱っていたものより遥かに大きく、そして美しい。
虹色に輝く翼は、多くの夢を湛えて希望を振りまく。
だが、その眼差しは今やじりの如く鋭く闇に堕ちた人間を見据え、強く弓を握り締めていた。

「我は熾天使シャニー!闇に縛られし魂に希望の意志を示す!」

いつものあのマヌケで穂柄中乙女の顔はそこにはない。
神界最強の光を宿し、地を這う絶望のマナを闇から引き揚げるべくその凛とした眼差しで心に巣食う悪しきを眼光で睨み射抜く。

「これが熾天使のマナだというのか。」

人は、人智を超えた力を目の当たりにすると立ち尽すしか術がないのかもしれない。
目の前に突如現れた神の力。温かく、柔らかくも強大な光が目の前に輝く。

「なるほど・・・武者震いなど暗黒戦争ぶりだ。」

ハデス以来だ。勝てないかもしれないと本気で思えるような相手は。
だが、勝ちや負けを決するべく迸る光ではないことを彼も知っている。

「あなたの娘が、何をあなたに望んでいたのか私がその代弁者となって貴方に伝える!」

あくまで目指すものは調和。破壊と制圧ではなく、対話での融合。
だが、まずは相手の剣を折らねばアンドラスの無念が無駄になってしまう。
光のマナで創り上げたダガーを手元に召還し、その鋒を剣帝へと向ける。

「一度、本気で戦ってみたかった。」

だが、そのダガーを見つめたアルトシャンが浮かべたのは、なんと笑み。
「よかろう、行くぞ!!」大剣を握り締めたアルトシャンはシャニーよりも先に駆け出して、
紫電迸る巨大な刀身で小さな熾天使を押し潰しにかかる。

「まだ分からないのか!」

だが、覚醒の熾天使の周りを守りのマナが包み、食い破ろうとする紫電のすべてを包み込む。
怒声を上げて振り下ろされた大剣から逃げることなく飛び出したシャニーは、
何と大剣を魔法障壁で受け止めるとアルトシャンの懐に入り睨みあげる。

「あなたがすべきことは管理ではない!共に歩む事だ!
共に歩み、常に人間と向き合って過ちを互いに正しながら夢を育てる事だ!」

こんな華奢な乙女を包むこんな小さな障壁を弾き飛ばせず、ギリギリと牙を立てる大剣。
渾身を振るうアルトシャンの目をまっすぐに見上げて、シャニーは訴えかけ続けた。
体の奥底から溢れ出す神界の力。それを今人間に向けている。
だがこれは決して道を外れたものではない。彼らを救うため。大剣を押しやり、弾き飛ばした。

「くっ、この私が力負けするとは。」

目の前にいる翼を湛える天使が、姿そのままの華奢な乙女ではないことは分かっている。
だが、あまりにも違う力はとても太刀打ちできるようなものではないとアルトシャンは悟っていた。
「だが、この程度ではまだ足りぬ!」開いた距離。怯むことなく駆け出す剣帝の一閃が熾天使へと振り下ろされる。
だが、彼が次にその気配に気づいた時、虹色の翼が宙に舞っていた。

「あなたの動きは見切った!」
「ぬお?!」

宙に飛び上がり背後に回られていた。とっさに振り返って防御に大剣を構えるが、
シャニーのマナで創られたダガーが宙に描いた一閃にまるで布かと思うほどに吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられ、もうもうと土煙が上がる。

「あなたには人々を守る力がある。力を持つ者は、それを正しく使う責務がある!」

こんなことをして、きっとアンドラスは悲しんでいるに違いない。
後ろ目にレイの膝の上で安らかに眠る彼女の顔を見下ろしたシャニーはそっとダガーを宙に溶かす。
自分もまた、彼女の為にも正しく許された力を使うとき。

「それが分からないというなら、私が教える!皆があなたに何を望んでいるか!」

虹色が飛翔し、抜けた天井から空へと舞い上がる。
見下ろし、アルトシャンの視線と対峙した彼女は右手に弓を、左手に光の矢を召喚すると静かに引き絞っていく。
ずっと閉ざされていた力が今、手先に集まってくる。多くの光が力となって弓を引く力を与えてくれることが、
柔軟に躍動して全身から湧き上がるマナから伝わってきて、自然と構えが正される。

「あの構えは・・・ふふ、思いだしたようね。いいわ。見せてあげなさい、みんなの想いを。」

地上から妹の姿を見上げていたエルピスはふっと笑った。
本当にこの世界に蘇ったのだ。いや、今生まれたというべきなのかもしれない。
調和の光で人間を守る、熾天使の虹色の翼が黄金の光を湛え輝く。

「あれが・・・アストレアなのか?なるほど、眩しくも・・・温かい。」

確かに今、鏃の先がまっすぐに自分に向かっている。
何故なのだろう。剣を手放して飛び込みたくなるあの光の温もりは。
アルトシャンはただ、天に輝く強くも穏やかな光を見上げていた。

「今なら撃てる・・・。ありがとう、アンドラス。ありがとうみんな。」

父を救って欲しい、民を守って欲しい。
アンドラスの想いがなければ決して押し開くことが出来なかった記憶の扉。
開けたその先には今、かつてはなかった多くの声が加わる。
まるで弓を引く手を皆で支えてくれているかのような感触に、無意識にシャニーの口から感謝が漏れる。

「行くぞ、アルトシャン!私のたちの想いを知れ!」

その眼差しはきっと強くなると、今一度標的を見据えて強く叫んだ。
射抜き、倒すことが目的ではない。彼を闇から救い上げ、アンドラスの願いを
そして民の想いを未来へ届ける為の一矢が今放たれて宙が黄金一緒に広がっていく。

「我が最高の剣技で、貴様の光を砕き落としてやろう!来い!!」

逃げ出すことはしなかった。いや、もはや逃げ場などないことを知っていた。
今、自分がすべての声を敵にまわしている。それでも守らねばならぬと剣を握っているのだ。
覚悟と覚悟の正面衝突。剣に雷撃を迸らせ、押し寄せる光へ叩き着けた。

「おおおおお!!」
「受け止められたぞ!シャニー!」

さすが剣帝と呼ばれた男か。神界最強の光をその大剣で受け止めたではないか。
全身全霊を叫ぶアルトシャンに負けじとゲイルも空の相棒に叫ぶ。
「それでいいのよ、それで。」だが、エルピスはふっと笑っていた。やはり妹は分かっている。あの光の意味を。
大剣で受け止めても、少しずつその周りから光が膨らみ、アルトシャンを包んでいく。

「何・・・?!」

その時だ。アルトシャンは目の前で破れひびが入る大剣に目を見開いた。
今までいかなる敵の前でも砕けることの無かった己の剣の道。
それが今、敗北を喫しようとしている。
ヒビはあっという間に全体に及び、刹那高い音と共に木っ端微塵に砕ける刀身。

「ぐはあ!!!」

吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。もはや杖代わりもなく、見上げた天に瞠目するしかなかった。
天に昇ったアストレアがぱっと砕けると、無数の光の矢となって降り注いできたのだ。
それは地面に突き刺さると彼を包む光の檻となった。

「これが・・・神界の力・・・。」

光が晴れた先に見えたのは、巨大な一本の光の矢。見る見るスピードを上げ、光の檻に迫る。

「勝利の女神・・・我に微笑まざるなり・・・。」

もはや身動き一つとることは出来ない。檻に手をやり、ただ迫る太陽を見上げる。
宙に羽ばたく虹色さえもが黄金の中に溶けて、もう何も見えない。

「もはや・・・これまでか。娘よ・・・今行くぞ。」

最期を悟り、静かに目を瞑るアルトシャン。思い出されるのは娘と過ごした楽しかったセピア。
たった1年弱の話だったが、それまでの何十年が霞んで見える幸せな日々だった。
過ちに気づき、それでもあるべきを求め続けた自分を常に支えた愛の傍に、もうすぐ行ける。

「受けよ!闇を射る希望の結晶、アストレアを!」

天にかざした手を一気に振り下ろすシャニー。
躊躇いは無かった。これは破壊の光ではなく、悲しみを射抜き幸せを守る調和の光。
殺すわけではない。彼女の意志を受け、檻に突き刺さるアストレア。
「うおおおお!」凄まじい光の流れに飲み込まれ宙に投げ出された。
もはや上か下か、右か左か分からない。ただ、穏やかな流れに身を任せ、
アルトシャンの意識はそのまま遠のいていった。

(アンドラス・・・。)

唯、娘の笑顔だけをしっかりとそのまぶたの裏に抱きしめながら。
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