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 ←9話:暗黒の飛翔 →2話:光の集結
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
The final chapter Outside of Lie

1話:決意の聖痕

 ←9話:暗黒の飛翔 →2話:光の集結
 錬金艇に乗って一路ルケシオンへと急ぐシャニーたち。
決戦を前にして体調が万全と言うわけではなく、レイはせっせと激戦で傷ついた仲間に治療を続ける。
彼の治療を受けながらも、シャニーの視線をずっと東の空を見つめる。

「もうすぐ、もうすぐ帰るよ、みんな・・・!」

故郷の事も全て思い出し、その故郷に今巨悪が居座っている。
仲間達のことが心配で、心配で。居ても立っても居られない様子である。
治療が終わるや否や窓辺へと駆け出していく。その時だ。

「おい、シャニー。その背中の傷みたいな模様、何なんだよ。」

ゲイルが何かに気付いて後を追う。
すぐに立ち止まった彼女のポニーテイルを退かすと、その背中に現れた妙な模様を指差した。
背後で見えずにきょろきょろする彼女に手鏡を渡すと、向こうにある鏡の前に背をむけて立たせた。

「え・・・?え?なにこれ、知らないよ、私。」

何かの型に押し当てたかのような幾何学の模様。
だが、それは傷と言うより何かタトゥーでも入れたかのようで、黄金色に浮き上がっている。
鏡から目を離して不安そうにゲイルを見上げる。

「これは・・・聖痕か?」

近づいてきたアルトシャンが見た途端に一言漏らす。イア信教の聖典にたびたび出てくる言葉だ。
「恐らくそうね。」それを決定付けたのはエルピスだった。
彼女が言うのでは間違いはなく、シャニーの不安げな眼差しが震えている。「聖痕?なにそれ、どうして?」
妹の不安に見つめられ、彼女は徐に背を皆に向けると、何と上着を脱ぎだしたではないか。
思わず視線を逸らそうとするゲイルだが、彼女の背から出てきたものに仰天して声を失う。
何と同じ模様がそこに浮かび上がっていたのだ。

「あなたが下界で神界の力を行使したからよ。これであなたも正式な神界の罪人ってワケ。」

半ば呆れたように鼻からため息を抜きながら事実を口にするエルピス。
もちろんその呆れは妹に対してではない。

「はぁ?!シャスの野郎!!」

ゲイルもまた、エルピスとは違う表現で同じ対象へ怒りをぶつける。
「関係ないよ。」だが、当のシャニーは聖痕の正体を知って逆に落ち着き払っていた。

「私は私の守りたいものの為にこの力を使う。邪魔するなら・・・徹底的に戦う。」

翼が広がるかのように背の中央から左右へと伸びる罪の証。
だが、その眼差しは罪に震えることはなく、むしろ覚悟を背負って普段の穏やかさを払った凛と鋭いものだった。
蒼の瞳は切れ長に天上界を睨み、その姿にエルピスはふっと笑う。

「ふふっ、恐ろしい子。だけど、私の後継者ならそのくらいじゃないとね。」

母には悪いが、もし母が妹を裁こうとするなら妹を守るつもりだ。
何せ、今彼女が歩もうとしている道は、かつて自分が諦めた夢。夢の続きを追うことを邪魔するなら、誰であろうと容赦しない。
それは無論、これから向かう場所で待ち受けるあの男もまた、例外ではない。



 ルケシオンへ全速力で向かう錬金艇。光の如く空を裂くその船にじっと睨みを利かせる目。
彼は不敵な笑みを一つ浮かべると手をあげて部下に指示を与える。

「アスク帝国の錬金艇を捕捉!距離、120!」

シャニーたちが乗る錬金艇とはまた別の錬金艇が茂みに隠れる蛇のように、ゆっくりと雲中から姿を現した。
彼らは一定の距離を保ちながら、近づいてくるシャニー達を沈黙中じっと睨む。

「乗船しているのは恐らくアルトシャンや希光らだと思われます!」

だが、距離が近づいてくるにつれて次第に慌しさを増す艦橋。
その一番高台にどっかりと座ってモニターを見つめていたノカン王国国王リステヒンは、
またひとつ不敵な笑みを浮かべるとレーダー士へ視線を下ろす。
彼は帝都戦で敗北を喫し、戦場で塵と消えたのではなかったのか。

「相手に砲撃準備の気配はあるか?」
「いえ、全砲門から錬金反応はありません。最大戦速でルケシオンへ向け猛接近中!」

彼らはルアスでの敗戦からいち早く脱出し、先回りをしていたのだ。
敵の無警戒を知ったリステヒンは静かに席を立つと、ばっとマントを広げながら手を翳して全乗組員に対しマイクで叫ぶ。

「主砲発射準備!目標、アスク帝国錬金艇。」
「はっ、トールハンマー発射用意ッ!目標、アルトシャン総統旗艦!」

雲の中から静かに砲門が狙いを定め、動力が唸りをあげ始める。相手はマヴガフに気を取られて我が物顔で空を駆けている。
そのどてッ腹をターゲットスコープ越しに見つめ、リステヒンの口元は嘲笑うばかり。

「全機関、出力を最小限にとどめ主砲への練成エネルギー注入へまわせ。ふふふ、跡形も残さんぞ。」

いくら旗艦相手とは言えど、主砲の直撃を受ければ木っ端微塵だ。
今まで受け続けてきた屈辱を思い出し、憎悪を膨らませていく。
長い悪しき縁が今、終わろうとしている。これまで受けた憎悪の全てをあの船にぶつけるつもりだった。

「トールハンマー発射準備完了!練成エネルギー充填率200%!」

さすがに一枚岩のノカン一族、軍人達の連携も抜群であっという間にリステヒンへと無線が戻ってきた。
死への招待状を手にしたリステヒンは、さっそくターゲットスコープを覗き込み、とびきりの賓客へ渡してやろうと一つ舌なめずりする。

「ふふふ、人間共、勝ったつもりになっているようだが・・・最後に笑うのはこの俺だ!」

もう敵はルケシオンにしかいない、そう決め付けていることはあの航行スピードからもうかがえる。
レーダーなどまともに機能しないだろう。直撃の直前にようやく気付き絶望する顔。
それを思い浮かべ、彼は引き金に手を当てた。

「これがノカン王国復活の祝砲となる!死ね!人間共!」

今まで苦労をかけ続けた仲間達に訴えかけるかのように叫び、ついに発射トリガーを引く。
蒼白い破壊の閃光が砲塔から解き放たれ、空を引き裂いていく・・・はずだった。
「?!おい、どういうことだ、何故発射されない!」モニターを見下ろしてみる。
間違いなく、ゴーサインのマークはついている。
念のためもう一度発射トリガーを引くが、やはり閃光が噴出すことはなかった。

「こちら機関部!練成エネルギーが逆流して・・・・ぐああああ!!」

艦の後方へ激しい爆発音がしたかと思うと、船が大きく揺らぎ傾く。
直後に無線連絡が機関室から入るが、既に後方から炎上音が聞え、
さらに無線を引き裂く爆音と共に悲鳴が上がってそこで連絡は途絶えた。
焦燥とした表情がすぐに配下に向けられ、モニターは砲塔を映し出す。
「ああ?!」途端だ、船員の一人が声を上げる。

「リステヒン様!主砲の発射口をご覧ください!」

発射されない練成エネルギーがあちこちから船の甲板を貫いて溢れ出している。
稲妻迸る中、モニターの視界が横にスライドしていき、発射口を捉える。

「ん・・・?!なっ、何だあの化け物は!!」

発射口の異常にすぐさま気付いたリステヒンが半ば裏返ったような声で困惑と驚愕を叫ぶ。
そこにしがみついていたのは、見たこともない醜い姿の魔物だったのだ。
どよめくだけで、誰もが声を上げられずに居る中、警報音だけが迸る。

「くっくっく・・・化け物だと?ノカンの文化には鏡というものが無いようだな?」

発射口をから艦橋を睨みあげて気味の悪い笑いを浮かべていたのはフェンネルだった。
彼は自分の獲物を横から狙う邪魔なネズミの口をその手で押し潰して塞いでいたのである。
ノカンから化け物呼ばわりされては敵わぬと、彼は侮蔑を吐き出している。

「黙れ!貴様のような化け物の相手をしている暇はないわ!出力を上げろ!化け物諸共吹き飛ばせ!」
「お前のようなググツが一族の王だと、ついていく民は哀れですねえ?」

人間達と違うのは、ノカンは神界の使途を見ても畏怖しない点だ。
蛮勇を叫ぶリステヒンは目の前にある王国再興だけを見つめていた。
だが、それを嘲笑うフェンネルはさらに強く発射口を押さえ込む。

「いいか?シャニーは私が倒すべき相手だ。お前達の千年王国とやらはスカンダロンで創るんだな!」

金属が重い音を立てて潰れ、金きり音が耳を劈く。
さすがのリステヒンもフェンネルの余裕綽々の様子に苛立ちを隠せないが指示は変えられなかった。
だが、彼の代わりに既に艦のあらゆる警報装置が悲鳴を上げて危機を叫んでいた。

「リステヒン様!これ以上は危険です!機関へこれ以上練成エネルギーが逆流すれば!」

副官からもついに救いを求めるように声が上がった。
それでも彼には指示を変える事は出来なかった。今変えれば、このままあの魔物に押し潰される。
しかし、フェンネルにはもとより彼らを生かして返すつもりなどさらさらなかった。

「今頃遅いですよ!どうせここで存えても、すぐにハデス様がこの大地全てを灰に変えるのだからな!
 想像しただけでも・・・おお、恐ろしい。」

一体神はこの世界にどんな裁きを下そうというのだろうか。
答えは大方分かっている。皆殺し、この蒼い海さえも真紅に変えるほどの殺戮が繰り広げられ、空は絶望に染まる。
その絶望こそが、世界を包む嘘を破壊する剣となるのだ。

「その飛び切りの恐怖を味わわずに死ねるのだ、ありがたく思うんですね!」

もう、こんな劣悪種を相手に時間を使うのは惜しい。フェンネルはついに手先に力を篭めて錬金艇を押し潰しにかかった。
背筋に寒気が走る悲鳴を上げながら内側へと潰れこみ、ひしゃげていく。
「どわあああ?!」爪がついに錬金艇を引き裂いて、まるで紙を破るかのように二つに裂かれて行く。
限界を超えて溜め込んだ錬金エネルギーが逃げ場を求めるように一気に炸裂し、艦は水風船を割るかのように炸裂する。

「ぐおおおお、許せ愛しきノカンの民よ・・・!」

爆風は艦橋にも及び、爆焔にすっぽり包まれた錬金艇は大爆発を起こす。
リステヒンもまた逃げる事も叶わず、艦橋で無念を叫ぶと炎の中へと飲み込まれていった。

「くっくっく・・・祝砲となるのは貴様ら劣悪種ですよ。」

その様子を見ろして不気味な笑いを浮かべたフェンネルはすぐに興味を移す。
視界に見えるのは、もうひとつの錬金艇。メインディッシュを前に舌なめずりが止まらない。

「さて・・・シャニー、ふっふっふ、地獄に旅立つ準備はできましたかね?」

あの小娘の体も、先ほどの錬金艇のように真っ二つに引き裂いて、
その溢れ出す血のすべてを啜りとってやろうと爪をこすり合わせて嫌な音を立てる。
どこから突き刺してやったら一番悲鳴を聞けるだろうか。腹か?それとも目か?
受けた屈辱以上の絶望を与えてからでなければ殺すつもりはない。

「今度こそ貴様を血祭りに上げ、ハデス様へ献上するのだ!はっはっは、行くぞ!」
「待て、フェンネル、戻って来い!!」

ついにその赫赤の翼を力強く広げて空を引き裂いたまさにその時だった。
突然に頭の中に直接話しかけられて彼は不機嫌そうに飛躍を止める。
おまけにマヴガフは獲物を前にして待てを出したのだ。犬を扱うかのような指示にフェンネルは苛立ちを口調にありあり滲ませる。

「くっくっく、今更何を言いますか?
 出撃の命令を下したのはあなたですよ?コロコロ作戦を変えないでいただきたいですねえ。」
「事情が変わった。まだ消さねえといけえねえネズミが残ってんだ。」

彼の口ぶりから、どうやら緊急事態が起きていることは想像がつく。
小さくなり行く錬金艇に視線を向けながらも、神の指示に仕方なくため息をつく。

「どうやら輪廻転生術の陣を消そうとしている奴がいる。俺様はここを離れられねえ。さっさと行って始末しろ!」

メインショーの準備で忙しい神様は裏方の仕事を人遣い荒く投げつけてくる。
あまり指示されるのは好きではないが、一応復活させてもらった恩はある。
今は無理やりに錬金艇から視線を逸らすと、大げさに両手を広げて見せた。

「やれやれ、しかしこれで私もハデス様への詫びに参る土産が出来るというもの。
 いいでしょう?シャニーは何れ向こうから来るのですから。返り討ちにしてその翼、むしりとってやりますよ!」

奇声を上げながら空を引き裂くフェンネルは、空を真っ二つに引き裂きながらルケシオンを目指す。
彼の駈けた空には、まるで引き裂かれた傷跡から血が溢れるように破滅のマナが滲んで
空から降り注ぐ悪魔の哄笑に、人々は震え上がったという。

「まずはそのネズミとやらで軽いウォーミングアップをするとしますか。」

もう、ルケシオンが見えてきた。一体どんなネズミか、それはそれで楽しみだ。
せめて、頭からかじればおやつ程度にはなる相手であれば噛み応えもあるだろう。
爪を、そして牙を鳴らし、ルケシオンへと滑空して雲の下へと消えていく。
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