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 ←1話:決意の聖痕 →3話:目覚める暗黒竜
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
The final chapter Outside of Lie

2話:光の集結

 ←1話:決意の聖痕 →3話:目覚める暗黒竜
 一方、その“ネズミ”は必死になって世界を包むように描かれた魔法陣を前に、
たった一人で魔法を放ち続けていた。この線を少しでも途切れさせれば、なんとかなる。

「イアの光よ!聖火となりて汚れし魂を呼び覚ますこの契りを裁きたまえ!」

杖を構えると、白き聖光を召喚して魔法陣へと投げつける。
悪を感知した光はペンタクルを構成してぼうっと燃え上がり、聖なる炎が悪を炙る。
だが、炎はまるで闇に飲み込まれるかのように消え、隆々と流れる紫紺の魔法陣は何事もなかったかのように光り続けていた。
「くっ、これでは埒が明かぬ・・・。」イスピザードの顔が曇る。自分ひとりの力では、あまりにマヴガフの、いやハデスの力は圧倒的過ぎる。
アルトシャンの命を受け、一足先に赴いたが、あまりの強大さに焦りが滲む。

「だが、もう少し、もう少しだ。あの子達のマナが近づいている!」

それでも彼には希望があった。シャニーたちのマナがこのルケシオンに近づいているのだ。
彼女だけではない、アルトシャンやアンドラスのもの、息子のものも感じられる。
きっと、シャニーは最高の形でルアスを守ったに違いない、そう確信して彼も手を休めず光を召還する。
「彼女達が来ればまだ間に合う。・・・?!」だが、その手が急に止まる。

「ほお?この距離で勘付くとは、坊主とは思えない勘の良さですね?これはなかなか楽しめそうだ。」

ばっと振り向けば、そこには黒のメタルゴシックに身を包む面長の男。
にやにやとそのシグナルレッドの目で好戦的に見つめて嘗め回してくる。
直感が叫ぶ、これは恐ろしい相手だと。

「お前は・・・・ハデスの化身・・・。くっ、マヴガフめ、このような者を蘇らせるとは。」

こうなることはある程度予想は出来ていた。
マヴガフが冥界とマイソシアを繋いでしまえば、亡者が世界にあふれ出すことは。
だが、まさかよりにも選ってこんな悪魔を呼び出すとは。

「くっくっく、私も有名人のようですねえ。お察しの通り、私はハデス様の使徒、フェンネルと申します。」

物腰低そうに丁寧に頭を下げて名乗るフェンネルだが、
そのあげられた顔に浮かんでいるのはマヴガフと同じ、血に飢えた獣の目。
彼は不敵に一つ笑うと、西の空を見上げる。「私も楽しみですよ。シャニーがここにくると思うとねえ!」
この使徒の狙いが娘だと分かって、怒りを手に握り締めるイスピザード。赫赤のダガーを引き抜いて好戦的な笑みを浮かべるフェンネルに叫ぶ。

「娘に手出しはさせぬ。お前はこの場で私が裁く。」
「娘??」

きょとんとした顔でイスピザードを見下ろす。今この男は確かにシャニーのことを娘と言った。
シャスが人間と交わったという話は聞いたことはあるが、まさか本当だったとは。

「はっはっは、なるほど、そうきましたか!ちょうどいい、ウォーミングアップに付き合ってもらうとしましょう!」

彼はその身から紫焔を噴き上げるとすっぽり炎に包まれて、
その炎から突き出すように悪魔としての本当の姿をイスピザードに見せ付ける。
硬い鎧のような肌、そして巨大な翼。彼は鈍器のように巨大で重い腕をイスピザードへ振り下ろす。

「くっ・・・何と言う力なのだ。」

とっさに避けたイスピザードだが、神界の力に思わず息を呑む。
もしあの場にあのままいたら、今頃跡形もない。巨大な穴をあけた悪魔の腕を見つめ、
一つ舌打した彼はローブを脱ぎ捨てる。「あなたは坊主かと思ったら盗賊だったんですね!」
次々と鋭い爪を地面に叩きつけてイスピザードを押し潰し、ひき潰しにかかる。
だが、のろまな坊主かと思うとその動きは何とも俊敏。

「いやあ、血は争えないといいますか、しぶとい人だ!」

見る見るうちにあたりが引き裂かれ、砕かれて粉々になっていく。
避ける事で精一杯のイスピザードをほくそ笑むフェンネルは爪をひと舐めして楽しそうだ。

「でも、あなたは肝心なことを忘れている。あなたは私のオモチャになる為にここに来たわけではない。」
「お前を私のところにひきつけておくことが出来ればそれで十分だ。後は娘たちがうまくやってくれる!」

どんどん魔法陣から引き剥がされていくことがイスピザードにも分かるが、
もうこうなっては魔法陣をどうにかするより、この悪魔をシャニーたちの許へ行かせないことが先決だ。
恐らくは、もうマヴガフは人智を超えた存在となってしまっている。
彼一人だけでも死闘を覚悟せねばならないはず。

「ひきつけていられると思っているから面白い。どうした、もう終わりですか?」

だが、人間の浅はかな猿知恵を笑い飛ばすフェンネル。
彼はもう一度鋭い爪で宙を引き裂き、イスピザードを押し潰しにかかった。足元が悪くなり、逃げ場は確実に失われつつある。

「シャニーはルケシオンに来たが最期、この爪で引き裂いてやりますよ。どうせ棄てた娘だ、元からいなかったと思えばいいだろう。」

じゃらじゃらと長く硬い鋭い爪を鳴らし、それを舐めて背筋が凍りつく笑いを漏らす。
彼はイスピザードをその細い目で見下ろしながら嘲り、高笑いしながらまた大地を砕いていく。
もうここが平地だったなど分からないが赤き翼で空を駆る悪魔には何の関係もないことだ。

「!おのれ!言わせておけば!ぐっ・・・。」
「言わせておけばどうなのです?私を倒しますか?ふっふっふ、身の程知らずめ。」

最愛の娘の事を愚弄し続ける悪魔に怒りを爆発させるイスピザードだが、
ついに悪魔の爪が足元を奪われ俊敏さを欠いた彼の動きを捉える。
とっさにダガーで受け止めるが、そのあまりにも弱々しい姿にフェンネルは舌なめずりすると少しずつ腕に体重を乗せて行ってやる。
―つぶれろ、つぶれろ!
「そうだ!」だが、突然にその加圧が緩む。

「あなたを人質にとって降参させますか?くっくっく、奴は武器を棄てるでしょうね。」

我ながら面白いことを思いついたものだと、フェンネルの顔に悦が浮かぶ。
あの女の最大の弱点を握り締める最大のチャンスが今目の前にあるのだ。
どうせ壊したところで面白くも何ともない人形だが、モノは使いようである。

「翼を毟り、皮を剥いで・・・はっはっは、想像するだけでヨダレが出ますねえ!」

身動き取れない中、一体どんな顔をあの女が見せてくれるだろう。
その悔しさに歪む顔を引き裂き、痛めつけて、痛めつけて、悲鳴を上げさせる。
最高の光景を思い浮かべてフェンネルは恍惚な笑みを浮かべて狂喜を叫ぶ。
娘をこんな悪魔に・・・怒りを抑えられないイスピザードは悪魔を黙らせようと怒りの咆哮を轟かせた。

「それ以上口を利くな!」
「身のこなしはなかなか。さすがシャスが選んだだけはある。」

何とか頭上から圧し掛かる巨大な腕を短剣で横に弾くとばっと距離を開ける。
思わぬ抵抗に拍手してやるフェンネルだが、彼は何と両手を広げはじめたではないか。

「ですがそれだけでは何もできませんよ?さぁ、構えていてやるから私を倒してみろ?はっはっは!」
「くっ・・・。」

もはや人間の形はとどめていないまさに魔物。
ハデスの加護を受けた彼の体は鋼鉄のように硬い外郭に覆われて、ごつごつとした突起が彼の凶悪な性格を現しているかのようだ。
あまりにも強大な壁が立ちふさがり、短剣を握り締めながらも策に窮していた時だ。

「ん?!」

イスピザードの視界にははっきり映った。
フェンネルの後方の空に今、何か一番星かと思うほどの閃光が走ったことを。
ついに、ついに来た。彼はフェンネルの気を逸らすべく駆け出した。



 艦内では目の前に現れてきた巨大な紫色の肌の化け物に騒然としていた。
だが、もはや後戻りは出来ない。誰もが神界の力に畏怖しながらも、震えることなくそれぞれが忙しく動いて砲塔が光る。

「主砲、発射準備完了!」
「撃て!」

アルトシャンの命を受けて炸裂するトールハンマーが空を引き裂く。
轟音を上げて蒼白い光がフェンネル目掛けて襲い掛かるが、彼は後ろ目にそれを一度は移したものの、全く避けようともしなかった。
直後、ターゲットに直撃して爆音と閃光を上げる。

「ば、バカな・・・トールハンマーを受けてもびくともしないなんて。」

ところが、爆風が風に晴れてくると、艦内にはどよめきが広がる。
魔物は直撃する前と変わらぬ姿で立っていたのだ。
倒すどころか、その岩のような魔物の肌には亀裂一つつくことない。

「そんなことは想定内だ。錬金艇を着陸させよ、お前達はここで待機だ!」

時間さえ稼げればそれでいい。アルトシャンは矢継ぎ早に配下に指示を与え、
着陸するや否や先陣を切ってフェンネルの元へと駈けていく。
その後に続いたシャニーは、フェンネルがその手に握る姿に息を呑んだ。

「フェンネル!お父さんから離れろ!」

すぐに弓を召喚して狙いをつけながら叫ぶ。
待ちに待っていた、あの憎らしい声が背後から聞えてようやく振り向く。
そこには確かにいた。やや風貌が変わったが、間違いない。引き裂いてやりたい女の顔が今目の前に。

「くっくっく、待っていましたよシャニー。いや、二代目エルピス様とでもお呼びしましょうか?」

彼女を守るようにして、彼女の後ろにはエルピスもいる。
嬉しそうに口角を釣り上げる。何と二人まとめて引き裂いてやれるなんて。
爪をなめながら病的な笑みを浮かべる。

「まさかあなたの顔をまた見るとは思ってなかったわ。」
「ほお?人間如きに敗れた神界最強様までいらっしゃるではないか。くっく、これは面白い。」

明らかに、二度と見たくなかったと言いたげな落胆を顔に浮かべるエルピス。
だが、フェンネルは実に嬉しそうである。あの時は一方的にやられる側だったが、今回は違う。
何せ相手のマナは当時とは別人くらいに弱い。
頭から噛み砕いてやりたくて、彼は舌なめずりしながら牙を鳴らしてニヤニヤとしている。

「お前達の首を捧げれば、ハデス様の怒りも静められるに違いない。
 ふふふ、シャニーを始末した後たっぷり甚振ってから料理してくれる。」

まるで山かと思うほどの巨体から見下ろしてにんまりほくそ笑む。
だが、その笑顔に亀裂が入った。もっとも癪に障る、エルピスの嘲り笑いを浴びせられたからだ。
宿すマナは弱くなっても態度は相変わらず大きいまま。歯軋りが止まらない。

「残念だけど、シャニーももうカス賊じゃないの。あなたのような低レベルに負けるほどマヌケじゃないわ。」

エルピスとて、以前と同じように自分が戦えるとは思っていない。
だが、当時は強大に見えたフェンネルのマナも、今となってはまるで驚かない。
当然だろう、今そっと肩に手をやり励ます妹の宿すマナは、比較にならないほどもっと高く、広いのだから。
「なるほど?ふふふ、これは楽しみですねえ。」フェンネルもシャニーが以前とは違うことには気付いていた。
一度天使として覚醒したばかりの彼女と戦ったことはあったが、あの頃とはまるで別人のようだ。
しかし・・・どれだけ光のマナを研ぎ澄ませようとも、その弱点は何も変わらないことも知っていた。

「これでも戦えますか?!」

ぐいっと手を上空に翳してみせる。爪の間に挟まれているイスピザードは為すすべもなく、
まるで人形のように悪魔に弄ばれ、もがく姿を見上げたフェンネルは少しだけ爪に力をこめる。

「う、うぐ?!」
「お父さん!!」

ちょっと力を加えられただけで、大岩に押し潰されるような重さが全身を襲う。
堪えきれずに声が漏れるイスピザードにシャニーが悲鳴を上げた。
父を助けなければならない。ぐっと握り締めた弓にマナが吹き上がったその時だった。

「希光よ、ここは我らに任せてもらえないだろうか?」

そっと後ろから歩み寄る気配がして、振り返るとアルトシャンが大剣を握り締めているではないか。
その背後ではセイン、そしてヴァンもそれぞれ武器を握り締めており、
アンドラスが召喚したアイスランスがフェンネルへと放たれて先制攻撃を既に浴びせていた。

「そんなのできるわけないじゃない!フェンネルの力を甘く見てはいけない!」

だが、シャニーは仰天してぶるんぶるんと首を何度も横に振る。
彼女はフェンネルの恐ろしさを身を持って味わっている。
熾天使の権能を扱える今となっても、かつて彼から受けた責め苦を体が覚えていて
自信以上の恐怖が身を震わせていた。恐ろしい力を持った悪魔を彼らだけに任せるなんて危険すぎる。

「分かっている。だが、今我々がすべきことは、この化け物を倒すことではないはずだ。」

シャニーの警告を聞かずとも、相手がどれほど危険で強大かはその姿、放つ覇気から感じ取れる。
それでもアルトシャンが危険な役目を申し出たのは、これが最後ではないからだ。
むしろもっと強大で、もっと危険な存在が今もマイソシアを蝕んでいる。
彼を止められるのは、シャニーたちしかいないと彼は確信していた。
今はそれぞれが、今為さねばならないことを確実にこなすべき時。
彼や、その背後で見つめてくる覚悟の眼差しは無言のままにシャニーへ迫る。
―我々を信じろ。

「キミ、久々に楽しめそうな相手だな。」

そんな中で、御託など時間の無駄と言わんばかりに飛び出す漆黒の騎士。
指にはめたセオのアクアマリンから凄まじい蒼焔を噴き上げて炎の槍を生み出すと、
ヴァンは誰よりも先駆けて駆け出し、フェンネルへと突っ込んでいく。

「おいヴァン!と言いたいところだが、今回は私もお前の意見に賛成だ!」

先を越されてしまった。ふっとひとつ凛々しい笑みを浮かべたセインもまたエルモアに鞭を入れる。
猛進するエルモアにまたがったセインはフェンネルのもとまで一気に距離を詰めて
手にした銀の槍で渾身を放つ。硬い、まさに岩。
高い音を立てて弾かれるが、それでも何度も魔物の足へ槍を突きこむ。

「ヴァン!兄さん!」
「案ずるな、われらとてアスクの守り手、そう簡単に負けはせぬ。」

目障りな人間共が群がってきて舌打すると、フェンネルはその巨大な手で大地を払う。
それだけであたりには烈風が吹き荒れ、大地は大きく引き裂かれて悲鳴を上げるシャニーだが、
アルトシャンは彼女の肩にそっと手を置くと、自身も剣を握りなおす。

「シャニー、私たちに任せて欲しい。
 これから国を守っていく者と民に認めてもらうためにも、これが私たちに出来る精一杯の民への罪滅ぼしです。」

ヴァンたちを援護するようにアイスランスを撃ち込んだアンドラスは、シャニーにその覚悟の眼差しを向けながら次の一撃を詠唱し始める。
これはすべての生きる魂の戦い。決して力あるものだけの、英雄だけの戦いではないと横目で語り、
彼女はまた一つ勇気を手先に召喚すると力強く悪魔に投げつけた。

「そういうことだ。娘が希望のマナを扱える。ハデスの化身といえど無様な戦いはせんよ。」

ついにアルトシャンも飛び出して、その巨大な剣で相手の鎧を砕きにかかる。
さすが剣帝と言ったところか、直撃を与えた大剣はセインたちとは明らかに違う破壊音をあたりに響かせ
フェンネルもまた痛みに思わず足を上げて跳ね除けにかかっている。

「イスピザード、もういいぞ、戻って来い。」

フェンネルの怒りに任せた一撃をバックステップで避けたアルトシャン。
追撃を娘のアイスランスが阻み、彼はフェンネルを見上げるとその手先で今も身動きが取れずに居る右腕に叫んだ。

「はっ、では・・・。」
「?!」

ようやくに主の許可が下り、イスピザードは静かに一つ頭を下げるとその途端だ。
ふっと彼の姿がフェンネルの爪の中から風に溶けていくではないか。「げ、幻術だと?!おのれ生意気な!」
フェンネルが怒りを吐き出したときには、すでにイスピザードはアルトシャンの背後で跪いていた。

「アルトシャン、頼んだぞ。お前達の意志、シャニーも、もちろん俺達も必ずやハデス封印の為の力とする。」

彼らの意思を無駄にしてはならないだろう。
メルトは刀を大地に突き刺して蒼焔のドラゴンスケイルを張り巡らせ、
横で共に剣を振るう戦友を包むと共に声をかけた。彼なら、きっとこの魔物を止めてくれると信じて。

「まさかまたあなたと鋒を揃える事に成るとは思ってもいなかった。だが光栄な事だ。任せていただきたい。」

まるで若いときを思い出す。常に最強の剣と絶対の盾としてアスクを守ってきた。
一度は違えた道だが、アルトシャンはなぜか清々しい気持ちだった。
一つ頷くとメルトの道を切り開くように大剣を振り下ろし、刀身から迸る烈火がフェンネルの行く手を阻む。

「シャニー、アルトシャンたちを今は信じようぜ。俺達にしか出来ない事をやりに行くぞ!」

今しなければならないことをアルトシャンたちは分かっている。
ならば、自分達もまた為すべきを果たす時。ゲイルはシャニーの手をしっかりと握ると、
メルトのドラゴンスケイルに身を隠すようにだっと駆け出した。

「分かったよ、私はみんなを信じる。あなた達にも支えてもらえたなら、絶対絶対うまくやってくる!」

ゲイルに手を引かれながら後ろを振り向き、魔物と戦う者達に誓いを叫ぶ。
誰もが彼女の方へ目線を注ぎ、無言のまま頷いた。「待てシャニー!貴様に先に進む資格はない!」
すぐさまシャニーを追おうとするフェンネルだが、メルトのドラゴンスケイルがそれを阻む。
そしてその絶対の壁の前にさらに強力な蒼焔が吹き上がりだしたではないか。
それは紫電を伴ってフェンネルを威嚇し、隆々と燃え上がる。

「そのまま返してあげよう。キミに彼女を止める資格はないさ。」

指輪から噴きだす蒼焔が止まり、ヴァンはひとつ鼻で笑うとフェンネルを睨みあげる。
「キミはオレが遊んであげるよ。」再び指輪から湧き上がる蒼焔。
その手に握る槍を包み込んだ炎は激しく爆ぜてヴァンの不敵な笑みがまっすぐフェンネルを捉える。
久々に楽しめそうな相手。待ちきれずにかつて死神と呼ばれた男は突っ込んでいった。

「アルトシャン様、ご指示を!」

彼の後姿を見て、セインはアルトシャンに躊躇いなしに頭を下げた。
そしてかつて日常だった言葉を口にする。戻ってきた、かつての騎士団の栄光が。
アルトシャンはセインへ体の正面を向けるとファースト・コマンドを伝える。

「うむ。では私とアンドラスで前線を守る。お前達親子はわれらと、そしてヴァンをフォローしてくれ!」

オープン・コンバットを伝えるかのように剣帝は指示を終えるや否や駆け出す。
アンドラスもまた父の背を追って駆け出すと、早速アイスランスを召喚して投げつけた。
親友に教えてもらった、命を殺める為の魔法。だが今は違う。
世界を、大事な人を守る為の聖なる槍。「揃いも揃って雑魚共が!・・・ん?」
突っ込んできたヴァンと、そして無数に飛んできたアイスランスを弾き落として碇を叫ぶフェンネル。
だがその時だ。氷結の欠片が全て視界から消えると、目の前には金髪の乙女。

「シャニーが二人だと?!どういうことだ!」

振り返ってみる。そこにはやはりマヴガフの下へ駆けて行く金髪の熾天使。
もう一度振り返って焦燥とした目で見つめる先にも同じ姿、同じマナがあり、
彼は仰天を叫ばずにはいられなかった。

「私はシャニーではない!だが、彼女と同じ人間を愛する熾天使の血を継ぐ者!
 人間を脅かす悪しき意志は許しておかない!」

再びアイスランスを手先に召喚して投げつけると、今度は業火を刀身に生み出し、
燃え盛ると剣を一振りして焔月輪を浴びせる。

「事情は図りかねますが・・・熾天使の血と言うなら答えは一つ。」

アイスランスを爪で砕き、噴き上がる業火をその巨体からは想像もできない身のこなしで避ける。
どうやら魔法が得意なようだが、神界の光は扱えないらしい。
おおよそ戦力を知ったフェンネルの口元が釣り上がる。

「私の前に跪け!そしてその血、一滴残らず啜り取ってやろう!」

爪を鳴らし、その先を舐めて好戦的で猟奇的な笑みで見下ろした彼は悦を叫ぶ。
憎き熾天使の血はこの世から全て消し去るだけ。
あの柔らかそうな体をこの爪で引き裂けばどんな悲鳴を聞けるだろう。
楽しいショーを始めるべくその赤き翼に力を篭める。辺りに迸る衝撃波と風圧。

「来るぞ!アンドラス!我らがオーレイル一族の!ロダシャナキの意志を見せ付けるぞ!」
「はいっ、お父様!イスピザード、セイン様、兄上もお願いします!」

悪魔が飛翔し、迸るマナが曇天を呼び込んで赫赤の翼が青空を引き裂く。
立っているだけでも精一杯の武者震いがするような光景。
勇気を振り絞って父に続き駆け出した彼女は振り返って仲間に祈った。

「私はいつでも姫様の御為に。」
「アスク聖騎士の名にかけて、必ず守ると誓う!うおおおっ!」

祈りながら一つ丁寧に頭を下げたイスピザードの手が下ろされると、
まるで生えてきたかのように潜入服の袖のうちから出てきた短剣が握り締められてさっと風と消える。
父を追うようにしてセインもまた銀の槍を掲げてエルモアに鞭を入れると、
勇猛果敢にフェンネルのもとへと駆け寄って渾身の一撃を放つ。

「ふっ、お前の出番はないさ。あいつはオレの獲物だからな!」

仲間をドラゴンスケイルで守りながら、ライトニングスピアを浴びせるヴァン。
鎧の如き硬い体を貫いて紫電がフェンネルを駆け巡り仰け反らせる。
自分の獲物を奪おうとする者は容赦しない。死神の口元が新たな獲物へ口角を釣り上げ、
そして己の正義と合致しない悪から民を守る絶対の騎士の眼光が睨みを利かせていた。
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