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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
The final chapter Outside of Lie

3話:目覚める暗黒竜

 ←2話:光の集結 →4話:絶望と言う名の協奏曲
 森を駆抜け洞窟に飛び込み、その暗い坑道を駆け上った先。
一気に晴れた視界に飛び込んだ閃光はルケシオンの燦々とした太陽の光ではない。
目の前で禍々しく光り浮かび上がる魔法陣の前に立つ一人の男。

「マヴガフ!やめろ!」

韋駄天を飛ばして一足先に階段を昇りきったシャニーが怒鳴る。
魔法陣から噴き上がる邪悪な風に、まるでマントのようにスーツをなびかせる男は
ついに現れた役者達に口元を喜ばせると振り向いた。

「ようやく来たか?そういきり立たねえで、最高芸術品を見てくれよ?」

すでに本性を隠すペルソナであるあの黒のソフト帽を取り払ったその眼光は猟奇的で、
深い彫りの入った鋭い眼差しは舌なめずりしながらシャニーを見下ろす。
嘲笑うかのように怒鳴る彼女をやり過ごすと、手を向けて視線を集める。
そこにあった混沌の塊に、誰もが息を呑み、邪悪な風だけが吹き抜ける。

「暗黒の龍・・・。」

魔法陣の上にあった何かやぐらかと思ったそれと目が合ったシャニーは絶句する。
水晶の中にあったあの黒き獣が今、目の前で空を覆いつくしていた。

「こんなものを作り出すなんて!創造の力は破滅の為に使うものじゃないのに!」

自身の権能がこんな力を生み出すために悪用されたと思うと無性に腹が立つ。
おまけに、人々に希望を振りまくはずのマナが絶望を湧き上がらせてきた。
それが全てこの男の策略だったと思うと、握る拳が悲鳴をあげる。

「テメェらの力が生み出したもんだろうが?ふふ、敵ながら礼を言わせてもらうぜ?」

その煮えたぎる感情に油を注ぐかのような嘲り笑い。
今まで本当に計画通りに動いてきてくれた連中への感謝は計り知れない。
口元に好戦的な笑みを浮かべながら、彼は丁寧に頭を下げてきた。

「さて・・・そろそろメインショーと行こうか?観客のミナサマヨォ!」

最高のショーを前にして高まる興奮を抑えられないマヴガフの奇声が迸る。
黒き魔道書を手にした彼は、そのページを徐に開いて自身のマナと連結させ始める。
噴き上がるマナの波動に天を貫かんとするかのごとく逆立つ髪。

「やめろ!」

すぐに勘付いたシャニーはトパーズに自身のマナを注ぎ、
翼を背に湛えると電光石火に飛び出してマヴガフに体当たりを見舞いにかかった。
「ぐあっ!!」だが、その蛇眼が後ろ目に睨んだ途端だ、強烈な何かに弾き飛ばされて地面を転がる。

「シンセーな儀式だ、近づくな。テメェらは革命の誕生を見ていろや、最前列でな!」

悪魔の勝ち誇った高笑いが響き、ダイモニオン・エムブレムとマヴガフが紫紺に輝きだす。
途端、そのマナが魔法陣へと流れ込み、その上で眠る暗黒竜に螺旋を描き包み始めた。

「世界中回ってみた。だがやっぱり世界は変わってネェよ。どこもかしこも嘘だらけだ。」

螺旋はどんどん勢いを増して、どくどくと暗黒竜を飲み込み始める。
その光景を見上げながら、マヴガフは細い目をさらに細く鋭くして天を睨む。
この嘘のだらけの世界を創り上げた張本人どもに、もう少しで復讐を果たすことが出来る。

「テメェらの想いってーのが、たっぷりとこのダイモニオン・エムブレムには詰まっている!」

それができるのも、すべては善神共が創り上げたこのお人形たちのおかげだ。
正義、正義、善だの光だの言い続けてきた者達が創り上げてきた闇。
その塊が生み出した悪の理を見せ付けながらほくそ笑む。

「皮肉なもんだな、ハデスを憎みながら、いわば原始体を生み出しているのは人間、テメェらなんだからよ。」
「何をわけの分からないことを言っている!」

これほどに面白いこともあるだろうか。連中はまだ気付いていないに違いない。
今も牙をむき出しにして、熾天使がそれを否定しようと何かを叫んでいる。
だが、もう聞くに値しない。この目の前の真実が全てを物語っている。

「何が言いたいか分かるか?わからねーだろうナァ!善神共の家畜にはヨォ!」

シャニーの怒りなどロクに聞くこともなく、一方的に話を続けるマヴガフ。
ついに輪廻転生が本格的に始まり、魔法陣は輝き、吹き上がる烈風に飛ばされないようにするので精一杯。
その中で、あのなりの細い男は堂々と立って、逆立つ髪をなびかせ快哉を叫んでいる。

「憎悪や怨恨、偏見や憤怒・・・ハデスの力の源はテメェらから生まれるものだ。」

一瞬、マヴガフの口にした言葉を誰も否定できなかった。
それら負の感情を抱くのは、確かに人間だからだ。

「考えてみろよ?なーんで善神共はそんなおっかねーもんを生み出すようにテメェらを創ったと思う?」

無理やり否定しようとした時だ。マヴガフはそれを待っていたかのように先手を取る。
否定できるはずがない。嘘を嘘で塗り固めた世界に生きてきた連中だ。
真実を見せられて何も言い返すことが出来ない、それが全てを物語っている。
彼らが見てきた正義は、世界は、真実は、全てが嘘だということだ。

「おっ、おい!龍の翼が今動いたぞ!」

嘘だらけの過ちの世界は、正さなければならない、それこそが正義。
正すにはもはや、修理では効かない。作り直すために必要な力が今、
皮肉にもこの世界を正当化する矛盾と言う名の闇によってついに動き出そうとしている。
ゲイルの裏返りそうな声と共に指差された先を見つめて誰もが絶句するその姿をマヴガフは高笑いしながら見下ろすと、
ヨルムンガントを宙に投げて暗黒竜の頭上へ駆け上る。

「気付いているはずだ、そうだろ?自分で踏み出せないなら俺様が背を押してやんぜ?」

暗黒竜の頭上から見下ろせば、何と小さな存在共だろうか。
あんな小さな連中にとって見れば、目の前の事実が嘘を映す鏡かどうかなんて分からないのも無理はないか。
だが彼らは全身に智を与えられ祝福された生き物。
ここまで話してやればもう彼らとて分からぬはずはない。ただ、絶望から逃げようとしているだけ。

「まずい、奴と暗黒竜の融合が始まっている!シャニー!」

マヴガフの輪郭が歪みだし、暗黒竜と共鳴するかのように揺れ動きだす。
すぐさま何が起きようとしているかを察したメルトは叫ぶ。「分かってる!いっけええ!!」
シャニーも言われるまでもなく弓を構え、手先に光を生み出すと、瞬きする間も与えないほどのスピードで照準を絞り、マヴガフを狙う。
迸る閃光。迫り来る全身界最強の光を前にマヴガフの顔から陰影が奪われていくが
彼はそれを見下ろして蛇の如く口元を哄笑に引き裂いた。

「良いか、よく耳の穴かっぽじって聞けや。ハデスを創ってんのは、テメェらが信じる善神共なんだよ!」
「?!弾かれた?!」

彼が一体何を叫んだのかは、まるで耳に入ってこなかった。
ただ、皆の想いを乗せた光を、大顎を開いた暗黒竜が噛み砕いてしまった光景だけがその場の者達を凍りつかせて、一瞬の無音が勝敗を決定付けた。

「何のためかって?自分達の進化のためだ。
 下界からマナを搾り取り、人間共を実験台にあれこれ画策して・・・そうだよナァ!エルピス!!」

名指しする悪魔の狂喜に、エルピスは何も返すことは出来なかった。
善神たちの行動を知っていたからこそ、彼女は神界の掟を破り、
反逆者の烙印を押されてでも人間を守るために下界に留まったのだから。
シャニーも善神たちの話になると言葉を呑む。シャスたちが自分の都合だけでゲイル達と自分を引き離そうとした事や、
イスピザードたちを苦しめ続けたことを知った今、マヴガフの言葉はどれもが本当に聞こえてくる。

「それなのにテメェらは神様、神様と。用のなくなった家畜なんざゴミ扱いだっつーのに、おめでてェ奴らだぜ。」

第三者の視線からじっくりとマイソシアを見下ろせば、それは何と愚かしい。
人間共が自分達を救ってくれる絶対的な存在だと信じる神は。
確かに絶対的だ、だが救うはずがない。神にとって人間など、ただの素材に過ぎないのだから。

「ま、仕方ネェよな。善神共にそうなるように設計されてんだもんな。哀れなもんじゃねえか、ケヒヒヒッ。」

彼らがそれで幸せなら、彼らにとっては別にどうでもいいことであろう。
だが、世界にとってはそれでは困る。善神共が創り上げた嘘だらけの世界で生み出される均衡と進化。
マヴガフにはそれが許せなかった。世界に必要なものは、偽りの光と平和ではない。
真実と、そしてウソツキに対する裁き。全てが正しい秤で評価される世界こそ、あるべきだ。

「どうした?何か言い返してみろや!ヒャハハハ!」

ついに狂喜が空を引き裂き、マヴガフの姿がすっかり邪龍をまとうオーラに溶けてしまった。
途端、静かにそれで居て力強く目覚める眼。
黄金の蛇眼は今、巨大な龍の目として生まれ変わり反逆者たちを見下ろす。

「や、やべえぞ。融合しちまった!距離を開けろ!シャニー!」

己の身を確かめるかのように、腕をそして足を動かし始める暗黒竜。
彼が踏み込むだけで地響きが起き、辺りに踏み砕かれた岩が吹飛ぶ。
とっさにシャニーの腕を引いて後方に下がったゲイルの真後ろに大岩が降ってきた。

「ウソツキは裁かなきゃいけねえよナァ!恐怖って名の神罰でヨォ!!」

彼らの逃げ惑う小さな背中を見下ろした、今やハデスとして復活したマヴガフ。
彼は一つ口元に笑みを浮かべると、力強く背中の黒欲に力を篭める。
凄まじい風圧と共に、ついに目覚める邪悪なる飛翔。

「どうだァ?!足元が震えるだろ!!テメェらは感じている、絶対的な力を前にした絶望を!」

あんな小さな人形共に一体何が出来るというのか。
今までずっと、あの小さな体に耐えてきた。依り代にするにはあまりに小さな人形。
だがもうそんな忍耐の時は終わりを迎えた。この最高傑作で思う存分暴れられるのだ。
体中に漲り、溢れる自身のマナが隆々と滾り、全身から波動となって迸って辺りをそれだけで破壊しつくす。

「これが・・・暗黒神ハデス・・・。人々の絶望を貪って膨らんだ・・・闇そのもの・・・。」

自身のマナをあたりに張り巡らせて、吹き荒れる暗黒の風と瓦礫から身を守りながら、
シャニーは目の前に生まれてしまった最悪の闇を見上げて声を震わせていた。
体が、震える。自身と真逆のある真澄のマナが今世界を破壊しつくそうと狂喜咆哮している。

「退くわけには行かない!人々の幸せを否定するお前を私は止める!」

だが、彼女は震える足に鞭を撃ち、一つ前に踏み出すと強く叫んだ。
その指先はまっすぐに神と化したマヴガフを突き刺し、鋭く睨む。特段、反応はない。彼女の反応は、神の設計どおりなのだから。
大方、人形にはその自覚もないのだろう。ならば、教えてやるだけだ。

「全ての想いの代弁者・・・とでも言うつもりか。いや、違うナァ?テメェは無限に嘘を創り上げる鏡だ!」

希望、それこそが既に嘘なのだ。ありもしないものを真実と見せる嘘の鏡。
それを人間が追い、その彼らの持つ創造の力が新たな力を生み出す。
それにより進化する世界。希望の熾天使とは、人間を搾取する為の都合のいい道具に過ぎない。

「嘘は正さなきゃいけネェだろ!ゼロだ!この世界に今必要なのは希望じゃねえ、ゼロなんだよ!」

全てが嘘で作り上げられた世界は、何もかもが修正対象だ。
だが、ここまで蝕まれていると、もはや直すより作り直したほうが早い。
その為に必要なことは、新たな世界の為に既存の邪魔全てを無に帰すこと。
ゼロへの回帰こそが今、この世界に求められる最後の使命。
叫ぶマヴガフの口調は確信に満ちてトーンがどんどん上がっていく。

「俺様がこの嘘だらけの世界をテメェもろともぶっ壊し、イチからすべてを作り直してやる!
 ナァ?それが望みだろ?世界のアルベキってのはこーいうことだ違うかッ!」

過ちを正す事、それこそが世界があるべきに帰るために最も大切なこと。
今最も世界で正さねばならないものは、自分こそが正義と言って憚らず今も嘘を生み出し続ける神に創られた鏡を破壊することだ。
道具を破壊し、そして神を根絶やしにし。ゼロに返って初めて世界再生は為される。
3000年待った回帰にマヴガフの狂喜は収まることを知らない。

「嘘じゃない!この世界は皆の想いが動かし、創っていくものだ!
 神がどう人間を創ろうとも、その意志までは造れない!私は多くの人の声を聞いてそれを知っている!」

だが、シャニーも言われたまま押し付けられたあるべきを受け入れることはしない。
マヴガフが目指す世界は、彼が絶対神として君臨してすべてを支配する世界。
そこには意志はなく、幸せも何もかも奪われ、それこそ人形として生きるしかない。
神々の言う真実に従うつもりなど毛頭なかった。

「善の腰ぎんちゃくが知った口利いてんじゃねえよ!」

やはり嘘を生み出す鏡、その口はなかなか達者で人間これには扇動されてきたのだろう。
人間を扇動する光、光こそ善と設計された人間。そこから生み出される進化。
全てが善神の謀だというのに、まだこの人形共は気付けないというのか。
思い出される3000年前の記憶。全ての始まりは、善の裏切りだというのに。

「異を拒み、力でねじ伏せ・・・光はいつもそうだった。
 そして力を制御できない光は常に暴走し、他を巻き添えに正当化に終始した!」

一体何を言っているのか、まるで分からないシャニーたちは見上げるしか出来ない。
だが、その表情がますますにマヴガフを激昂させた。
都合の悪いことはどうして光も簡単に忘れることが出来るのか。
忘れたなら、思い出すまでたっぷりと甚振ってやるだけだ。あの時と同じ、いやそれ以上の屈辱と憎悪に沈めて。

「聞えてくるぞ、光に押しつぶされた憎悪の声が!
 テメェら光の鎮魂歌を、そして俺様の賛美歌がヨォ!キレェな声がいっぱいだゼェ!!ヒャハハハ!!」

ダイモニオン・エムブレムを通じて流れ込んでくる闇のマナ。その禍々しい流れの中には、さまざまな声が響いている。
痛み、苦しみ、恐れ、絶望、そして今にもこの身から噴出しそうなほどの憎悪。
彼らは口々にマヴガフに言うのだ。光への復讐を、そして世界の再生を。
光はいつでも悪と呼んで刃を向けてきた。だが今、それらの声に嘘は全て払われた。

「今度は俺様が正義として、テメェら光を騙る偽善を裁く時。見せてやるよ、新世界!極地の憧憬って言うのをナァ!!」

ひときわ大きな雄叫びを上げると、飛翔した暗黒の邪龍から迸る黒き閃光。
すべてを飲み込み、押し潰し、吹き飛ばしていく破滅の風から皆を守るシャニーのマナだけが、
暗黒の中に黄金に光り、マヴガフに教えてくれる。あれこそ、滅ぼすべき悪と。

「トクベツ大サービスだ!テメェから極楽へ送ってやる!来い!数千年滾らせ続けた憎悪の焔で焼き尽くしてやんぜ!」

この憎悪の紫焔に一瞬で燃え尽きるような雑魚に用はない。
爪の先をまっすぐにシャニーへと向けたマヴガフは空中から見下ろし、一騎打ちを叩き着けた。
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