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 ←5話:黒の魔道書 →7話:エピローグ
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
The final chapter Outside of Lie

6話:英雄達の祈り

 ←5話:黒の魔道書 →7話:エピローグ
「いいよ。シャニー。悪さをする奴はばーんとぶっ飛ばしちまいな!」

早速祈りを捧げ始めたのは、大陸の正反対に位置するスオミの魔術師達。
蘇った大賢者リュミエの下に集まった魔術師達は光に祈り、思い浮かべるのは夢見た未来。
彼らの夢を愛弟子に託すリュミエの顔は確信に満ちていた。彼女は、自分達が支えれば必ずやってくれると。

「シャニーさん、今度は私があなたを守る番です。どうかこの祈り、届いて!」

幽閉されていた時に現れた光。彼女のもたらした光がどれだけ胸に希望を湧きあがらせたか。
あの思いは決して忘れない。あの喜びを、強い気持ちを今度は彼女にあげたい。
姉の横で強く手を結ぶミリアはひたすら友の顔を思い描いた。


「人間は好きにはなれんが、受けた恩は返す。それが我らの掟じゃ。祈れ皆の衆!」

決して人間と和解したわけではない。
今祈る相手は人間ではなく、自分達と共に世界を守ろうとした同士。
ロードカプリコの叫びに、多くのカプリコが静かに目を閉じる。
早くこの空を包み込む暗黒の雲が晴れていくようにと。

「僕も大きくなったら、あんなふうになるんだ。僕でもみんなを守る英雄になれるなら祈るよ!」

困っているものを、恐怖や絶望で泣き叫ぶものを守れる力。
守られたものはその力に憧れ、新たな夢として歩み始めていた。
シャニーにかつて救われたあの子供のカプリコもまた、強く、強く目を瞑って祈る。
困っているものを守る、それが英雄。あの細い背中に追いつく一歩を彼は勇気を振り絞り歩みだしたのだった。


 ミルレスから大陸の正反対に位置するかんかん照りのサラセンからは
ルケシオンに広がる暗黒が鮮明に映り、邪悪なマナと良く知る希望のマナが風に乗ってどんどんやってくる。
その中で修道士たちは鍛錬の手を止めて、ルケシオンのほうを見上げていた。

「シャニー、ゲイル。お願いよ、あなた達が私たちの希望。」

今、かつて共に世界を守るために旅をした仲間が、何か強大な力と戦っている。
迸る邪悪な気と、大好きな妹分のマナがぶつかり合う衝撃をサフィはこのサラセンからも感じていた。
本当ならば、そばに駆け寄って手を貸してやりたい。二人の距離はそれを許してはくれない。
だが、サフィはシャニーが何を一番求めているかを知っていた。
支えるということは、何も力だけではない。

「その希望を俺達が支える。分かってるぜ、シャニー。」

静かに手を結ぶサフィの横には、山かと思うほどの巨大な男が拳ではなく祈りに手を結ぶ。
ヤアンの背後には、どれもあまり似合わないが屈強な者達が祈り、目を瞑っている。

「生きている魂全てで創り上げる、それこそ未来だ。
 俺もその一人として、このサラセンから戦うぜ。戦ってるのはお前だけじゃない、負けるな!」

かつては闇の世界で命を貪る修羅として生きていた者達。
だが、創るのは神ではなく、皆で世界を創ることを熾天使は教えた。
諦めず前を向き、転んでもまた空を見上げ。今度は教えられたことを実践する番と、
ヤアンは空に向かって強く叫び、親友の勝利をただひたすらいのる。

「ここがようやくスタートライン、そうだろ?シャニー。」


「料理も創造、そして弛まぬ情熱こそが新たな道を生み出す。」

今日も変わらず王城の厨房で小気味よい包丁の音が聞こえていたかと思うと、それがふと止まる。
ふわっと香ったのはフランベの炎ではなく、同じ志を抱いた料理人の想い。
ふとイーグラーは厨房裏口から外へ出て、闇に染まる東の空に気づくと
静かにその手は胸元で結ばれる。

「誰が為に、それを忘れずに帰ってこいよ・・・!」

今、愛弟子が今一番為すべきを果たすために戦っている。
彼女はきっと帰ってくる、そう確信して彼はシャニーを心から励ました。
すべてが終わったら、またともに厨房で逢えることを願って。
イーグラーが王城から空を見上げている時、城下町ではノカンの残党を制圧したラルプ達が帰国の途についていた。
彼らもまた光と闇の壮絶な戦いを東の空に見て熱き血潮が噴きあがる。

「負けんじゃねえぞシャニー!ルケシオンの底力からを見せてやれ!」

拳で宙を裂きながら怒鳴るラルプ。彼に続くように他の海賊たちも怒号を上げる。
出来るなら、姫の傍に行って共に戦いたいと願う荒くればかりだ。
だが、そんな気性の荒いものたちも今は自分を抑えて強く念じる。
彼女が握りしめる弓に番えられる矢、少しでもそれを強くするために。

「娘よ、我が後を継ぐ者として誇り高く戦え。ゲイル、娘を頼んだぞ・・・。」

自慢の娘だ。だが、さすがにデムピアスの顔にも不安が隠しきれない。
それでも彼は強く東を見つめて娘に全てを託した。
きっと彼女なら、この世界中の祈りをその翼に湛えてくれるに違いないと。


 降り注ぐ閃光、今にも落ちてきそうな暗黒の空。
その真下でアルトシャンたちはフェンネルの執拗な攻撃を抑え込んでいた。
既に周りは彼の爪が破壊しつくして平地という平地は何処にもない。

「はぁ!」
「くぬっ、小賢しいハエめ!」

それでも、アルトシャンの重く鋭い一撃がフェンネルを捉え、直撃を受けたフェンネルが怯む。
岩盤かと思うほどの固い甲殻に覆われた体には大きなひびが入り、その破壊力を物語る。
カウンターを浴びせようとすればアンドラスからアイスランスが飛んできて阻む。
イラつく化身から放たれた一撃をバックステップで避けて距離を開けた時だった。
ふいにそれまでに無いほどの閃光が辺りを包む。

「?!シャニー!見て、みんな!」

彼女の呼びかけに誰もが空を見上げる。
そこには闇を飲み込むほどに光り輝く熾天使のシルエットがあった。

「!退け!化け物!」
「どは!!」

そのシルエットは間違いなく、弓を構え矢を射ろうとしている。
今こそ彼女を支えるべき時と、アルトシャンはしつこく絡み付くフェンネルを渾身で跳ね除けた。
巨体がまるで紙風船のように吹き飛び、岩肌に突っ込んでもうもうと土煙を上げる。

「皆、熾天使へ向かって祈れ!我々の想いを彼女に託すのだ!」

一つ叫ぶや否や、誰よりも早くシャニーへ祈り、己の夢を彼女に託すアルトシャン。
かつてあれほどに命を狙った者への詫びも篭め、ひたすらに心の中で世界の繁栄を祈る。
彼女は目覚めさせてくれた。民の為に、その想いが周りの者達のも伝わっていく。

「シャニー、もうすぐ、もうすぐです。もう少しだけ、辛いけれど堪えて、前を向いて飛ぶのだ・・・!」

父親らしいことは何一つしてあげられなかった。
これからはその償いもしていくつもりだが、これはその第一歩。
毎日娘のために祈りをささげてきたイスピザードだが、彼はより一層強く、強く祈り念じ、
そしてシャスにも懇願した。娘を守ってほしい、と。

「頼むぞ、ゲイル。妹を、シャニーを守ってやってくれ・・・!」

今でもゲイルのことを心から認めたわけではない。
だが今はもう彼女を守ってやれるのは傍にいるゲイルしかいない。
妹の笑顔を思い浮かべたセインは今だけはと怒りを抑えてあの屈強な男に大事な妹を託す。

「ふっ、そこで倒れるならそれまでの人間だったという事だ。」

最後まで手を結ぶこともなく、閃光迸る空を見上げていたヴァン。
2年前、同じ者が宿していた光とは似ても似つかない、さらに強くなった光。
これこそ、自分が好敵手として認めた力。

「見せてくれよ、キミの力をさ。」

まだまだ、こんなものではないはずだ。
それを見てみたい想いがついにヴァンに手を結ばせた。
世界中から集まる祈りの声は次第に大きくなり、シャニーの心へ飛び込んでいく。


 しっかりと手を握りしめてくるシャニーから流れ込んでくるマナがどんどん強くなってくる。
流れは小川から大河へ、そして今大海原のごとく大きく広がりゲイルを包み込むようだ。

「すげえ・・・!何だこの太陽を宿してるような感覚!」

シャニーは希望を湛える器だと改めて思知らされるゲイル。
世界中が彼女へ祈り、集まった希望が今光となって彼女から託されて続けているのだ。
自分ではないとんでもなく大きく強い力。だがその力は実に穏やかで温かい。

「これがみんなの想いなんだ!ハデスの絶望になんか負けない!無限大の光!」

更に強くゲイルの手を握りしめて叫ぶ。皆の想いを、平和への叫びを。
静かに頷いたゲイルはまっすぐに空を見上げて、シャニーが放った光の檻にもがく暗黒龍へ
掌を今一度強く開き照準を絞る。途端、その中には清らかだが強烈な流れが渦巻いて二人を包む。

「受けてみろ!俺達人間が自分たちで創りあげた光だ!」

ゲイルの方向と共に、彼の手先から迸った白き聖光がばっと宙に広がり闇を照らす。
絶望のマナを引き裂く光が空へと伸びて、世界中の者達の祈りを更に強くし、光を前にしたマヴガフだけが絶叫していた。

「マ、マジかよ?!お、おい!ちょっと待て!何で反応しねえ!ダイモニオン・エムブレム?!」

出力低下は止まらずに、どれだけマナを注ぎ込み魔道書と連結しようとしても
まるで見放したかのようにダイモニオン・エムブレムは反応することは無かった。
ついにぷっつりと切れた魔道書と自身のマナの融合。
そこを狙っていたかのように飛び込んできた光の渦が彼を飲み込み、暗黒の雲を引き裂き天を貫く。

「ぐあああああ?!」

力を失ったマヴガフを飲み込んだ光の螺旋が彼を引き裂いていく。
全身のマナが燃やし尽くされるかのように体が熱い。
負けると言うのか、裏切り者たちに、嘘つきどもに負けると言うのか。

「く、くそがああああ!」

どれだけダイモニオン・エムブレムと再連結しようとしても何も反応は無い。
思い出されるルネアの言葉。恐らくは彼には想定通りだったに決まっている。
その謀に利用されたと言うのか。怒りが光に飲み込まれつつあるマヴガフの顔を焼き尽くす。

「殺すッ、てめえら全員ぶっ殺してやるからな!待ってろや!アーヒャハハハ!」

もう、笑うしかなかった。彼はそのまま光の彼方へと飲み込まれ、最後の抵抗が空を劈いて世界中に響き渡る。
それも聞こえなくなると、空を走った銀の矢は暑い暗雲を吹き飛ばし、空には蒼が戻る。

「終わった・・・のか?」

凄まじい力を扱った腕は、光を放出しきっても固まって動けなかった。
放ったその恰好のまま、ゲイルは空に広がりだしたぽっかりと呑気な白い雲を見上げ
帰って来たルケシオン特有の太陽を指の隙間から見て茫然としている。

「もうあのマナは感じない・・・終わったんだ・・・あああ・・・。」

飲み込まれ、砕かれてしまいそうなほどの強大な暗黒のマナの気配はかけらもなかった。
それが分ると一気に緊張の糸がとけ、するりとゲイルの手先からシャニーの手が抜け落ち、
糸が切れた人形のようにその場に倒れこみそうになる。

「シャニー!しっかりしろ!」
「ごめん、えへへ、マナ・・・使い切っちゃったみたい。」

もうまるで体に力が入らず、シャニーはゲイルを見上げて苦笑いして見せた。
本当は勝利を心から喜び、飛んで跳ねて彼に抱き着きたいところだ。
だがそれはゲイルも同じ。倒れこんだシャニーの腰とひざに手をやると軽々抱き上げる。

「良かった、本当に。生きていてくれてありがとう。」

一度はもう終わりかと思った時もあった。だが、見つめあう瞳は互いを強く感じて微笑む。
生きて、生きてまた夢の続きを追うことが出来る。
見つめて微笑んでくれることがこんなに幸せなことだなんて。
自然とゲイルから漏れる感謝にシャニーも精一杯腕を伸ばして彼の首に回し身を寄せる。

「ゲイルもありがとう。すごかったよ、最後の一発!」

自分が放つアストレアよりもさらに眩しい光を放った最愛の男が、今以上に頼もしく思えたことはない。
彼と出会い、そして共に今まで歩んでくることが出来たことが嬉しくて、嬉しくて。
たとえ神の仕組んだ事であっても、今こうしてゲイルと出逢い抱きしめ会うことが出来ることを感謝するばかり。

「よしっ、じゃあみんなのところへ帰ろうぜ!」

しばらく抱きしめあい、生きて暗いトンネルを二人で抜けた事を確かめ合っていた。
だが、この喜びは、この未来は、決して二人だけで掴み取ったものではない。
早く皆にこの喜びを分かち合おうと、ゲイルはシャニーを腕の中に抱き上げたまま
仲間達の元へと戻り、そして聖地を後にした。
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