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 ←6話:英雄達の祈り →Last Episode:Outside of Lie
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「ChaosTrigger~天神復活と破滅の魔道書~」
The final chapter Outside of Lie

7話:エピローグ

 ←6話:英雄達の祈り →Last Episode:Outside of Lie
 邪悪がはらわれた道を眩しい太陽が照らし、何事もなかったかのような穏やかさがある。
かもめの声が聞え、風がざわめく中を歩いていくとすぐにアンドラスたちを見つけることが出来た。

「シャニー!無事だったのね!」

巨体とその腕の中に守られる熾天使の姿を見つけたアンドラスの顔にぱっと笑顔が浮かぶと、彼女はだっと駆け出してきた。
シャニーも誰もが無事あったことにその口元が安堵に緩む。

「アンドラス!フェンネルはどうなったの?」

周りの荒れ方は尋常ではなく、激戦が繰り広げられたことを物語る。
だが、ここまでルケシオンを破壊した悪魔の姿はどこにもない。
マナの気配も感じられず、何となくを察しながらも不安そうに問う。

「突然魔法陣に吸い込まれていったわ。きっとあなたがハデスを倒してくれたからよ。」

直接聖地に立っていなくとも、熾天使とその守護者が悪神を打ち倒すその瞬間はしっかりと目に焼き付けた。
世界中の想いをその身に湛え、彼らの叫びの代弁者となって放つ光の矢。
その真澄の白の美しさと力強さに、アンドラスは感じていた。
やはりシャニーはシャニー。そして自分もまた、自分であることを。
だが同時に、やはり同じであるとも感じていた。同じ志、同じ想い、そして同じ道。
共に戦い、悪神から世界を守ることが出来たことを、アンドラスは誇りに感じてそっとシャニーの手を取る。

「メルト殿、本当に終わったのか?」

フェンネルと戦った者達は誰もが壮健で、アルトシャンの指揮が的確だったことを物語る。
当の本人もまた、未だ剣を手にしたまま剣帝の目を崩しては居ないが、
メルトの表情にすべてを察したのか、彼の許へ行き声をかける。

「ああ、ゲイルとシャニーがマヴガフを討った。もう大丈夫だろう。」

仕えるべきと誓った主が見せてくれた。守るべきと決めた理由のひとつを。
ルアスを離れ、ずっと彼女のそばで旅をしてきて良かったとメルトの清々しい表情が物語る。
無言に差し出される手。互いの健勝を讃え、メルトの目を見て笑うアルトシャン。
その誉れにメルトもまた頷き、和解はひとつの握手となって静かに、だが力強く結ばれる。

「シャニー、よく無事で帰ってきてくれましたね。大丈夫か?」

見るからに傷ついて、限界を超えて戦ったことが分かる。
愛娘の痛々しい姿に、イスピザードはすぐに彼女の治療に入る。
優しい声と共に体に流れ込んでくる温かく懐かしいマナに、シャニーはそっと目を閉じた。
吹き抜ける故郷のさわやかな風が頬をなぞり、まるで父に撫でられているかのようだ。

「お父さん。うん!ただいま!もう大丈夫だよ!マヴガフは私たちが倒したから!」

だが、自分だけ安堵と幸せに包まれていてはいけないと、
シャニーはすぐに目を開けると、イスピザードから貰った元気をすぐに彼へ満面の笑みとして返してあげた。
それを見たイスピザードの表情の何と柔らかい事か。滑りのいい金髪を撫でてやりながら感涙を流し始める。
眩しくも平和を象徴するこの太陽の下、父と呼ばれ笑いあえる日が来るなんて。

「そうか・・・これで・・・シャス様、見ていただけましたか?シャニーはもう立派な天使です。」

空を見上げ、もう二度と会うことは出来ないであろう最愛へ声をかける。
娘に過酷な運命を課した本人であるが、そのことへの葛藤を毎日イスピザードへもらしていた。
他にもやり方はあったかもしれない。だが、今その決断が世界を救ったのだ。
天界からきっと、娘の翼を広げた姿を見下ろして安堵しているに違いない。
「いいえ、私は人間だよ。」だが、父の言葉を否定したシャニーの眼差しもまた空を見上げていた。

「ただ少しだけ、人々の想いを形に出来るだけ。
 過ちを正してくれる仲間がいる、独りじゃないからやってこれたんだ。」

人間として生きてきて、人間と共に歩んできて、そして人間と共に光を掴んだ。
これから先も、人間として、人間と共に、未来へを歩み創っていく。
天界での使命を継承したとは言え、今このマイソシアに生きるシャニーは人間だった。
世界を守り、未来を創るのは、ひとりの意志ではなく皆の想いと決意。
英雄とか、そんな特別な存在は要らないと、その眼差しはまるでまわりに訴えるかのようだった。

「ま、よくやったと思うわよ。私の後継者を名乗るなら、もう少しがんばって欲しいところだけど。」

それでも、頭に載せられる手がまた一つ増えて、見上げれば姉の笑顔があった。
いつも何かと難癖をつけて決して褒めてくれないエルピスだが、今回は彼女も認めていた。
かつて自分が成し遂げられなかった事、その最初の一歩を見事妹は踏み出したのだ。
彼女なら、夢の続きを、自分達の志を継いでいってくれる。
今まで何度も彼女に権能を継承してよかったのかと疑ったことがあった。
だが今は、その時の呆れや不安のすべてを、掴んで世界の中で共に笑い飛ばす。

「では、我々はルアスに戻るとしよう。まずは、民に詫びなければならない。」

勝利の喜びに皆が酔いしれる中、アルトシャンだけは静かに剣を背負うとすでに背を向けていた。
これは始まりに過ぎない。今からこそが、本当に大事で踏み外せない道となる。
まずは過ちを過ちと認め、民に誠意を見せなければならない。
マイナスからのスタートはまだまだ喜べる状態ではないのだ。

「きっとやり直せます。時間はかかるかもしれないけれど、気付いたんですもの。」

不安に胸が押しつぶされそうになるのを、必死に総統としての強いまなざしで抑える。
親の気持ちが分かっているのか、アンドラスはすぐアルトシャンの手を取り笑顔で励ました。
独りではない、そう彼に伝えるべく。「そうよね、シャニー?」
新たに出来た同志が手を貸して欲しいと見つめてくる。

「もちろんだとも。」

シャニーは自分と同じ志を持った透き通った蒼の眼差しを見つめ、力強く頷いた。

「人が自ら気付き、過ちを正して先を目指す。それこそが進化だと私は思う。
 みんなで過ちを正したんだ。これからだよ、進化していかなくちゃいけない。」

ひとりの英雄が世界を正し、管理することなどそれは進化ではない。
誰もが思い知ったはずだ。たった一人の英雄が思い描き、創り上げた理想郷がいかに脆く矛盾に満ちているか。
空から降り注ぐ見えない混沌。その一つ一つへ皆が目を向けて、
素晴しい未来を創る為に共に支え、共に歩む大切さをシャニーは静かでもはっきりとした口調で語り、
じっと見つめてくるアルトシャンたちへそっと手を伸ばす。

「頼んだよ、アスク帝国がマイソシアの中心を担っていかなきゃいけない部分は大きいんだから。」

いつかはルケシオンも世界に誇れる町へと大きく成長させていきたい。
だが、今はまだようやく復興が終わり、村から町へとつぼみが膨らみ始めたばかり。
大国アスクが世界に与える影響の大きさはこれからも変わらないだろう。
その国の指導者達が、人間と向き合って共に前を見つめることに気付いてくれた。
今までは敵だったが、今や同士だ。握り締められた互いの手が決意を物語る。

「希光、今まで貴殿を、いや人間を誤解していたようだ。
 過ちは過ちと認め、私はここにアスク帝国の意志として詫びようと思う。」

手を結びながら、アルトシャンは深々と頭を下げた。
剣帝と呼ばれるようになってから、人に頭を下げたことなど初めてかもしれない。
そして、意志を託せる相手また初めてなのかもしれなかった。
ようやく、人間に帰ってきた。そんな感じさえする。

「詫びなんて要りません。」

だが、シャニーはすぐにアルトシャンに顔をあげさせた。
詫びて欲しくて今まで歩んできたわけではない。むしろ、これから。

「だけど約束してください。人間を愛し、守ることを。」
「むろん、そのつもりだ。まずは民に詫び、あるべきの中心に人間を据えて新たな一歩を踏み出そうと思っている。」

アルトシャンの眼差しは今も厳しいが、その厳しさは以前とはどこか違った。
はっきりと、彼もまた温かい同じ血が流れる人間だとはっきりと分かる。
彼の目は遥か遠きルアスを臨み、帰国後に何をしていくか既に地図には道が描かれているようだ。
アスクを、世界を守る剣帝アルトシャンが今息を吹き返した。
シャニーはそう確信して、彼の意志に静かに頷く。

「希光よ、今度こそより良い世界を創っていく為に手を貸してもらえないだろうか?」

ちょうど1年前だった。彼女に同じ言葉を送り、希光の称号を授けたのは。
あの時は裏に蠢く謀を隠していたが今は違う。
彼女の手を両手でしっかりと包み、はっきりと蒼の瞳を見つめる。
それはまるで希望を握り締めるかのように。

「願ってもないことです。私もルケシオンから帝国の復興と繁栄を祈っています。」

彼らには彼らの、自分には自分の帰る場所があり、そして為すべきがある。
アスクが立ち直ってくれれば、ルケシオンにもきっといい風が吹くし、逆も同じだ。
それでも、志は同じ。世界をよりよく進化させていきたい。以前は南方の晩土と呼ばれ蔑まれたルケシオンだが、
シャニーは敢えて対等な同士としてアルトシャンと手を結びこれから先を託しあう。
そこへ重ねられたシャニーと同じ白く細い手。

「シャニー、今までのこと、本当にごめんなさい。」
「ううん、あなたが気付いてくれたから私は嬉しいよ。」

アンドラスだった。彼女は改めてシャニーへと詫びる。
それにぱっと向こうに咲くひまわりの如く笑う彼女に、アンドラスの口元も自然と優しくなった。
今から思えば、以前の自分の憎悪にはゾットするし、それ以上に愚かだったと後悔するばかりだった。

「確かに私はあなたから生まれたかもしれない。けれど、今思うと同じでも良いと思ってる。
 あなたはルケシオンを、私はアスクを。守りたい大事なものは、生きる意味は違うんだもの。」

それが間違いだと顔を衝き合わせて教えてくれたすべてに感謝してもしきれない。
やはり、人間は温かい。今一度、アンドラスは人間への愛を胸に抱きしめる。
守りたい、大事なものすべてを。生きる意味を見つけた瞳は活き活きとして
もはや影を潜ませた、怯え窺う震えた心はどこにもない。

「存在価値は、自ら見つけるもの。今なら分かるわ。
 私はこれからお父様を支え、アスクをより良い国に育てる為にすべてを捧げるつもり。」

ナンバーワンは確かに大事だ。だけど国を作るためにはそれだけではいけないことを知った。
たくさんの光が集まり支えあって初めて、国という大きな力は動き出す。
誰一人として同じ光などない。その人に出来るオンリーワンを見つけて共に歩みだせるよう光を拾い集めていく事。
それこそが自身の歩む道と、自分の生まれた意味をはっきりとさせた眼差しは強い。

「アンドラス、ありがとう。同じ志を持つ人がまた一人増えて、私も勇気が湧くよ。」

彼女の言葉にシャニーも心からの喜びを顔に浮かべて頷いていた。
人々は英雄と讃えてくれるが、シャニーにとってはそれは褒め言葉ではなかった。
だが、きっとアンドラスは分かってくれた。喜びが自然と手を取らせる。
互いに同士と認め合ったところで、アンドラスがふいにウインクして見せた。

「どっちが早く復興するか勝負しましょう!」
「し、勝負?!」

突然持ちかけられた言葉に、シャニーの声が裏返りそうになる。
その反応を楽しむかのように、アンドラスは結んでいた手を離すとシャニーへ指を衝き向ける。

「あなたに負けるつもりはないわ。これからはライバルよ!」

歩む道は違う、だけど目指すものは同じ。ならば、手を取り合うがそれでも負けたくはない。
敵ではなく、好敵手として今度は宣戦布告を仕掛けたのであった。
「ライバルか・・・。」この空の繋がる向こうで、同志が一生懸命に道を歩んでいる。
その情景を思い浮かべたシャニーは嬉しそうに頷いた。

「よぉし、負けないぞ!」

さっきは和解と協力の握手だったが、今度は互いの拳に決意を乗せて軽く打ち合わす。
そっくりだが、まるで違う4つの蒼の瞳が向かい合い、にっと笑いあった。

「そろそろ行くとしよう。希光、貴殿らも勝利宣言をしにいかれよ。」

いつまでも勝利に酔いしれていられる時間はないと、アルトシャンはすでに背中を向けている。
まだ世界中は戦乱に終止符が打たれたことを知らないのだ。
民の為に戦ってきたのなら、真っ先にその民に安心と平和の叫びを届けなければならない。
互いに距離を開け、己の道へ戻る準備を始める。

「シャニー、また会いに来る。その時ゆっくり話をしよう。」

本当はこの場で色々話をしたいセインも、新たに仕える主の背に従うことにした。
それでも名残惜しく、彼はシャニーの顔をしっかりと焼き付けるように見つめている。

「兄さん、私も待ってるよ。あ、私から行ってもいいよね!」

復興もあり、セインが仕事で忙しく、ルケシオンへ来る時間などないことは優に想像できる。
イーグラーの許へ顔を出しに行かなければいけないし、ルアスは落ち着いたら一番行きたい場所だった。
だが、セインにとってはその申し出は涙が出るほど嬉しい事だった。
今までずっと身分を隠してきた自分を、彼女が兄と思ってくれているのだと感じることが出来たからだ。

「もちろんだとも。父上と共に待っているよ。」

歓迎の意をその顔中に表して、セインはシャニーの手を取った。
シャニーにとっても不思議な気持ちながら、やっと見つけた家族との笑顔に幸せいっぱいだ。
その笑顔を後ろから見つめるイスピザードの顔の何と穏やかな事か。

「ではシャニー、しばし別れの時。また落ち着いたら、ゆっくりアンサンブルをするとしよう。」

本当はもっともっと、平和になったこの時間を娘と共有していきたい。
だが、動き出した時はもう待ってはくれない。
時が穏やかに流れ始めたその時に楽しみはとっておき、そっとイスピザードはアルトシャンの下へと戻る。
「待て、イスピザード。」だが、その彼を止めたのは他でもないアルトシャンだった。

「お前はルケシオンに残れ。」
「アルトシャン様?!」

主が何の前触れもなしに命じた内容はイスピザードの目を真ん丸にさせた。
もちろん彼だけではなく、周りで聞いていたシャニーたちも驚きを隠せないようで行く末を見守っている。

「それはどういうことでしょう。」
「これからはルケシオンとも協力していかねばならない。
 その為にも、今までの関係を修復せねばならない。大使が必要だろう。」

管理し、支配するために行った中央集権。だが、これから歩む道は共に見上げ支えあうもの。
今回の事件で生まれ亀裂はそう簡単に埋まるものではない。
各地に大使を派遣し、関係を復旧させていくことからまず始まる地道な活動だ。
特に関係修復に時間がかかるであろうここルケシオンに、アルトシャンは特使を置いたのだった。

「ありがたき幸せ・・・。その使命、必ずや果たして見せます。」

帝都ルアスでの活動が最も大変だろうに、イスピザードは主の優しさに感謝し感涙を禁じ得なかった。
何度も何度も頭を下げると、彼は嬉しそうに踵を返してルケシオンの街並みを見上げる。
そしてその先には、太陽よりも眩しい笑顔が屈強な男の腕の中で輝いている。

「お父さんがルケシオンに・・・。あぁ、何て幸せなの。」

ずっとずっと探し続けて来た家族と共に生きていくことが出来る。
やっと見つけた幸せが目の前にあり、少しずつ近づいてくる。
思わずゲイルの腕の中から手を伸ばすと、優しい匂いと共にそっと抱きしめてくれた。
幼いころの記憶の欠片、その隅にずっと忘れず残してきた温かさが今彼女を包み込む。

「ずっと、ずっと夢だったんだ・・・。」
「シャニー・・・。おお、温かい。もう離さないぞ、シャニー・・・。」

どれだけ断ち切ろうとしても決して途切れることの無かった家族の絆。
運命が引き離した二人は絆を手繰り寄せ、今ひしと抱き合って涙を流しあう。
その光景を見届けたアルトシャンは娘とセインを伴い、錬金艇のハッチを上げた。

「ではさらばだ。また近いうちに便りを出そう!」

ルケシオンの穏やかな風を巻き上げたエンジンがうなりをあげ、
力強く再開を誓ったアルトシャンや手を振るアンドラスの姿がみるみる小さくなっていく。
そして一定の高さまで浮かび上がった錬金艇はあっという間に地平線の彼方へと消え、
あたりには今迄がまるで夢だったかのような、いつも通りの潮騒がのんびり時を刻み始める。

「行っちゃった・・・。ホント、終わったんだね。」
「ああ。」

だけど、夢ではないという事は、自分を優しく包んでくれる者たちが教えてくれる。
空を、そして仲間たちの顔をぐるりとゲイルの腕の中から見渡したシャニーはほっと胸をなで下ろした。
取り戻したのだ、平和を。終わったのだ、絶望と悪夢を生み出す悪神との戦いは。
緊張を解き、そっとゲイルの胸に身を寄せて静かに目を瞑る。
「だけどまだ終わっちゃいねえぞ。」だが、それをゲイルまだ許してくれなかった。

「みんなのところへ行こう、勝利を伝えるんだ!」

シャニーを抱えたまま、ゲイルは力強く歩き始めた。今もっとも、勝利を伝えたい者達の元へ。

聖域を後にし、ルケシオンの森を抜けて街を一望できる丘まで戻ってきた。
皆の顔を見つけたら、まずどんな言葉を彼らにかけてあげたらいいだろうか。
そんな事を考えていた彼女だが、民はそんな時間さえ惜しかったのだろうか。
視界に広がった光景にシャニーは思わず言葉を失って目を真ん丸に見開く。
そこにはたくさんの大好きな顔たちがあって、自分たちの帰還を歓迎してくれていたのだ。
長年住み慣れた街だ。どこで待てばルケシオンの娘の顔を誰よりも早く見ることが出来るか皆知っていた。

「見ろよ、皆の歓喜に満ちた顔。みんなお前の帰りを、平和の再来を心待ちにしてたんだぜ。」

民たちの顔はもれなく喜びにあふれ、口々に叫ばれる言葉は希望に満ちている。
それを全身に浴びたゲイルは、嬉しそうにシャニーの目元に手をやると感涙を拭ってやる。
この光景には、さすがのメルトの口元にも笑みが浮かぶ。
場所は変わっても、やはり人間が求めるものは何か変わらない。
希望、そして未来への幸福の渇望。これからこの町がどう発展していくか楽しみだった。

「うん・・・。彼らの為にも、これからもがんばっていかないとね!」

それを成すことが出来るであろう、若い二つの光が民たちの希望と夢を湛え素晴らしい笑顔で輝いている。
メルトは彼らの成長を心の中で湛え、そして更なる進化を祈る。
それに応えるかのように、マナを使い果たして立つこともままならないシャニーが、
ゲイルの腕の中で彼へ、そして民たちへ大きく手を振っている。

「ああ、おかえり。シャニー。」

一番愛した笑顔が今、自分の腕の中でさんさんと輝いている。
ようやくに取り戻した平和、そしてふたりの大切な時間。
それを確かめるように、ゲイルは彼女へ改めて帰還を祝う言葉を捧げた。
聞くや否や、ぱっと広がる笑顔。なるほど、彼女が熾天使だとうなずける笑顔はまさに希望。

「ただいま!みんな!私たちは勝ったんだよ!世界のみんなの祈りのおかげで、ハデスを倒したんだ!」

この喜びを一番に伝えたいのは勿論ゲイルだ。
強く手を突きあげてゲイルに歓喜を叫ぶと、彼女は民たちの方を振り向き、ありったけの幸せと感謝を叫ぶ。
途端、彼らからは怒号とも取れるような賞賛が湧き上がり、シャニーの笑顔はますます輝いていく。
その時だ、ふいに彼女の頬に添えられた手が視線をゲイルへと引き戻させる。

「シャニー?」
「え?ど、どうしたのさ。そんな顔して。」

突然強い力が視線を無理やりゲイルへと向けさせるものだからびっくりしたらしい。
おまけに、目の前にある最愛の顔はいつもの一緒にバカをやってきた顔ではなくどこか真剣で、
いつも一緒にいるはずなのに見つめられずとどこか恥ずかしい。
だが、ゲイルはそんな彼女の問いに答えることもなく。

「俺の一番の宝物、世界で一番の宝石。ずっと傍で輝いていてくれよ。」

抱き上げたシャニーを更に近くに寄せると、包み込むようにして抱きしめる。
途端、シャニーの目が見開き、観衆はどっと沸いて二人を祝福し始める。
ゲイルがシャニーの唇を奪い、最愛へ最高のプレゼントを捧げたのだ。
思わず泣き出したシャニーだがそのまま静かに目を閉じ、ゲイルの太い首に腕を巻きつけ彼を求める。
幸せを噛みしめ、これからずっと続くように祈りながら。
希望に包まれるルケシオンは旗手の帰還に熱狂し、
その声たちが新たな時代の幕開けを知らせ、捻じれ止まっていた運命が再び時を刻み始めていくのであった。
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